企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


談合コンプライアンスの行方

 「談合コンプライアンス」は先月号のビジネス法務の第2特集記事。今頃取り上げるのもなんだという気がしないでもないですが、会務に携わっている事業者団体が「競争法コンプライアンス」なる宣言を定めたことや大手ゼネコンが改正独占禁止法遵守プログラムを公表したこともあるので書き留めておこうと思った次第。

 談合というと建設業界隈の問題というイメージを抱いている人もいるかと思いますが、必ずしもそうとはいえません。土木工事に関わる材料メーカーの談合も何年かおきに報道されますし、フィルム、ラップなどの樹脂製品でもカルテル行為を摘発されたことがあります。それでもなお談合行為がなくならないのはなぜでしょう。

 件のビジ法の記事「なぜ談合はなくならないのか」(TMI:樋口陽介弁護士)概ね書かれていることはわかるのですが、自分の経験から引っかかったのが企業内部要因として上命下服を挙げていたところ。
談合に関わっているベテラン担当者が「業界のしきたり」をよく知らない上司を取り込んでいく、というパターンもあったような。公共事業は人の繋がりがものをいう部分があるので、公共事業一筋のような担当者がいます。受注案件があらかじめ計算できる「公共事業」は上司にとっても心強いし、担当者もそれを承知しているので(以下省略)
 独占禁止法といえば、ということで池田毅弁護士が「事例でみる正当な営業活動とカルテルのボーダーライン」はさすが痛いところというか痒いところに手が届いているという感想です。
 大手ゼネコンの独禁法遵守プログラムや宣言が何となく「べからず論」のほうに偏り(偏らざるをえないというのはわかりますが)、もし他社も追随するようなことになると自分などの古い人間は「海の家事件」のあとのCSR・コンプラブームを思い出します。
 「べからず」では結果として談合がなくなっていません。
 どうしたものですかね。 


  

ピンクのネクタイ

 たどり着くところまで行かないと何がどうなるかわからない日大アメフト部の一件。
 話題になったあの記者会見に絞ってのメモ。

 多くの方があちこちで発言しているように、あの記者会見は「危機管理の失敗」「広報の失敗例」として早くも夏以降の法務系・広報系の雑誌の記事として取り扱われるのは間違いないでしょう。そして読者たる我々は思うのです。「こんなヘマはやらかさない。」と。
 しかし書籍で読み、メディアトレーニングを受け、メディア出身者を広報職に据えたとしても、必ずしもうまくことが運ばないのが「事故・不祥事」発生時の広報対応。ここ数年でどれほどの有力企業が記者会見を含む危機対応で失敗したでしょうか。

 事故・不祥事発生時には満足な準備時間など与えられません。トップ、役員、顧客、取引先、株主、業界団体、所管官庁の都合・思惑が入り乱れ追い立てられるものです。それに加え今回は「渦中にある人物」による自前の記者会見(ほぼ告発でしょう)がありました。
 不正の実務と責任を負わされた担当者が「もうこの会社は辞める」「二度とこの仕事はしない」と腹を括り、企業に先んじて顔出しで記者会見したのと同じです。告発者が幸福な未来を手に入れているかという現実を考えるとどうかと思うのですが、事故不祥事発生の際の内部調査やその後の措置次第では自らリスクを増やしてしまうという前例になったと思います。

 あの記者会見についてとやかくいうのは簡単。しかし、法務や広報担当者はそこにとどまってはまずいでしょう。

 過日、まったく偶然ですが本件の利害関係者にあたる人と酒席で一緒になりました。
 謝罪会見にピンクのネクタイをなぜ締めたか、と尋ねるとあれは「スクールカラー」との答え。ああ、そういえばといわれて思い出したのですが、公式の場に出るということであの色のネクタイを締めたのでしょうが「今回はその色は避けましょう」という人間すら周囲にいなかったということなのでしょう。
「わかっていること」「知っていること」と「実行すること」の違いと難しさがわかりますね。


  

されどNDA ふたたび

 普段片田舎にいるもので、NDAバトルとか最近の企業法務の動きに全然ついていけてません。
 ますます備忘録というかボヤキ帳のようになっていますなあ。

 NDAについては以前も書いたのですが、件のイベントの様子をハッシュタグなどで追いながら思うことを。
 ペラっと「これ問題ないと思うんでハンコください。」と渡されるNDAドラフト。よほどのことがない限り、ガツガツと加筆修正を入れることは確かにありません。スピード感をもってビジネスを推し進めなければならない業界・企業の法務担当者と成熟産業の中位あたりで浮き沈みしている自分とでは抱えている課題が当然違います。手間がかからない、重要性も低いが、急かされる頻度(緊急性とはいわない)と物量を考えれば「雛形」で済ませたいという気持ちもわからなくはありません。

「問題ないすよね?」
「確かに条文は問題ないよ。でもさ、相手とこのNDAを交わそうと決めたときのメモとか議事録を作ってお互い交わしてあるの?」
「え、作ってないと思うす。ないとまずいすかね。」

 NDAフォーマットを統一できたとしても、その一歩手前の「一緒にビジネスできるか、検討してみない?」は、当事者がこれからやろうとしている「ビジネス」の数だけあります。NDAに費やす時間を減らす一方で「これからやろうぜ」の段階に法務担当者が関わる時間が増えないとね、と思います。それにはどうすればいいのか、というのは法務担当者各自が一生懸命考えるしかないですよね。
こちらにはフォーマットはないんだよね。


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