企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


ようこそ資金決済法ワールドへ

 師走も10日を過ぎ。エントリー更新もせず何をしていたのかというと、単にガス欠です。
11月半ばから監査のための出張やら、詳しくは書けませんが変更登記の事務などが重なり止めは「ギャラがかからないから」と記者説明会の司会役に引っ張り出されるなど。
 ひとつひとつは時間のかかる(変更登記はそうでもないか)ものではありませんが、全く異なる種類の仕事に交互に進めるのは効率が悪く疲れるものです。兼任という名のよろず屋の哀しみですね。

 さて今回のタイトルは、とあるtwitterのフォロワーさんから頂いたリプから。
バタバタとしている合間に販促部門の担当者から「お願い!」と頼まれた仕事がよりにもよって「資金決済法」がらみ。当面自分の業務とは関係の薄い法律だと思って「いつか時間があるときに」と後回しにしていたのですが。
 親会社との事業との関わりが深くなれば、販促部門が親会社が提供しているサービスを活用しようとするのはごく自然な成り行きであり、まあ自分がうっかりしていたということです。
 弱ったなと外出ついでに書店に駆け込み、第二版が刊行されたばかりの「実務解説資金決済法」(商事法務:堀天子著)を買い求めたという次第。
 「ワールド」というからには、一筋縄でいかない世界なのでしょう。本1冊斜め読んだくらいで何がどうなのか語れるわけもなく、降りかかる火の粉をはたきおとすのに専念するよりありません。
 
 #legalACでキャリア論が燃えています。それについてはいろいろと思うこともあるのですが、少なくともいい歳をしたにわか法務の人間が何かしら新しい分野の仕事に関わることは幸福なことなのだろうと思うしかないのでしょうねえ。




拾い読み Business Law Journal 2017年1月号

 月刊誌の時間では、もう年が明けているという。今週半ばは師走ですしね。

 拾い読み、BLJです。
 特集「小さな不祥事を大きくさせない危機管理術」
 組織は人の集まり、十人十色とはいいますが人の数だけ事情がある。不正や違反(うっかり違反を含む)などの不祥事リスクも人の数だけ存在するというもの。とはいえ、各部門部署に法務コンプラ担当を張り付けられるかというとそうもいかない。不祥事ゼロ、あるいは初期消火というのはそうそう容易いものではない、というのが実感としてあります。
  不祥事の芽というか種は、社内のどの部門にも等しく埋まっていると思っています。それに(悪い意味で)水をやり、肥料をくれてやってしまうのが現場のマネジメント。過酷なノルマ、ハラスメント、ディスカウント(無視、無関心)、アンフェアな人事評価、緩いチェック能力などなど。いくつか「小さな不祥事(=事件にはならないという意味)」の処理に関わりましたが、「なぜここで現場で手を打てなかったか」とため息をつくこと数知れず。どうだったのと尋ねると「全く気づきませんでした」と肩を落とすマネージャー。
 「気づけ!」といったところで、マネージャーに不祥事の芽に気づくだけの知識も経験もなければ酷というもの。ではマネージャー向けに不祥事防止マニュアルやガイドラインを準備してコンプライアンス教育を充実させれば不祥事は防げるのでしょうか。

 「エモーショナルコンプライアンスの理論と実践」連載第2回め。
今回も序章の続きという印象で、特集記事とは直接にはつながる内容ではありません(当然ですよね)。しかしなぜコンプライアンスが定着しないのか、という点でうなずけるのが「べき論」的コンプラ。
 勤務先もそうなのですが、総会屋、海の家事件あたりの反省からコンプラをスタートさせているので事務局が唱える「べき」「べからず」的色彩が強く、実務現場の人に考えてもらう余地がありません。「べからず集」に含まれていなければ「やってもいいのかな」と捉えらかねない部分がありますし、素直に守られても「べき「べからず」とした趣旨や背景を理解してもらわなければ形式化しやがて形骸化するだけ。
 そんなわけで勤務先でもコンプライアンスの運営を見直すことにしたのですがなかなか難しいものです。次回の展開を待ちます。

 取り急ぎこんなところで。






 

  

ヘルプライン

 ヘルプラインか、それとも相互監視になってしまうのだろうかという話。

 過日、取引先(といっても、現在どの部門でどれほどの取引があるのか不明)から、代表者宛に1通の案内が届きました。いつものように「見ておいて」と封も切らずに渡されたのですが(ノールックパスと呼んでいます)、その中身がその取引先の「企業グループ取引先企業倫理ヘルプライン制度の設置」でした。

 不動産・建設業界は非常に裾野の広い業界で、取引先と一口にいっても大企業から個人(一人親方)まで数えれば千を超える数になっても不思議ではありません。支払口座のあるところに全部案内を郵送したとしたら、それだけでどれほどのコストがかかったことやら。
 請負(うけおい)と書いて「うけまけ」と読む業界と散々いわれていますが、案内の文面には「運命共同体」としての取引先企業の懸念の解消や解決に繋げる、一層の共存共栄を図るといった趣旨が書かれていました。
 建設業界はここのところ「例の傾いたマンション」事件のように、施工データの偽装や施工不良の隠蔽などとかく良くない話題が多かったのですが、その原因を昔ながらの「請け負け」の風土に求めるのはいたしかたないところ。元請企業の法務・コンプライアンス部門としては自社の無理強いにより施工不良が発生し、結果として企業価値を毀損することは回避したい、早期にその芽を摘んでおきたいと通報制度を立ち上げるのは必然の成り行きなのかもしれません。
 気になる点はいくつか。裾野の広いこの業界、数次にわたる請負では何も元請だけが諸々の無理強いの当事者とは限りません。中間の業者が当事者の場合もあります。このような場合でも相談や通報が入れば法務・コンプラ部門が調査や是正に入るのか。現場の工程に影響が出てまでもやるのかという点。もう一つはよくも悪くも「現場仲間」、他の職種のミス、手抜きを積極的に通報するだろうかという点。もっとも諸々のことは織り込んだうえでスタートさせたのでしょう。
 来年以降、この企業のCSRレポートにでもこの制度を発足したことや利用状況が公表されることになるでしょう。請け負けの風土を変える制度になるのか、今後が非常に気になります。

 (企業名を明記しようかと思いましたが、本制度開始のリリース等がないようでしたので伏せたままにしました)


 
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