企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

2019年04月

 BLJ6月号、拾い読みです。

 特集「今求められる内部通報制度の再点検」に対する雑感。
 職務のひとつに、内部通報の窓口&諸々調査業務があるのですが、通報があれば当然のことながら通報がなければそれはそれで問題という、大変悩ましい業務です。
 勤務先の場合、制度スタート時がハラスメントをはじめとする職場の倫理問題の相談窓口というような意味合いが強かったのか、制度利用のハードルを意図的に下げているわけでもないのですが職場の人間関係に関する相談が結構入ってきますね。本誌の記事では通報対象事実を限定することも可とされているのですが、話をきくうちに他の問題もぽろっと出てくることもあるので通報対象を限定することには躊躇があります。本来の(?)通報対象である不正行為などについては通報制度だけでなく、経理や業務完治部門が売掛・買掛のチェックをしていくなかで事案の糸口を掴むケースがあります。不正行為に関していえば内部通報制度のほかに内部監査や業務管理の仕組みの充実が不可欠ですね。

 この業務の何が難しくて悩ましいかというといかに従業員の信頼を得るかという点。自分が担当する前にあまりうまくない対応があり、それ以来制度を信用しないと従業員からいわれたことがあります。通報するまでの苦しみ、辛さ、葛藤が大きければ大きいほど制度担当部門に対する期待値が高いということを肝に命じています。(だからお悩み相談レベルであっても一回は必ず面談するようにしているのですが)
 調査時の事実確認を丁寧に重ねていくことも大事で、通報者による通報内容はあくまで通報者の主観によるもので事実とは限りません。実際、意趣返しのような通報を受けたこともあります。通報者の通報内容=正しい事実といった予断を持ってはいけませんね。

 この内部通報制度を支えるのは、通報窓口業務と実際に面談・調査業務を担う担当者の人柄やスキルであり、自分の人間力の至らなさを痛感することも多々あります。そしていまの最大の悩みは後継者を見つけいかに育てるかということです。他の企業は本当にどうしているのでしょう?
内部通報制度の重要性は理解していますが諸々悩ましい制度です。
 

 
 

 デリバリーのよい地域では6月号が届けられる日に、ようやく5月号を取り上げる体たらく。この1ヶ月間の環境変化を理由にするのも情けない。と、いうわけでメモ程度。

 特集は「民法(債権法)改正を踏まえた契約ひな形の見直し」。時期としては改正法対応の総まとめ、なのでしょうね(汗)
 これまでもいくつかの取引先から基本契約書の改訂の話は舞い込みましたが「法改正対応」と明言されたものではないようで。もっとも、先方も法務部門は「法改正対応」と明言していたかもしれませんが、先方の法務担当者→購買責任者→購買担当者→自社営業担当者と伝言ゲームが繰り返されるうちに「落ちた」可能性も考えられなくはありませんが。
 今のところ数少ないひな形ドラフト例でいうと本特集の「売買取引基本契約」(MHM青山大樹弁護士、岡成明希子弁護士)の記事の「契約不適合責任」にある「瑕疵」→「契約不適合」の文言修正あたりでとどまっており、大きく変えているものはないという印象。今後変更契約を交わすことはあるかもしませんが。
 ただ現場部門によく詰めを頼むのは、基本契約にある「詳細は個別契約に定める」「詳細は別途取り交わす仕様書による」という文言を安易に扱うなという点。それらを含めての「契約内容適合」でもあるので基本契約締結だけ急いで詳細は後回しでズルズルとなることもあるので。

 今後債権管理部門との間で詰めようと話しているのは、連帯保証条項。売掛契約における連帯保証人はほとんど経営者の人的保証なのですが、稀に子息や他の親族の名が入っている契約書があるため。法対応という点では、連帯保証条項を残すにしても実務では2ヶ月分の取引額でもよいから保証金差入にしてもらった方がよいのかも、といった話。
 
「利用規約・保証書」(NOT 松尾博憲弁護士)の記事について、前半の利用規約に関しては現在利用規約を使っての取引がないのですが、後半の「保証書」の部分はメーカーですので再確認したいところ。業界団体の顧問弁護士が早い時期から保証書を「定型約款にしよう」との意見を寄越していたのですが、本稿でも「保証書は定型約款に該当する」との見解が示されています。
 最近では家電メーカーはじめ取扱説明書や保証内容を予め自社Webサイトに掲載していますが、保証書を定型約款(保証約款)とすれば、保証内容の変更もWeb上での通知で理屈上は可能にはなりますね。
とはいえ紙ベースのものを一切なくすことは難しいでしょうし、建材設備の世界では元請業者や流通業者が保証特約を上乗せするケースがすでにありますので、さらなる検討が必要かなと思います。

 と思ったままをメモしましたが、実務担当者によるクロストークの内容も重量感がありますね。

 月遅れのエントリーなのでもはやここまで。

ビジ法5月号、拾い読みです。メイン特集の「広告審査法務の実務」はゆっくり読むとして実務解説の
「日産自動車事件にみる『経営者不正』への向き合い方」(山口利昭弁護士)を読んでの雑感。

