2017年07月

2017年07月30日 09:32

 体調不良がなかなか完治しません。これも加齢ですかね。

 先日のことですが、営業担当者からポンと回ってきた販売先からの取引基本契約署のチェック依頼。
さっそく「瑕疵担保責任条項」が落ち、「契約不適合条項」が設けられていました。法に詳しくない日頃やんちゃな営業担当者ですら「瑕疵担保責任」という言葉には敏感である我が業界、それが契約書にないことに気がつかなかったのか、なかったからいいやと思ったのか何の質問もないということは契約書を自分では読んでいないということがわかります。いずれとっちめようと思いつつ、それはともかくどのように民法改正を社内に浸透させていこうかと思うとやや重い気分になるのでした。
 ビジ法9月号の特集「ここから変える・始める民法改正への準備と対応」。もはや民法改正は語り尽くされた、あとは取引現場への落とし込みのみということか、ひな型改正や約款改正の記事が並びます。冒頭、川井信之弁護士が民法改正の全体像と対応モデルスケジュールをさっくり書かれていますが 、すでに2017年も半分を過ぎていますから時間がありそうでないということがわかりますね(汗)
 今自分のいる業界は非常に裾野が広く、また「業界」と一言でいっても様々な業種が関わっているので、元請の業界はじめいくつもの業界団体が契約書のモデルひな型をいじることが予想できます。それらがまとまり隅々まで伝わる頃には既に施行されているのではないかと思ったり、基本契約書の巻き直し、再締結ともなると印紙税はどのくらいかかるか、印紙税の節約にはどうすればよいのかとケチくさいことを考えたりしたのですが、まずは自分の現在地を反省して打つべき手を打つということからかなと思ったのでした。

 第2特集の「シェアリングエコノミーの法規制」
 今の自分が棲む業界・業務には関わってくるかというと「民泊」ですね。
 日本の住環境をあまり知らない不特定多数の外国人が賃貸を含む日本の住宅に1日以上暮らすことを想定すると色々と起こりそうです。キッチン・バス・サニタリーなど水回りのトラブルが目に浮かびます。
コンドミニアム型のリゾートホテルの客室にも同様の設備はあると思いますが、毎日施設管理を行なっていますし禁止事項など宿泊約款に記載されていたり客室に警告表示がありますが、東京オリンピックまでの短期間で民泊事業者がそこまで手が回るか疑問。設備の取扱説明書なんて一般の人でもきちんと保管しているかわかりませんのでまずはそのあたりの取り揃えや翻訳版の準備。築年数の経過した住宅では設備などのメーカー保証期間も過ぎている。機器の故障やトラブル(絶対誤使用はある)の際の費用負担は誰に求めるのか、住宅内で事故があった場合の責任は民泊事業者が負うのか、建物所有者も負うことになるのか。設備の製造事業者は、過去に製品を納入した住宅等が民泊施設に転用されても知りようがないので故障などの対応について苦慮することになるのではないかと懸念を抱くのでした。





 

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2017年07月23日 18:32

 いつも以上に法務とは関係ないエントリです。(だってBLJが届いていないんだもの)

 思うところあって「武田氏滅亡」(平山優著 角川選書)を読みました。 
 武田勝頼というと、名門武田家の家督を継いだもののわずか10年余りで滅亡させてしまった「残念な」当主というイメージが強いですよね。NHK大河ドラマをはじめ歴史ものは織田・豊臣・徳川側の視点のものが多いせいか、信玄亡き後の武田家の描かれ方は長篠の戦いで大敗するシーンと、天目山でわずかな手勢とともに自刃するシーンぐらい。昨年の「真田丸」でようやく最後の姿が(フィクションとはいえ)きちんと描かれていました。(少なくとも自分の記憶では)その「真田丸」の時代考証をされていたのが、平山優氏です。
 信玄の死から武田氏滅亡までの10年弱を可能な限りの文献からこれでもかというくらいに丹念に追いかけています。 執念といったほうが良いかもしれません。その結果見えてくるのは、武田勝頼はただ家を潰したバカぼんではなくて、凄まじい速さで情勢が変わる関東甲信越、駿河地域で必死にサバイバルしようとしていた姿です。ある局面ごとに勝頼がとった選択が結果として武田家の世評を貶め、家臣や領民の離反につながったといえます。しかし家督継承直後の長篠の戦いで主要な人材・兵力を失ったなかで打てる手は限られていたはずで、北条、上杉、織田、徳川といった勢力と対峙するのは至難の状況だったのではないでしょうか。考えられる手は打ったものの、タイミングのわずかなズレで、状況を好転させることができなかったのでしょう。「運がなかった」ということでしょうか。武田氏の滅亡から3ヶ月も経たないうちに本能寺の変が起きていることを考えるとなんともいえませんね。

