企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

2016年07月


拾い読み ビジネス法務2016年9月号(2)

 ビジ法9月号、続きです。

 自分の業務に否が応でも関わるだろうという点で
 実務解説「消費者集団訴訟リスクを回避するクレーム・リコール対策」。
まだ先のことと思っているうちに10月1日が施行。

 日常の商取引の形態はB to B、商品の最終引き渡し先、役務の提供先が消費者という製造事業者の場合、記事本文P97にあるように「販売事業者からの訴訟告知」から「裁判補助参加」という事態を危惧しています。消費者と直接契約する事業者が中小規模以下というのは珍しいことではありません。製造事業者が消費者との契約の当事者ではなくても、消費者と直接契約関係があると思わせるような要素がある場合に、中小規模の販売事業者ではなく大企業である製造事業者を相手に訴訟を起こす可能性もあります。(『消費者集団訴訟特例法の概要と企業の実務対応(商事法務)』p18に商品の保証パッケージを事例に言及されていますね) 考えるとキリがないのですが。
 記事本文は、製品クレーム、リコールを中心に書かれていますが、2007年の改正消安法施行以来製品事故からリコールに至る規則やマニュアルはだいぶ整備してきたという気がします。ただマニュアル化すればよいというものではないというのも経験上思うことで。
 製品の自主点検や自主回収、リコールに至るまでは類似クレーム・事故の発生件数をにらみながらという部分があるのですが、消費者裁判手続特例法でいうと数十人程度の消費者被害が生じていれば訴訟提起
可能というのは厳しい目処と考えざるをえません。ちらほらと数件の報告が製造事業者本体に上がってくる頃には、訴訟リスクは「潜在」ではなく「顕在」と捉えるべきということで。「100匹目の猿」どころではないわけです。「これはまずいかも」と第一報だけで危機を感じる「感性」が求められるのではないかと、論理的ではないのですが思わざるをえません。
 過剰な反応はあれですが、製造事業者は決して無縁な法・制度ではないと周知しておかないとなあと思う次第。


 ところでリコール、製品事故については製造事業者向けに損害保険商品がありますが、本法の訴訟をカバーする損害保険はあるのかどうかと気になり始めたのでした。

 拾い読みは以上です。(他の記事もちゃんと読んでますよ、ただ残念ながら関わりが少ないので)

拾い読み ビジネス法務2016年9月号(1)

 拾い読みです。毎度。

 特集記事「社外役員が鍵を握る新しい取締役会の舵取り」(長いコピーですね)
 親会社から非常勤取締役が派遣されている完全子会社の法務としては、上場親会社の取締役会が「新しく」なった結果が、いつどのように下に降りてくるのか待つだけ。といってしまったら身も蓋もないのですが、実際のところ何がどうなっていくのかその過程が子会社側に逐一伝えてくるとは限りませんからね。
 スピードをモットーとする企業があります。毎週月曜日午前中に取締役会を開催する場合に毎回社外役員が出席することが可能なのか、また議案の一つ一つを事前に読み理解して会に臨むことができるかといえば少し疑問ですし、そもそも事前に議案を渡すことができるのか、事前説明を誰が行うことができるのか、という問題があります。
 取締役会の事務局がその任に当たるのでしょうけれども、おそらく事務局を務めるであろう法務系または総務系の人間が、すべての議案を理解し第三者に説明するというのは簡単な仕事ではありません。
だからといって監査役(会)のように補助使用人を置くことができるようにするというのも、なんだか間接コストが増えるだけのような気がしますしねえ。
 議案の選定を含めて、まず取締役会事務局の変革が求められているのではないでしょうか。

 完全子会社の立場でいうと、親会社の決裁基準に基づき事前に稟議書を回すことが多く、取締役会では追認という場合も多いのですが、親会社の決裁過程について社外役員の関与はあるのか、雲のうえのことなのですよね。
 (続く)






 

「平気な人たち」

 良性(だと思う)腫瘍3個中2個めの摘出を終えてじっとしていた週末。

 実は、というほどでもありませんが、サイコ系のサスペンスやホラーが好きなのでたまに読んでいるのですが、バラバラ殺人のニュースが増えているので「どうせフィクション」と思えなくなりましたね。
 この手の小説に登場する犯罪者はデフォルメされているものと思いたいのですが、猟奇的な犯罪を引き起こすレベルではないにしろ、どのように理解したら良いのかわからないという人は確かにいます。

 内部通報を受けての調査や不正行為の調査の業務に関わると、たまに「?」という人物に出会うことがあります。
 パワハラ、セクハラの類は今のところ概ね「勘違い野郎」のレベル の人物なのですが、不正行為の調査中にそういう人物に出くわすことがあります。
 希薄な責任感と罪悪感といいましょうか、他人に迷惑をかけている、あるいは傷つけていることを自覚していない、ヒアリングなどには律儀に応じるが、事実を話すわけではない。意図的に会話をはぐらかしているのではないが、意思疎通がスムーズに図れない人物。外見上は普通のサラリーマンなのですが、一皮むこうとしたら、何やら得体の知れない存在だったという、そんなケース。
 不正調査に長けている弁護士に尋ねてみると、「病的」ではないまでもある種のパーナリティーは確かにいるとのことでしたが、そうだとすると普通の法務・監査部門の調査担当者による不正調査にもある種の困難が生じると思った次第。

