2017年04月

2017年04月29日 18:14

 承前。ゆっくり読みました、BLJ。

 再び特集記事「取締役会運営 これからのスタンダード」

 被ガバナンス側から書いてみます。
 グループガバナンス、子会社の経営状況の監督モニタリングというと、子会社取締役会に取締役、監査役を派遣し、彼・彼女らが取締役会その他重要な会議に出席して云々というのが一つの手段ではあります。しかし決裁基準をグループ会社共通のものとし、設備投資、借入、不良債権処理など金額の規模によって親会社の管掌取締役の決裁、親会社関係部門の稟議、そして親会社取締役会の承認を要する、というような手段もあります。こちらの方が実効的かもしれません。
 この場合、たとえ取締役会で決議したとしても親会社の取締役会で否決される可能性があります。そうならないように、ほぼすべての案件で事前に管掌取締役の内諾を取り付けるなり稟議を回しておくということになります。子会社取締役会は親会社の承認を得た案件を「形式上」承認可決する手続きのみ、ということになりますね。決議機関としての存在感は非常に薄く軽くなるわけです。事務局の業務はまず決議事項として付議された議案が、親会社の決裁を得ているかどうかの確認を行うことになります。「初耳だぞ、そんな話は!」と怒られるのも事務局の仕事になってしまいます。
 決議事項が形式的なものなら、取締役会は業務執行状況の報告や「経営に関する意見交換」のための機関の位置付けになるのでしょうか。
 「子会社は一事業部門」というような位置付けの場合には親会社側役員から子会社社長や常勤取締役に対して指示命令が下される場となります。それも監督のうちといえばそうなのかもしれませんが、例えば親会社からの指示命令が子会社の利益を損なう可能性が高い場合に一体誰が待ったをかけるのでしょうか。事務局はその場では庭石のように黙っているしかありません。
 子会社が業績不振に陥っている場合において報告や意見交換の際に非常勤取締役から損失見込の回答を求める発言や減損の可能性に触れるような発言があったとします。このような発言を議事録に残すか残さないか、議事録作成者の判断に委ねてよいのかという問題。議事録は決定事項のみ記載し他は非常勤役員の発言のうち内容があったもののみ記録、というのが現実的な対応とは思いますが?
 このように考えてみると子会社の取締役会議事録は薄っぺらいものになり、少なくとも取締役会議事録からはグループガバナンスが有効なのか読み取れないということになりませんかね。どうなのでしょう?






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2017年04月27日 07:38

 内容がヘビー充実しているので、ぼつぼつと読んでいる今回のBLJ。 

 定時株主総会を目前にしたこの時期だからなのでしょうか特集「取締役会運営これからのスタンダード」。 
 先日、親会社の法務室長のデスクに赴いたところ、「コーポレートガバナンス・コードの実践」が置いてあったので、また何か下りてくるのかなと思いました。最近諸々子会社管理(把握か)の手続きが繰り出されているのですが、親会社法務担当者にコードとの関連を聞いてみると「うーん」と唸っていました。

 ガバナンスを受ける側にいると完全子会社は独立した企業であり続けられるのかという問いに当たります。勤務先の実例をここで披露するわけにはいきませんが「ここまでやるのか?」あるいは「こうまでしないと管理できないのか?」という要求(命令か)を受けます。親会社が選び決定した管理手法であれば従うほかないのですが、子会社の業態と必ずしもマッチするとは限りません。一方子会社各社の事情に合わせたガバナンスというのも非効率であることも理解できるので、しんどい気持ちになりますね。一番しんどい思いをしているのは子会社社長とは思いますが。

 もうすこし読み進めたところでエントリーを整理します。(すみません)




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2017年04月22日 18:01

 少し前の話になりますが、備忘録として。

 今年も新入社員集合研修の2日に設定されていたコンプライアンス教育。
 昼食後の時間帯の2時間、睡魔に襲われる時間帯の座学。毎年のことながら眠らせないように、話し合わせたり指名して答えさせたりと講師のカリキュラムの構成力と話術が問われます。
 今年は、入社したばかりの新入社員に「会社って誰のものだと思う?」という、やや意地の悪い質問からスタートさせました。

 今年の新入社員はバブル崩壊を引きずる時期に生まれた子たちです。山一證券や拓銀、日債銀が破綻した頃の生まれ、リーマンショックのときですら小学校高学年か中学1年生なわけです。
不正会計を例に話そうにも「カネボウ」という企業グループがあったことすら記憶にない、「海の家」事件といってもなんのことやら。日頃接している企業法務畑の人たちならば若くても、企業の事件は学生時代に何らかの形で学んできていると思いますがそうでない人の方が多いということを改めて感じます。
何をネタにすれば関心を持ってもらえるか、年々難しくなるというのが実感。 
それでもベネッセからお詫びの手紙をもらったことがあるとか何らかの引っ掛かりがありましたので、無理くり話を繋げていきましたが。

 人の記憶、特に研修内容などは翌日には前日聞いた話の8割は忘れてしまうもの。残り2割、何を記憶に残るようにするかというところから講義台本を考えてはいるのですが、こちらの思うようになっているかはたして?


