企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


子会社はつらいよ 拾い読み Business Law Journal 2017年9月号

 暑いし、大型台風は接近しているし、3年後の東京オリンピックはどんな気候のもとで開催されるのでしょうか。あまり想像したくありませんね。

 NHKの大河ドラマ「女城主直虎」で高橋一生演じる家老の小野但馬守、史実では井伊家乗っ取りをはかった人物として書き残されているようですが本当のところはどうだったか。ドラマの設定では井伊家家老である一方、主家今川から目付役の任務を任されているので、今川家にとってリスクになることを井伊家の面々がやらかそうとすれば今川に報告せざるをえません。そのことで周囲からは煙たがられますし嫌われますし信用されません。いずれ乗っ取りを狙っている人間ならばともかく、そうでない人間だったらただの損な役回りですよね。
 
 実務解説「グループ会社リスク管理のための基本規程の整備と留意点(獨協大 高橋均教授)」。
 平成27年改正会社法、コーポレートガバナンス・コードといった法・制度の要求と実際に子会社発の不祥事が頻発していることから、親会社によるグループ会社管理は厳しくせざるを得ないといったところでしょうか。伝統的な大企業の「純血統グループ会社」だけでなく、買収や事業譲渡(譲受)でグループ化を急いできた企業の中にはグループ会社の管理規程の整備や体制が追いついていないといったところもあるかもしれません。今回の実務解説は、そのような企業のコーポレート部門や法務部門の方にとっては一つの目安になるだろうと思いました。

 自分は現在管理される企業に所属していますので「下から目線」でのコメントになります。
 
 親会社側で規程整備や子会社管理の体制を築いただけでは十分ではありません。
 子会社側にその(忠実な)受け皿となる部門なり担当者を置かないと「管理」業務が回りきりません。上場子会社であれば親会社同様コーポレート部門があるでしょうけれども、非上場の子会社は管理部門はあるものの「コーポレート部門」はないことの方が多いですから子会社の管理部門の誰かが「親会社のグループ会社管理」の業務の一端を担うというのが現実的でしょう。
 この業務、単なる事務連絡にとどまらずリスク発生時の報告業務まで担当すると「こんなことまで報告するのか」「報告はとりあえず保留」といった社内の声と、「重要かそうでないかを子会社が勝手に判断するな」という親会社からの命令に挟まれること間違いなしです。(いやほんとに。)
グループ会社全てに常勤役員を送り込むなり腕利きの人間を出向させることができればよいのですが、人的資源からみて現実的ではないでしょう。板挟みになる本人はしんどいけれども子会社内の目付役を育成するのもグループ会社管理の要点ではないかと思った次第。
 しかしそうであれば監査役の補助使用人のように、親会社のグループ管理業務のための補助使用人という立場でもないと子会社側の担当者がいつか詰んでしまうような気もします。

 ではでは。


 



  

拾い読み ビジネス法務 2017年9月号

 体調不良がなかなか完治しません。これも加齢ですかね。

 先日のことですが、営業担当者からポンと回ってきた販売先からの取引基本契約署のチェック依頼。
さっそく「瑕疵担保責任条項」が落ち、「契約不適合条項」が設けられていました。法に詳しくない日頃やんちゃな営業担当者ですら「瑕疵担保責任」という言葉には敏感である我が業界、それが契約書にないことに気がつかなかったのか、なかったからいいやと思ったのか何の質問もないということは契約書を自分では読んでいないということがわかります。いずれとっちめようと思いつつ、それはともかくどのように民法改正を社内に浸透させていこうかと思うとやや重い気分になるのでした。
 ビジ法9月号の特集「ここから変える・始める民法改正への準備と対応」。もはや民法改正は語り尽くされた、あとは取引現場への落とし込みのみということか、ひな型改正や約款改正の記事が並びます。冒頭、川井信之弁護士が民法改正の全体像と対応モデルスケジュールをさっくり書かれていますが 、すでに2017年も半分を過ぎていますから時間がありそうでないということがわかりますね(汗)
 今自分のいる業界は非常に裾野が広く、また「業界」と一言でいっても様々な業種が関わっているので、元請の業界はじめいくつもの業界団体が契約書のモデルひな型をいじることが予想できます。それらがまとまり隅々まで伝わる頃には既に施行されているのではないかと思ったり、基本契約書の巻き直し、再締結ともなると印紙税はどのくらいかかるか、印紙税の節約にはどうすればよいのかとケチくさいことを考えたりしたのですが、まずは自分の現在地を反省して打つべき手を打つということからかなと思ったのでした。

