企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


完全子会社の取締役会  会議室の片隅から 

 使わない業務知識は忘れていくし、知らなくても済むことは知らぬままに…というのはまずい事態だと反省し久々のコーポレートネタを脳がつりそうになりながら。
 
 3年ほど前に非上場完全子会社こそコーポレートガバナンス・コードを知るべきと大口を叩いたものの現在地はどうかということで、「実践取締役会改革」(中央経済社)を読みながら考えたことを。 
 子会社の取締役会のあり方、は上場親会社の子会社管理方針によるところが大きいのはいうまでもないところです。上場企業の取締役会がコードに対応しつつあるのは法律系媒体で伝わってくるのですが、子会社の取締役会の運営についてはどうか、ほぼほぼ子会社人生なので気にはなるのですがなかなか外に伝わる話ではないようですね。

 親会社から「コード対応だから!」というような指示命令は流石にないでしょうけれども、子会社管理規則の改正、親会社主催の子会社会議の内容の見直し、リスク情報の即時共有化の試みの導入、子会社の取締役会に付議する報告事項が指定されるなどここ2年ほどの間に細かくランニングチェンジが繰り返さされていないでしょうか。子会社の経営情報を確実に吸い上げる仕組みを張り巡らせる一方で子会社の取締役会に付議、審議される事項は親会社・子会社それぞれの決裁手続きを満たすための場になっていないでしょうか。親会社の取締役会を活性化させる(時間をかける)ということはどこかでそのための時間を絞り出さなければなりません。それなりの数の子会社を抱え、それぞれに取締役を派遣している親会社からすると子会社の取締役会をいかに「効率的にこなすか」なんてことになっていないでしょうか。

 完全子会社といえども一つの独立企業。時間をかけて審議すべき事項はあるはずなのですが、短い時間の中で決裁を得るための場での「承認を得やすい書類作り」になってしまうことがあります。「承認をえた」書きぶりが伝承され、年数をへるうちに薄っぺらに…などということを避ける為に事務局は一応書類には目を通すのですが(以下自粛

 10年以上、取締役会事務局として会議室の片隅に陣取っているのですが、今後完全子会社の取締役会や取締役などの会社機関はどうなっていくのでしょうか、なかなか表立って語られない分野ではありますが企業グループの数だけパターンがあるのではないでしょうか。
 



 
 


 
 

法務マネージャーはつらくなる?

 ビジネス法務2018年11月号特集「世界で負けない!法務の国際水準を考える」と同じくBLJ11月号Topics「従来型法務マネージャーの危機」の2つの記事を読んでぼんやり考えたことを。

 前者はMETIの例の「国際的競争力強化に向けた日本企業の法務機能の(略)」報告書をお題に、報告書に関わった当事者も含む執筆者から成る特集記事で、法務部門の「あるべき姿」「ありたい姿」を揃えたもの。しかしそのような姿を明確にしていけば当然現実との「ギャップ」も明らかになります。自分は所属している組織と報告書の内容とがかけ離れているのであくまで「企業法務に関するいち意見」として読みました。これが法務担当者の「理想を追い求める」一面とすれば、後者は現実に法務部門の実務を預かるマネージャーの肉声。あるがままの姿だと思いました。
 
 従来型マネージャーの危機、というのは古くて新しい課題で法務マネージャーに限った話ではありません。自分が当時所属した企業グループで、「従来型マネジメントからの脱却」という名目でマネジメント研修カリキュラムの作成と講師に携わったのはもう15、6年も前のことになります。組織のフラット化、プロジェクトマネジメントの増加を背景に上意下達式のマネジメントからの脱却というのがテーマで、異なるバックグラウンド、キャリアを持つメンバーをいかにマネジメントして組織の成果を最大化するにはどうするかというような内容でした。
 今30代後半以降の法務マネージャーが置かれている状況を一般化するのは難しいと思いますが共通項となるのは人材マネジメントではないでしょうか。かつての「学部卒採用、長年鍛えて一人前の企業法務担当者に育て上げる」といったマネジメントで済んだのが、今後は有資格者または法科大学院出身者、(法)学部卒といった多様な人材それぞれに合わせたマネジメントが必要となるでしょう。30代半ばから40代前半までに法律専門業務の向上とは別の能力を身につけるというのは容易なことではないと思います。(「フルフラットな組織」でマネージャーという存在が固定されていなくても、事案ごとのリーダーかあるいは事務局、世話役という役割だとしても同様でしょう)
 前述の研修講師をしていたときに、部下・メンバーの育成について良し悪しはともかく熱を持っていたのは事業系、販売系のマネージャー(候補含む)で、管理部門や研究部門など専門職の方の熱の低さが気になりました。この雑文をお読みの法務マネージャー候補者の方はいかがでしょうか。

  部外者から法務に異動した身としては、最近の話題には色々思うことはあるのですが今日はとりあえずここまで。
 

 


 

経営幹部にも読ませよう 「中小企業買収の法務」

 資本や企業の形が数回変わったとはいえ、業歴そのものが半世紀を超えるとパートナーシップというにはオーバーだが共存共栄を図ってきた業務委託先企業の数もそれなりになります。そのなかにはパートナー関係を築く過程で持分法適用会社になった企業、全く資本関係を持たずにきた企業もあります。半世紀という時の流れとは酷なもので、着実に業容を拡大し、あろうことかこちらに対して株を手放せといってくるような会社がある一方、何とか息をしているだけでカネもヒト(後継者)も調達する力が残っていないという会社も現れてきます。

 投資、融資すべきか、それに伴い人(役員)も派遣するか?いや出せるのか?出していいよな?法務担当者君、なんか知恵出せ!
 
 こんな「さあ、どうしよう」という状況になったときの道標となるべく、年末法務カレンダー企画や阿佐ヶ谷LT企画でもおなじみの柴田堅太郎弁護士が「中小企業の買収法務」を出版されました。文字通り「道標」となる書籍だと思います。かつての買収対象会社の法務担当者がいうのだから間違いありません。

 現在の勤務先でいうと前半の「事業承継M&A」が関わりがありそうなのですが、以前持分法適用外会社の株主総会議案をみて立ちくらみがしたことを思い出したくらい「中小企業あるある」事例が載っています。
 オーナー系というか伝統的な中小企業は本当に呆れるぐらい税理士のいうことが全てで、弁護士どころか司法書士ともあまり付き合いがない会社が多く、あったとしても税理士を介してのもの。その税理士がちゃんと導いてくれていればよいのですがそうでないこともあります。不完全な状態が累々と重なった末に「事業承継先を探す羽目に」というのはそんなに珍しい話ではないと思います。(詳しくは書けないのですが実感としてあります)

 冒頭書きましたように事業環境の変化から外出ししていた子会社や、持分法適用、業務委託先、フランチャイズ化していた中小企業等を買収、買収までいかなくても出資して傘下に収めるといったことを検討する機会があるかもしれません。法務担当者は当然ですが、プレゼンだけなら格好いい経営企画部門にも、中小企業買収の実態を理解してもらうためにも読ませたい1冊です。

 ベンチャー投資なぞ夢のまた夢なので前半に絞ったエントリーとしました。悪しからず。


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