企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


正しい会社の売られ方 5の1

「金の切れ目が縁の切れ目」

 独立資本の企業や気鋭のベンチャー企業で働く方には「だから大企業は甘いんだよ」といわれそうですが、企業グループからの分離の過程について書いていきます。

企業グループから切り離すということで、親会社が分科会を設けて解決すべき課題を通告してきました。
ざっというとこんな課題でした。これらの結論は株式譲渡契約のなかにも規定されました。

①不動産の整理
②知的財産権の譲渡
③商号変更
④手形割引サービスの終了
⑤共同購買システムの利用期間の制限
⑥情報システム(IT基盤)の分離
⑦親会社労働組合組織からの労組独立と組合の名称変更
⑧健康保健組合、年金基金からの退会
⑨親会社従業員持株会からの退会
⑩団体保険の取り扱い変更

 当社の売却を発表したあと、親会社の社長はことあるごとに「同じ釜の飯をくった仲間を支援してもらいたい」と社内ではいっていたようですが、実際資本関係が切れるのですから支援といっても限界があります。実務現場では「さっさと縁を切りたいのだな」としか解釈できないような言いようが目立ちました。資本関係が切れるのだから即刻諸々縁を切るところ、それでは大変だろうから猶予期間を設けてあげますということでしたが、それでもほとんどの項目が最長で3年を目途に解消することを求められていました。福利厚生にかかわる⑧⑨⑩のように従業員個人の生活に影響を及ぼす事項もありましたから、従業員から当然とまどい、不平不満の声があがりました。

 経営不振が理由で切り離されることになったのに、③や⑥のように億単位の費用が発生する項目もあり、ますます当社の経営を圧迫するではないか、と腹がたったこともありました
 親会社の法務部長から、「できることは協力するから話をあげてこい」といわれたことだけが唯一の救いでした。(この項、続く)

正しい会社の売られ方 4の3

デューデリの記憶の残骸です。

監査で何を繰り返し確認が入ったものは、将来価値に影響を与えるリスクの把握でした。
主な項目は以下のとおりです。
①許認可取得状況や許認可更新要件の確認
②工場敷地の土壌汚染リスク(化学系の製造業のため)の有無
③訴訟案件、訴訟リスク(知財、PL・消費者関連ほか)の有無
④労務リスクの有無

会社が売買される「商品」になるわけですから念入りに確認されるのはもっともですが、前々回に
書きましたが、②は金融機関との融資関連諸契約にも関連し、その場面においても再び確認を受けました。(こちらはさすがに厳しかったですね)
ともあれ3週間ほどのデューデリは終わったのですが、デューデリを受ける側としては達成感を得られるわけでなく、正直なところ疲労だけが残ったという感じでした。

さて、デューデリの期間後半から並行して親会社とのミーティングが始まりました。
企業グループから離脱するにあたっての諸々の条件の確認です。
次回「金の切れ目が縁の切れ目」です。(予定)

今回は本当に残骸のような内容ですみません。

正しい会社の売られ方 4の2

 ケースによって異なるだろうけれど、デューデリジェンス初日、キックオフはこんな感じでした。

■相手方は30人ぐらい
 買主予定の投資ファンド、 アレンジャーとなる証券会社、法律事務所、監査法人、コンサルティングファーム数社、親会社(目付け役でしょう)
■当社側
 取締役社長、経営管理部門取締役、経理部長、経理課長、社長室長(当時、法務は社長室所属)
 法務担当(自分)の6名
■証券会社から全体スケジュールと作業手順、実施場所(会議室を確保しました)
■監査用チェックリストの配布
■対象会社コンタクトパーソン(要するに我々6名)の紹介
■名刺交換

たしかこんな段取りでした。コンタクトパーソンとして6名出席しましたが、社長や役員がいちいち対応するわけではないので、実際は経理部の部課長と自分の3名が約3週間の期間中、毎日対応に追われることになりましたが。

法務部門が対応する法的監査のチェックリストの内容はといえば、大項目で10項目、中項目として①資料原本提出を要するもの②資料作成依頼するもの③担当役員、担当者または適切な人物へのインタビュー実施 に3分類され、①②③合わせて160項目ほど。
ただし①や②を提出すると、その内容に対する質問項目が新たに追加されるので、3週間でどれだけの資料説明やヒアリングが繰り返されたことやら。毎日監査担当が帰るまで先に帰るわけにもいかず、通常業務が免除されるわけでもありませんでしたから、カオスな1日になる日もありました。事業会社に吸収されるのと異なり、LBOスキームですから、このあと金融機関との金銭消費貸借契約締結が控えているということも監査内容の細かさ(執拗さ)に影響していたと思います。

しかし、当時デューデリにどんな腹積もりで臨むか、正直なところM&Aの経験がない我々は見当がついていなかったのでした。
売主である親会社は、1円でも高く売りたいわけだし、買主側は安く買いたい。我々としては、ファンド傘下になった数年後はバイアウトなりIPOという局面を迎えるわけですから、売値(買値)は抑えたい、しかしまだ子会社の身分で親会社は目を光らせている。
100%子会社だった当時、我々はいわば世間知らずの初心な坊ちゃんだったのです。今にして思えばデューデリを受ける側にも何らかの作戦がとれたのではないかと思うのです。(この項、まだ続く)
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