続きです。
完全子会社の「本社機能の欠如」についてです。

 株式譲渡スキームがLBOだったため金融機関と接点をもつようになったのですが、これは荷が重いものです。一事業部門が子会社になっただけという会社は、経理部門はあっても財務部門はありません。資金は会社グループのシステムでまかなえるので、子会社が直接金融機関や投資機関から資金を調達する必要がないからです。1回目の株式譲渡時、勤務先の経理部門に過去本社(売主)の財務部門に籍を置いたことのあるマネージャー、スタッフはほとんどいませんでした。また役員にも当然金融機関に金策に走った経験をもつ人間もいません。
 金融機関からの借入にかかわる業務は当然として、借入後の親会社へのお決まりの業績報告とは異なる水準の月次報告、四半期報告などが求めらます。(金銭消費貸借契約に財務制限条項があるから定点報告は当然なのですが)すべてが「初めての経験」なわけです。
 これは財務、経理部門に限らず事業部門においても同様でした。事業部門がまとめる事業計画や業績報告はあくまで親会社への社内報告書類。事業計画や業績報告の内容に多少難があったとしても、そのことが原因で融資や投資を得られないということはありません。したがって第三者から融資なり投資を引き出すための「仕様」にはなっていません。
 金融機関の融資部門は「融資すること」「融資し続けること」が仕事でそれが成績です。融資先に厳しい要求をするのもそれゆえなのですが、当時の勤務先にはLBOにより借金を負わされたという被害者意識のほうが強く、金融機関とうまく付き合っていくというごく普通の企業の意識を持てずにいた人間が多かったのかもしれません。いや、そういう意識をもつ間もなく切り離されたというのが正しいかもしれません。
 
 金融機関との手続きでちょっとしたトラブルが生じたとき、融資の担当責任者になぜか僕が呼ばれ、こういわれました。
「地銀でも信金のOBでもよいから採用して、御社内に金融機関の、カネを貸す側の理屈がわかる人を育てなさい。これから独立企業として生きていくんですよ。金融機関とうまく付き合えるようにしてください」

 その助言が活かされることはついにありませんでした。

                                            続く