企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


2017年12月

どこからどこへ 2017

 あと数時間で2017年も終わり。

 時間が経過するスピードが年々加速している、とは誰もがいうセリフではありますが、自分の年齢になってくるとただ1年が短くなったなあという感慨というよりも、いろいろな意味で残り時間が減ってくることに対する形容のしようがない不安の方が先でしょうか。

 今年でひと世代に相当する期間、サラリーマンを続けたことになります。そのうちの三分の一の期間が、企業法務系業務。しかし、年数を重ねるごとにこのまま今の業務を続けていてよいのかわからなくなる瞬間が増えました。
 強烈なトップダウン企業の完全子会社となって5年、子会社の法務の裁量範囲が限定的になるのはやむを得ないのですが、ここのところ「人」の問題を含めたトラブルシューティングの業務に占める比率が高まりました。「火消し」の仕事は大切なものですが、かけた労力ほどの充実感は得られないことがあります。(昨年のカレンダー企画のエントリのように)その一方、経営陣の自分に対する評価はトラブルシューティングにあり、評価のメールを苦笑交じりで読み、そして自分の感情を流し去る。

 社外の人間が自分をどう評価するのだろうか、すぐにどうこうというわけではありませんが複数のエージェントと面談の機会を作ってみました。「転職はされていませんが、転職されたのと同じような環境とキャリアですねえ。」と、「面白い」とはいわれるものの需要があるのかは定かではない反応に、「まあ、そうかもしれないな」と愛想笑いを返すばかり。以前、役員(リタイア済み)に「お前は一体何が本職なのか。」と問われたのと同じことかもしれません。

 現場に近いところに身を置きつつ決して現場の感情に流されず、
 管理部門に身を置きつつ事務屋には徹さず、
 経営陣の意向は理解しつつ忖度はせず。

来年もこんな感じでいけるのかどうか。はたして。
この歌を思い出しました。
白鳥はかなしからずや 空の青海のあをにも 染まずただよう

今年も雑文にお付き合いいただきました方々に御礼申し上げます。
ありがとうございました。
来年も当面こんな感じの運営を続けるつもりです。
 
よいお年をお迎えください。

 

認証取消 #legalAC

 @miraisaaanの宇奈月温泉レポートから引き継ぎます。湯上りに都市では見かけない飲料メーカーのサイダー風の炭酸水を飲みながら書くような感じで。

 今年は、製造業の品質偽装に関するニュースが続きました。開示情報を追っかけ読んでいますが、原因究明・再発防止などの特別委員会報告はそれはそれで進めていただくとして、品質偽装した製品を買わされた方の重要関心事は「損害賠償請求ができるか、できるとしたらどの範囲までか」。再発防止に取り組んでもらうのは当然、お詫びもわかる、でも実際に発生した損害はどうしてくれる、話はそこからだというところではないでしょうか。

 日用品製造事業者A社は、製造販売する製品Mのために原材料メーカーB社が製造する原材料Cを加工業者Dが加工した部材を購入している。X月5日、B社は第三者認証機関の臨時認証継続審査で原材料Cの検査方法に問題があるとの指摘を受けた。B社は認証機関が何らかの措置をとると予想し、X月20日取引先に対してCに関して当該認証表示を行うことを自粛するとの通知をFAXで行なった。X月30日、認証機関はB社に対してCについて認証を取消する旨公表した。
Cは、B社が加盟する事業者団体Eが制定する「自主品質表示制度」の対象製品であり、Eは第三者機関の認証を条件にB社のCに自主品質表示マークを表示することを認めていた。Y月2日、EはCを本自主品B社のX月20日付の取引先に対するFAXの内容から同日時点でCが第三者機関の認証を受けた製品ではないとみなし、CをX月20日に遡って自主品質表示制度の対象外とすることを公表した。
 A社の製品Mは納入先が遵守すべき関連法令によりEの自主品質表示制度対象の部材を使用しなければならないものであった。
急ぎ調査したところ、B社がX月21日以降生産したCをD業者が加工した部材を使用して生産しX月30日までに出荷納品したMが200台、未使用の部材在庫100台分。そしてY月3日以降Y月中に出荷納品しなければならない受注残が400台分あることがわかった。
 ちょっと長くなりましたが、A社の立場だったらどうする?
 B社のCの認証取消によって
 ⑴損害は発生しているのか
 ⑵損害が発生しているとして損害賠償請求できる範囲はどこまでか
 ⑶損害賠償請求の相手方は?

