企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


正しい会社の売られ方9の1

商号変更について何回かに分けて。

企業グループから離れるにあたって、親会社から義務付けられた事項のうち、大がかりな作業を伴ったのは商号・商標、ブランド変更でした。

株式譲渡と同時に親会社(元、といったほうが正しいのですが)と改めて締結した「ブランド再使用許諾契約書」には、現行商号・商標・ブランドロゴの使用猶予期間(1年3カ月!)から、契約違反条項、ペナルティ(金額まで明記されている)、旧ブランドを付した製品の在庫管理、例外事項、報告義務等細かく規定されていました。契約書に規定された以外の措置を求める場合は、親会社とさらにその上のグループ総本山企業のブランド戦略部門の承諾が必要とされました。

徹底した規定は、当時他資本への売却という形でグループから離脱する子会社の例がなかったためと思います。
置かれた立場を別にすれば、隙のない契約書で、以後ブランド管理の参考例にしたのはいうまでもありません。

猶予期間が長くないものですから、すぐに実務に着手しなければなりません。
新商号やブランドロゴの策定などは新しいものを創り出す作業ですから、まだ楽しみがあります。

契約上の義務が重く、かつ実務上できついのは現行ブランドの撤収でした。
40年以上も使っていた企業ブランドの痕跡を一切残してはならないのです。
「厳しすぎるのではないか」という社内の声も多かったのも事実ですが、どうにかなるものではありません。
まず、ブランド使用状況の確認から始めました。(続く)

正しい会社の売られ方8

書き散らした観が否めないので、少し整理します。
ここまでの流れは以下のとおり。

1.10月   
  親会社が勤務先を投資ファンドへの売却方針を発表
2.11月
  デューデリジェンス実施
3.12月   
  親会社・投資ファンド・投資ファンド設立のSPC間で株式譲渡契約
  (企業グループから離脱)
4.翌年1月 
  株式譲渡(親会社⇒SPC)
5.同年3月
  勤務先がSPCを吸収合併  第1クロージング
  この段階での持株比率   
  投資ファンド約85%超、元親会社15%未満 

親会社にしてみれば半年の間に経営不振の子会社を整理することなく売却できたのだから、万々歳だったと思います。会社を潰すとなれば、費用、時間ともにかかりますが買い受けてくれる会社があれば、金になります。あとは買受先が投資ファンドであろうとメーカーであろうと高値で買い受けるほうを選べばよいわけです(こんな単純な理由ばかりではないでしょうけれど)

勤務先は株式譲渡の対象会社の立場にあるので、値付けについて関与することができません。せいぜいデューデリジェンスの際に経営不振に陥った実態を説明する程度です。それだってどのように査定されるかはわかりません。
今回は予め買受先が投資ファンドであることがわかっていましたから、いずれやってくる「出口」を考えれば、あまり高く買ってくれるな、というのが僕個人の正直な希望でした。ええ、ほんとに。

ちなみに冒頭4.の株式譲渡の時期は2008年1月です。
リーマンショックはこの年の秋の出来事です...

正しい会社の売られ方 7の3

(1)吸収合併契約締結の承認
取締役会(2008年1月末)
存続会社:勤務先 消滅会社:合同会社(ファンドの受皿会社)
契約書は会社法第749条に基づく内容。
吸収合併の対価は「吸収合併存続会社の株式」(同条1項2号イ)
⇒合同会社が保有する株式を自己株式取得して、代わりに対価として合同会社の株主(投資ファンド)に自社株を交付します。
これにより投資ファンドの持株比率が株式譲渡契約で規定され金融機関との金銭消費貸借契約で前提条件に規定されたものになるのでした。(投資ファンドが80%台、元親会社が10%台)
吸収合併の効力発生日は3月下旬としました。

(2)臨時株主総会招集
①会社吸収合併契約締結承認 
②定款一部変更案
何を変更するかというと 《公告方法》です。
多くの非上場会社は公告方法を「官報」にしていることと思います。勤務先もそうでした。
吸収合併という組織再編行為を行うので「債権者の異議申立期間(会社法第779条)」を設けるのですが、組織再編の内容と債権者に異議申し立てが可能であることを官報公告と知れている債権者に個別に催告しなければなりません。主だった債権者(サプライヤーさん)だけでも、けっこうな数にのぼります。まず現実的ではありません。
そこで回避策としたのが会社法779条3項の規定です。公告方法が会社法第939条1項2号に定めるところの「日刊新聞紙」であれば、官報と日刊新聞紙で公告を行うことで、個別催告を行わなくてよい、というものです。(司法書士との打合せで確認したのですけどね)ということで定款変更(公告方法)を行うわけです。
ちなみにこの日刊新聞紙は日経・朝日・読売・毎日といった全国紙ではありません。ぎりぎり(といったら失礼か)日刊新聞紙扱いです。
「そんな新聞知らないぞ(重ねて失礼)」という役員もいましたが、手続優先といってスルーしました。

臨時株主総会は2月初旬に開催、官報・日刊新聞紙での公告を2月中旬に実施(催告期間は最低1カ月)、3月下旬に合同会社吸収合併を終えました。

こうして、勤務先の株式譲渡手続は2008年3月下旬にひと段落ついたわけですが、「売られたこと」が本当に響いてくるのは、このあとからでした。
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