2017年01月

2017年01月25日 06:30

 不精して2号まとめて、というわけではありません。

 BLJ2月号、恒例の「法務のためのブックガイド」2017版、そして3月号からは、惜しまれつつもとりあえず一旦(敢えて、一旦といっておきます)「企業法務ブロガーの辛口法律書レビュー」 について。

 2月号の「法務のためのブックガイド」。最初期の「今年買って読んだ書籍を持ち込んで座談会しましょう」と手弁当的企画も、今やBLJの柱の特集となりましたね。企業勤めの法務担当者の遠慮のない率直なレビューに敵う提灯記事はないでしょう。レクシスの書籍も斬られているのに、編集スタッフは太っ腹だなと思います。
書籍の購入はどうしても自分の業務に関わる書籍中心になるので(まあ、これも少ないのですが)、業務とは関わらないITやファイナンス、海外法関連の書籍は後回しになります。とはいえ、業務に関わりが少ないとはいえ、企業法務界隈のいわゆる「共通認識」は持ち合わせていたいので、様々な業種の法務担当者によるレビューが掲載されているのは正直助かります。全部を購入するわけではありませんが、参考にはさせていただいております。
 しかしそれにしても昨年はきちんと本を読んでいないなあと反省した次第。

 さて自分の周囲では2月号のブックガイド冒頭座談会での「不在」がかえって話題になったronnerさん、3月号の「辛口レビュー」ではきっちり締めていただいております。1位に「会社謄本 分析事始」を持ってくるあたり、まさに真骨頂ではないでしょうか。(この本、実は立ち読みしたことはあるのですが、閉鎖登記や下線部の多い登記簿謄本を抱える身としてちょっと辛かった(いや悪いことはしていませんよ)ので購入を見送っていたのです。)
 それはともかく最後まで「著者にも読者にも厳しい」連載でした。

 楽しみながらも思ったことを少し。
 ブックガイドやレビューの危険なのは、これから読者となる人間の「先入観」を左右してしまうところ。読者はレビューも「レビュー」しなければならない、と思うのです。ハードル高いけれどね。同じ職種である企業勤めの法務担当者のレビューといえど、所属企業の立ち位置からのものというのは忘れてはならないでしょう。わかりやすい例でいうと「下請法」、「システム開発」関連書籍。発注者側企業の法務担当者と、請負企業側の法務担当者とでは当然関心ごとが違いますからね。

 ともあれ、顕名匿名を問わず企業勤めの法務担当者による書籍レビューというジャンルを打ち立てたBLJ。継続することの難しさは察するのですが、このブックガイドが下手に「権威」にならないよう、手弁当的味わいを残しながら継続することを望みます。

 そしてronnerさんの「辛口法律書レビュー」については、法律書版「読まずに死ねるか」のようになってもらいたいなあと勝手に思っています。(本当に勝手だ、お気を悪くされたらすみません)










 

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2017年01月14日 17:53

 ビジ法、拾い読みです。

 特集は「脱過剰コンプライアンスのすすめ」
 BLJでも増田英次弁護士が「エモーショナル・コンプライアンスの理論と実践」を連載されていますし、「コンプライアンスの見直し」の機運というかムードがあるのでしょうか。CSRだ、コンプライアンスだの旗を振っても、依然企業の不祥事は後を絶ちませんし、特にコンプラ含む企業ガバナンンスのお手本のように思われていた大企業が会計不祥事の張本人になってしまいましたので、ここ20年近く取り組んできた「コンプライアンス」って何だったの?という疑問が企業法務担当者側から生じても仕方ないのかなと思います。

 そんなことを思いながら特集記事を読んだのですが、そもそも何をもって「過剰コンプライアンス」なのか、というところが腑に落ちず。特集タイトルは「脱過剰」というよりも「脱形式的」とした方が相応しいのではないかと思いました。キャッチーな見出しにはならないのかもしれませんけれど。

 企業によって「コンプライアンス」の生い立ちは異なります。勤務先は、かつて所属した企業グループの総会屋問題が源流にあるので、どうしても「企業倫理」というか「べからず」系コンプライアンスの性格を帯びてしまいます。総会屋問題に限らず、不祥事・重大事故という事件を経験した企業(のコンプラ担当者)は「再発防止」を念頭に置かざるをえません。どうしてもギチギチの仕組み作りを進めます。行政やメディア対応などに忙殺された(原因は自社にあるにしても)「あんな思いは二度としたくない、させたくない」というのがそのココロです。
 一方、比較的業歴の若く伸び盛りで、幸いなことに不祥事などが発生したことがない企業(のコンプラ担当者)は、伸び伸びとした、自由闊達な社内の空気を大事にしたい、コンプライアンスだって楽しくやりたいと思うでしょう。

