企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

2013年08月


正しい会社の売られ方 人材3

 「人材」の続き、です。(続きになっているのか?ですが)

 この連載の初期の頃に会社が売られる前兆として、本社(親会社)からの出向組で「できるな」という人間の引き上げがあるというようなことを書きましたが、これはいつわりなく実話です。それに関わった人物に直接ききました。

「手放す会社に本社の貴重な人材を置いておく必要はない」
 なんとも豪速球な意見でした。

 通常完全子会社は親会社の管理下におかれ、一定規模を超える設備投資や重要な契約締結、資産の取得処分などすべて親会社の決裁が必要とされます。これはこれで当然のことなのですが、「親会社の決裁がなければ何もできない」が転じて「親会社の決裁を得ればよい」「親会社の決裁さえ通れば」と事業計画や資金計画などが「決裁ありき」の視点でつくられていく傾向が否めません。これは次第に子会社内の決裁にも波及していきます。
 (もっとも親会社が本当に厳しい査定をする企業であればこんなことはないでしょうけれど)

 僕は自戒をこめつつ密かに「子会社根性」と呼んでいるのですが、これが社員に染み付いてしまうと売却→独立企業として存続するのは非常に厳しいと思います。

 業界再編が進行し売却型M&Aが増えていくのであれば、子会社はいつ何時、売却などの事態が生じても慌てずにすむような体制や人材を育成しておくのが必要ではないでしょうか。面従腹背ということではないのですが、親子会社の関係がドライなものになっていく以上、子会社側は覚悟していなければならないかと。

 ここ数年の出来事で子会社だから、非上場会社だからと通常独立企業や上場企業が行っている実務は関係ない、必要ないと呑気にかまえている時代ではないのだと痛感させられました。

 本当にいくら後悔しても間に合わないのですよ。

正しい会社の売られ方 人材2

 続きです。
完全子会社の「本社機能の欠如」についてです。

 株式譲渡スキームがLBOだったため金融機関と接点をもつようになったのですが、これは荷が重いものです。一事業部門が子会社になっただけという会社は、経理部門はあっても財務部門はありません。資金は会社グループのシステムでまかなえるので、子会社が直接金融機関や投資機関から資金を調達する必要がないからです。1回目の株式譲渡時、勤務先の経理部門に過去本社(売主)の財務部門に籍を置いたことのあるマネージャー、スタッフはほとんどいませんでした。また役員にも当然金融機関に金策に走った経験をもつ人間もいません。
 金融機関からの借入にかかわる業務は当然として、借入後の親会社へのお決まりの業績報告とは異なる水準の月次報告、四半期報告などが求めらます。(金銭消費貸借契約に財務制限条項があるから定点報告は当然なのですが)すべてが「初めての経験」なわけです。
 これは財務、経理部門に限らず事業部門においても同様でした。事業部門がまとめる事業計画や業績報告はあくまで親会社への社内報告書類。事業計画や業績報告の内容に多少難があったとしても、そのことが原因で融資や投資を得られないということはありません。したがって第三者から融資なり投資を引き出すための「仕様」にはなっていません。
 金融機関の融資部門は「融資すること」「融資し続けること」が仕事でそれが成績です。融資先に厳しい要求をするのもそれゆえなのですが、当時の勤務先にはLBOにより借金を負わされたという被害者意識のほうが強く、金融機関とうまく付き合っていくというごく普通の企業の意識を持てずにいた人間が多かったのかもしれません。いや、そういう意識をもつ間もなく切り離されたというのが正しいかもしれません。
 
 金融機関との手続きでちょっとしたトラブルが生じたとき、融資の担当責任者になぜか僕が呼ばれ、こういわれました。
「地銀でも信金のOBでもよいから採用して、御社内に金融機関の、カネを貸す側の理屈がわかる人を育てなさい。これから独立企業として生きていくんですよ。金融機関とうまく付き合えるようにしてください」

 その助言が活かされることはついにありませんでした。

                                            続く 
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