企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


ジュリスト#1501 自動運転と民事責任 から

 ようやく今年最初のエントリー。

 久々にジュリストの特集から。

 勤務先では営業担当者一人につき1台、公用車を使用させていますので、毎日数百台の公用車が日本中を走り回っています。 そんなわけで交通事故リスクはつきもの。毎月ぶつけました、ぶつけられました、自損しましたという報告を何件か受けます。幸い重大な人身事故というものはないものの、頭の痛い問題であることには変わりません。
 公用車が全て「自動運転」に切り替われば、従業員による自動車事故はゼロになるのか、運行管理責任、使用者責任といったものを考えなくても良くなるのか、そのあたりが気になるところなのですが。

 自動運転というほどでなくても、すでに自動車の大部分はソフトウェア化」しています。吸排気・燃焼系はソフトウェアにより制御されていますので、走り屋系が手を出す「チューンナップ」はまずソフトウェアの書き換えなのですよね。ソフトウェア化と同時にブラックボックス化も進んでいて、ほとんどの自動車はボンネットを開けてもユーザーが自ら整備、点検できる箇所は非常に限られています。オイルチェックすらユーザー自らできないようになっている某高級車もあると聞いたことがあります。

 運転も公道での運行も全てソフトウェア・ネットワーク化した自動車に委ねるときいたときにまず思ったのは「機械は壊れるものだし、ソフトウェアはバグが付きもの」。事故発生の際の責任問題はどうなるのだろうと。今回のジュリストの特集は一括りに報道されイメージづけされそうな「自動運転技術」について主に「民事責任」の視点からの論稿で、公用車を数百台抱える企業のリスク担当者にとっても、いち個人ドライバーとしても非常に面白いものでした。 

 自動運転技術が普及し企業の公用車全てを新型の自動車に変えた場合には、現在発生しているようなドライバーのうっかりミスによる自動車事故はおそらく激減すると思います。仮に事故があったとしても、ソフトウェアやネットワークに起因するものであればドライバー(従業員)や企業の使用者責任も問われることもなくなるでしょう。道交法上の「運行管理責任者」の役割も変わるかもしれません。
ただあくまでソフトウェアやネットワークのバグ、というものを自動車メーカー、ソフトウェア、運行システム側が認めるという前提です。業務システムのトラブルでもこの点についてはなかなか決着がつかないことがありますから、そうそう簡単な話ではないだろうという気もします。
 バグ発生を受けて自動車メーカーやソフトウェアメーカーが修正ブログラムを配信したとしても、ユーザーが確実にアップデートしなかったことが原因で発生した事故の場合はどうなのか。公用車であれば使用している企業の責任になるのか。公用車がリースの場合は自動車リース会社の責任になるのか、懸念事項をあげればきりがなさそうです。
人が自動車を使用する、運転するということについて、自動車産業関係者(ユーザー含む)に従来以上の手間と負荷がかかるかもしれませんね。

 それと、運転技術・免許の点。
自動運転や自動運行が普及したとしても、不測の事態は起こるもの。不測の事態に対応する場合を考えると、人の運転技術についてはより高度なものが求められるのではないでしょうかね。AT限定免許のように「自動運転限定」免許とはできないと思います。

 10数年前か、自動運転・運行システムが確立した近未来社会で、運行システムのトラブルやシステム破壊という犯罪に対して、主人公たちが1970年代のスーパー7、ロータス・ヨーロッパ、ランチア・ストラトスといったハンドリング命のクルマを走らせて解決に当たるというアニメがありました。なんか現実味を帯びてきましたね。

 2気筒、MT車をバタバタ走らせながら思ったことをつらつらと。

 遅くなりましたが本年もよろしくお付き合いくださいますようお願いいたします。



通過  どこから、どこへ?

