企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

2019年05月

 なんとも形容しがたい事件の報道。今日の事件に限らず弱い存在が犠牲になる事件が多いですね。
被害者の心情を一切無視するかのようなマスメディア。そのマスメディアを叩く識者。どのような立場、見識を持ち合わせているのかわからないがインターネットで己の存在を示そうとする者、これまたそれを叩く無数のネットの声。
 これらの行為が誰かを煽り、追い詰め次の事件のタネを蒔いている可能性があるのではなかろうか?



 今日の報道で思い出したのは北欧ミステリー「制裁」。
何か具体的なことを少しでも書くと即ネタバレになってしまう作品。
ミステリーといいつつ、冴えた謎解きもなく読後の爽快感とは無縁。加害者が起こす犯罪やそのさいの心理描写は正直不快なもの。被害者の家族の心情は痛ましいの一言に尽きます。そして被害者の家族のとった行為の結果に便乗していく世間。便乗していく世間が最も醜悪だし恐ろしい。

 もうやめよう。 

 亡くなった方のためにただ祈る夜にしよう。
 
 


 いきなりの夏日で戸惑います。キッチンの片隅にはまだ小型ガスストーブが置かれたままというのに。

 ビジ法7月号拾い読みです。
 メイン特集は「下請法実務の総点検」。
年によって時期ずれはありますが、6月から7月になると中小企業庁から下請法の書面調査に封筒が届きます。1年が過ぎるのが早いと感じる出来事のひとつですが、絶好のタイミングの記事ですね。
 月初の社内会議で取締役、執行役員対象に消費税増税転嫁特別措置法について「買い叩くな、買い叩かれるな」「下請法に優先して適用される」と注意事項を説明したばかりです。
 下請法については工場製造部門は過去に当局にかなりご指導をいただいたことがあるので、かなり注意はしていますがどこまでやれば完璧ということはない課題です。「うっかりしてました」「原価低減目標達成のために」などといった話が常に付きまといますからね。
 
 特集は7つの記事から構成されていますが、個人的には「下請法のボーダーラインと実務対応」(池田毅、川﨑由理弁護士)、「社内監査の方法と実施のための体制整備」(村田恭介弁護士)がツボでした。
 前者の記事ではⅢの2「金型保管の費用負担」「買い叩き」が気になるポイントです。後半で言及されている「生産数量が徐々に減少する」「補修部品生産」のケースでしょうか。補修部品生産については民法改正に伴い製造物責任法の時効が消滅時効になるので、保管してもらっている金型でしか作れない部品がある場合、どうするか悩ましい問題になるかもしれません。
買い叩きについて自動車産業の事案に触れていますが、自分のいる業界でも自動車産業を親会社にもつ企業があり、その企業では半期か四半期ごとに価格協議がありました。下請側から「原価低減提案」をださせてという手法でした。そういう企業でしたので、勤務先が減資を行う際に真っ先に資本金3億円を下回ったら困るといってきた話が記憶に残っています。
 後者の記事。社内監査とタイトルにあったので読みました。社内研修が実質的に監査の役割を果たしているのではないか、監査担当部署は法務部門が適切との意見については半信半疑な気分です。
 年1回の当局の書面調査時以外に自主的に監査を実施する機会は少ないのは確かです。内部監査部門を管掌する立場になりましたので研修の有効性は認めるにしても、第3条書面や第5条書面、価格協議議事録の作成保管状況、発注システムに登録されている単価が正しいか、といった監査と両輪で回す必要があると考えます。研修にしろ監査にしろ担当者のスキルが十分かというのが前提にはなりますし、そこがまた悩みどころでもありますが。
 村田弁護士の記事でのもう一つのポイントは購買部門以外での下請法違反。購買部門にばかり注意が言っていましたが総務部門や設計部門、販促部門の担当者に下請法の知識が乏しいがため、すんでのところで、というケースがありました。追加の課題です。

 企業法務の方々が注目しているであろう「企業法務のグランドデザイン」についてはこのエントリではスルーします。脊髄反射的にコメントできる連載ではないので。

 ではでは。缶ギネス1本空けながらのエントリでした。
 






 
 

 ジュリスト#1530(2019年4月号)の特集「パワハラ予防の課題」をようやく読んだのでメモ。

 今年の3月に「パワハラ防止義務」法案が国会に提出されたのですが、記事編集のタイミングは国会提出前のものがほとんどではないかと思います。
パワハラというと企業内の事案と思いがちでしたが昨年来、スポーツ界や教育界でも起こっていることが派手に報道されました。 そういう状況を受けての冒頭記事「座談会」は企業、スポーツ、学校のそれぞれの「社会」におけるパワハラの定義、原因、予防について学者(成蹊大 原昌登教授)実務家(白井久明弁護士、杉浦ひとみ弁護士)企業労務部門(イトーヨーカ堂久保村俊哉氏)による座談会。企業労務の方の話がやはり現場の実態に接しているのでコメントにも苦渋、苦心が滲みでています。何回も頷いてしまいました。

