2013年11月02日 22:35

正しい会社の売られ方 幻のIPO 2

 続きです。

 「中期経営計画」はどのように作成するのか、ということについては、僕がここに書くまでもなく上場準備実務に関する書籍がありますのでそれらを読んでいただくとして。
 過去に何回か「中期経営計画」を策定したときは、経営改善にコンサルタントを入れたときのほかに数回ありましたが、いずれも上場企業の一部門か完全子会社の時代に作成したものです。計画はきれいに纏まっているが実務への落とし込みが不足という「ありがちな」パターンに陥ったのは、やはり株主、投資家へのコミットメントという意識が十分でなかったのかもしれません。上場企業子会社は資金調達に苦労することがないので無理もないのですが、今度はそうはいきません。
 当初は「えー、また作るの?」という社内の声はありました。しかし独立のためとなればと事業部門の担当者は頭をひねりながらSWOT分析から取り組み、なんだかんだいいながら短期間で纏め上げました。しかし終盤、投資ファンド側が「描け」という将来利益計画とその根拠については疑問を抱かざるをえないことがありました。
 SWOT分析を行い自らの実力値を踏まえた利益計画案、実現可能、というよりも現実的な数値だったがゆえに、投資家の視点からみて「面白くない」「魅力がない」という指摘は確かにその通りでした。しかし、なぜ計画値をつり上げるかといえば、バイアウト時のリターンに尽きます。それもごもっともなのですが、株式譲渡時の価額を上回ろうとするのは日経平均株価の低迷(当時)からみて、ハードルが高く「目標」ではなく「願望」としか思えませんでした。もちろん「願望」は叶えられればよいのですが、勤務先の状況はまだまだ「傷んだ」ままで、大きな願望を抱くところではなかったのです。
 結局中期経営計画は投資ファンドに押し切られた形となりました。こののち主幹事証券公開担当部門とのミーティングがはじまると、当然中期経営計画の根拠や進捗をフォローされました。公開担当部門から「格好いい計画ではなく、まず自分たちがたてた計画どおりに成果を出す企業かどうかをみるのですよ」といわれたときは胃がちくちくしました。

 勤務先の事例は投資ファンドが対象会社と二人三脚で事業再生に取り組むというものです。しかし出口戦略が具体化する時期になったら利害は一致しないとは思っていました。「株式譲渡時の株式価額」が重荷になるだろうと。案の定上場準備にかかる前段の「中期経営計画」策定のプロセスでそれが露になったのでした。(つづく)

                                              
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