 どちらが正しいとか間違っているということではありません。

 不祥事・重大事故を経験したといってもいつまでもその企業に当事者が残っているわけではありません。当事者や当時のコンプラ担当者が定年退職等でその企業を去った後に、仕組みやルールを設けたことの理由や意味を理解しないまま、盲目的にそれらを遵守するところから「形式化」が始まるのだろうと思います。
 また、今現在若い企業も、業歴を重ね「企業の青年期」を知らない従業員の割合が増えていきます。その時に、和気あいあいとした空気を前提としたコンプライアンスの仕組みで充分かということを検証しなければ、こちらもまた「形式化」の道をたどるのではないかと思うのです。

 「形式化」や「陳腐化」を避けるかということ、ひいては「発端や経験の伝承」がベテランと中堅以下若手法務担当者の共通の課題であって、 「過剰」というのはその課題が生んでいる現象じゃないかと思った次第です。
 
 空きっ腹でビール飲みながらのくだまき。






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2017年01月08日 18:05

 ようやく今年最初のエントリー。

 久々にジュリストの特集から。

 勤務先では営業担当者一人につき1台、公用車を使用させていますので、毎日数百台の公用車が日本中を走り回っています。 そんなわけで交通事故リスクはつきもの。毎月ぶつけました、ぶつけられました、自損しましたという報告を何件か受けます。幸い重大な人身事故というものはないものの、頭の痛い問題であることには変わりません。
 公用車が全て「自動運転」に切り替われば、従業員による自動車事故はゼロになるのか、運行管理責任、使用者責任といったものを考えなくても良くなるのか、そのあたりが気になるところなのですが。

 自動運転というほどでなくても、すでに自動車の大部分はソフトウェア化」しています。吸排気・燃焼系はソフトウェアにより制御されていますので、走り屋系が手を出す「チューンナップ」はまずソフトウェアの書き換えなのですよね。ソフトウェア化と同時にブラックボックス化も進んでいて、ほとんどの自動車はボンネットを開けてもユーザーが自ら整備、点検できる箇所は非常に限られています。オイルチェックすらユーザー自らできないようになっている某高級車もあると聞いたことがあります。

 運転も公道での運行も全てソフトウェア・ネットワーク化した自動車に委ねるときいたときにまず思ったのは「機械は壊れるものだし、ソフトウェアはバグが付きもの」。事故発生の際の責任問題はどうなるのだろうと。今回のジュリストの特集は一括りに報道されイメージづけされそうな「自動運転技術」について主に「民事責任」の視点からの論稿で、公用車を数百台抱える企業のリスク担当者にとっても、いち個人ドライバーとしても非常に面白いものでした。 

 自動運転技術が普及し企業の公用車全てを新型の自動車に変えた場合には、現在発生しているようなドライバーのうっかりミスによる自動車事故はおそらく激減すると思います。仮に事故があったとしても、ソフトウェアやネットワークに起因するものであればドライバー(従業員)や企業の使用者責任も問われることもなくなるでしょう。道交法上の「運行管理責任者」の役割も変わるかもしれません。
ただあくまでソフトウェアやネットワークのバグ、というものを自動車メーカー、ソフトウェア、運行システム側が認めるという前提です。業務システムのトラブルでもこの点についてはなかなか決着がつかないことがありますから、そうそう簡単な話ではないだろうという気もします。
 バグ発生を受けて自動車メーカーやソフトウェアメーカーが修正ブログラムを配信したとしても、ユーザーが確実にアップデートしなかったことが原因で発生した事故の場合はどうなのか。公用車であれば使用している企業の責任になるのか。公用車がリースの場合は自動車リース会社の責任になるのか、懸念事項をあげればきりがなさそうです。
人が自動車を使用する、運転するということについて、自動車産業関係者(ユーザー含む)に従来以上の手間と負荷がかかるかもしれませんね。

 それと、運転技術・免許の点。
自動運転や自動運行が普及したとしても、不測の事態は起こるもの。不測の事態に対応する場合を考えると、人の運転技術についてはより高度なものが求められるのではないでしょうかね。AT限定免許のように「自動運転限定」免許とはできないと思います。

 10数年前か、自動運転・運行システムが確立した近未来社会で、運行システムのトラブルやシステム破壊という犯罪に対して、主人公たちが1970年代のスーパー7、ロータス・ヨーロッパ、ランチア・ストラトスといったハンドリング命のクルマを走らせて解決に当たるというアニメがありました。なんか現実味を帯びてきましたね。

 2気筒、MT車をバタバタ走らせながら思ったことをつらつらと。

 遅くなりましたが本年もよろしくお付き合いくださいますようお願いいたします。





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