企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


正しい会社の売られ方 幻のIPO3

 間隔が空き過ぎて、書いている本人もなんだか収拾がつかなくなってきた....先を急ごう

 「中期経営計画」については、事業部門に必死になって取り組んでもらうとして、管理部門にのしかかり、頭を悩ませたのは「コーポレート・ガバナンス」の再構築でした。

 もともと上場企業の子会社でしたし、売却された後も大会社・監査役設置・会計監査人設置会社の機関設計は維持していましたので、形としてはこれらは整っていました。しかし、どちらかといえば上から押し付けられたの指示で整えたものでした。どうも実態が追いついていない、よくよく確認したら規則も未整備だった、といったことが次々と判明しました。主幹事証券の公開業務部の担当者からは「どの企業もそうですよ。上場準備をきっかけに見直すんですよ」と諭されたものです。社歴の若い企業でしたら走りながら体制を整えていくことが可能ですが、なまじ社歴が長く実質が多少あやしくても体制は整えていた企業でしたので、社内の各部門から「えー、今あるのじゃだめなの」といった反応がありました。「今あるもの」とは親会社のガバナンスのためのもの、今度は独立した企業の自前のものを構築し(たとえ結果的に「今あるもの」に落ち着いたとしても)運用していく、ということをいかに納得してもらうか。当時はこちらも余裕がなかったので、うまく社内の声に対処できていませんでした。(もう戻れないのですが)
 また上場準備を開始した時期は官製不況(我々の所属する業界にとっては)やリーマンショックの影響を受け、なかなか業績が安定しない時期でしたので、「本当に我々が上場できるのか」と懐疑的な見方の従業員も多かったのも事実です。
 体制構築の考え方や書類の作成方法は主幹事証券、印刷会社などが教えてくれますが、「何のために上場を目指すのか」について準備会社自身がぶれていると、準備作業が「非常につらいやらされ仕事」になってしまいます。
今後悔してもどうにかなるものではないのですが・

 一方、上場準備を巡っては次第に投資ファンドとの間でもすっきりしないことが生じてきました。
それは次回に。

 毎度、散文的ですみません、ひととおり最後まで到達したら見直します。



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正しい会社の売られ方 幻のIPO 2

 続きです。

 「中期経営計画」はどのように作成するのか、ということについては、僕がここに書くまでもなく上場準備実務に関する書籍がありますのでそれらを読んでいただくとして。
 過去に何回か「中期経営計画」を策定したときは、経営改善にコンサルタントを入れたときのほかに数回ありましたが、いずれも上場企業の一部門か完全子会社の時代に作成したものです。計画はきれいに纏まっているが実務への落とし込みが不足という「ありがちな」パターンに陥ったのは、やはり株主、投資家へのコミットメントという意識が十分でなかったのかもしれません。上場企業子会社は資金調達に苦労することがないので無理もないのですが、今度はそうはいきません。
 当初は「えー、また作るの?」という社内の声はありました。しかし独立のためとなればと事業部門の担当者は頭をひねりながらSWOT分析から取り組み、なんだかんだいいながら短期間で纏め上げました。しかし終盤、投資ファンド側が「描け」という将来利益計画とその根拠については疑問を抱かざるをえないことがありました。
 SWOT分析を行い自らの実力値を踏まえた利益計画案、実現可能、というよりも現実的な数値だったがゆえに、投資家の視点からみて「面白くない」「魅力がない」という指摘は確かにその通りでした。しかし、なぜ計画値をつり上げるかといえば、バイアウト時のリターンに尽きます。それもごもっともなのですが、株式譲渡時の価額を上回ろうとするのは日経平均株価の低迷(当時)からみて、ハードルが高く「目標」ではなく「願望」としか思えませんでした。もちろん「願望」は叶えられればよいのですが、勤務先の状況はまだまだ「傷んだ」ままで、大きな願望を抱くところではなかったのです。
 結局中期経営計画は投資ファンドに押し切られた形となりました。こののち主幹事証券公開担当部門とのミーティングがはじまると、当然中期経営計画の根拠や進捗をフォローされました。公開担当部門から「格好いい計画ではなく、まず自分たちがたてた計画どおりに成果を出す企業かどうかをみるのですよ」といわれたときは胃がちくちくしました。

 勤務先の事例は投資ファンドが対象会社と二人三脚で事業再生に取り組むというものです。しかし出口戦略が具体化する時期になったら利害は一致しないとは思っていました。「株式譲渡時の株式価額」が重荷になるだろうと。案の定上場準備にかかる前段の「中期経営計画」策定のプロセスでそれが露になったのでした。(つづく)

                                              
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正しい会社の売られ方 幻のIPO

 「ウチがずっと親会社でいるなんて思っていませんよね?」
 「まさか!おたくだってずっとウチの株式を抱えているつもりもないでしょう?」
 「いや、君じゃなくて他の皆さんがどう思っているかなんですけど」

 投資ファンド傘下になって3年目を迎えたある日のファンドのスタッフと僕との会話です。
メディアの取材に対しては勤務先の株式上場の可能性について言及してきた投資ファンドですが、担当者層で具体的に「出口戦略」のことについて触れてきたのは、このときが初めてだったと思います。
 当時の勤務先の状況といえば、販売子会社の吸収合併や商号変更を行い、苦しい思いをしながら固定費を削減しなんとか業績を維持しようとしていたときですから、「株式上場を目指す」といわれても正直いまひとつなぴんとこない話でした。しかし準備期間をいれて3年はかかる株式上場です。買収してから6年以内に勤務先への投資回収を終わらせたい投資ファンドとしては、3年目で準備開始というのはぎりぎりのタイミングでした。

 いまひとつピンとこないまま、しかし「何から始めるのだ?」という話になります。
勤務先の場合、「中期経営計画」の策定から始めることになりました。
「前にも作ったけれどまた?」社内からこんな反応が返ってきます。
確かに過去数回「中期経営計画」は作成したことはありました。しかし無手勝流で作成したり、完成するとファイリングして以後開かずのファイルになった例がありましたからそんな反応が起こるのはある意味仕方がありません。
難儀なことになるなあと思っていたのですが、ファンドスタッフからの意見もあり中期経営計画作成作業の事務局を引き受けることになりました。そしてこのまま上場準備の事務局まで続けることになるのでした。

とりあえず今回はここまで。


 

 
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