2019年10月19日 18:12

 週半ばから工場の内部監査往査。
 経費抑制のおり物理的に通える地域だったので3日間早起きして通う。その反動でどっと眠気に襲われている週末、自分の鼾で転寝から目が覚める始末。
 
 創業の地にあり、業歴は長くかつては売上の筆頭工場の地位にあったが…という組織部門を抱えている企業は多いと思う。上層部、ベテランは往時のことが身に染み付いている、間接部門の中堅以下若手世代は苦しい時期のことしか記憶にない、製造現場は日々の仕事に満足。業績が冴えない製造業には珍しくない姿かもしれない。

 帳票を確認する限りは何の問題もない。しかしそのプロセスを探っていくと何かがある。帳尻合わせだけが上達しているのも「業歴の長い」組織の特色かもしれない。ルールが形骸化したのか、否それ以前にルールが整備されているのか、ダブルスタンダードなのか、いつ始まったのかも定かではない慣習に業務が左右されていないか等雑談交じりに業務実態を聞き取っていく。ときに「実はこうなのです」という告発めいた話を聞くことはある。もちろん鵜呑みにはできない。そのような話が出ること自体を問題視する。

 企業統治、内部統制…ここ20年の間に随分と企業経営は変革を求められているし、実際に変革に取り組んではいる。しかし、企業ガバナンスの手本のように扱われ法律雑誌にその取り組みが記事掲載された企業が不正会計や品質偽装等により手のひら返しされている事例をみると、企業組織の端々にまで「企業統治」なるものを行き渡らせることの難しさを感じる。

 不正・不祥事またはそこまではいかない「不都合」、発覚してみれば現場の「この場所」「この時点」で「気づいていれば」「対応していれば」ということが多い。そしてそれは往々にして各部門で実務を担当する中堅以下社員の業務範囲にある。
 仕事の質は細部に現れる。ではその細部まで誰がどのように行き渡らせるか。
 ここを明確にしていないまま、という組織が実は多いのではないだろうか。
  
 


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2019年10月13日 17:49

 今年の初夏のことになるが昔見知った名前と顔を報道で見た。若い頃見知っていた顔だったが「ついにこの日が来たのか」という何ともいえない気分になった。というのもその人物の逮捕報道だったからである。

 その人物は発注側のキーマン(発注権限者)であった。駆け出しの営業担当者の頃だから、工事現場の元請との折衝は自分が担当し、キーマンへの対応は上司が引き受けていた。当時は30代後半だったか、まだ役付でもないのに相当額の発注権限を握っていて巨大企業は違うのだなと思っていたのだが、裏も癖もある人物で、上司も商社(というかブローカー的存在)を介して対応していた。上司は「お前は関わらなくてもいい」といい、商社の人間も「とかくカネがかかる」と苦笑するような、そんな人物である。仄聞すると社内でとかく噂が浮いては沈むといったことの繰り返しだったようだが、それでも組織から放逐されない何かを身に纏っていたのだろう。
 あれから30年ほどの年月が流れ当時の記憶も薄れかけていたところの報道であった。

 癖のある(かなり抽象的な表現だが)人物というのはどの企業にもいる。もともとそういう類の人間なのか「発注権限」のある業務に長く従事しているうちにそうなるのかはわからないが受注者側をうまくコントロールすることに長けているという点は共通している。そんな人物に仕事ください、何でもいうことは呑みます、手伝います、でもたまには儲けさせてくださいという欲顔丸出しの人間が近づけばいいように利用されるのは明らかである。

