企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

2017年08月


迷路   拾い読み ビジネス法務2017年10月号

 亡父の三回忌を終えてホッと一息の休日。 

 ビジ法10月号。特集「法務部の生産性向上」
 @kataxさんが速攻辛口のエントリーを上げていました。期待の裏返しなのでしょうけれど、自分は予告をみたときから「迷路に突入するのではないか」という予感を抱いていました。

 業務の生産性向上と効率化は経営状況の良し悪しにかかわらず、また部門にかかわらず常に経営陣から指示が出されるものです。目標・結果を数値に表しやすい販売部門や生産部門といった直接部門と比べ、法務部門を含む間接部門は自身でも納得のいく方策を出しにくいものです。販売管理費の抑制の視点から効率化という名の人員抑制・削減の対象にされやすい面があります。
 何としても法務部門の生産性向上をアピールしなければ、という気持ちは燻りますが、間接部門が単独目指す生産性とは何なのか、企業法務の世界で定義なり軸が定まっていないのではないでしょうか。フレーズ先行の結果が@kataxさんが指摘するように「業務品質向上」記事の集まりになってしまったのではないでしょうか。奇しくも「業務品質向上」についてはBLJで連載が始まりました。

 所属団体の名を出して生々しい話というのは限界があるとは承知してはいますが、生産性ということでインプットとアウトプットの関係から例えば
  • インハウス増員したらこうなった
  • クラウドサービスを利用したらこうなった
  • 顧問先法律事務所を変更したら
というような話がきけたらよかったのに、と思わざるを得ません。

 また、同じ間接部門では財務経理部門はいち早く市販の会計ソフトや大掛かりな連結会計のシステム導入をしている企業が多いので、システム投資の結果人件費は減ったのか、業務効率は上がったのかなど話をきいてもよかったのではないかと思うのです。(中央経済社ですし。でも編集部またぎは難しいのかな)

 最小人数であるがゆえに生産性向上も品質確保も効率化のいずれも手詰まり感があるので、本当にヒントが欲しかったのですよ。自身の身の振り方も含めてね。
 



 
 

 

読んでみる「金融から学ぶ会社法入門」

 企業に勤め、法務担当者として完璧に内容を抑えているかというと心もとない「会社法」。
 上場・非上場、独立・子会社、大会社・大会社以外、成熟・新興など所属する組織の姿によって法務担当者が触れる「会社法」の範囲もだいぶ違ってきます。
 新興企業であれば成長過程ならではの増資や吸収合併、ストックオプションなどの導入。上場を視野に入れれば機関の変更や資本政策、成熟期を迎えれば事業譲渡やグループ会社の売却などなど。同じ企業に所属していたとしても、法務担当者は突然前任者とまったく違う舞台に立たされる可能性があります。
 資本を触ったり組織再編やそれに伴う金融機関との事務手続きといった業務は会社法の範囲のみで片付くことはなく、会計・税務など周辺の法規・制度についての理解(完璧でなくとも財務部門とフェーズ合わせができるレベル)も必要ですし、最後に登記が絡むことがほとんどですから商業登記や不動産登記についても(司法書士に委任するにしても)一定の知識も必要。上場を視野に入れれば当然金商法。
ともかく色々な目に遭った身としては、金融関連と会社法を同時に学べたらよかったなというのが実感ですね。今ある知識も学ぶというよりは怪我の功名のようなものなので。

 大垣尚司教授の『金融』シリーズの最新刊「金融から学ぶ会社法入門」。
 著者による巻頭の「はじめに」では対象は会社法を学ぶ法学部生や法科大学院生を対象とありますが、新刊の帯には「金融パーソン・金融ローヤーのための会社法教科書」とあります。どういうことなのでしょうか。
 それはともかく、本書の構成は条文順では起業から上場、事業承継などまでと事業(事業者)のライフサイクルに沿ってストーリー仕立ての設問と関連判例、それに加えて数式や図表(決算や資金調達、資本に関する事項は図表があった方が理解しやすいですからね)を挿入したものになっています。
 会社法そのものは「金融から学ぶ民事法」がダットサン民法を参考書にしたのと同様に江頭・神田両巨頭の会社法を参考書にしなさいという割り切りです。
 本書1冊で会社法がわかった!ということに当然なるわけがないのですが、著者の思いとは別に、色々な実務に触れはじめた若手企業法務部員が読むとストンと腹落ちするような気がします。




 

読んだ本 ブラック・マシーン・ミュージック

 先月半ばからの体調不良からようやく脱け出したものの、夏季休暇でだらけております。

 白人至上主義者一派とそれに反対する一派の衝突したニュース映像。人ごととして眺めるのか、日本人も有色人種である以上いつ矛先が向けられるかわからないと思うべきなのか。実はすでに向けられているのか、かの国で暮らした事がないのでなんともいえません。

