企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

2019年01月

 BLJ3月号拾い読みです。例によって本特集ではなく実務解説から。
 地味に厳しい「消費税転嫁対策特別措置法への実務対応」大江橋法律事務所の石井崇弁護士の寄稿。

 前回の消費税増税からまもなく5年。人事異動などで前回増税対応に当たった担当者がいなくなっていたり、前回はまだ社会人ではありませんでした!という若い担当者もいると思います。長年企業勤めをしている身でも事業年度途中で増税月を迎えるというのは初めてのことなので、増税(決定はしていないけれども)まで1年を切った年明けに「アラーム」を鳴らしていただいたと思います。

 消費税特措法の概要についてここで触れることはしませんが、守られていなかった場合には下請法以上に形式的にバッサリと指導・勧告などが下されると認識していたほうがよい、といい遺した法務担当者がいました。
 本記事47ページの図表3、4で取り上げられている対応状況や措置件数をみると前回増税時に増強された「消費税Gメン」が活躍し一定の成果をあげたということがいえそうです。そうすると次回の増税時にも消費税Gメンが活躍→企業調査を実施するのはいうまでもなさそうですね。

 消費税Gメンがどのような調査を実施するのでしょう。このエントリーの読者にも調査を受けたことがある方もいるかもしれませんが、先ほどの企業法務担当者によると次の様子。
 1.中小企業庁から調査実施と協力依頼の通知が届く。依頼といっても指示命令と同じ。
 2.調査日程の調整と調査日までに揃えておく書類の指示がある。
   ⑴ 調査対象とする拠点・取引範囲とそれに関わる特定供給事業者の名簿
   ⑵ 特定供給事業者との基本契約書、契約単価とその根拠、価格取決めの協議記録
   ⑶ 会社概要、直近3年間の決算書、直近1年の消費税申告書
   ⑷ 増税6ヶ月前までに特定供給事業者に対して発信した通知文書、電子メールの類
   ⑷ 増税前6ヶ月間の取締役会等重要会議の議事録
   ⑸ 増税前後数ヶ月の総勘定元帳

 これらの資料でほぼ取引の内容・支払額をGメンが把握します。
⑷は何のためかというと消費税増税前に会社経営陣が社内に特措法の周知を然るべく対応を取るように指示しているか、あるいは特措法に反するような指示命令を出していないかの確認のためのようです。会議資料の中に法務主催の特措法勉強会の資料などがあるといいですね。
 通知から概ね1ヶ月以内にGメンが実査に来ます。実査の規模にもよりますが、会議室を数日間使用しての実査になるようです。付きっきりで対応する必要はないようですが、呼ばれたら会議室に飛んでいかなければならないところは会計監査人監査やDDのときと同じ、のようです。
 
 本文47ページ図表4にあるように、圧倒的な措置件数となっているのが「買いたたき」。
悪質な買いたたきだけでなく「うっかり」という事案も含まれ、何らかの諸事情があったとしても何のエビデンスもなく増税前と同価格での取引が続いていると「我々としては買いたたきとせざるを得ないのです。」とバツをつけられるとのこと。本文48ページ(1)買いたたき❷に書かれていますが、日頃から下請法や建設業法などに従い取引業者との価格取り決めに神経を遣うことに慣れている購買部門や工事・営繕部門は心配なく、案外人事総務部門で「うっかり違反」があるんだよね、と前述の法務担当者がぼやいていました。例に挙げたのが借上社宅や駐車場の契約相手が町の小規模以下不動産業者や個人の地主のケース。なるほどですね。相手も細かなことをいってきそうにありませんが、それで許されるわけではありませんしね。

 年度途中の増税ということで、取引価格について年間単位で契約している取引先、毎月定額支払いとしている委託先など多数ある会社は春先から準備に入ったほうが良さそうですね。
 Gメンが来てからでは遅いのです。

 




  

 寒い日が続きますが、日の入りの時刻が遅くなってきていますね。 

 積ん読解消、というよりも確認のため読む「逐条解説・製造物責任法」(商事法務)。
民法改正に伴って製造物責任法も改正になりますので逐条解説が出るのは当然として多少章の見出しに手が入ったぐらいで消費者庁ホームページの内容とほぼ同じ、関係資料も平成6年の同法成立までのもの…一冊にまとまっているのは助かるのですが(以下省略)。

 改正製造物責任法のうち、製造事業者に地味にインパクトがあるのは第5条まわりです。現行法では「期間の制限」とあるところ、改正法では「消滅時効」と明確に規定されました。
 現行法では「必ずしも全てが消滅時効とは解されていない」としていたのが、改正民法第724条の2に合わせた形。改正法第5条まわりの規定については、第2項で短期の消滅時効について生命・身体の侵害による損害賠償請求権について主観的起算点からの時効期間「5年間」を設けられました。また短期「3年」長期「10年」と期間の年数は現行法と変わらないのですが、「消滅時効」とされた以上時効の更新・完成猶予の規定が適用されることになります。
 これまで製造事業者は製品事故発生後製造物責任法に基づく損害賠償の請求を受けたとしても「製品発売後10年以上経過」を一つの目処にしていたところがあったのですが、改正法施行後はそうはいかないということですね。製品事故の被害者救済の可能性を拡げたという点は製造物責任法本来の趣旨に叶うものですが、製造事業者の品証部門、法務部門は製品事故や対応状況を整理し改正法施行日時点で現行法に基づき時効完成した事案、時効が完成しない事案を確認する必要がありますね。
 またほとんどの製造事業者は製造物責任保険に加入していると思いますが、保険契約の内容も改正法を反映させたものに改定されると思います。
 民法改正に伴い取引契約を巻きなおしという時期ですが、製造物責任条項も抜かりなくという確認でした。
 