 更新もままならず、大つごもり。
 秋の終わり頃に引いた風邪がぐずぐずと長引き、クリスマス連休前についに発熱、ダウンしてしまいました。 体力が落ちると、当然ながら頭の方の働きも落ちるもの(いや元気な時もそんなに働いていないか)

 発熱中に、法務異動10年を迎え、そして通過しました。
 例年になく白熱した#legalACの初日の@kataxさんの有資格・無資格法務のキャリア論ですが、無資格法務にも何通りかに分かれると思います。ざっくり分けてしまうと法曹を目指したが武運に恵まれず企業勤め・法務部員に身を落ち着けた向きと法曹を目指したわけでも企業法務を志望したわけでもないが異動の結果として法務担当者に就いている向き。自分は後者で、しかも40を過ぎてからの異動でした。キャリアチェンジというものではなく、空いたポストに「そういえば法学部出身だったね」程度の理由での異動。大した引き継ぎもなく、当時は勝手に隠居を決め込んだものです。
 皮肉なことに異動後にトップ交代や大掛かりなリコールや株式譲渡といった応用編の事件(イベント)が続きました。企業法務としての基礎体力のない自分にとっては劇薬を注入されて走らされたようなものです。一方で「劇薬」があったからこその今の姿だとも思うことがあります。あのまま何もなければどんな法務担当者になっていたでしょうか。想像がつきません。

 法務担当者として遅いスタートを切った自分にとってIPOは年齢的にもキャリアを築く最後のチャンスとどこかで決めつけていました。それが潰えてはや4年。
 バックオフィスの仕事に徹しつまらないだの面白いだのいわず、前線を支えているつもりではあります。しかしどこか次の劇薬を求めている自分がいるようで、年齢と体力を考えろといいきかせ、そもそも何のキャリアもないだろうと空を仰ぐ…
 
 通過点とは目指すゴールが定まっていてこそのもの。
 では自分にとってのゴールとは?
 
 舵も舵を操る綱を失った酔いどれ船、などとうそぶいている場合ではないですがねえ。



着地点  #legalAC

  連休前日の夕刻、オフィスの小会議室。人事部長が処分通知を読み上げている。
ほどなく「彼」が退室してきた。こわばり、蒼ざめた表情。
彼はどのような最後の弁明をするだろうか。数ヶ月に渡った調査の日々を思い出してみる。
 ー 連休明け、オフィスに届いたのは、「彼」の代理人からの通知書だった。

 従業員の数が1,000人を超えると残念ながら一定の割合で不祥事が発生してしまいます。当事者に対する処分については事案の性格、内容、会社に与えた損害の規模などを就業規則の規定に当てはめ検討するのですが、懲戒解雇処分まで検討しなければならないケースはかなり時間と神経を費やします。非は当事者にあるといっても人生を左右させてしまうほどの処分です。慎重に検討しなければなりませんが、かかわる法務担当者の肉体的・精神的な負荷も決して軽くはありません。
まず、なぜ軽くないのかということについて。(自戒も含めて)

1.バイアスとの戦い
 その企業での勤務期間が長ければ、よく知っている従業員が「処分対象者」として目の前に現れることがあるかもしれません。法務担当者といえど生身の人間。「彼に限ってそんなことをするはずはない。」「彼はいつかこういうことをやるかもしれないと思っていた。」「裏切られた。許せない。」といった感情が瞬間的に渦巻いたとしても誰が責められようか、とは思います。しかしあくまで「瞬間的」でなければなりません。裏付け調査を進めるときに法務担当者が特別な感情をもつことは調査を誤った方向に導きかねません。どんなに親しかった従業員といえど処分対象者として現れた以上、もはや自分の知らない人間として接する「思い切り」が必要でしょう。

2.勘違いとの戦い
 法務・コンプラ担当者は正義の味方でも裁判官でもなんでもありません。稀に勘違いしているような人がいますが、まずは処分検討調査のための事実の積み重ねに徹することです。調査の過程で経営陣から進捗を訊かれたり、法務担当者の意見を求められることがあっても判明した事実の報告に止めるまででしょう。もっとも弁護士を入れた裏付け調査は処分に関する仮説を立てたうえで行うものでしょうけれど、決裁者を含む経営陣に事前に余計な「情報」を持たせないことです。繰り返しますが、法務・コンプラ担当者は勘違いしてはならないのです。

3.社内政治、圧力との戦い
 調査が進展し、当初の処分対象者の他に新たな人物が登場すると別の戦いが生じる場合があります。「Aの処分は仕方ないが、Bには影響が及ばないように」「CもAとあわせて厳しい処分が下せるようにならないか」などなど。善管注意義務違反など役員の進退にかかわるような事実が出てくると、ますます生ぐさくなります。経営陣の面々の思惑や本音を曖昧な笑顔でかわしながら調査の収束を急ぎます。

 さてタイトル、着地点について。

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