企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


彼の名は? 相談役・顧問 ビジネス法務2017年12月号(1)

 ビジ法2017年12月号から。
 特集2「 相談役・顧問制度の見直し」

 勤務先はCG報告書開示制度に直接対応しなければならない企業ではありませんが、完全子会社の身からするとまるで無関係ともいえず、雑感をメモ。

 勤務先が上場企業のノンコア事業部→分社:上場企業完全子会社→売却:投資ファンド傘下→上場企業完全子会社 という変遷を辿っているなかで、相談役・顧問という立場についた人物を何人も見かけてきました。創業者でもなくサラリーマン社長が相談役に就くということになんとなく違和感を抱きつつ、まあ大企業というのはそういうものだと思っていましたが、会社の姿が変わっていくにつれて顧問という肩書や、顧問ではないけれどもなんだろうな?という立場の人間が入れ替わり立ち替わりということが増えました。親会社出身、取引先の紹介、金融機関等との関係、理由はともあれ、気がつくとデスクがありそして年配の方が座っている。誰、あの人? 今度来た顧問らしいよ、という按配。そしてまた気がつくといなくなっているという。
 登記に関わることではないので関心が低いということではありませんが、何をもって相談役とするのか顧問とするのか厳密に確認したことはありません。親会社から「彼と顧問契約を結んで」といわれれば、「承知致しました」としかいえませんしね。相談役・顧問の数だけ事情があるというところでしょうか。
 
 それはともかく今回の開示制度について。
 顧問については、経営トップではなく取締役から顧問に就くパターンと冒頭にように諸事情により外から入ってくる顧問というパターン、まだ会社によっては他のパターンがあるかもしれません。これらの「顧問」は今回の開示対象の範囲外ですから、開示情報からだけでは個社の相談役・顧問制度のすべてが可視化されるとはいえませんね。
 そもそも個社の事情の塊のような制度、同じセクターの企業情報を並べ相談役・顧問制度の項目を見て何を評価するというのでしょうか。報酬や任期といったわかりやすい項目だけが一人歩き、週刊なんとか経済のネタになるだけ、なんてことにならないとよいのですが。
  

法務担当者は渉外担当者に転身できるか 2

 えー、不定期・連載エントリーです。
 自分のキャリア整理のような面があり若い法務担当者の参考になるのかわかりません。

 20年ほど前、まだ自分が営業担当者の頃ですが、一時期プロジェクト的に「官需市場」を担当したことがあります。といっても大掛かりなものでなく当時の部門長の判断で立ち上げたもので、補助金行政によって潤う市場を取り込もうにしても、関連法や制度をしっかり理解している、理解しようとする人間がいないことには話にならないということで、官需営業の表とそうでない部分に通じているベテランと、若手の中では官需営業の「いろは」の「い」から「ろ」ぐらいの理解はあるだろうということで自分とが組まされました。この仕事は営業ではなくて経営や事業企画部門の仕事じゃないのかと思ったのですが、「情報とりも営業の仕事だ」のなんのとそんな理由。ともあれ営業として受注高ノルマを抱えつつ、霞ヶ関や県庁界隈をうろうろする日々を過ごしたのでした。

 役所を回るといっても、何の実績もない企業の担当者が「こんち、これまた」で役所の担当官と話ができるわけはありません。ベテランが築いてきた「伝手」を頼るにしても予備知識なしでは、さすがに舐められる。何から始めるか。公共事業として金が動く以上「予算」の理解からだろうと、そこから始めたのでした。
 こんな作業でした。
  1. 霞が関の官庁の資料館や図書館を回る。
  2. 予算案や関連する書類を探して閲覧する。
  3. コピー可能な資料はコピーする。
  4. 販売されている資料は購入する。
  5. 資料を読み込んで、訪問する部署や確認事項を整理する。
  6. 所管や関連部署を訪ねて面談する。
 単年度の予算資料を読んでもわからないものです。何に基づいて予算付けがされているのか、予算資料だけでなく、基本計画やマスタープラン、議会資料といった文献を遡って読んでいるうちに、次第に資料で使われている語句(いわゆる役所言葉も含む)、「官」なりの思惑とそのための理屈が分かってきます。3年分くらい予算資料を読むとある事業について、線が繋がるという感じでしょうか。
(もっとも、これは20年前の話です。上記の1から4は、デスクに座ったまま官庁・自治体のホームページを一巡するだけで大体のものは得られるでしょう。まったく便利な時代になったものです。)