 間髪入れず取り組まなけばならないのは納品済みの製品M200台の対応です。通常なら返品、代品の納入ですが、A社はB社のCを使用した部材で生産した製品しかないため代品の納入ができません。キャンセル、製品引き取りとなります。売上利益は戻さなければなりませんし、さらに引き取りコストが発生します。
 未使用の在庫部材も使用できません。引き取ってきた製品と共に処分するよりありません。ここで処分コストが発生します。
 Mの受注残400台についても、Cに変わる原材料を加工した部材が調達できるまでは生産できません。これも大半を注文キャンセルとするより策がありません。見込んでいた売上も利益も失います。
 A社の損害はこれだけでしょうか。


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埋草:おじさんが望んだ(はずの)未来

 なんとかテック流行りの近頃。
 #legal AC 界隈でもテックネタが散見されますし、呟き界隈でもハンコや紙の契約書の廃絶を唱えるものが目立ちます。そして共通するのがテクノロジーの行方に立ちはだかるのが決まって中高年世代、おじさん達だというのですが、本当におじさん達は立ちはだろうとしているのでしょうか。
 
 職場で各個人にパソコンが行き渡り始めた90年代中頃に自分は既に30代を迎えていましたが、ワープロや簡単な表計算ソフトは使用していましたのでそれほど抵抗はありませんでした。もっと大変だったのは自分らの上の世代であります。決裁文書は意思の強さは筆圧に現れるといわんばかりの手書きかつカーボンコピー、予実算資料はA3統計用紙に管理職が自ら定規やら何やらでフォーマットを作ったものをコピーしたものにこれまた手書きという時代が長かったものですから、年がら年中「俺のキーボードに『ぬ』がない。」とか「パスワードを忘れた!」と当時のおじさんたちは我々若手の仕事の邪魔をしてくれたものです。おじさん、といってもよく考えたら今の自分よりも5歳から10歳近く年下だったのですが。
 そんなおじさんたちが決まっていうのは、どうせコンピューターを導入するなら「俺が喋ったことをそのまま文書にしてくれればいいのに。」「頼んだデータが自動的に出てくればいいのに。」などと、完全自動化でなければ意味がないといわんばかりのものでした。
 また、荒っぽい営業の職場の人間は煩雑なきめ細かい事務手続きが苦手です。社内文書だろうが社外文書だろうが、社内のあちこちに書類を持って回って判子をもらうという作業が本当に憂鬱なのです。
 大手企業と幸運にも直接契約を交わすことになったものの、印紙の申請やらA2サイズの図面をA4サイズに折りたたんでの袋とじ製本した上でさらに何箇所も綴印やら割印を押す申請書を書く、というようなこともありました。判子は管掌役員や社長印です。総務や文書の人間にも説明が必要です。そしておじさんはいうのです。「なんで判子がいるんだかなあ。」

 時は流れ当時のおじさん達はリタイアし、自分は当時のおじさんの年齢を超えました。
自分がリタイアする前にあの頃のおじさんが望んだことのいくつかがなんとかテックで実現する可能性が高くなってきました。あの頃、おじさん達のぶん投げ下請けで実際手を動かしていた我々が、なんとかテックの行方を遮る理由は見当たらないのです。(なんとかテックの成長・成熟が前提ではありますが)

 必要だが煩雑な業務を楽にしようとすることに反対している中高年とは一体?


 さて、肝心の#legal ACのエントリの下書きすら一文字も書いていない…
 あと5日しかない。



 

拾い読み ビジネス法務 2018年1月号

 東京といえども多摩地方は都内より気温が低いので冷えます。

 ビジ法2018年1月号は「法務組織・キャリアの在り方」。
リーガルテックやらインハウスローヤーやら情報が行き交うなか、ぼんやりと不安に陥る法務担当者の心を捉えるキャッチーな特集ですね。
 法学部出身かどうかは別にして入社以来法務畑を歩いている担当者を対象にした本文と、企業法務を志す学生・若者を対象にしたコラムで構成されています。
 西田弁護士の稿は「生涯法務」というのが前提。年齢的には「円熟期」手前、法務キャリアとしては「修行期」を抜け出したぐらいの年数、こなしてきた仕事は特殊な応用編中心のような自分は「はて、どうしたものか」と思います。何がどう評価されるのか見当がつきません。読んでいてかえって不安に陥りますね。
 一方でこんなことも。先日世間話をした転職エージェントは「若い人にキャリアパスの弊害がでてきて」とこぼしていました。「3年勤めて自分の目標と異なっていたので、とかここでは3年と決めていたので、と簡単にやめてしまうんですよ。どうみても転職できるような実績がついていないのに。」
 自分でよく考えましょうね、ということでこの記事はいいか。

