2015年10月29日 06:50

 不定期エントリーです。
 リスクは子会社ばかりにあるのか、という話。

 ビジネス法務の連載記事「グループ会社における役員責任の分析」などを読みながら思ったことです。
 
 親会社役員の親会社に対する善管注意義務が子会社を含む親会社グループの利益のため、と考えられることについて、それには頷けるものはあるとしても果たしてその通りにできるものなのかと思う瞬間があります。

 明らかな利益相反取引はさすがにないでしょうけれど、親会社が決定した方針に基づき子会社が実施する施策が、結果的に子会社の経営にボディブローのように効いてくる(悪い方にね)ことがないわけではありません。親会社の方針決定が議論を尽くされたものなのか、トップの独断によるものなのかいずれにしろ、子会社の役員が決定に関与する機会は限られたものでしょうし。
 一方で親会社の指示命令に従ったことであっても、それをもって子会社の役員の責任が免ぜられるものではない、という論がありますが、そうであれば子会社・子会社役員にとって親会社に原因があるリスクが存在するのではないでしょうか。しかも回避することが非常に難しいリスクとして。

 そのリスクそのものを取り除くのも親会社役員の責任だというのは簡単ですが、企業買収によって異なる業態、企業文化を持つ会社が親子会社関係になるのが当然の時代。そううまくいっているものなのか実態はわかりませんよね。

 案外「親会社リスク」を抱えている子会社はあるかもしれません。

 

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2015年10月25日 17:41

 東京地方は木枯らしが吹きましたね。発売される月刊誌も「12月号」とつくものが多く、あああ1年がまた過ぎていくと嘆息。

 毎度のことながら本当に拾い読み、です。

 
 まず特集、「訴訟を見据えた紛争対応のポイント」

 「ありがちなこと」や「落とし穴」が「あるある」では済まないのですが、まあ会社というのは色々なことがあります。
 実務の現場では、取引経緯や歴史(しがらみともいう)や契約上の立場の高低、強弱(うけ負けともいう)などから、トラブルが生じても法務はじめ管理部門にはあまりタッチさせず、当事者間で話を収めようと努力する傾向にある、などということはありませんか。(現場の立場としてはわからなくはないのですが)
 屏風と商いは曲げなければ立たない、多少自分らが泣かなければならないけれども、取引高はゼロにできない。訴訟に発展するケースがほとんどなければ、そんな行動基準が醸造されていきます。
 さて数年前に親会社が変わりましたが、その会社の方針は当事者同士の曖昧な決着を是としない、もめたら訴訟で決着を着けるというもの。となれば、先に挙げた行動基準を改めていかなければなりません。
ということで、自分にとってのツボは

  • 「国内企業間取引におけるありがちな対応」(岩田合同:本村弁護士)
  • 「特許権侵害・営業秘密盗用」(潮見坂:高橋弁護士)
の記事でした。

 実務解説「証拠保全に対する相手方の実務対応」(圓道弁護士)は、突発事項さえなければ28日開催のセミナーに参加して直接お聴きしたいということで。

 新連載「トラブルを解決する独禁法の道標」
 「はじめに」で池田弁護士が触れておられるように、独禁法というと実務部門では規制法(カルテル規制)のイメージを強く持つ人が多く、取引契約交渉で押し付け押し付けられる条項、「敵に塩」条項などを回避・解決するためのツールという認識に乏しいことがあります。
独禁法=コンプラ問題だけではないのだよということをいかに現場に伝えていくか、という課題を抱えているので(課題だらけなのですが)、前シリーズに続いて本シリーズの今後にも期待であります。


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2015年10月24日 13:47

 横浜のマンションの件は話がどんどん拡大してきて、道筋が混沌としてきた感があります。
当該下請業者が巨大企業グループの子会社だからなのか、もっぱらそこだけが叩かれていますが、本来監督責任のある元請や一次請負の姿が全く見えないのが不思議です。まだ表に出て来ない、出せない調整が続いているのかと勘ぐってはまずいのかな。これが下請業者が小さな土木会社だったらどんな扱いをされたのだろうと思います。

 数次に渡る請負関係と上位請負者が絶対的に権限を持つ、請け負ったら報酬といい工事期間といい泣きながらでも守らなければならない、「うけおい」ならぬ「うけ負け」というのは今更いうまでもない建設業界の構造です。一方、負けさせ、泣かせながらも、組下の業者がまさか偽装や不正を行うことがないだろうと思い込んでいる元請と(現場ごとに協力業者会が作られますからね)、請け負った以上はきっちり仕事をするのが職人(プロ)だと我慢する下請、こんな前提があったような気がしますが(あくまでそんな気がするというレベルですが)、今回の一件はこの前提(ある種の性善説のようなもの)を吹っ飛ばしてしまったと思います。

 元請からの工期厳守、品質厳守のプレッシャー(請負金額減額ということもあるか)が原因なのか、当の現場代理人個人の問題なのか、真相にたどりつくのを待つばかりではありますが、もし元請(発注者)からのプレッシャーが原因ということだと建設業界に限った話ではないですよね。不正のきっかけに発注者、上司からの過度のプレッシャーを挙げるパターンは珍しくもないですからね。
 鬼の首を取ったように騒いでいるマスメディア業界も多重請負の世界なので、あまり他業界のことはいえないだろうと思ったりもしています。

 請負業者だからまさか不正・偽装はしまいという前提で無理を強いれば手痛いしっぺ返しが来る、これが発注者だけに返ってくるなら自業自得で済みますが、企業の仕事というのは第三者を巻き込むというリスクがついて回るのですから、発注者はその責任の重みを常に意識していなければならないということでしょうね。

 それにしても、この事件を受けてまた確認申請や杭打ち検査、工程管理や下請管理の厳格化ということになると、諸々つまづいている東京オリンピック関連工事に及ぼす影響が懸念されますね。


 ところで週刊誌やメディアの見出しで「傾斜マンション」「傾きマンション」と文字が躍っていますが被害者である居住者への配慮が不足していると思いますよ。






 

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