2013年12月

2013年12月19日 23:45

  続きです。

2. 上場申請直前期の株主構成
 上場申請直前期を迎えるにあたり、もろもろ検討の結果(主に投資ファンドの意向かと)組織再編を実施しました。
ちらちらとこのブログでも触れたことのある持株会社の設立です。
 方法は勤務先と勤務先の連結子会社1社との共同株式移転によるもので、これで上場準備は持株会社が進めることになったわけです。(このとき、僕は持株会社に出向)

 直前期の組織再編については、主幹事証券も「?」という反応でした。直前期は上場に向けて月次決算早期化、予実算管理(差異分析含む)ほか諸々の予行演習をスタートさせる時期と位置づけられています。その期初にわざわざ面倒なことをことを行った理由は何か。
 それは実施時期を延期していた元親会社が保有する株式に関わるものでした。前回の②③で議決権ベースで約10%の分です。譲渡時期を延期していたものですが、さすがに投資ファンドももう延期できないと考えたのでしょう。株式を取得すると元親会社に申し出ました。投資ファンドか第三者かという検討はされたのかもしれませんが、結果として対象会社が自己株式として取得することになりました。ただ、ご存知のとおり自己株式取得にあたっては分配可能額の問題があります。その問題のために持株会社を設立、持株会社が元親会社から自己株式を取得する.....もちろんこれだけが持株会社設立の理由ではありませんが、主な理由であったことはたしかです。
 結局、直前期の4月1日に持株会社設立、その6月に自己株式取得と「自己株式消却」を実施したのでした。
 実は膨れ上がる自己株式の使い途にESOPが検討できるか信託銀行と協議を始めていたところだったのですが、これによりあえなく協議終了となりました。

まとめますと
申請直前期の第1四半期終了時点での株主構成は次のとおり。
※株式移転により一時的に連結子会社が親会社株式を保有しましたが、上記と同時期に取得、消却していますが、割愛)
 普通株主1名 議決権ベースでの持株比率 100%
 種類株主1名 (議決権なし、取得請求権のみ)

投資ファンドが100%株主になったことで、いったいどのような資本政策をたてていくのか、我々も主幹事証券も一刻もはやく意向を確認せねば、とせっつき始めたのですが........ つづく


【追記】
・株式譲渡の対象会社が、全株式を自己株式取得しただけじゃないか? 






 
 


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2013年12月16日 00:56

 今回から上場前資本政策に関するあれこれについて。
結果として資本政策計画を立案するまで至らなかったのですが、その理由を落ち着いて考えてみようかと。
具体的な数字はぼかしていますので、予めご容赦ください。


1.  上場申請前々期まで株主構成(数字は議決権ベース)
①株式譲渡時(株式譲渡契約上の第1クロージング) 株主2名(投資ファンド約85% 元親会社約15%)
②株式譲渡契約上の第2クロージング時       普通株主1名(投資ファンド約90% 元親会社約10%)
                         種類株主1名(議決権なし、取得請求権付)
③上場申請前々期 期初              ②と同じ

 ①から②にかけて投資ファンドの議決権比率が微増していますが、投資ファンドが元親会社から株式を取得したのではなく、勤務先が自己株式として取得したため。株式譲渡契約上、第2クロージング時、元親会社保有の株式は投資ファンドか元親会社と投資ファンドが認める第三者が取得、という一文があったのですが、なんのことはない、その第三者が対象会社である勤務先になってしまったということ。①の株式譲渡時のLBOで抱えた自己株式の額がさらに膨らみました。(この時点で1株も消却していません)
 また本来なら②の時点で元親会社保有の株式をすべて取得するはずが、経営再建に手間取っていたため一部取得にして期限を延期してもらっています。種類株式は自己株式取得の資金調達を目的として発行、引き受け先は投資ファンドを組成するファンドのひとつでした。
このとき、なぜ勤務先が自己株式取得することになったのか。この時点で株主を増やすことはできなかったのでしょうか。
 
 憶測ですが、①の株式譲渡時には投資ファンドは短期間で勤務先の経営再建を果たし転売を考えていたのではないかと。株主が一人だけなら成功した分を一人占めできますからね。しかし不運なことに株式譲渡の年には拙速な法改正が招いた市場低迷、翌年秋にはリーマンショックと、①から②までの期間に勤務先のみならず我々が所属する業界全体は長い低迷期に入ってしまいました。
勤務先の株式の価額はリーマンショック前の水準で算出したもの。勤務先の決算の「自己株式」の項目は会社の値札そのもの。状況からいって勤務先の株式を引き受けようという第三者が現れなかったのかもしれません。

次回につづく


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2013年12月11日 01:26

 間隔が空き過ぎて、書いている本人もなんだか収拾がつかなくなってきた....先を急ごう

 「中期経営計画」については、事業部門に必死になって取り組んでもらうとして、管理部門にのしかかり、頭を悩ませたのは「コーポレート・ガバナンス」の再構築でした。

 もともと上場企業の子会社でしたし、売却された後も大会社・監査役設置・会計監査人設置会社の機関設計は維持していましたので、形としてはこれらは整っていました。しかし、どちらかといえば上から押し付けられたの指示で整えたものでした。どうも実態が追いついていない、よくよく確認したら規則も未整備だった、といったことが次々と判明しました。主幹事証券の公開業務部の担当者からは「どの企業もそうですよ。上場準備をきっかけに見直すんですよ」と諭されたものです。社歴の若い企業でしたら走りながら体制を整えていくことが可能ですが、なまじ社歴が長く実質が多少あやしくても体制は整えていた企業でしたので、社内の各部門から「えー、今あるのじゃだめなの」といった反応がありました。「今あるもの」とは親会社のガバナンスのためのもの、今度は独立した企業の自前のものを構築し(たとえ結果的に「今あるもの」に落ち着いたとしても)運用していく、ということをいかに納得してもらうか。当時はこちらも余裕がなかったので、うまく社内の声に対処できていませんでした。(もう戻れないのですが)
 また上場準備を開始した時期は官製不況(我々の所属する業界にとっては)やリーマンショックの影響を受け、なかなか業績が安定しない時期でしたので、「本当に我々が上場できるのか」と懐疑的な見方の従業員も多かったのも事実です。
 体制構築の考え方や書類の作成方法は主幹事証券、印刷会社などが教えてくれますが、「何のために上場を目指すのか」について準備会社自身がぶれていると、準備作業が「非常につらいやらされ仕事」になってしまいます。
今後悔してもどうにかなるものではないのですが・

 一方、上場準備を巡っては次第に投資ファンドとの間でもすっきりしないことが生じてきました。
それは次回に。

 毎度、散文的ですみません、ひととおり最後まで到達したら見直します。



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