企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


正しい会社の売られ方 4の2

 ケースによって異なるだろうけれど、デューデリジェンス初日、キックオフはこんな感じでした。

■相手方は30人ぐらい
 買主予定の投資ファンド、 アレンジャーとなる証券会社、法律事務所、監査法人、コンサルティングファーム数社、親会社(目付け役でしょう)
■当社側
 取締役社長、経営管理部門取締役、経理部長、経理課長、社長室長(当時、法務は社長室所属)
 法務担当(自分)の6名
■証券会社から全体スケジュールと作業手順、実施場所(会議室を確保しました)
■監査用チェックリストの配布
■対象会社コンタクトパーソン(要するに我々6名)の紹介
■名刺交換

たしかこんな段取りでした。コンタクトパーソンとして6名出席しましたが、社長や役員がいちいち対応するわけではないので、実際は経理部の部課長と自分の3名が約3週間の期間中、毎日対応に追われることになりましたが。

法務部門が対応する法的監査のチェックリストの内容はといえば、大項目で10項目、中項目として①資料原本提出を要するもの②資料作成依頼するもの③担当役員、担当者または適切な人物へのインタビュー実施 に3分類され、①②③合わせて160項目ほど。
ただし①や②を提出すると、その内容に対する質問項目が新たに追加されるので、3週間でどれだけの資料説明やヒアリングが繰り返されたことやら。毎日監査担当が帰るまで先に帰るわけにもいかず、通常業務が免除されるわけでもありませんでしたから、カオスな1日になる日もありました。事業会社に吸収されるのと異なり、LBOスキームですから、このあと金融機関との金銭消費貸借契約締結が控えているということも監査内容の細かさ(執拗さ)に影響していたと思います。

しかし、当時デューデリにどんな腹積もりで臨むか、正直なところM&Aの経験がない我々は見当がついていなかったのでした。
売主である親会社は、1円でも高く売りたいわけだし、買主側は安く買いたい。我々としては、ファンド傘下になった数年後はバイアウトなりIPOという局面を迎えるわけですから、売値(買値)は抑えたい、しかしまだ子会社の身分で親会社は目を光らせている。
100%子会社だった当時、我々はいわば世間知らずの初心な坊ちゃんだったのです。今にして思えばデューデリを受ける側にも何らかの作戦がとれたのではないかと思うのです。(この項、まだ続く)

正しい会社の売られ方 4の1 

法務らしい話に戻します。

 勤務先売却の概要をざっくり表すと、こんなところ。
  売主:親会社(東証1部製造業)
  買主候補:投資ファンド
  対象会社:勤務先
  投資ファンドの買収スキーム:
   ファンドが設立するSPCを利用したLBO
 
 投資ファンドへの売却というと、2007年当時は「ハゲタカ」のイメージが付き纏ったのと、同業の企業で外資の「ものいう株主」との応酬が始まった頃だったと思います。幹部の間にも少なからず動揺があったので、さっそく定例会議に投資ファンドのパートナーがやってきました。そしていわゆる「ハゲタカ」ではないこと、投資先企業とともに企業再生に向けて汗をかくつもりだなどと説明し、企業再生のプロセスについてプレゼンを行いました。それをきいて動揺していた事業部門や営業部門の幹部や中間管理職も少しは落ち着いたようですが、こちらは株式譲渡契約締結に向けた作業のほうに関心がありプレゼンに対しては正直「ふーん」という程度の感想。
 その作業とは、そうです、デューデリジェンス対応です。
 
 企業提携や買収などの実績のある企業ならともかく、40年余も企業の一部門に過ぎなかったので、経営陣ですら「デューデリって何?何されるの?」という反応。(自分もそうでした)親会社の法務に訊くのも癪なので、参考になる書籍はないか本屋にかけこみました。
 売却(買収)が決まった企業の法務担当者はどのような対応をすればよいのか、と探してみたのですがありませんでした。(まあ当然ですね)あと数日で読み切り、そこそこ理解できそうな書籍を探したところ、ありました。中央経済社の「M&Aを成功に導く 法務デューデリジェンスの実務」。買収の立場側の内容ですが仕方がありません。即買いで読みました。 将来を思い、何回もため息がでました。

 そしてデューデリのキックオフの日を迎えたのです。(続く)

正しい会社の売られ方 3の2

「予想外のサプライズ」

用意万端整えたはずが、直前でスクープとして抜かれたときの敗北感、脱力感。
前日というか公表当日の深夜、携帯で連絡をとりあった結果、記事と放送は止められないとわかったのが2時前だったでしょうか。

朝6時台のTVニュースで「●●(親会社)、不振の●事業から撤退」と流れました。何も知らない社員が受けた衝撃はすごいものだったと思います。親会社からみれば撤退なので間違いではないのですが、当社が事業停止するわけではないのでこの扱われ方はひどいなと思いましたが、もうどうにもなりません。
朝の「緊急会議」を含めてすべての段取りを変更、本社で急遽朝礼を開き、外部からの問い合わせは窓口を広報(自分と上司)に集約することを周知したあと、官庁、業界団体等への報告のアポイントを取って、午後から何箇所か報告に廻りました。そういえば、その日は冷たい雨の日でしたね。

夕方、社に戻り親会社の株価をみたところ、ストップ高となっていました。もともと四半期決算の内容がよかったことに加えて、不振事業の売却話が具体化したことが「予想外のサプライズ」として市場に好感云々というコメントがありました。
当社の存在がいかにネガティブ要因だったのかを株価という形で思い知らされ、情けないやら、悔しいやら、唇をかみしめるよりありませんでした。

この日から1週間ほどのちに、売却に向けての作業が本格的に始まりました。
デューデリジェンスです。(不定期につづく)
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