企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


リコール  一番長かった6月 1

 本来なら「正しい会社の売られ方」を書きすすめたいのですが、5月12日の「番外」で書いたとおり大きな動きがありまして、今後の内容や進行を少し再考することにしました。

 そこで、BLJ7月号で特集企画「クライシス・マネジメント」が組まれたことを受けて、多少悩みは残しつつも5年前に僕が経験したリコール対応について、何回かに分けて書き残そうと思います。
   
 5年も経過すると当時リコール対応に関わった人間も異動や定年退職やらで次々と職場を去り、当時を知る人間は僕を入れてほんの数名となりました。たぶん共同でリコールを実施した他の企業も同様でしょう。
 リコール実施後の製品対策の実施率は、ほぼ100%達成が見えてきています。リコール実施が功を奏した、という見方もできるかもしれません。
 
 しかしそんな見方はできない事情があります。なぜなら勤務先が2件の死亡事故を発生させた事実と、そのうちの1件を長い間埋もれさせてしまっていた失態があるからです。下手をすれば、ガス給湯器メーカーの二の舞になる可能性もあったのです。この危機を回避するために、どれだけの時間を費やしたか。
 5年経過するのを契機に薄れていく自分の記憶を整理するのと、もしこんな体験でも今後のリスクマネジメントに多少なりとも役立てば幸いと思います。


*注記
前述の2件の死亡事故のうち1件の埋もれていた事故については、2006年7月初旬に行った業界団体共同のリコール記者会見の場で公表して謝罪を行いました。このことはTV、新聞等により報道されています。

また今後本件について書く内容は個人的見解であり、勤務先企業の見解を述べるものではないことを予めお断りさせていただきます。
 


 

正しい会社の売られ方 番外

 微妙な事項に触れることもあるので、慎重に(のんびりか)と本シリーズを書いておりましたが、このほど株主である投資ファンドと某上場企業との間で株式譲渡契約が締結されました。5年ぶり、二度目の売却となりますが、今回は投資ファンドのイグジットであり、また上場企業グループの一員になるということで、社内外の反応も前回のときとは異なります。
 本件の法務・広報に関するあれこれは、さすがにこの場で取り上げることはできません。「正しい会社の売られ方」の進行に沿って(本当にのんびりですが)いずれ明かすことになると思います。
 取り急ぎの報告でした。
 

正しい会社の売られ方 9の5

それにしても..の続きですがやっぱり抑え目に書きます。

 平時においても、ブランド投資というものは効果が読みにくいものです。100億円かけたとしてもブランド認知率が上がったり、企業好感度が上昇するとは限りません。3年間ブランド投資を続ければよいというものでも、コンサルやデザイン会社に委託して格好のいいロゴマークを作ればよいというものでもありません。商品や役務は当然として例えば受付や電話の応対といった日常業務の隅々までの品質向上のための投資も必要と思っています。
企業ブランドイメージの高い企業は、「効果の読みにくい投資」を継続的に(半ば恒久的に)行っているし、またそれだけの体力があるということです。

 勤務先の場合、経営的に残念な状況だから売却されるにもかかわらず、効果の読みにくいブランド投資を否応なしに行わざるをえないところが財務的に響きました。売却された年度に続き、ブランド変更に関わる費用が発生した年度の決算も非常に厳しいものになりました。(すべてがブランド変更費用ではありませんが)
今更の話になってしまいますが投資ファンドではなく事業会社への売却であれば、買主側のブランドに組み込まれるのですから、旧ブランドの撤収費用は負担するにしても、新ブランドへの投資全額を負担することはなかったかもしれません。事業会社が買主にならなかった事情があるかもしれませんが、勤務先には厳しい選択でした。

 僕のいる業界は消費者(ユーザー)だけでなく中間ユーザーである流通会社や建設会社も採用するメーカーのブランドを重視するところがあります。顧客離れ⇒さらなる苦境というリスクもあったわけです。
同業者からも心配された(!)ほどの短期間でのブランド変更(加えて企業グループからの離脱)、果たして売主そして買主がどの程度対象会社の事業リスクを想定していたのか...リスクはこれだけではないのですが、可能であれば話を訊きたい点です。

 実際は危惧されていたような顧客離れはそれほど起こりませんでした。顧客や取引先との接点を持っている営業マン達が奮闘してくれたのと、何よりも彼らが日頃から顧客の信頼を得ていたのだと思います。
 格好いいブランドマークも必要かもしれませんが、企業は人なり、最後は社員の力がブランドだよ、ときれいにまとめて(?)「9」を終わらせます。
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