企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


正しい会社の売られ方 売れればよいのか 3

  売却した会社が、数年も経ずに倒産、事業停止という事態に陥った場合、売主はどのような立場に置かれるのでしょうか。
 対象会社の事業形態によるところが大きいと思いますが、消費者との関わりのある最終製品を扱っていた場合にどのようなことが考えられるでしょうか。
 すぐに部品、アフターサービス、メンテナンス等の問題が生じます。リコール中の製品があれば、その回収や補修作業も止まってしまい、消費者が危険な状態に置かれたままになるかもしれません。
 製品をみれば、対象会社の社名か、元の売主のブランドマークが付いているかもしれません。消費者はどこに苦情、クレームを寄せるでしょうか。

 こう考えるとたとえ経営不振の子会社や事業でも売却しようとするときは、そのスキームが対象会社に事業継続にどのように影響がでるか、何パターンか検討するものだと思うのですが。。。

 ここで前回からの話を引き継ぎます。勤務先は以下のような状況でした。

・買主が自ら調達した資金は買収金額の5割ほど。残りは対象会社の資産をレバレッジに金融機関 からの借入。

・借入債務はSPCを吸収合併することで対象会社が承継。金融機関にとっては「経営不振」企業に 対する多額の貸付になるので厳しい契約条件を付けざるをえない。

・結果として、対象会社のほとんどの資産(不動産、動産、上場有価証券など)に抵当権、質権設 定。
 1年間のブリッジローン契約で借入人の不作為義務、財務制限条項がいくつも。

 早い話が対象会社が新たな資金調達の必要に迫られても、金融機関が承諾しない限り何もできないわけです。
投資ファンドの傘下で経営再建を図るといっても、実質は金融機関の管理に近いものがありました。
 また資産への抵当権設定の状況については法務局で登記情報をとればすぐに判るものですから、売却スキームをよく知らない取引先が「この会社、大丈夫か」と心配するのも無理もない話でした。一時期風評もたてられました。

 売主にとって当初は「高く売れた」成功事案だったのですが、上記のような状況から次第に手離れが悪くなっていったのです。

※ちなみに現在では当時設定された抵当権はすべて抹消済みです。念のため。




  

正しい会社の売られ方 売れればよいのか1

   ずるずると延びているシリーズですが、そろそろ収束させていかないとまずいということで「正しい会社の売られ方」です。

 昨年6月に行われた勤務先2回目の株式譲渡以後、それまで金融機関や元親会社グループに設定されていた抵当権や質権等の抹消手続きがこの春にようやく終わりました。
 最初の株式譲渡(事業会社→投資ファンド)のスキームがLBOであるため、対象会社である勤務先の資産に担保権設定されていたわけですが、上場企業の子会社となったことで金融機関との借入契約が全面見直しされ、結果買主の保証のみで担保不要となったわけです。やれやれ。
 しかし5年前のLBOの際に承継したSPCの借入金弁済が完了したわけではありませんし、のれん償却期間もまだしばらく、という状況です。最初の株式譲渡から5年が経過し、当初の株式譲渡のスキームが継続しているのです。
 
 会社や事業部門を売却するとき、売主は対象会社・部門の行く末についてどこまで考えておくものなのでしょうか。
事業会社への売却と投資ファンドへの売却とでは、当然その先の道のりは異なります。売主に売却後いつまでも責任を求めるものではありませんが、売買スキームによっては売主・買主や対象会社・部門の当事者にとって「こんなはずでは」という事態を招くケースもあるのはないか。たとえば売却後の「手離れ」の悪さです。
 勤務先の事案は「手離れの悪い」事案だったと思います。
 そして「手離れの悪さ」は対象会社・部門が決してよい環境にないということです。

 なぜ手離れが悪くなったのか
 (1)売却価額
 (2)スタンドアローンイシュー
 (3)人材
 とりあえず、この3点を整理してみようと思います。(途中で変わるかもしれませんが)

 (1)の売却価額についてですが、冒頭「のれん償却」と触れたことからもおわかりのことでしょうが、思いのほ
 か高額だったということに尽きます。これが対象会社にどのように影響したのでしょうか。

 (以下更新間隔を空けないように以下続きます)

正しい会社の売られ方  売却までの道のりを想像してみる2

買主がつくか、の続きです。

 同業他社への売却話が具体化しない以上、次なる買主候補として企業再生を謳うファンドが挙がるのは当然の流れであったと思います。
 どのようなオファーを出したのか、そして候補がいくつあってどのような買収スキーム、ビジネスプランをもって親会社にプレゼンテーションを行ったのか、そして対象会社にはどこまで知らされていたのか、というと実はよくわかりません。この手の話の常なのか経理と事業部門の一部は早い時期から関わっていましたが法務(といっても自分ひとりですが)はもっと後になってからです。
 それでも少しずつ入ってくる情報からはっきりしていたのは子会社を売り急いでいることだけでした。

・このままずるずると収益低下が続けば資産価値が下がり、売却価格に影響してしまう。
・とにかく買収額と支払条件を提示させよう。
・対象会社のビジネスについて、売主として何かできることはもはやないので、それは買主に任せよう。(実際、親会社からの天 下りではなく我々の部門の生え抜きを社長に据えた結果の収益低下でしたから、よい口実になったのではないでしょうか)

察するにこんなところではなかったかと思うのです。

高い価格で売却すること自体は企業として当然のことです。
しかし買主候補が買収資金をどのように調達するのか。資金調達を含めた買収スキームが対象会社にどのような影響を与えるのか..という検証を親会社は十分したのでしょうか。
僕は十分はしなかったのではないかと考えています。あるいはしたけれども、「売却ありき」だったのではないかと。

そのことについては次回以降に。


 
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