企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


リコール 一番長かった6月 2

【衝撃】

「まさかこんな事が!」「そんなバカな!」ということが起きたとき、人はまずどのようなリアクションを取るでしょうか。
落ち着いて、次々と打ち手を講じることができるでしょうか。法務パーソンとして経営陣に適切な働きかけができるでしょうか。

5年前の6月。
行政当局の指導(怒りか..)のもと、業界団体で共同製品リコールの準備を行っている最中にそれは起こりました。
リコールを実施するにあたり、まず行政当局がプレスリリースを行うということで、対象製品の総出荷台数、その時点での回収率について精査を重ねていました。なんといっても中央省庁が行うリリース内容に間違いがあってはならないからです。

10数年前(1990年代前半)の過去の書類をほじくりかえしていたところ、「昨年、(製品が原因と思われる)火事で死亡事故があったと建物オーナーからきいた」という一文がある書類が見つかりました。
すぐさまその情報はリコール対策の事務局に届いたのですが、ベテラン社員含めてその「死亡事故情報」については初耳でした。またその書類以外、その「死亡事故」に関するものを見つけることはできませんでした。

つまり
・伝聞情報である「死亡事故」の事実確認を行っていない。
・事実確認を行っていないため、事故当時の法令に従った行政当局への「事故報告」を行っていない。
・事故が事実であれば過去の時点において法令違反(事故未報告)を犯している
・事故原因が製品にあるかは別として、亡くなられた方とご遺族への対応をとっていない
と考えざるをえませんでした。

おりしもP工業やM電器産業の不祥事・製品事故が話題になっていた時期です。

文字通り「衝撃」でした。

この情報をどのように業界団体や行政当局に伝えるか、今からどのような対応をとるべきなのか、苦悶の日々が始まりました。


*注:繰り返しお断りしますが、本件は経緯を含めて共同リコール記者会見で公表しています。エントリーの内容は過去の不祥事の内幕を暴露するものではありません。

リコール  一番長かった6月 1

 本来なら「正しい会社の売られ方」を書きすすめたいのですが、5月12日の「番外」で書いたとおり大きな動きがありまして、今後の内容や進行を少し再考することにしました。

 そこで、BLJ7月号で特集企画「クライシス・マネジメント」が組まれたことを受けて、多少悩みは残しつつも5年前に僕が経験したリコール対応について、何回かに分けて書き残そうと思います。
   
 5年も経過すると当時リコール対応に関わった人間も異動や定年退職やらで次々と職場を去り、当時を知る人間は僕を入れてほんの数名となりました。たぶん共同でリコールを実施した他の企業も同様でしょう。
 リコール実施後の製品対策の実施率は、ほぼ100%達成が見えてきています。リコール実施が功を奏した、という見方もできるかもしれません。
 
 しかしそんな見方はできない事情があります。なぜなら勤務先が2件の死亡事故を発生させた事実と、そのうちの1件を長い間埋もれさせてしまっていた失態があるからです。下手をすれば、ガス給湯器メーカーの二の舞になる可能性もあったのです。この危機を回避するために、どれだけの時間を費やしたか。
 5年経過するのを契機に薄れていく自分の記憶を整理するのと、もしこんな体験でも今後のリスクマネジメントに多少なりとも役立てば幸いと思います。


*注記
前述の2件の死亡事故のうち1件の埋もれていた事故については、2006年7月初旬に行った業界団体共同のリコール記者会見の場で公表して謝罪を行いました。このことはTV、新聞等により報道されています。

また今後本件について書く内容は個人的見解であり、勤務先企業の見解を述べるものではないことを予めお断りさせていただきます。
 


 

正しい会社の売られ方 番外

 微妙な事項に触れることもあるので、慎重に(のんびりか)と本シリーズを書いておりましたが、このほど株主である投資ファンドと某上場企業との間で株式譲渡契約が締結されました。5年ぶり、二度目の売却となりますが、今回は投資ファンドのイグジットであり、また上場企業グループの一員になるということで、社内外の反応も前回のときとは異なります。
 本件の法務・広報に関するあれこれは、さすがにこの場で取り上げることはできません。「正しい会社の売られ方」の進行に沿って(本当にのんびりですが)いずれ明かすことになると思います。
 取り急ぎの報告でした。
 
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