 役所を回るといっても、すべてアポイントを取ってからというものばかりではありませんし、時間をもらったといっても1時間ももらえるわけではありません。短い時間でどれだけのことを聞けるか、あるいは本当に聞きたいことを1つに絞るというのも重要で、その点はベテランの上司に教え込まれました。
「いいか、決め台詞は『教えてください』。民間企業の人間から教えてくださいといわれて断わる役所の人間はいないぞ。」 本当かいなと思いながら時間を作ってはぐるぐると役所を回っていたのでした。

 本来の営業の仕事かどうかは別にして数多の文献を読み込み分析、要約し、次の行動を何パターンか考える、という経験が多少なりとも現在の企業法務の仕事に役立っているかもしれません。「官」の思惑や理屈を読む、という癖がついたのもプラスかなとも思っています。
 
 では、そんな過去の営業経験といくばくかの法務経験をもって、官庁相手の渉外業務につけるかというとどうか。もちろん、それで十分だという方がいても異論はありませんが、もっていたほうが良い経験として業界団体の活動があります。
 上記の官需営業経験を通じて得たものはありますが、結局は自分の営業数字のためだけのものです。自分が渉外という仕事を目の当たりにしたのは、販売から事業企画部門に異動してからのことですが、それについてはまた不定期に。

 参考にならないかなあ、やっぱり。
   

世に隠蔽の種は尽きまじ 「大惨事と情報隠蔽」(草思社)

 あまりきついことを書くとブーメランとなるかもしれないので少し弱気な製造業勤めです。

 残暑厳しい初秋に書店に平積みされた書籍に「大惨事と情報隠蔽」(草思社:D・チェルノフ&D・ソネット)があります。
 自動車メーカーと鉄鋼メーカーの「不適切な行為」が五月雨式に明るみになる→何回も謝罪するという最悪の流れを辿っていますが、これらの事案が発覚する直前に本書が刊行されたのは何かの前兆だったのでしょうか。原書が2016年発刊のようでですから結構なスピードで翻訳版が出たのではないでしょうか。
 著者はチューリッヒ工科大学の企業家リスク講座に所属する広報や金融学の研究者で、リーガルの人ではありません。

 本書は
 第1部 リスク情報隠蔽はなぜ問題か
 第2部 リスク情報隠蔽の事例
 第3部 情報隠蔽・歪曲の原因
 第4部 隠蔽が進行中の事例
 第5部 リスク情報管理の成功例
 の5部構成となっています。
 第2部の事例は工業部門、金融部門、軍事・社会・自然災害、小売製造業 と広い範囲から、時期としては第二次大戦のソ連赤軍のものから21世紀のエンロン事件、サブプライム住宅ローン危機、福島第一原発などまだ記憶に新しく、事案としては終わっていないものまで20以上の事例が挙げられています。(日本語版出版にあたってフォルクスワーゲン社のディーゼルエンジン排出ガス不正が加えられたとのことです。)本書の版が重ねられるとしたら、間違いなく今般の自動車メーカー、鉄鋼メーカーの事例も加えられるかもしれません。

 第3部は事例の分析と統計学上の用語を用いて情報隠蔽の原因を分類しています。やや新鮮味がないと思う向きもあるかもしれませんが、それは不祥事は同じ原因で繰り返されるということの裏返しでもあります。これだけ企業不祥事が明らかになる時代であってもなぜ企業人は学べないのかという問いを突きつけられます。そして、「わかっていること」を本当に「実行すること」の難しさを痛感します。

リスクマネジメントというのは景気がよすぎるときには巨額の利益を邪魔するものとみなされ、危機的状況にあるときには省みるひまがないということである。(本書456ページ)

 件の2社に限らず、法務、監査、コンプラ担当者は情報隠蔽にどのように立ち向かっていくか、重い宿題です。




 



 
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