企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

2016年01月


インテグリティとボランチ Business Law Journal 2016年3月号 その1

 更新が滞っております。
 BLJ3月号、その1です。

 特集 「2016法務の重要課題」これも定番企画となりましたね。企業の法務部門管理職へのアンケートですので、担当者とはまた違う視線を持っているかもしれません。匿名であるにせよ、同業者や取引先業種の法務管理職が何をどう考えているか知ることができる、あるいは共有することができるいい機会だと思います。(何を回答したか憶えていないのですが)
 後半は実名記事。エントリータイトルは実名記事の中でカン!と響いた文言です。
まず、「インテグリティ」。ユニリーバ・ジャパンホールディグスの北島社長の記事から。
 コンプライアンスの次の段階に進むのかと、未だ「コンプライアンスって何?」ということを砂漠に水をまくように説いている段階の企業とは、先頭との差がひらいてしまうなあと思ったのでした。いわれていることは至極当然のことなので、グウの音も出ません。先般の愛知の産廃業者が引き起こした事件を見れば、社内、グループ関連会社だけでなく、業務委託先、納入先にも自社のポリシーを理解し実践してもらわなければならないことは明らかです。勤務先でも「守って貰わないともう次の仕事出せないからね」ということを始めている部門はありますが、インテグリティと呼ぶものなのかどうか。
 しかしコンプライアンスやCSRでもそうでしたが唱え始めたトップランナー企業はいいのですが、追随していく側だとスローガンにした途端に形式化、陳腐化してしまう点も否めないところ。ここをどう克服していくかでしょうか。

 ボランチはキリンの法務部長の方が記事後半で、法務部門に「ボランチ」の役割を、ということを書かれています。言い得て妙、だと思います。もっとも少人数体制だとなにかと走り回らざるをえないのですが、ゲーム(ビジネス)の読みと位置取りというのは重要ですからね。
 前線部門からするとバックオフィスにはディフェンスだけでなく、欲しいところにパスを出してくれ!というのはあるでしょうし、こちらとしても意図を読めるパスの受け手が欲しいというのはあります。
とはいえ「法務部門も走れるじゃないか、いい読みしているじゃないか」と思われないと、「『ボランチ』を目指します」といっても「はあ?」と返されるだけです。
 まず体力だよなと改めて思うのでした。(何が体力かは別として)

今回はその2を書きます。

 

現在地のガイドブック 『消費者取引の法務』

 寒いですね。庭先の雪が融けきっていない東京・北多摩です。

 消費者の目線を忘れるな、の目線で物を考えろ、モノづくりをしろと日々掛け声がかかる昨今でありますが、経営企画や設計、製造、総務、経理などの部門は日常業務が消費者取引のどの部分に関わっているのかすぐにはイメージしにくいのではないでしょうか。販売部門でも、訪問販売や店頭に立ち直接消費者と向き合っている販売員以外は消費者取引とは無縁です。
法務、コンプラ部門だと消費者やその側に立つ人を顔を合わすときは、あまりよろしくないケースです。
自分のところに話が上がってきた瞬間にそれまで「お客様」だった存在が「消費者」とか「使用者」という存在に入れ替わるので、なんといってよいのやら。

 それはさておき。
 森・濱田松本法律事務所編「消費者取引の法務」 。昨秋、刊行されていたのを手に取りました。
編、なので章ごとに執筆される弁護士が異なります。一人の弁護士が執筆しきれるテーマではない、ということですね、多分。
 章の構成は第1章から順に表示、不当勧誘規制、約款・利用規約、パーソナルデータの活用・セキュリティ、景品規制、製品の安全性確保と事故対応、消費者団体訴訟制度、消費者取引と取締役の責任、の全部で8章。順に関係なく実務に関わりに深い、「製品の安全性確保と事故対応」あたりから読みました。
 各章ともそれだけで何冊もの書籍、論文諸々があるテーマですので、本書一冊を読めばそれで十分というものでないことはいうまでもありませんし、著者サイドもそこまでは考えていないと思います。
範囲が広大で、また業種業態によっても事業者の立場や義務、責任が様々な消費者取引に関わる法務の「現在地」のガイドブックのような存在の一冊ですね。
内容は企業法務担当者なら前置きなしで読めるものですが、これをどのように現場に噛み砕いて伝えるか、それが課題だなあとぼやきつつ付箋を貼っている週末でした。








 

読んだ本 企業不祥事の緊急事態対応「超」実践ハンドブック

 「すべての企業で不祥事は起こる!」と目に眩しい黄色系のオビが巻かれた書籍『企業不祥事の緊急時対応「超」実践ハンドブック』。レクシスネクシスとエス・ピーネットワークによるミドルクライシスシリーズの第4弾です。
 企業の事故・不祥事が相次ぐなか、危機管理対応に関する書籍や記事を目にしない日はありません。しかし、こういう状況においても「ウチの会社に限って」と思っている企業や企業経営者が少なくないと思います。この手の書籍は大型書店でも「法務」コーナーに積まれていることが多く、経営層あたりが立ち寄るであろう「経営」「ビジネス」のあたりには置かれているところはあまり見たことがありません。ひょっとすると経営者には書籍の存在すら知られていないかもしれません。うーむ。

