企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


2018年02月

ハンコをめぐるさまざま事情を考える

 法務業務に関するクラウドサービスのニュースが多い昨今、アナログ世代の方々いかがお過ごしでしょうか。

 よろず管理業務が押し付けられている任されているのですが、そのなかに「公印管理」という業務があります。印鑑登録をしている代表者印の保管と押印作業です。一日のなかでこの業務が一定の割合を占めます。漢委奴国王印の頃から始まったのかわかりませんが、判子文化というのはこの国の必要以上に頑強に根付いているのを毎日痛感しています。
 そんな文化なんてあれだよね、ということでデジタル契約書とサインがじわじわと普及しているかのようですが、 自社の公印押印請求来歴をみると意外と契約書の占める割合は少なくて(ビジネスが不活発ということではないのですが説明は省略)、官公庁や関連団体、金融機関、年金関係、リース車両の車庫証明などの各種届出、申請書、提出書類の方が圧倒的に多いのですよね。ハンコだけでなく、印鑑証明書や登記簿謄本の添付まで求められる例もあります。証明書は無償で発行してくれるわけではありませんから、ハンコを押す時間あたりの労務費と証明書取得費用を考えると一体ハンコに関わる業務コストはいくらなのでしょう。

 ところで。
 
 押印業務といっても日々一定の時間に限り己をスタンプマシーンだと割り切ってハンコを機械的に押していればよいかというとそれで済むわけではありません。
 押印申請部門で必要な決裁(取締役会などの決議機関の承認も含め)を経ているか、印紙の有無、税額に過不足はないか、しれっと未知の契約書が紛れ込んでいないか等ハンコを押す前の確認業務の方に時間がかかります。
 これは法務系に先立ちシステム化が進んでいる経理系の出納システムにも同じことがいえるかもしれません。出納業務そのものはデジタル、しかしその根拠となる稟議決裁はアナログ。稟議決裁過程をどうにかするのが先ですよね。
新興のIT企業にお勤めの方には信じられないかもしれませんけれども、社歴の長い、要するに古い企業はこういう状況があるのです。稟議決裁のプロセスのIT化となると内部統制にも関わる話ですからね。

 内部統制ともなると自社だけでなく、親会社や子会社の管理体制は避けられません。

 どれだけの割合があるかはわかりませんが、子会社管理の一環で親会社が子会社の代表者印、金融機関届出印を預かり、押印業務も親会社が行うというケースがあります。子会社としての独立性はどうよという問題ですが親会社にもそれなりの事情、理由があってのことなのでしょう。
 この場合も単なる親会社による公印保管、押印業務代行ということでは済まず、親会社の管理部門による「手続き、根拠の確認」があります。親会社の経営陣の稟議決裁を経ることを必要とする事項が規定されている可能性が高いですから、このような管理体制のまま子会社において稟議決裁過程からハンコ(サイン)までシステム化を進めると、子会社が親会社のシステムにアクセスして承認を求め、親会社が子会社のデジタルサインをすることになりますが、それってどうなのだろう。

 まあ、こんなことをつらつらと考えた出張明けの日曜日でした。
 

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重なる?契約書レビュー ビジネス法務2018年3月号

 過日、地方営業支社の経理担当者から問い合わせがあり。
 ここ何ヶ月かある販売先の売掛金回収に違算が生じている、どうも自社の売上計上日と販売先の買掛計上日とズレがあるようなのだけどもどうしようというような内容。単なる月ズレなのか、販売先の検収買掛の基準に変更があったのか確認してみてねというような会話を交わしたのだけども、あれ待てよ、そんなチャラっとした話で済まないよな、なんか大きな話があったよな?というところで、タイミングよくビジ法2018年3月号特集2の「新・収益認識基準 契約法務の対応」。そうだよ、IFRS。そして「収益認識に関する会計基準(案)」。



 本記事構成は
  1. 早わかり解説「収益認識に関する会計基準」とは
  2. 法務部が主導すべき新基準の契約への適用手順 (以上、片山法律会計事務所 片山智裕氏)
  3. 売買契約書見直しのポイント (弁護士法人L&A  横張清威氏)
  4. 請負・業務委託契約書見直しのポイント (AM&T 中村慎二氏)
の4稿、いずれも弁護士+公認会計士両方の資格を有する方の手によるものです。

