企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


埋草:おじさんが望んだ(はずの)未来

 なんとかテック流行りの近頃。
 #legal AC 界隈でもテックネタが散見されますし、呟き界隈でもハンコや紙の契約書の廃絶を唱えるものが目立ちます。そして共通するのがテクノロジーの行方に立ちはだかるのが決まって中高年世代、おじさん達だというのですが、本当におじさん達は立ちはだろうとしているのでしょうか。
 
 職場で各個人にパソコンが行き渡り始めた90年代中頃に自分は既に30代を迎えていましたが、ワープロや簡単な表計算ソフトは使用していましたのでそれほど抵抗はありませんでした。もっと大変だったのは自分らの上の世代であります。決裁文書は意思の強さは筆圧に現れるといわんばかりの手書きかつカーボンコピー、予実算資料はA3統計用紙に管理職が自ら定規やら何やらでフォーマットを作ったものをコピーしたものにこれまた手書きという時代が長かったものですから、年がら年中「俺のキーボードに『ぬ』がない。」とか「パスワードを忘れた!」と当時のおじさんたちは我々若手の仕事の邪魔をしてくれたものです。おじさん、といってもよく考えたら今の自分よりも5歳から10歳近く年下だったのですが。
 そんなおじさんたちが決まっていうのは、どうせコンピューターを導入するなら「俺が喋ったことをそのまま文書にしてくれればいいのに。」「頼んだデータが自動的に出てくればいいのに。」などと、完全自動化でなければ意味がないといわんばかりのものでした。
 また、荒っぽい営業の職場の人間は煩雑なきめ細かい事務手続きが苦手です。社内文書だろうが社外文書だろうが、社内のあちこちに書類を持って回って判子をもらうという作業が本当に憂鬱なのです。
 大手企業と幸運にも直接契約を交わすことになったものの、印紙の申請やらA2サイズの図面をA4サイズに折りたたんでの袋とじ製本した上でさらに何箇所も綴印やら割印を押す申請書を書く、というようなこともありました。判子は管掌役員や社長印です。総務や文書の人間にも説明が必要です。そしておじさんはいうのです。「なんで判子がいるんだかなあ。」

 時は流れ当時のおじさん達はリタイアし、自分は当時のおじさんの年齢を超えました。
自分がリタイアする前にあの頃のおじさんが望んだことのいくつかがなんとかテックで実現する可能性が高くなってきました。あの頃、おじさん達のぶん投げ下請けで実際手を動かしていた我々が、なんとかテックの行方を遮る理由は見当たらないのです。(なんとかテックの成長・成熟が前提ではありますが)

 必要だが煩雑な業務を楽にしようとすることに反対している中高年とは一体?


 さて、肝心の#legal ACのエントリの下書きすら一文字も書いていない…
 あと5日しかない。



 

拾い読み ビジネス法務 2018年1月号

 東京といえども多摩地方は都内より気温が低いので冷えます。

 ビジ法2018年1月号は「法務組織・キャリアの在り方」。
リーガルテックやらインハウスローヤーやら情報が行き交うなか、ぼんやりと不安に陥る法務担当者の心を捉えるキャッチーな特集ですね。
 法学部出身かどうかは別にして入社以来法務畑を歩いている担当者を対象にした本文と、企業法務を志す学生・若者を対象にしたコラムで構成されています。
 西田弁護士の稿は「生涯法務」というのが前提。年齢的には「円熟期」手前、法務キャリアとしては「修行期」を抜け出したぐらいの年数、こなしてきた仕事は特殊な応用編中心のような自分は「はて、どうしたものか」と思います。何がどう評価されるのか見当がつきません。読んでいてかえって不安に陥りますね。
 一方でこんなことも。先日世間話をした転職エージェントは「若い人にキャリアパスの弊害がでてきて」とこぼしていました。「3年勤めて自分の目標と異なっていたので、とかここでは3年と決めていたので、と簡単にやめてしまうんですよ。どうみても転職できるような実績がついていないのに。」
 自分でよく考えましょうね、ということでこの記事はいいか。