 

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2017年04月15日 17:19

 たまには自分が棲息している業界ネタもインプットしなければと思っていたところ、ジュリストで「不動産法の最前線」が4月号(#1504)から連載開始。
 第1回目は「既存住宅におけるインスペクションの導入(宇仁美咲弁護士)」でした。

 10年以上前、隣家(正確には実家裏)が売りに出たので、家族中の金を集めて現況で購入しました。実家と同時期に販売された建売住宅でその時点で築25年を経過していましたが、住宅を買うというよりは地続きの土地を買うほうに重きを置いていました。したがって建物の傷みは承知のうえ。隣人がどのような住まい方をしていたかは知っていましたので覚悟はしていました。しかしいざ入手してみると予想以上の傷み方だったので、1年もしないうちに改修工事の手を入れました。

 住宅ストックの活用が叫ばれるものの、なかなか中古住宅の流通が進まないのは「中古住宅の品質がはっきりしない」「買ってからさらに費用がかかるのは困る」 ということが大きいでしょう。同じ「中古」でも自動車は整備記録が付いているのに、自動車よりはるかに高いにもかかわらず住宅はきちんとした記録がない、販売業者の説明も初めて家を買う消費者にとってはわかったようなわからないような。
 2009年から始まった「長期優良住宅」制度を適用した住宅は「住宅履歴情報」の保管が義務付けられていますが、現時点でそれらの住宅が中古市場に出回る時期とも思えません。

 改正宅建業法で「インスペクション」が導入(2018年4月1日施行)されることで、「インスペクション」という用語の定義、取引過程での位置付けが明確になることは、中古住宅流通にはプラスになると思いますし、プラスにしなければならないのだろうと思います。本文記事「Ⅲ 残された問題」で指摘された点のほかにもまだまだ課題は残ると思います。質の高いインスペクション業者の育成も必要ですし、業者が利益を上げられるようにしないと制度は維持できないでしょう。

 業者として、あるいは消費者としてリフォーム工事に関わった身からすると、解体してみないと本当のところはわからないというのも既存建物なのですよね。インスペクションは既存建物の品質の一部を証明する手段ではあっても、よくあるリフォーム工事紛争の特効薬にはなりきれないでしょう。
中古住宅流通の活性化ためのハードルを下げるのは容易ではないというのが実感。






 

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2017年04月08日 18:06

 某社の某分社化(某と書いたところであまり意味をなさないが)について、自分の経験と照らし合わせて。会社の正しい売られ方の焼き直しですが。

1.会社分割
 分社によって勤務先が部門ではなく「会社」になった当時は法務職ではなかったので保管されている書類から推察するだけですが、100%連結子会社になるだけなので分割協議書や分割契約書、分割確認書を見る限り特段の事項はありませんでした。
  • 分割資産・負債と分割基準
  • 業務基幹システムの運営費用負担
  • 研究開発や知的財産に関わる業務の取り扱い
といったところで業務が簡単ということではありませんが、のちの株式譲渡・非連結化の業務と比べれば
分社される側の業務負担はまだなんとかなる程度。「親会社」主導でしたし分社される側の「本社部門」も親会社からの出向組中心ということもありました。水面下で数年以内の売却という検討は進んでいたようですが、分社時点では「当該事業の経営判断の迅速化、効率化」などという「建前」がありました。
某社(しつこい)のように「子会社売却益」を親会社の救済に充てると公表されてしまうと、分社される側の心中いかばかりかと思います。

2.株式譲渡・非連結化
(1)分割会社の機関設計
 普通に連結子会社化する場合は株式譲渡制限をつけ非公開会社にしておくでしょう。
ただ子会社株式を自社・親会社の資金調達のために金融機関に担保として提供する場合、金融機関は株式譲渡制限を廃止を求めることが考えられます。定款変更により公開会社となる時点で、一旦役員は任期満了・再選任となりますし、監査役会設置会社にするなど必要な機関設計を変更せざるをえません。短期間で売却されるとしてもコーポレートガバナンス体制を整えるという負荷が「分社の本社部門」にかかります。

(2)非連結化
 株式譲渡・非連結化に向けての協議は、分社側には非常に重いものです。
 財務・購買・法務・人事・知財・ITシステム・庶務・健康保険・企業年金など業務基幹から従業員の生活にかかるものまで。今まで普通に「あったもの」が「無くなる」ということです。
別の事業会社傘下(吸収合併も含む)になるのと、短期間でも投資ファンド傘下企業になるのとでは「分社の本社部門」が検討する事項と範囲が変わります。切り離す側が実行することは明確ですが、切り離される方はそうそう簡単ではありません。

(3)分社の本社部門
 短期間で売却されるのがわかっているが売却スキームはまだ定かではないという状況で、分社の本社部門は何をすべきなのか。いやもっとそれ以前にどんな人材を充てるかということが問題になります。某社とは比較にならない規模の小さな企業だった自社でも時間・費用がかかりましたし、業務は知識も実行力も要求され、スタッフの精神に負担のかかるものでした。親会社が分社側に出す人材を出し惜しむ、または説得できずに流出させてしまうと売却スキームがうまく進められないかもしれません。一方でうまく進めたからといって報われるとは限らない業務です。

 いつ誰の身に起きてもおかしくないビジネス・企業環境ですので、メディアが騒ぐのに乗って面白がって語るものではないと思いますよ。
 

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