  それにしても中途半端な企業規模でBtoCの製品を製造・販売するのが厳しい時代になるというのが正直な感想。

 

 ジュリスト2019年1月号#1527 の特集 記事「消費者契約法改正」でした。
 2016年に続き2018年も改正法案が成立していますが、事業者の立場にあるとこの法律に関する諸々はどうにもこうにも。

 冒頭の座談会記事。もうこのパートだけで十分読み応えがあります。読み応えはあるのですが、スッキリはしないというのが正直な感想です。
 老若問わず、巧みな手法に乗らされ金を巻き上げられる人が後を絶ちません。自分にも後期高齢者の親が日中一人で生活していますから決して他人事ではないのですが、はなから法律など守る気がない「事業者」のために、多くの真っ当な事業者がコストを負担しなければならないという状況がより深まっているという…こんなことをいってはよくないのでしょうけれども。
 
 座談会記事を読みながら改めて改正法のおさらいをしたのですが事業者サイドとしては、改正法の「不利益事実の不告知の要件の緩和」「事業者の努力義務」が地味に重いという感触。
 前者は消費者庁「消費者契約の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)の主な内容」で、法第4条第2項関係でずばり不動産業者のマンション販売の事例が挙げられています。マンション販売の事例はともかく、自社の商品やサービスの販売活動の中で、「不利益事実の不告知」に該当するような実態があるか販促・販売部門との再確認が必要になりますね。
 もっと頭を悩ませてくれるのが後者。 まず法第3条第1項周辺。
 消費者契約の内容がその解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮することに務めなければならない。
 とされましたが、消費者との契約で「定型約款」を用いる企業は留意すべきですね。
 次に法第3条第2項周辺。
 契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、契約の内容についての必要な情報を提供することに務めなければならない。
 BtoBtoC事業者、商取引は事業者間だが最終需要家が消費者という製品を扱っている企業では、消費者が購入前に確認ができるよう、昔は購入して開梱するまで読むことができなかった「取扱説明書」や「製品保証」を既にWebサイトで公開しています。使い方、扱い方を確認してから購入してくださいねということなのですが、「個々の消費者の知識及び経験を考慮」とさらっと条文に入れられても一体どういう人が最終的に購入し使用するのか、企業側は事前に知りようがありません。「取扱説明書の読み方」「製品Aを購入する人のためのガイド」のようなものまで求められるようになりはしないか。
今回の改正では「努力義務にとどまった」という意見がありますが、進捗がよく見えない「消費者教育」「消費者啓発」が事業者側にツケ回しされているのではないか、そんなモヤモヤがいつも残るのですよね。


 

 あけきりました。松もとれてしまいました。ようやく初エントリーです。
 
   BLJ拾い読み、です。
 もはや伝統となった「法務のためのブックガイド2019」を話題にするには旬が過ぎているということで特集記事とは別に勘所を押さえてくる実務解説から。今回は「企業として押さえておくべき障害者雇用」。

 業容拡大、人員増強と採用を進めていくと後で焦る雇用義務制度。法定雇用率についての中央省庁のやらかしは民間企業としては怒り呆れの連続でしたが、「率」を物差しにすれば分母分子を弄る者が出てくるというわかりやすい事案でした。

 それはともかく。
 雇用側がかなり志を高く持たないと、ハンディキャップのある人を雇用し続けるのは難しいと思うのです。近視眼的に法定雇用率をクリアするためだけに採用し、あてがいぶちのような仕事しか割り振らないというような実態ではいずれ労働者側から就職先として選ばれなくなるかもしれません。ハンディキャップの子を持つ家族の気持ちを考えれば、ちゃんと仕事を続けられてスキルも身につき給料をもらえて納税して年金も収めて、ということが実現できない企業に就職させるわけにはいきませんからね。

 本稿でもあるように肝は採用後の「合理的配慮の提供」をどこまで実施できるかという点にあると思います。
某職場で現場担当者の配慮不足、コミュニケーション不足と推測されることから赤チン災害を発生させたことがあり、企業としての至らなさを思い知らされました。とはいえ、例えば物理的な配慮とひとことでいっても、製造現場では限度があるのも事実。また業務の種類、業務量の調整についても病気や障害について知識や理解が乏しい職場管理者に丸投げするわけにはいきません。労務担当者と専門機関、職場管理者と本人(ケースによっては家族も)と協議を重ねて職場を作り上げていくプロセスは欠かせないでしょう。簡単なことではありません。だからこそ企業に本腰で取り組む意志が必要で、そうでないと「率」を弄るような事態を招くのです。とはいえ業績がおぼつかない状況の企業では人的にも金銭的にも手が回らないという実情もあり…かなしいかな。

 ただ中高年の上の方の年齢に差し掛かると自分が病気や怪我でハンディキャップを負う可能性はありますし、それでもなんらかの形で仕事を続けなければならない状況に置かれるということは十分あります。そう考えると、ハンディキャップ雇用というのは他人事ではないのですよね。

 前述の赤チン災害発生の際に、環境安全担当者とハンディキャップの社員が働きやすい現場は当然健常者にも働きやすいはずと話したのですが、まだまだ何かと課題が多いというのが正直なところ。
 本来の意味のバリアフリーやユニバーサルデザインの思想を企業経営に、といったら大雑把ですが。

 それでは、また。





 
 

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