 日産自動車の件は報道先行のきらいがあるので経営者による不正のみの事件なのかどうか不明ですが、そのほかにもアパートメーカーや業界トップのプレハブ住宅メーカーの不正工事隠蔽など立て続けに発覚、報道されています。はたして勤務先は何か隠していないかという疑念と万一企業不祥事の当事者側に立たされたらどうしようかという不安におそわれている法務担当者もいるかもしれません。
 ふだんはこちらの意見は軽くあしらうくせに、有事の際に「法務は何をしていたんだ!」と責められるのではまったくわりに合わないと思っている方もいるかもしれませんね。
 記事では他企業の不祥事を「他山の石」にするためのポイントとして、①未然防止の視点②早期発見の視点③有事対応(危機管理)の視点の3点が挙げられ、それぞれ解説されています。読んでみれば、本記事に限らずいろいろな場所で山口弁護士が主張されている内容で最後にジェネラルカウンシル、CLO待望論に触れてまとめられています。

 企業法務対象の誌面なので、経営者の暴走に対する法務・コンプライアンス部門の役割や責任にフォーカスされる点は仕方ないのですが、法務・コンプライアンス部門だけがその責任を背負うものではないと思っています。日産の事例に限らず会計絡みの不正であれば、財務・経理部門や監査部門も無関係ではありません。「コーポレートガバナンス」「コンプライアンス」に関して、もう何年も法務・コンプライアンス方面と会計方面、ときに監査方面から様々なアプローチがされているにもかかわらず企業不祥事が後を絶たないのはどういうことなのでしょうか。それぞれの部門が負っている不正防止に対する「責任」がうまく噛み合っていないからでは?とも思うのです。

 誰が経営者・役員の不正や暴走、あるいは不作為を止め、諌める責を負うのか。
 本記事15ページに一例として非業務執行役員を巻き込むことの必要性に触れられています。一従業員である法務や経理部門の中間管理職・担当者が単独で経営者や役員と対峙することは非現実的で、途中で潰されないように、そして身を守るために「対峙できる存在」の懐に飛び込むのも一つの手段でしょう。
それを可能にするためには社外取締役や監査役と日頃からある程度接点を保っておくことが必要になりますが。
 ただ自分が思うに、いかなる事情であれ経営者・役員を刺す(訴える、辞任に追い込む)ことには違いないので、法務・コンプライアンス部員がその胆力をどのように身につけていくのか、この点も議論されるべきだろうと思います。人の恨みつらみを引き受ける覚悟なしにできる仕事ではありませんからね。


 桜も盛りを過ぎた週末、恒例のネタ。 

 入社式と入社手続きを済ませたばかりの若者に、コンプライアンスだCSRだの説くことは難しいと思いながらも、講師を引き受けざるをえず、今年もやりましたよ新人研修。人事部門の気まぐれか3時間の枠をもらったものの自分自身が消化できたかどうか、研修が終わると軽く凹みます。

 座学の3時間、というのは聴くほうも辛いが喋るほうも辛い。
ということで、新入社員同士の交流も深めるという名目でグループディスカッションの時間を何回か設け休憩時間も挟み、講師と受講者の双方の負担を軽減しながらゆるゆると進めました。2週間強の座学やその後の工場実習などのスケジュールが控えています。研修のほぼトップバッターの役割は本格的な研修受講に当たっての地ならしだと勝手に位置づけました。(事務局からなんのオーダーもないのだもの)

 グループディスカッションのお題は「会社は誰のものだと思う?」「コンプライアンスという言葉にどういうイメージを持っているか」といったもの。戸惑いながらも、時にこちらがどういう答えを期待しているかを探りながらわちゃわちゃと意見を交わしているのを眺めていました。これが正解!という答えのない問いではありますが、入社2日目に皆で考えたことを何かの時にふと思い出してもらえればいいとおじさんは思っております。
 企業不祥事ネタが多い時期でしたので小咄には困らないのですが、メーカーですので品質偽装ネタには触れました。取引先に納入する製品について契約上の仕様を守れずデータを偽装した、しかし国の定めた基準は守っているというパターンを取り上げました。君ならその会社の製品を買うか、買わないかという問いかけまでとしましたが。
 あとは数年ぶりにバイトテロが発生したのでSNSとの付き合い方。

 こんなことを取り上げながら無事3時間を双方乗り切ったのでした。
最後に付け加えたのは、この後の研修カリキュラムの中にはすぐには何の役に立つかわからないものがあるかもしれないけれど、一つとして無駄なものはないということ。全部は「地続き」だと、最近読んだ警察ミステリー「新任巡査」にあった台詞を拝借して締めたのでした。

 それにしても、新入社員と親子ほど年齢の離れた講師ではもうきついなというのが正直なところ。こういう点でも後継者の育成を痛感した次第。

 ではでは。





 

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