 1.の冒頭で今回の新しい収益認識基準が注目される理由として
契約に基づく収益認識の原則を採用したことにあり、会計基準の体系の中核に契約という法律概念が導入されたことは画期的、業際的である。
とサクッと解説されております。
 税務・会計領域と法務領域の接近についていまさら当方がいうまでもありませんが、今回は会計サイドからの「契約書の内容」に対するアプローチということでよいのでしょうかね。これまで取引契約締結の際の経理サイドのチェックというのは、与信と支払・回収条件の確認に重きが置かれていた部分がありますが(あくまで勤務先では、ですが)、本基準の適用に当たって、法務と財務経理と二人三脚で取り組まなければならないということですね。
 留意しなければならないのは「新・収益認識基準」の適用時期。
 上場・非上場を問わず、遅くも2021年4月から始まる事業年度から本基準を適用とありますが、2018年4月から任意で早期適用できるとあります。自社の会計基準の変更を3年後に行うとしたとしても、販売先や取引先が早期適用する場合には、もっと早い時期に「契約書見直しの要請」をされるかもしれません。民法改正対応と会計基準対応と契約書レビューを同時並行で進めるということになりますね。(けっこうきついなあ)

 3、4の記事はどうしても駆け足にならざるを得ないのは理解できるのですが、ちょっと各論に過ぎるかなという感想。欲をいえば、売買や請負を問わず企業取引は商社・代理店や中間取引業者を介した契約の比率が高いので、この場合の適用手順の手ほどきがあればよかったと思います。が、いずれにしろ会計系の専門書籍はちゃんと読まなければなりませんね。




 



 

ブランド戦略の目線

 15年ぶりにかかってしまいましたインフルエンザ(B型)。先月最終週から今週初めまでいつにもまして使い物にならない状態。なので、リハビリのようなエントリ。

 過日、自家用車の車検でディーラー・工場に出向いたのですが、店舗の展示車のラインナップに変化がありました。最近自動車雑誌を読む機会がないので自分が知らなかっただけなのかもしれませんが、なんでも本国本社からプレミアムブランド車とそうでない車とで販売店舗と整備工場を分けるように指令があったとのこと。今後専用店舗・工場体制を作らない限りプレミアムブランド車は取り扱わせないという強い姿勢。これに従っておかないと過去販売したプレミアムブランド車の整備すらできなくなるので、「オーナーのことを考えるとやらざるを得ないが、店舗敷地の確保やエンジニアの雇用で経費がかさむ」と、工場の担当者はぼやいていました。 

 プレミアム路線といえばよいのか「中高級」路線といえばよいのか、自社の商品やサービスの質と単価を上げるという施策はかつて勤務先でも試みました。しかし「自社がありたい姿」と取引先やユーザーからの評価や期待との間に大きなギャップがあり、結局成果をえることができずに終わりました。短期間でブランドイメージを上げるための覚悟も経験も実力も不足していたといえましょう。同業者の「ブランド」を支えてきたものを見聞きする機会があったのですが、パワポでぺらぺらと仕上げられた「ブランド戦略」に乗っかっただけの底の浅さを思い知らされました。

 冒頭のプレミアムブランド車については、もともと「プレミアム」だったのですが、紆余曲折があり一時は風前の灯火のような存在でした。苦難に満ちた時期とようやくブランド復活を迎えた時期の車種と2台続けて乗っていたことがありますが、前者と後者では本当に製品としての「差」が歴然としていて驚いたことがあります。最近は再びパッとしない存在になりつつありましたが、自動車業界の合従連合の流れの中で「昔のブランドをもう一度」となったのかもしれません。性急な販売・整備網の変更にオーナーや肝心のディーラーがついていけるのか、かつてのオーナーとしては心配なところです。
ユーザーやファンがあってのブランド、と当たり前のことが難しいのですよね。

 それでは。次回はなんとか法務ネタに。

 
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