 新連載の「契約が決算書に与える影響」
このあたりがビジ法本来の強みが出せる記事だと思いますね。連載中の「法務部員のための税務知識」と合わせ読むとよいでしょうね。
 今回は財務との連携ですが、個人的には通常の売買契約ではあまりありませんが特別な金額の支払い・受け取り(損害賠償金など)の場合は必ず財務に確認しますし、取締役会の付議事項でも場合によっては財務に先に確認し資料の見直しを行うこともあります。
もっともこれは監査法人による決算監査でけっこう苦しんだ経験からくるもので、得意げに話すものではありません。

 特集2「取引先・協力先中小企業の事業承継対策」
 数年前「会社法務AtoZ」で中小企業を対象にした事業承継を連載していましたが、今回は大手企業による、というもの。協力会社や下請事業者の経営難や後継難はちらほらと耳に入ってきています。むざむざと倒産、廃業させるわけにはいかないのですが、事業承継と優良な協力先企業の囲い込みは表裏一体、自社の経営だけで息が切れている企業では協力先の対策も後手に回り、その結果自社の経営難を招くだろうと寒気が襲ってきました。

 「自動運転社会の法制度設計」まで手が回りませんでした。いずれまた。 



 
 *このエントリーはポエムです。健康のため、ポエムの読みすぎには注意しましょう。

 

拾い読み Business Law Journal 2018年1月号


 BLJ2018年1月号から。
 独禁法の道標3「事業者団体の参加者におけるコンプライアンス」
 個人的に非常に思うことある記事で、というのはよろず諸々の業務についている中で事業者団体の消費者関連の分科会のメンバーというのがあるからです。共同リコールの経験を通じて、消費者関連の問題について業界中位からちょっと下あたりをうろうろしている企業が単独でなんとかできるものではないというのが実感としてあります。時の上司には承諾を得て「渉外の顔」で参加しているのですが、常に「自戒」の意識を抱えていることはいうまでもありません。(いくらその意識を抱えたところで自己矛盾の文字はつきまとうかもしれませんが)まあ、担当を変わればよいことではあるのですがね。


 実務解説「NTT東日本対旭川医大事件」
 自社はユーザーの立場です。とある事情からこの判決は非常に重い気分で受け止めました。早速この記事は早速直接ベンダーの窓口となるIT部門に読んでもらうことにしました。そして、さらにはシステムやら何やら需要家である社内の事業部門、管理部門にも展開するのがモアベターというか、しておくべきだと考えています。

 業務システム等を外部ベンダーに委託する企業がほとんどと思いますが、ベンダーの窓口になるのは社内のIT部門といったところでしょうか。社内すべての人間がシステム開発というものに通じているわけではありませんし、特に中高年以上の幹部社員にITリテラシーを期待しても限界があります。自部門の業務状況も把握できないまま、システム化さえすれば万事OKと思っているレベルの人間もいるでしょう。これはシステム開発の決裁が下りた後には「あとは頼む」とIT部門に「丸投げ」というケースですね。
 一方、社内IT部門が会社のビジネス(製品、役務にとどまらず、商習慣、社内業務のウラオモテ、自社の担当者の業務スキルなど)に通じているとは限りません。「あとは頼む」といわれても本来の「需要家」である事業部門や管理部門から具体的なオーダーが示されなけば「要件」すらまとまりません。
同じ請負形態である建築の世界だと「基本設計」「仕様書」「特記仕様書」などは(設計者に委託するとはいえ)発注主から提示するものですが、要件定義作成も請負業務に含まれるITシステムの世界ではどうなのだろうと思ってはいたのですが、今般の「ユーザーの協力義務違反」の判例で今後風向きが変わるかもしれません。

 システムの業務発注契約にどこまで法務が関与できるかというところですが、業務委託契約書の作成なりレビューまででよしとするのか、その後のプロジェクトまで関与し少なくとも要件定義書まで関与すべきなのか、というところ。
 民法改正を真面目にフォローしていない身でいうのもなんですが、システム開発委託において「契約の内容」とは「要件定義書」が「本丸」ではないかと。そうであれば、IT企業ではない企業の法務担当者もある水準まではシステム系のことも理解しておく必要があると思ったのでした。
 





 


 
 

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