 現代のビジネス環境に置き換えてみるとどうなるか。
 本来子会社の社長でちょうど良かったのが、図らずもグループトップに就任せざるを得なかった。本社に腹心の部下がいないので子会社から部下を引き連れていったものの、本社生え抜きとついに折り合えなかった。先代の社長が業績を伸ばしてきた環境とは一変し、その結果資本を失い、人材も失った。やむを得ない状況だったとはいえ、先代から築いてきた企業提携関係を終わらせたことで相手先だけでなく業界からの評価も悪化した。重要だが不振にあえぐ事業のテコ入れが財務・人員の都合から十分できず、当該部門の社員を見捨てることになった…経営者として必死に取り組んできたはずなのに。
 何か心が痛くなってきますね。


「運が尽きさせ給ひて」というのは「三河物語」の中で織田信長が勝頼の首級をあらためた時に口にした言葉として記録されているそうです。このことは信長が武田氏の終焉に同情したのだと著者は書いています。真実はわかりませんが、名門があっけなく滅ぶ姿を目の当たりにして信長も感じるものがあったのかもしれませんね。

 名門が滅んでいく過程というのは、もっと研究されていいと思いますよ。


 

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2017年07月16日 16:54

 気がついてみたら3連休の真ん中ですね。週末体調不良で寝込んでいたので気がつきませんでした。今日もまだ服薬中です。

 いまさらなタイミングですが、BLJ拾い読み。
 巻頭特集記事の内容も押さえておかなければならないのですが、特別企画「ガバナンス変革期の中の取締役研修」記事について。

 週末、半日外部講師を招いて講義を受け翌日は懇親ゴルフという役員研修が行われたのはいつの時代のことだったでしょうか。終身雇用・大量雇用時代の大企業グループだと取締役就任は確かに「上り詰めた」感はあったかもしれません。 さすがに今の時代に取締役就任で「上がり」と思っている人は少数だとは思いますが。
 取締役研修となると、「研修」であっても人事が手を離し法務やコンプラ部門にお鉢が回って来る場合があるのですが、「コーポレートガバナンス・コード」により今後ますます法務部門が取締役研修の企画運営に携わる機会が増えるという見込みや声を受けての特別企画記事というように理解しました。
 メインは法務担当者が熱く語る「あるべき論」で、これはこれで理解できなくはありませんが、現場は常に「あるべき論」と「現実」のギャップをいかに埋めるかの戦いを強いられるもの。もともと役員研修を含めて研修制度を構築してきた企業と、そこまでは至っていない企業とではそもそも課題が異なります。確か一昨年にもビジネス法務が同様の特集を組まれていたと思うのですが、当時と比べてコーポレートガバナンスに関してメディア等で取り上げられることが増え、認識も得ているとは思いますが、取締役研修の機会(時間)をいかに作り出すか、要するに多忙な取締役からいかに時間をいただくかというところで足踏みしてしまう法務担当者も相当数いるのではないかと思います。
「コーポレートガバナンス・コード」に規定されている事項ですからと研修の大義名分は立てやすいですし、「あるべき論」でもって研修の機会はそれなりに確保できるのでは?と思いますが、「あるべき論」だけではもたないのではというのは自分の危惧。
 相手は何はともあれ取締役までになった人達です。今日の法務視線で見ればどうかということもあったかもしれませんが、ビジネスで成功や失敗を味わう中でリスクを負い乗り越えあるいは回避し役員に至った人達に(そう思いたい、という部分もあります)、研修の場で何かを伝えるというのは、伝える側にも相応の胆力が求められるものだと思うのです。

