企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常


2018年03月

定点観測 この先

 (一般的には)年度末の週末。まるまる企業で30年働いたことになります。

 転職はしなかったものの勤務先は幾度か姿を変え、自分も幾度か職種が変わりました。
勤務先は職種をまたぐ人事異動が少ないので、このような経歴を持つ自分は損得半々というところかなと思っています。損は形をもって現れていますが、得は無形で自分が「得」と勝手に思い込んでいるだけかもしれませんが。

 30年も組織にいればいろいろあります。
 法務異動前に自分が所属したり関わった業務のほとんどは姿を残していません。徒花のような仕事、ときの上司が考えた試験・実験的な試みの業務だったからなのかもしれません。結果として後が続かなかった事業というのは関係者がいなくなれば忘れ去られるだけで、「あれは結局ダメだったよな」という評価すら得られませんね。
 法務異動後のことはブログの中で時折取り上げてきましたが、今の時の流れからすればふた昔近く前のこと。登記簿謄本に残る下線部の大半は自分の業務なのだけども、こちらについてももはや語り合える相手がいません。現在の勤務先の状況を考えると「自ら組織再編」ということは考えにくいので、自分が巻き込まれたあれこれを引き継ぐことはないと思います。こちらも後が続かない仕事だったといえましょう。

 ま、これでよいのかもしれません。
 「昔はなんかいろいろあったみたいだけど今は!」という組織のほうが働いていて面白そうですしね。
自分とて「生き字引」的社員になるつもりもありませんが、どうしても蓄積された記憶や経験が邪魔くさくなります。
 
 30年一区切りでもよいのではないかと、丸い月を見ながら割と真剣に考える夜。
 

その道は長い ビジネス法務2018年5月号から

 ここのところ、業務に占める割合が高くなりつつある実態監査。
ガセのような情報もある一方、ボロボロと事実がこぼれ落ちてくる事案もあります。
 相応の準備をして当事者と相対し動機なり理由を尋ねても一筋縄ではいきません。涙をぽろぽろ流し反省を口にしても、提出してくる経緯書には先ほどの自分の弁明と矛盾した内容をつらつらと書いてくることがあります。「平気で嘘をつくことができる」人物といってよいのかわかりませんが、こちらもタフに応じていくのみであります。しかし、そういう人物を自社組織内で「生んでしまった」または「成長させてしまった」という点は真摯に受け止めるべきだと思い胃のあたりが重くなる日々。

 ビジネス法務2018年5月号特集「実践的コンプライアンスの要所をおさえる不正の心理」。
読みながら「ああ」と嘆息しながら頷いたのが以下の記事。
  • 「犯罪学理論にみる従業員不正の心理」公認不正会計士 山本真智子
 本稿Ⅱ「不正のトライアングル」で提唱されている【日本型不祥事のトライアングル】。確かに従来の「動機」「機会」「正当化」だけではうまく説明しきれないものが「無責任」「無知」「無思考」を加えるとすべてではないにせよ不正行為の対策がみえてくるかなと思いました。
そして同じくⅤ「企業風土から考える従業員不正」。
 文化(ここでは企業)に所属する個人は、周囲の人々の影響を受けて習慣・態度・価値観・行動などを習得(これを社会学習という)し、また、観察して得られた他人の行動・振る舞いをみずからにも取り入れていく
という社会学習論の説明は、思い当たる事案が脳内でいくつも点灯してしまいました。また不正行為とは少し違いますがパワハラを受けて育った管理職が下の世代にパワハラを働いてしまった事案を思い出しました。
 組織のなかでの成長段階で経験、あるいは見聞きしたことが不正行為に繋がっているのであれば、現在自分が相対するいくつかの事案の種は何年も前に蒔かれていたということになります。そこから育った幹や枝葉は今いったいどこで何をしているのか? 嫌な汗が出てきます。

 適切な教育や訓練を通じて改善していく余地は当然にあります。また些細な不正にも全力で立ち向かう姿勢をみせることも必要と思います。

 諸事情あっての属人的組織風土。風土を改めるその道は長い、しかし全速力で走っていけるのか。再び自問自答の時間に戻る。



 

契約の内容と印紙税 ビジネス法務2018年4月号から

 ようやく読めたビジネス法務4月号から。

 第2特集「法務部員のための印紙税トレーニング」
 某所で特集組みますよときいていたのですが、早速紙面に登場です。

 印紙税に関するあれこれは法務あるあるのひとつ、「印紙の要否」「印紙税の額」。法務にたらい回ってきますよね。冗談で心配なら200円分貼っておけばとは答えるもののそうもいかないので国税庁のHPや税理士に確認するなど、少し手間がかかります。問い合わせが来るということは現場に「印紙税」の存在が認識されているということの裏返しでもあるので、問い合わせには的確に応じないとねと特集記事を読んだ次第。
 記事は印紙税に関する25のQ&Aで構成されています。自分の日常業務に関わるのはQ4、Q14、Q16、Q18〜Q20、そしてQ25。再確認とあとは現場にいかにわかりやすく伝えるかという視点で読みました。
何かと締結する機会が多い「業務委託契約」、「製作物供給契約」についてはもう少し現場に落とし込まないとまずいかなと思いました。
 税務調査について。調査官の仕事は「一円でも多くの印紙税を徴収」ですから時に条文や通達の適用を拡大して指摘してくる可能性があります。納得できない、条文や通達の拡大適用では?と思うことはちゃんと意見を述べるべきですよ。ええ、本当に。(何かあった)

