2014年02月

2014年02月17日 00:37

また1ヶ月も空かせてしまったこのシリーズ、さっさと先にいかなければ。

 前回は株主(投資ファンド)が直前期での資本政策(大株主づくり)は実行しないという結論を出したところまででした。
ところが、というのが今回の話です。

 申請直前期の年度が間もなく終わるという2月にくすぶり始めたのが、株主が複数の事業会社とDDの段取りを行っているという話です。
「このタイミングで株主づくりもないだろう」とは思いましたが、投資ファンドなりの考えがあるのだろうと納得するよりありません。ただ、財務部門は3月決算の諸作業にかからない日程を要望していましたし、何より我々上場準備事務局は、申請書類準備の最終段階にありました。まさか上場準備の妨げになるようなことはしまいとは思っていたのですが。。。

 結局、3月中旬から4月にかけて数回DDを実施するので協力するように、と伝えられたのが3月初旬。
ちょうど上場準備事務局が上場申請書類である「Ⅰの部」「Ⅱの部」そのほか主幹事証券審査に必要書類をすべて揃え、また主幹事証券がバリエーションの検討を始めたところでした。公開業務部門担当者が「具体的に審査日程を決めましょう」と気合いを入れたところで、「すみません、実は」とDD実施の説明をするはめになりました。
「いまから資本政策ですかね?」「さあ、なんとも」「株主が決めたことですから仕方がないですね」
段ボール箱に詰めた申請書類を横目にみながら、こんな会話で時間を埋めるしかありませんでした。
 某雑誌の記事にちらりと書きましたが、本当に「対象会社の事情」など一切考慮されないものなのですよ。

 DDは複数の事業会社が順番に実施するという予定が組まれていました。資本政策なのか、それとも他の目的のためなのか明かされる事なく、上場準備事務局のメンバーがそのままDD事務局を務めるという体制で始まりました。
 1社目のDD。「資料中心で回答いただければよいので」と法律事務所や会計事務所から次々と送られてくる質問票。上場準備書類やそのために整備した社内書類でまず大半の質問の回答になるというなんとも皮肉な状況となりました。
DDが佳境に入り、飛び書く追加質問の内容やインタビューなどを通じ、「持分取得のためではない。支配権をとるつもりだ」と感じました。僕もだてにいろいろな目に遭っていません。元親会社が投資ファンドに売却するときのDDよりも、「微に入り細に入り」だったのです。
 投資ファンドが選択した出口は、事業会社へのバイアウトだったわけです。

 1社目のDDが終了し、さて2社目は?といいますと2社目はありませんでした。1社目が好反応だったからです。
何がどこまで進んでいたのかはっきりと現場には降りてきませんでしたが、4月のある日投資ファンドのパートナー社員から僕あてにメールが届きました。メールに添付した書類にマーカーをつけてあるので、その部分を作成し埋めてくれとの依頼でした。
メールに添付されたその書類は、公取委に提出する企業結合審査のためのものでした。
これでIPOはなくなった、と思わず目を閉じました。

 メールが届いた日はたしか某法律雑誌の読者交流会の日でした。その夜のビールは苦かったな。(つづく)

                             


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