 そんなわけでこんな本を以前読んだことがあったのでメモしておきます。





 

安全地帯  ビジネス法務2016年8月号

 夏になり長距離通勤の疲れがどっと出ています。毎晩寝落ち。

 ビジネス法務2016年8月号、特集記事「わが社でもできる!贈賄防止プログラムの実践」。
 たまたまオフィスの机の上に置きっぱなしにしていたら、某アジア系企業出身の取締役から「人間がいる限り賄賂は無くならないよ」「贈賄リスクを下げながらどうやってうまく付き合っていくかだよ」と声をかけられました。

 勤務先はほぼほぼ国内事業のみなので、海外での贈賄リスクというものは一見小さく見積もりそうですが、そうでもないなと最近思っています。さすがにこのご時勢、海外での事業活動がゼロというわけではありません。 むしろほんの少ししか海外と関わらない企業の方が贈賄リスクが高いのではないかと思います。現場担当者のみならず、管理者、経営陣も本格的に海外活動に対する準備をしないまま、ちょっと首を突っ込んでしまった、丸腰でアウエーに飛び込んでしまったという企業の方が地雷を踏んでしまうリスクが高いですよね。どう考えても。

 特集記事冒頭の「形式的な禁止から実質重視の判断へ」(麗澤大・高教授)の記事。
企業コンプライアンスの一人者から「形式的コンプライアンス」から脱却せよという趣旨の示唆は軽くないと思いました。
 形式的コンプライアンスというのは、悪くいえば「コンプラ(部門)の、コンプラ(部門)による、コンプラ(部門)のための」コンプラです。現場の人や実情をよく知らない、知らないのに知ろうともしないコンプラ坊主がやりがちな仕事です。「ならぬことはならぬ」の一点張り。「形式的コンプラ上」これが一番リスクを負わない、といえましょう。ただ海外でも事業ともなれば、法令違反リスクは小さくなるかもしれませんが、事業継続のリスクや従業員の生活(生命含む)が脅かされるリスクが増大する可能性があります。そこまで考えて「ならぬ」といいきっていますかね。

 形式的コンプラしかやらないコンプラ部門に対する現場の本音は「現場も見ないで(知らないで)何がわかる」「安全地帯にいる者なら何とでもいえる」です。(これは国内事業でも同じですけれど)その結果、本来コンプラ部門が把握しておかなければならない情報が取れない、そしてある日突然重大なトラブルが!ということにつながってしまうのではないでしょうか。

 実質重視の判断を行うためには、コンプラ部門(法務部門も含む)が「安全地帯」から外に踏み出す必要があり、またそうでなければ現場からも情報は取れませんし、相談や報告もないでしょう。(安全地帯というのは本社オフィスという物理的なことを言うのではなく、コンプラ部門担当者の心理的なもの、行動の基準においてあるものです)
 
 贈賄防止をはじめとする不正防止は、まずそこからだろうと思った次第。(反省も含めて)

 
 

拾い読み Business Law Journal 2016年8月号(2)

 相変わらずの更新ペース。間が空いてしまいましたが、BLJ8月号の(2)です。

 今回が連載最終回の【契約書審査 差がつくポイント2】
 最終回は『契約終了時の措置(共同事業契約)』 
 少し外れますが、受発注業務システムで運用しているのですが、買掛も売掛も一定期間取引がないとシステムの取引先マスターが一旦登録抹消になります。資材部門も販売部門も実務では支障がないためか、契約を終了させていなかったということがありまして、ちゃんと契約を終わらせないと、契約上の義務がずーっと残るよというような小言をいったことがあるような。

 今回の記事は継続的売買契約ではなく共同事業契約を例にしてますから、より契約終了合意が重要です。本来、契約締結時にある程度終了時のことも織り込めればいいのでしょうけれども、「まだ始まってもいないうちに」と現場からの反論・抵抗がありますからね。(最近はそうでもなくなりましたが)
 最近ではM&A により当事者企業の資本構成や所属企業グループが変わるなど外的要因により契約終了という可能性もあります。「どうしよう?」という現場に対してどのように円滑に、かつ余計な義務や負担を負わないよう契約終了合意に持ち込むか、これも法務担当者が押さえておくべき役どころではないでしょうか。
 共同事業の形態がBtoBであっても商品や役務が消費者対象であれば、その方面の責任分担の交渉に割く時間が増えることは間違いありませんし、業界の商習慣上すっぱりと割り切れない事項もあるかもしれません。
 自分が「法務担当者にも事業部門の経験を」という理由は、契約締結の場面よりも契約終了・事業手仕舞いの場面でそれが活きると思うからなのですが、どうでしょう。

 何はともあれ、本連載は通りいっぺんの審査ではなく現場をどう収めるかという視点でしたので多くはない紙幅ですが面白く読んでいました。前回連載と合わせて単行本になる...のかな。

 (いつもどおり)簡単ですがそれでは。





  
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