 第2特集の「シェアリングエコノミーの法規制」
 今の自分が棲む業界・業務には関わってくるかというと「民泊」ですね。
 日本の住環境をあまり知らない不特定多数の外国人が賃貸を含む日本の住宅に1日以上暮らすことを想定すると色々と起こりそうです。キッチン・バス・サニタリーなど水回りのトラブルが目に浮かびます。
コンドミニアム型のリゾートホテルの客室にも同様の設備はあると思いますが、毎日施設管理を行なっていますし禁止事項など宿泊約款に記載されていたり客室に警告表示がありますが、東京オリンピックまでの短期間で民泊事業者がそこまで手が回るか疑問。設備の取扱説明書なんて一般の人でもきちんと保管しているかわかりませんのでまずはそのあたりの取り揃えや翻訳版の準備。築年数の経過した住宅では設備などのメーカー保証期間も過ぎている。機器の故障やトラブル(絶対誤使用はある)の際の費用負担は誰に求めるのか、住宅内で事故があった場合の責任は民泊事業者が負うのか、建物所有者も負うことになるのか。設備の製造事業者は、過去に製品を納入した住宅等が民泊施設に転用されても知りようがないので故障などの対応について苦慮することになるのではないかと懸念を抱くのでした。





 

運が尽きさせ給ひて  武田氏滅亡

 いつも以上に法務とは関係ないエントリです。(だってBLJが届いていないんだもの)

 思うところあって「武田氏滅亡」(平山優著 角川選書)を読みました。 
 武田勝頼というと、名門武田家の家督を継いだもののわずか10年余りで滅亡させてしまった「残念な」当主というイメージが強いですよね。NHK大河ドラマをはじめ歴史ものは織田・豊臣・徳川側の視点のものが多いせいか、信玄亡き後の武田家の描かれ方は長篠の戦いで大敗するシーンと、天目山でわずかな手勢とともに自刃するシーンぐらい。昨年の「真田丸」でようやく最後の姿が(フィクションとはいえ)きちんと描かれていました。(少なくとも自分の記憶では)その「真田丸」の時代考証をされていたのが、平山優氏です。
 信玄の死から武田氏滅亡までの10年弱を可能な限りの文献からこれでもかというくらいに丹念に追いかけています。 執念といったほうが良いかもしれません。その結果見えてくるのは、武田勝頼はただ家を潰したバカぼんではなくて、凄まじい速さで情勢が変わる関東甲信越、駿河地域で必死にサバイバルしようとしていた姿です。ある局面ごとに勝頼がとった選択が結果として武田家の世評を貶め、家臣や領民の離反につながったといえます。しかし家督継承直後の長篠の戦いで主要な人材・兵力を失ったなかで打てる手は限られていたはずで、北条、上杉、織田、徳川といった勢力と対峙するのは至難の状況だったのではないでしょうか。考えられる手は打ったものの、タイミングのわずかなズレで、状況を好転させることができなかったのでしょう。「運がなかった」ということでしょうか。武田氏の滅亡から3ヶ月も経たないうちに本能寺の変が起きていることを考えるとなんともいえませんね。

 現代のビジネス環境に置き換えてみるとどうなるか。
 本来子会社の社長でちょうど良かったのが、図らずもグループトップに就任せざるを得なかった。本社に腹心の部下がいないので子会社から部下を引き連れていったものの、本社生え抜きとついに折り合えなかった。先代の社長が業績を伸ばしてきた環境とは一変し、その結果資本を失い、人材も失った。やむを得ない状況だったとはいえ、先代から築いてきた企業提携関係を終わらせたことで相手先だけでなく業界からの評価も悪化した。重要だが不振にあえぐ事業のテコ入れが財務・人員の都合から十分できず、当該部門の社員を見捨てることになった…経営者として必死に取り組んできたはずなのに。
 何か心が痛くなってきますね。


「運が尽きさせ給ひて」というのは「三河物語」の中で織田信長が勝頼の首級をあらためた時に口にした言葉として記録されているそうです。このことは信長が武田氏の終焉に同情したのだと著者は書いています。真実はわかりませんが、名門があっけなく滅ぶ姿を目の当たりにして信長も感じるものがあったのかもしれませんね。

 名門が滅んでいく過程というのは、もっと研究されていいと思いますよ。


 
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