 研修の企画書フォーマットやカリキュラム内容、マニュアルというのは、雑な言い方をすれば何とでもなるものと思っています。(記事中で実例の一部を紹介されていますけれど)
 事務局なり研修実務を担う法務部門が、取締役と相対して何をいわれようが研修目的である事項を伝えきれるか(そしてそれを実行してもらう)ことが肝心で、ノウハウとスキルと経験が要求されるもの。
法律雑誌の記事でどこまで触れることができるかという点がありますが、取締役研修をテーマにするのであれば、ましてBLJであるならば、今後も取締役研修については引き続き生々しい企画をお願いしたいと思うのでした。

 


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2017年07月04日 08:13

 かなり間隔が空きました。何がどうということもなかったのですが諸々の疲れでしょうか。毎晩のように寝落ちです。
 
 SNSでちらほらと見かけたネタなど自分の備忘録として。

『法務部門の位置づけについて』
 ひと昔前に比べて、法務部門も法務月刊誌の記事、某法律雑誌の読者交流会、ライトニングトーク、SNSなどを通じて限度はありますが他企業の情報に触れることが増えたと思います。と同時に他の企業の情報に触れて、あれこれ悩む時間が増えているかもしれません。例えば法務部門の位置づけ。自分の評価にも関わりますからね。
 法務部門の管掌業務が何をどこまでということと深く関わると思いますが、これは企業の組織の成り立ちと深く関わるので一概に「これが理想的」というものはないように思います。法務に限らず、総務、人事、財務、経理、事業企画、販売なども同じ。業界団体活動を通じてわかるのは同業界でも管掌業務が横並びということはないということ。あの会社の仕組みが優れている、この会社の方が自分の業務がやりやすい、というような話は始めるとキリがありません。各企業が業歴を重ねている中でモアベターだと判断した組織と分掌になっているので、表面的・部分的に取り入れても同じ結果が得られるとは限りません。
現状肯定、維持が一番ということではありませんが、部門の位置づけを変えるということは部門内業務、部門間業務の仕組みに触ることになる場合もありますので、視野狭窄に陥らないよう注意した方がいいですね。

『有資格者、ロー卒の処遇』
 自分は古典的な製造業がベースにある企業にいます。修士卒、博士卒というと研究開発部門という認識しかなく、文系の修士卒、専門職といってもイメージできない人の方が圧倒的に多いのが現実。以前の企業グループでは、技術系の新入社員はほとんど修士卒採用になっていたのですが、製造現場に近いところでは「年齢はいっているが社会人経験もなく、何ができるわけでもないのに給与が高い」と嘆かれていました。また研究職に就いても30代半ばで「足切り」とでもいいましょうか、研究者に不向きと評価が下され他部門に異動されることがあります。さすが役職なしというわけにはいかないので、マネジメント経験や訓練もないままに管理職につけるのですがそれで周囲が大変、というようなことはちらほら起きていたました。それで周囲からいわれるのが「給与が高いだけで」の一言なのですね。
 技術系と法律専門職は違う、有資格者もロー卒もここまで来るまでに時間も金銭も投資してきた。然るべき処遇を得られるべきだという主張はわからなくはありません。でも給与の源について考えてみましょうねということ。製造業でもサービス業でも「原価」というものがあります。自分のコストがどのように原価に反映されているのか教えてもらうのもいいと思います。
 法務の仕事がそのままその企業の収益に直結するような業態であれば高収入は得られると思います。ただこの場合前述の「研究職」と同じく、ある年齢で向き、不向きの線を引かれる可能性も高い気がします。

まあ、今日はこんなところで。
 

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