 新連載の「契約が決算書に与える影響」
このあたりがビジ法本来の強みが出せる記事だと思いますね。連載中の「法務部員のための税務知識」と合わせ読むとよいでしょうね。
 今回は財務との連携ですが、個人的には通常の売買契約ではあまりありませんが特別な金額の支払い・受け取り(損害賠償金など)の場合は必ず財務に確認しますし、取締役会の付議事項でも場合によっては財務に先に確認し資料の見直しを行うこともあります。
もっともこれは監査法人による決算監査でけっこう苦しんだ経験からくるもので、得意げに話すものではありません。

 特集2「取引先・協力先中小企業の事業承継対策」
 数年前「会社法務AtoZ」で中小企業を対象にした事業承継を連載していましたが、今回は大手企業による、というもの。協力会社や下請事業者の経営難や後継難はちらほらと耳に入ってきています。むざむざと倒産、廃業させるわけにはいかないのですが、事業承継と優良な協力先企業の囲い込みは表裏一体、自社の経営だけで息が切れている企業では協力先の対策も後手に回り、その結果自社の経営難を招くだろうと寒気が襲ってきました。

 「自動運転社会の法制度設計」まで手が回りませんでした。いずれまた。 



 
 *このエントリーはポエムです。健康のため、ポエムの読みすぎには注意しましょう。

 

拾い読み Business Law Journal 2018年1月号


 BLJ2018年1月号から。
 独禁法の道標3「事業者団体の参加者におけるコンプライアンス」
 個人的に非常に思うことある記事で、というのはよろず諸々の業務についている中で事業者団体の消費者関連の分科会のメンバーというのがあるからです。共同リコールの経験を通じて、消費者関連の問題について業界中位からちょっと下あたりをうろうろしている企業が単独でなんとかできるものではないというのが実感としてあります。時の上司には承諾を得て「渉外の顔」で参加しているのですが、常に「自戒」の意識を抱えていることはいうまでもありません。(いくらその意識を抱えたところで自己矛盾の文字はつきまとうかもしれませんが)まあ、担当を変わればよいことではあるのですがね。


 実務解説「NTT東日本対旭川医大事件」
 自社はユーザーの立場です。とある事情からこの判決は非常に重い気分で受け止めました。早速この記事は早速直接ベンダーの窓口となるIT部門に読んでもらうことにしました。そして、さらにはシステムやら何やら需要家である社内の事業部門、管理部門にも展開するのがモアベターというか、しておくべきだと考えています。

 業務システム等を外部ベンダーに委託する企業がほとんどと思いますが、ベンダーの窓口になるのは社内のIT部門といったところでしょうか。社内すべての人間がシステム開発というものに通じているわけではありませんし、特に中高年以上の幹部社員にITリテラシーを期待しても限界があります。自部門の業務状況も把握できないまま、システム化さえすれば万事OKと思っているレベルの人間もいるでしょう。これはシステム開発の決裁が下りた後には「あとは頼む」とIT部門に「丸投げ」というケースですね。
 一方、社内IT部門が会社のビジネス(製品、役務にとどまらず、商習慣、社内業務のウラオモテ、自社の担当者の業務スキルなど)に通じているとは限りません。「あとは頼む」といわれても本来の「需要家」である事業部門や管理部門から具体的なオーダーが示されなけば「要件」すらまとまりません。
同じ請負形態である建築の世界だと「基本設計」「仕様書」「特記仕様書」などは(設計者に委託するとはいえ)発注主から提示するものですが、要件定義作成も請負業務に含まれるITシステムの世界ではどうなのだろうと思ってはいたのですが、今般の「ユーザーの協力義務違反」の判例で今後風向きが変わるかもしれません。

 システムの業務発注契約にどこまで法務が関与できるかというところですが、業務委託契約書の作成なりレビューまででよしとするのか、その後のプロジェクトまで関与し少なくとも要件定義書まで関与すべきなのか、というところ。
 民法改正を真面目にフォローしていない身でいうのもなんですが、システム開発委託において「契約の内容」とは「要件定義書」が「本丸」ではないかと。そうであれば、IT企業ではない企業の法務担当者もある水準まではシステム系のことも理解しておく必要があると思ったのでした。
 





 


 
 

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