 それはさておき。
 危機対応の専門家がまとめた本書は緊急事態の「その日」に企業はどのような状況に置かれそして何をしていかなければならないか、第1部では誰もが知っている実例(成功例と残念な例の両方)、第2部では緊急事態対応の基本と実践について、「現場」の実務が進むことを最優先としてコンパクトにまとめられています。巻頭の「チェックリスト」や本文の要所要所に挿入される図表やチェック項目は、そのまま活用できると思います。(日頃からの準備ができていない状況ならなおさら)第2部のほとんどを占める第7章は微に入り細に入りで、ポイントとして監督官庁や制度が要因となるケースを挙げている点、対策にあたる従業員のメンタルケアに触れた点など、さまざまな現場を押さえているなあと思いました。

 とはいえ、この本書に書いて有る事をやれば十分ということではないことはいうまでもありません。
 企業の緊急事態対応に対する満足度(というのが適切かどうか)の基準は当該企業が決められるものではなくマスコミ含めた世間が決めるもの。この点が緊急事態対応の難しさだと思います。
 そして、ここ10年ほどの企業の不祥事対応の事例のストックや本書のような「危機管理ハンドブック」の存在は、満足度の水準を引き上げているように感じます。ときに過剰とも思える報道があるのは、期待値が上がっているからではないでしょうか。

 ところで、本書のようなハンドブックは大企業を想定して書かれたものが多いですね。不祥事を起こす企業は大企業ばかりではありません。大企業以外の企業では法務、広報、渉外といった専門職部門がない方が多いでしょう。そのような企業の緊急事態対応にフォーカスしたものもあるといいですね。





 

スターの死におもう

時間という、鳴りの狂った時計をば欺いてやる目的で
   二十種も詩風を変えて歌ってきた
このやり方で避けてきた、称賛も、
  さては高貴な酷評も
   出典:コクトー『平調曲』堀口大學訳

 デビッド・ボウイの訃報に接した時、『平調曲』の冒頭の一節(この一節だけ妙に頭にこびりついているだけで、全篇を諳んじることができるわけではない)が頭に浮かびました。ボウイも時代とともに作風、サウンド、ファッションを次々と変えていました。過去の自分のスタイルや実績にこだわらない点では、ジャズの帝王マイルス・デイヴィスの姿と重ねてしまいます。
 個人的にはブライアン・イーノと組んだ「ロウ」あたりが好きなのですが、それも彼の音楽人生の1ページに過ぎず、軽々に評価を決められない人であります。
 今後様々な評論が出回ることを思いますが、何を語っても群盲象をなでるということになりそうです。

 日経の1月13日付朝刊の春秋欄でもボウイを取り上げ、最後に企業経営者に対して無茶ぶりなコメントを付しているのがなんとも。過去の実績にとらわれ、時代の変化に遅れをとるなということですが、ボウイは時代を作っていった方ですからね。ちょっと違うかも、と思ったわけです。ただ過去しか語る、すがるものがない人生というのは虚しいものであるのは確かですね。

 凡人の自分はいつまで走り続けられるか、と自問しています。

 

 

コトバノミナモト  源流からたどる翻訳法令用語の来歴

 勤務先はほぼ国内事業、英文契約をはじめ外国語の文書を仕事で扱うことは滅多にありません。
したがってごく稀に英文契約がこちらに回ってくるときは、自分の脳内で英語は常に「ふりだしに戻っている」状態にあります。そのような状態であるにもかかわらず、このたび自分のポジションに求められるスキルに「英語」と規定されてしまったので、なんと割に合わないことか。
英語は嫌いではない、英語が自分を嫌っているのだと戯言を繰り返す日々であります。

 法令用語というのはわかりにくいもの。日常用語と法令・契約で使用する用語がもう少し近ければと何年も法務の仕事を続けていても思うことです。法律に関わる業界の符丁だと割り切ってはいますが(失礼!)、なんでこんな語句になったのかといえば明治期に無理くり外国語を翻訳したところが一因。
だからといって今日本語で作成し使用している契約書を英文翻訳した場合にもとどおりの語句と意味になるとは限らないだろうなあということで、BLJの連載コラムがまとまった「源流からたどる翻訳法令用語の来歴」(古田裕清著:中央大学出版部)を手にしました。連載当時も読んでいましたし、年間購読をしているのでレクシスネクシスのサイトでバックナンバーを読めばいいのですが、冒頭の『はじめに』に「加筆・修正」したとありましたので、こういう言葉に弱い人間は購入してしまうのですよ。
 本著(コラム)の趣旨は『はじめに』にあるように「日本に法の支配が定着しないの理由を考える」ところにあります。これは各コラムの端々に繰り返し表れています。
それはともかく法令用語であっても言葉の源を知る時間というのは楽しいものですし、たとえ嫌われても自分が英語をはじめとする外国語への興味を持ち続けるという点でも役立つコラム・1冊だと思います。

 このところバンバン書籍を刊行しているレクシスネクシスですが、このコラムについては著者が教鞭をとる中央大学の出版部から刊行されました。中大らしい質実剛健で学内の生協書籍売り場にしっくりきそうな装丁。レクシスネクシスが装丁したらもう少し趣が違ったものになっただろうとも思います。
卒業以来母校にたいした貢献もしていないのでせめて書籍は買います。




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