 内部統制、コンプライアンスが叫ばれ続けていてもなお企業不祥事が後をたたないのはなぜか。前述のような事案がぼちぼちと発生するのはなぜか。

 最近思うのは業務システム(ITということだけではない)を構築するメンバーや総務・法務などコンプラ系部門の人間が購買や販売といった仕事のうちにある危なかしさを感じる機会が限られているのではないかということ。以前社内不祥事の調査を行った際に、自社の業務システムの諸々が「皆が真面目にルールを守ること」を前提にしていたがゆえに、初めからそれを悪用しようとする人間に対しては脆弱ということがあった。業務システムを考える担当者たちは基本的に真面目で実直なタイプが多いと思うが、自分たちの基準でものを考えるだけでは不十分だろう。幅なのか深みといえばよいのか、優等生的ではない要素を交えて構築していくことが脇のしまった内部統制・コンプラになっていくのではないだろうか。(すごい抽象的で我ながら情けなくなる)



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2019年09月30日 08:00

 珍しく実務と関連の深い書籍の話題を。

 「住宅会社のための建築工事請負約款モデル条項の解説」(匠総合法律事務所編著 日本加除出版)
 建築・住宅業界から一定の評価を得、また影響力もあると思う法律事務所による民法改正に伴う「建築工事請負契約約款」に関する書籍。過日東京木場の木材会館で開催された本著の出版記念セミナーは満席状態だった。
 下請・納品業者の立場でこの手の書籍を購入したりセミナーに参加する理由はいうまでもなく取引の相手方が今後置かれる環境と、下請に対して講じてくるであろう「措置」を測るためである。元請である住宅会社との契約は元請が用意する契約書式を丸呑みせざるを得ない、下請の工事や納品にかかる「瑕疵」が原因のトラブルが生じた場合には元請が発注者との間の契約条項を横滑りさせてくる、元請との間に数段階の流通業者を介した取引であろうとトラブル発生の際に流通業者が「契約当事者」の役割を果たさない等、業界特有の諸々は21世紀になろうが元号が変わろうと依然横たわっている。元請(住宅会社)と関わりの深い法律事務所はどのような「モデル条項」を提案しているのか。

 下請業者の目でチェックしたのは、まず次の2点。
  1. 「瑕疵」から「契約内容不適合」
  2. 「保証期間の定め」
 前者はいうまでもないだろうと思われそうだが、建築工事においては契約内容とは契約書だけではなく、仕様書、特記仕様書や設計図面、施工図、施工詳細図、定例会議議事録などの全てが契約内容になる。また建材、設備機器に関してはカタログやサンプル確認、ショールーム等での仕様決定の場面も「契約内容」としてエビデンスを確実に交わして残すことが後々のトラブル回避につながるだろう。
 後者は、現状では「根拠があるようなないような保証期間」について、消費者契約法第10条とからめての解説。契約約款の保証期間の規定については、品確法の対象範囲以外は1年ないし2年、故意過失がある場合に5年なり10年という期間の規定が多いが、これが最近適格消費者団体の「狙い目」になっているとの警告。ひとたび訴訟提起されれば期日の内容が団体のウェブサイトにアップされることから、住宅会社はレピュテーション悪化を回避するため早々に約款改定で手を打つという状況にあるらしい。改正民法で短期時効がなくなるので保証期間の定めは要注意だろう。製品保証書における保証期間を1年ないし2年としている建材や設備機器メーカーも同様である。設計耐用基準など理論付をしっかりと準備する必要があるだろう。

 さすが建築紛争の実態を踏まえていると納得した条項は
  1. 発注者の協力義務
  2. 発注者のメンテナンス不全
 前者は発注者が仕様を期限まで決めないことで工事遅延が多々生じる実態を踏まえてのこと。後者は、保証書や取扱説明書などで発注者に求められる適切なメンテナンスを怠ったことが原因で「契約不適合」状態が生じた場合は、発注者に修補や損害賠償請求権は認められないというもの。実際、何の手入れもせずにクレームだけは起こすという居住者が多いのであらかじめクギをさす条項。

 本書籍で提案された「モデル条項」が実際に使われるかわかるのはもう少し先のことになるが、前述したように建築・住宅会社だけでなく下請関連事業者も入手・熟読しておくべき1冊と思う。



 
  

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