 連載記事「不動産業・建築業の債権法改正対応」
第3回目の今回は「建築業(その1)」。各論に入ってきました。大昔は建築現場を回っていた営業職でしたので記事中のⅠ、Ⅱに書かれていることは経験してきました。ただこれはゼネコンや住宅メーカーとの仕事では当てはまると思うのですが、それ以外ではどうかというのが実感。ゼネコン相手の営業から、一般工務店相手の営業に変わったときに「よくこういう取引でトラブルにならないよなあ」と思ったものですが、法務に異動してみたらやはりトラブルは発生していることがわかりました。
 契約内容とは何かといえば、請負契約書や約款のみでなく建築主、設計者、監理者、発注者が承認した仕様書、実施設計図、詳細図、下請負業者が作成提出した施工図、そして議事録記載内容。建築主から下請業者まで全て事業会社である場合は記事の通りなのですが、個人が発注主となる建築工事(戸建住宅やリフォーム工事)ではどうでしょうか。発注主がほとんど「契約の内容」の素人です。また業界特有の「数次にわたる流通」の各当事者がどれほど「契約の内容」を理解しているかというようなことを考えると、債権法改正云々以前の問題があるような気がしてならないのです。

 ここで印紙税の話に戻ります。
 建築現場の打ち合わせ等で施工図を元請と下請とで何回もやりとりしますが、最終的に両者で決定合意した図面。図面上に「承認欄」をもうけ、元請下請双方の「印鑑」を押すと税務当局に課税文書と判断されるケースがあります。請負契約の応諾書面に該当するということのようです。
 これは製造業で、納入業者(サプライヤー)からの納入仕様書や図面に購買部門や設計部門の「承認印」を捺印しても同様のようです。 
 仕様書や図面が「契約の内容」ということになるとますますこのような判断が下されるケースが増えると思います。
 契約書をデジタルにしてもまだいろいろありそうですよ。

 リンクを貼ろうと思いましたが密林で中古品3,200円とあったのでやめます。

  

何をしてきたのだろう

 7年です。当事者では当然なく、何かできたわけでもないので静かに手をあわせるのみ。

 あの直後、BCPだのなんのと「ブーム」のようになりました。無論それは必要なことではあるのですが、防災体制、サプライチェーンをはじめ生産や物流拠点、事業の見直しまで。コンサルからの営業が増え、会社あてに中部以西の自治体からやたらと地元工業団地への移転誘致のパンフレットが送られてきました。
 災害時にいかに事業を速やかに再開するか、具体的な計画や手順が構築しているか。その数年後の雪害の際に震災を契機に不可抗力免責のハードルが上がっていますよと指摘されたこともありました。

 しかし製造業についてのここ数年の様子をみてみると会計や品質管理など、災害とはまったく次元の違う問題で経営の根幹が揺らぎ、信用を失っています。BCPなどしっかり整備しているであろう企業ばかりです。「事業継続」とはなんぞや。

 いや、他所様のことをあれこれいえる立場にありません。

 本当に何をしてきたのだろうと自問するばかりであります。


 

何か違和感を抱くのは間違いなのだろうか

 ふた昔前の話になるが、記憶に残るエピソードとして。
 
 「見積の件で来てくれないか。営業ではなく本社部門の人間と話がしたい。」とある地場ゼネコンの部長から電話。当時某自治体の公営住宅向け設備建材の窓口を担当していたのですが、自治体の所管部門にでも連絡先を聞き出したのだと思います。
当時勤務先はその自治体の公営住宅向け設備では一定のシェアを維持していました。公営住宅団地の入札の度に引き合い見積依頼があったので、今回もそんなことだろうと出向いたのでした。
 開口一番、「A団地について、おたくが見積を提出した元請を全部教えてくれ。」
「は?」どう考えても「調整のため」の質問です。
「おたくもこの業界のことは承知しているだろう。」まあ承知はしていますが、昔と違ってそういった行為からは手を引かせてもらっていますよ、と返したのですが、先方は「そういう話とは少し違う。」と返してくる。では、どういうことでしょうか。

 入札制度が指名競争から一般入札に変わったことは仕方がない。問題は公共工事のイロハもわからないまま業者が参入してくることだ。標準仕様書や標準図、特記仕様書の意味を知らない業者が多い。何を優先事項として単価算出しなければならないか理解していない。厳しい中間検査や竣工検査の実態も理解できないまま、民間工事と同じ感覚で見積を出してしまうのだ。見積落としがあるから当然応札価格は下がる。請けてトラブルのはその業者の勝手だが、その下がった価格は役所の契約課に残る。
「俺はそういう事態を避けたいのだ。わかるだろう。」

 それはわかる。公共工事なのにろくに仕様書や図面も確認せずに見積もる代理店はあった。見積漏らしがありました、と泣き言を繰り返したところで「しょうがないね、次から気をつけてね」などとそっと発注額を上乗せしてくれる発注者はいません。

 が、しかし。

 先方の要求には応じませんでした。記憶はここまで。この地場ゼネコンがA団地を落札したのか、自社の設備が採用されたのかも一切記憶がありません。

 リニア談合の報道を眺めていたらふと記憶が蘇ったのでした。ついに逮捕者が出ましたが、どうにも違和感が付きまとう事件です。違和感を感じるのは法務担当者としてあれなのかもしれませんが。


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