企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


正しい会社の売られ方 幻のIPO 4

 今回から上場前資本政策に関するあれこれについて。
結果として資本政策計画を立案するまで至らなかったのですが、その理由を落ち着いて考えてみようかと。
具体的な数字はぼかしていますので、予めご容赦ください。


1.  上場申請前々期まで株主構成(数字は議決権ベース)
①株式譲渡時(株式譲渡契約上の第1クロージング) 株主2名(投資ファンド約85% 元親会社約15%)
②株式譲渡契約上の第2クロージング時       普通株主1名(投資ファンド約90% 元親会社約10%)
                         種類株主1名(議決権なし、取得請求権付)
③上場申請前々期 期初              ②と同じ

 ①から②にかけて投資ファンドの議決権比率が微増していますが、投資ファンドが元親会社から株式を取得したのではなく、勤務先が自己株式として取得したため。株式譲渡契約上、第2クロージング時、元親会社保有の株式は投資ファンドか元親会社と投資ファンドが認める第三者が取得、という一文があったのですが、なんのことはない、その第三者が対象会社である勤務先になってしまったということ。①の株式譲渡時のLBOで抱えた自己株式の額がさらに膨らみました。(この時点で1株も消却していません)
 また本来なら②の時点で元親会社保有の株式をすべて取得するはずが、経営再建に手間取っていたため一部取得にして期限を延期してもらっています。種類株式は自己株式取得の資金調達を目的として発行、引き受け先は投資ファンドを組成するファンドのひとつでした。
このとき、なぜ勤務先が自己株式取得することになったのか。この時点で株主を増やすことはできなかったのでしょうか。
 
 憶測ですが、①の株式譲渡時には投資ファンドは短期間で勤務先の経営再建を果たし転売を考えていたのではないかと。株主が一人だけなら成功した分を一人占めできますからね。しかし不運なことに株式譲渡の年には拙速な法改正が招いた市場低迷、翌年秋にはリーマンショックと、①から②までの期間に勤務先のみならず我々が所属する業界全体は長い低迷期に入ってしまいました。
勤務先の株式の価額はリーマンショック前の水準で算出したもの。勤務先の決算の「自己株式」の項目は会社の値札そのもの。状況からいって勤務先の株式を引き受けようという第三者が現れなかったのかもしれません。

次回につづく

正しい会社の売られ方 幻のIPO3

 間隔が空き過ぎて、書いている本人もなんだか収拾がつかなくなってきた....先を急ごう

 「中期経営計画」については、事業部門に必死になって取り組んでもらうとして、管理部門にのしかかり、頭を悩ませたのは「コーポレート・ガバナンス」の再構築でした。

 もともと上場企業の子会社でしたし、売却された後も大会社・監査役設置・会計監査人設置会社の機関設計は維持していましたので、形としてはこれらは整っていました。しかし、どちらかといえば上から押し付けられたの指示で整えたものでした。どうも実態が追いついていない、よくよく確認したら規則も未整備だった、といったことが次々と判明しました。主幹事証券の公開業務部の担当者からは「どの企業もそうですよ。上場準備をきっかけに見直すんですよ」と諭されたものです。社歴の若い企業でしたら走りながら体制を整えていくことが可能ですが、なまじ社歴が長く実質が多少あやしくても体制は整えていた企業でしたので、社内の各部門から「えー、今あるのじゃだめなの」といった反応がありました。「今あるもの」とは親会社のガバナンスのためのもの、今度は独立した企業の自前のものを構築し(たとえ結果的に「今あるもの」に落ち着いたとしても)運用していく、ということをいかに納得してもらうか。当時はこちらも余裕がなかったので、うまく社内の声に対処できていませんでした。(もう戻れないのですが)
 また上場準備を開始した時期は官製不況(我々の所属する業界にとっては)やリーマンショックの影響を受け、なかなか業績が安定しない時期でしたので、「本当に我々が上場できるのか」と懐疑的な見方の従業員も多かったのも事実です。
 体制構築の考え方や書類の作成方法は主幹事証券、印刷会社などが教えてくれますが、「何のために上場を目指すのか」について準備会社自身がぶれていると、準備作業が「非常につらいやらされ仕事」になってしまいます。
今後悔してもどうにかなるものではないのですが・

 一方、上場準備を巡っては次第に投資ファンドとの間でもすっきりしないことが生じてきました。
それは次回に。

 毎度、散文的ですみません、ひととおり最後まで到達したら見直します。



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正しい会社の売られ方 幻のIPO 2

 続きです。

 「中期経営計画」はどのように作成するのか、ということについては、僕がここに書くまでもなく上場準備実務に関する書籍がありますのでそれらを読んでいただくとして。
 過去に何回か「中期経営計画」を策定したときは、経営改善にコンサルタントを入れたときのほかに数回ありましたが、いずれも上場企業の一部門か完全子会社の時代に作成したものです。計画はきれいに纏まっているが実務への落とし込みが不足という「ありがちな」パターンに陥ったのは、やはり株主、投資家へのコミットメントという意識が十分でなかったのかもしれません。上場企業子会社は資金調達に苦労することがないので無理もないのですが、今度はそうはいきません。
 当初は「えー、また作るの?」という社内の声はありました。しかし独立のためとなればと事業部門の担当者は頭をひねりながらSWOT分析から取り組み、なんだかんだいいながら短期間で纏め上げました。しかし終盤、投資ファンド側が「描け」という将来利益計画とその根拠については疑問を抱かざるをえないことがありました。
 SWOT分析を行い自らの実力値を踏まえた利益計画案、実現可能、というよりも現実的な数値だったがゆえに、投資家の視点からみて「面白くない」「魅力がない」という指摘は確かにその通りでした。しかし、なぜ計画値をつり上げるかといえば、バイアウト時のリターンに尽きます。それもごもっともなのですが、株式譲渡時の価額を上回ろうとするのは日経平均株価の低迷(当時)からみて、ハードルが高く「目標」ではなく「願望」としか思えませんでした。もちろん「願望」は叶えられればよいのですが、勤務先の状況はまだまだ「傷んだ」ままで、大きな願望を抱くところではなかったのです。
 結局中期経営計画は投資ファンドに押し切られた形となりました。こののち主幹事証券公開担当部門とのミーティングがはじまると、当然中期経営計画の根拠や進捗をフォローされました。公開担当部門から「格好いい計画ではなく、まず自分たちがたてた計画どおりに成果を出す企業かどうかをみるのですよ」といわれたときは胃がちくちくしました。

 勤務先の事例は投資ファンドが対象会社と二人三脚で事業再生に取り組むというものです。しかし出口戦略が具体化する時期になったら利害は一致しないとは思っていました。「株式譲渡時の株式価額」が重荷になるだろうと。案の定上場準備にかかる前段の「中期経営計画」策定のプロセスでそれが露になったのでした。(つづく)

                                              
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