 ジャズ、R&B、ブルース、ソウルといわゆる「ブラック・ミュージック」とカテゴライズされる音楽を聴き散らかしていた時期がありました。その中で聞きなれない「ジャンル」でどうもしっくりこないまま、結局あまり聴いていないもののなかに「デトロイト・テクノ」がありました。初めてこのジャンルを目にしたのは河出書房出版のマイルス・デイビスのムック(2001年初版)ですが、その記事を書いていた野田努氏が同年発刊していた「ブラック・マシーン・ミュージック」が増補新版として復刊したので読んでみました。結構な文章量に加え自分が若い頃聴いた音楽が登場するのはごく一部に過ぎませんでしたから、ときおりYouTubeなどで動画を検索しながら読みました。(法律書もその熱心さで読もうな)
70年代のディスコ、80年代のハウス、そして90年代のデトロイト・テクノとアンダーグラウンドの歴史を丹念に追っています。
 
 さっくり感想。
 本書で取り上げられた音楽そのものはCDや配信、動画サイトで視聴できます。しかしその作り手の動機、心情というものを簡単に理解できるものではないということ。人種対立や差別、そこから生まれる抗争といったものがない社会に生まれ育った人間が、文献や音楽に触れただけでわかったような顔をしてはならないということ。当然といえばそうですが。巻末のディスコグラフィーや参考文献を追うだけでも相当な情報量ですが、それらは理解のための糸口に過ぎません。音楽を含めひとつの社会や文化を理解するには並大抵のエネルギーでは足りませんね。

 ところで肝心のデトロイト・テクノの音楽そのものですが、どうやら聴かず嫌いだったようでおりをみて聴こうかなと思った次第。いい歳をして、ですがデトロイト・テクノの生みの親は自分とそう変わらない年齢なので、まあいいじゃないですか。



  

子会社はつらいよ 拾い読み Business Law Journal 2017年9月号

 暑いし、大型台風は接近しているし、3年後の東京オリンピックはどんな気候のもとで開催されるのでしょうか。あまり想像したくありませんね。

 NHKの大河ドラマ「女城主直虎」で高橋一生演じる家老の小野但馬守、史実では井伊家乗っ取りをはかった人物として書き残されているようですが本当のところはどうだったか。ドラマの設定では井伊家家老である一方、主家今川から目付役の任務を任されているので、今川家にとってリスクになることを井伊家の面々がやらかそうとすれば今川に報告せざるをえません。そのことで周囲からは煙たがられますし嫌われますし信用されません。いずれ乗っ取りを狙っている人間ならばともかく、そうでない人間だったらただの損な役回りですよね。
 
 実務解説「グループ会社リスク管理のための基本規程の整備と留意点(獨協大 高橋均教授)」。
 平成27年改正会社法、コーポレートガバナンス・コードといった法・制度の要求と実際に子会社発の不祥事が頻発していることから、親会社によるグループ会社管理は厳しくせざるを得ないといったところでしょうか。伝統的な大企業の「純血統グループ会社」だけでなく、買収や事業譲渡(譲受)でグループ化を急いできた企業の中にはグループ会社の管理規程の整備や体制が追いついていないといったところもあるかもしれません。今回の実務解説は、そのような企業のコーポレート部門や法務部門の方にとっては一つの目安になるだろうと思いました。

 自分は現在管理される企業に所属していますので「下から目線」でのコメントになります。
 
 親会社側で規程整備や子会社管理の体制を築いただけでは十分ではありません。
 子会社側にその(忠実な)受け皿となる部門なり担当者を置かないと「管理」業務が回りきりません。上場子会社であれば親会社同様コーポレート部門があるでしょうけれども、非上場の子会社は管理部門はあるものの「コーポレート部門」はないことの方が多いですから子会社の管理部門の誰かが「親会社のグループ会社管理」の業務の一端を担うというのが現実的でしょう。
 この業務、単なる事務連絡にとどまらずリスク発生時の報告業務まで担当すると「こんなことまで報告するのか」「報告はとりあえず保留」といった社内の声と、「重要かそうでないかを子会社が勝手に判断するな」という親会社からの命令に挟まれること間違いなしです。(いやほんとに。)
グループ会社全てに常勤役員を送り込むなり腕利きの人間を出向させることができればよいのですが、人的資源からみて現実的ではないでしょう。板挟みになる本人はしんどいけれども子会社内の目付役を育成するのもグループ会社管理の要点ではないかと思った次第。
 しかしそうであれば監査役の補助使用人のように、親会社のグループ管理業務のための補助使用人という立場でもないと子会社側の担当者がいつか詰んでしまうような気もします。

 ではでは。


 



  
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