企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


正しい会社の売られ方8

書き散らした観が否めないので、少し整理します。
ここまでの流れは以下のとおり。

1.10月   
  親会社が勤務先を投資ファンドへの売却方針を発表
2.11月
  デューデリジェンス実施
3.12月   
  親会社・投資ファンド・投資ファンド設立のSPC間で株式譲渡契約
  (企業グループから離脱)
4.翌年1月 
  株式譲渡(親会社⇒SPC)
5.同年3月
  勤務先がSPCを吸収合併  第1クロージング
  この段階での持株比率   
  投資ファンド約85%超、元親会社15%未満 

親会社にしてみれば半年の間に経営不振の子会社を整理することなく売却できたのだから、万々歳だったと思います。会社を潰すとなれば、費用、時間ともにかかりますが買い受けてくれる会社があれば、金になります。あとは買受先が投資ファンドであろうとメーカーであろうと高値で買い受けるほうを選べばよいわけです(こんな単純な理由ばかりではないでしょうけれど)

勤務先は株式譲渡の対象会社の立場にあるので、値付けについて関与することができません。せいぜいデューデリジェンスの際に経営不振に陥った実態を説明する程度です。それだってどのように査定されるかはわかりません。
今回は予め買受先が投資ファンドであることがわかっていましたから、いずれやってくる「出口」を考えれば、あまり高く買ってくれるな、というのが僕個人の正直な希望でした。ええ、ほんとに。

ちなみに冒頭4.の株式譲渡の時期は2008年1月です。
リーマンショックはこの年の秋の出来事です...

正しい会社の売られ方 7の3

(1)吸収合併契約締結の承認
取締役会(2008年1月末)
存続会社:勤務先 消滅会社:合同会社(ファンドの受皿会社)
契約書は会社法第749条に基づく内容。
吸収合併の対価は「吸収合併存続会社の株式」(同条1項2号イ)
⇒合同会社が保有する株式を自己株式取得して、代わりに対価として合同会社の株主(投資ファンド)に自社株を交付します。
これにより投資ファンドの持株比率が株式譲渡契約で規定され金融機関との金銭消費貸借契約で前提条件に規定されたものになるのでした。(投資ファンドが80%台、元親会社が10%台)
吸収合併の効力発生日は3月下旬としました。

(2)臨時株主総会招集
①会社吸収合併契約締結承認 
②定款一部変更案
何を変更するかというと 《公告方法》です。
多くの非上場会社は公告方法を「官報」にしていることと思います。勤務先もそうでした。
吸収合併という組織再編行為を行うので「債権者の異議申立期間(会社法第779条)」を設けるのですが、組織再編の内容と債権者に異議申し立てが可能であることを官報公告と知れている債権者に個別に催告しなければなりません。主だった債権者(サプライヤーさん)だけでも、けっこうな数にのぼります。まず現実的ではありません。
そこで回避策としたのが会社法779条3項の規定です。公告方法が会社法第939条1項2号に定めるところの「日刊新聞紙」であれば、官報と日刊新聞紙で公告を行うことで、個別催告を行わなくてよい、というものです。(司法書士との打合せで確認したのですけどね)ということで定款変更(公告方法)を行うわけです。
ちなみにこの日刊新聞紙は日経・朝日・読売・毎日といった全国紙ではありません。ぎりぎり(といったら失礼か)日刊新聞紙扱いです。
「そんな新聞知らないぞ(重ねて失礼)」という役員もいましたが、手続優先といってスルーしました。

臨時株主総会は2月初旬に開催、官報・日刊新聞紙での公告を2月中旬に実施(催告期間は最低1カ月)、3月下旬に合同会社吸収合併を終えました。

こうして、勤務先の株式譲渡手続は2008年3月下旬にひと段落ついたわけですが、「売られたこと」が本当に響いてくるのは、このあとからでした。

正しい会社の売られ方 7の2

3.2008年1月●日 臨時株主総会
 ・株式譲渡の承認
 ・定款変更案の承認 (株券発行会社、株式譲渡制限の撤廃)
 ・取締役選任
 ・監査役選任
4.同日 直後取締役会
 いうまでもなく
 ・代表取締役、取締役社長選定など
 あわせて、合同会社の連帯保証人となり、金融機関に担保差し入れなければならないので
 ・抵当権設定、質権設定の契約締結の承認

これら株主総会議事録、取締役会議事録、変更後定款の原本証明付き謄本、履歴事項全部証明書、抵当権関係の契約書諸々金融機関に提出する書類作成を経理スタッフと自分のほぼ2名でこなしたのですが、勤務先売却やら自社の財産への抵当権設定の手続をそつなくこなす、という何とも奇妙な時間を過したわけです。

そうこうして株式譲渡の法的な手続は終わり、金融機関との諸々の手続に進みましたが、もうこれについては、金融機関のいうとおり進めるしかなかったということしか憶えていません。書類不備や期限遅延は許されませんでしたから、手続が終わるたびほっとして忘れていったというのが正直なところです。
唯一はっきり憶えているのは以下のエピソード。

金融機関の会議室で、前述の書類の受け渡しのほか、投資ファンドへの株式譲渡(株券の手渡し)を行った際、金融機関の営業マンが記念写真を撮りましょう!と提案し、自分と投資ファンド社長が株券を手に持つ構図で写真に収まることになりました。撮影の瞬間「はい、笑顔で!」と声をかけられましたが、我々が笑えるわけないじゃありませんか、まったく。今も微妙な表情をした自分が写っている画像をこの時の誰かが持っているはずです。

このあと3月に合同会社の吸収合併を行うわけですが、とりあえずここで第1段階が終了。
個人的には、法務1年目にしてはからずも企業買収のひとつのパターンについて、勤務先の売却劇を通じて学んだわけです。
会社は売買できる(される)ものなのだ、と実感しましたよ。

引き続き、次は合同会社との吸収合併について。
livedoor プロフィール
QRコード
QRコード
アクセスカウンター

    • ライブドアブログ