 「パワーハラスメント 組織論の見地から」(同志社大 太田肇教授)。
自分としてはこちらの記事の方がずしりと重たかったですね。
伝統的な日本企業をルーツに持ち業歴だけは半世紀を超えた勤務先に当てはまることが多く、「そう、そう 」などとうなづいている場合ではないのですが。地方にある工場や、現地採用者中心の地方の営業拠点はそのものが小さな「共同体社会」。上司部下間の「パワハラ」のみならず、同僚間の「圧力」が原因の事案もちらほらとあります。

 パワハラ防止義務法案は、セクハラ、マタハラと違い法律上の定義がなかったパワハラをまず定義するところに意味があるとは思います。研修の場でも「パワハラとは」と明確に説明できるようになると思います。前述の座談会でも実務家の方からは「法制化はあくまでスタート地点」「パワハラに対する意識が高まる契機」等の意見がありましたが、販売でも製造でも現場を預かるマネージャーの関心は「何をしたらパワハラなのか」、従業員の関心は「何をされたらパワハラなのか」という点です。「定義」の危ないところは誰が読んでもわかりやすいものにしておかないと「これはパワハラ」「これはパワハラではない」と管理者・従業員がそれぞれ勝手に判断する可能性があること。コンプラ問題でありがちな思考停止ですね。判断の組み合わせ次第でパワハラを受けていながら通報を諦めるといった事態を生んではまずいでしょう。
 法案成立のあかつきには「あかるい職場応援団」などで、わかりやすいコンテンツを整備してもらいたいですね。

 ではでは。

 

 企業法務戦士さんが取り上げた後に同じネタでエントリーを挙げるのは無謀とは思うけれどもメモとして。

 民法改正対応のまとめの時期ではあるものの、2021年4月の会計基準の変更「新収益認識基準」のインパクトの方が大きそうで、取引先の上場大企業の何処かから「新収益認識基準」を反映させた契約書更新案が来ないものかと密かに期待していたりして…。しかし来るのは瑕疵担保を「契約内容不適合」に文言修正したものが多く、あれあれ。

 法・制度改正に基づき社内外向けの書式を一新するときというのは存外「力仕事」。社内説明と理解度の確認。次に販売先・取引先宛の要請文書の準備などが必要になります。民法改正と会計基準の変更はわずか1年の違い。毎年基本取引契約の更改を要請したりされたりということは実務上まず考えられません。では2020年4月に民法改正も会計基準の変更も同時に行えるかというと疑問符、というか大変な困難を伴うだろうと。もし法務部門が契約書の書式だけ整えることだけが仕事ならば対応は可能かもしれませんが。

 すぐに理解できない箇所が多いことは承知で会計系の書籍をひっくり返し財務部門やIT部門と何をどう詰めるか。例えば…
  • 現行業務システムは製品工場出荷時に売上計上
  • 大口販売契約先が上場企業、販売リベート支払い
  • 連結子会社が工事進行基準をとっている
  • 維持管理契約が事業の中核の関連子会社がある
  • 知財ライセンスのローヤルティーの支払い・受領がある
  • 伝票を通すだけ(いわゆる手数料)取引がある    等々
 取引内容(商慣習的なものも含める)の確認とそれが新基準適用後も変わらず継続できるのか、業務システムの見直し(ITシステムの改修の要否も含む)の検証、事業継続の可否検討など、検討対象の網は拡げてとなると…来年4月に民法改正時と同時に対応できる企業がどれだけあるのでしょうか。(対応できる企業も当然あるでしょうけれども) 

 そして自分としては、内部監査人として今何を経営者や経営陣に提言すべきかという課題もあるのでした。(半身がまだ法務に突っ込まれたまま)

 「改正民法と新収益認識基準に基づく契約書作成・見直しの実務」のほか、読んでいる書籍は次の通り。(前にも貼ったかも)




 

 元号が変わって6日経過。勤務先の業務カレンダーは巷で喧伝されていた10連休とは無関係の3日間。退位の日も即位の日もいつもと変わらぬ日でありましたし、6日から業務再開しています。

 平成が始まった年は入社して3年目。入社後2年間の見習い期間が終わり「査定」を受ける身分になった年でした。以来30年、いくつか部門を異動し査定による浮き沈みも経験し現在に至るといった案配。
「あの時、ああすれば、こうすれば」という気持ちが少しもないわけではないけれど、過去は変えられないし、そもそも記憶なんてものはあてになりません。10年前のことだと思っていたら、よく考えたら20年前のことだったといったことも時々あります。ため息をつくしかないのですが、とにかく振り返ってみて思いついたことをメモ。

 企業法務らしい業務に就いたのは2006年(平成18)の暮。それまでの販売部門や事業企画部門を行き来する異動とは別次元のもので当初はどうしたものかと思ったものですが、よく続けてこれたものです。
 最近の企業法務界隈の話題を眺めていると、今後は自分のように他部門を経て中年世代を迎えてから初めて法務に異動するというケースは減るでしょう。事業環境が加速度的に変化するなか、企業法務を目指す法曹資格者や法科大学院生が増えているわけですから、「四十の手習い」といった生半可なことでは仕事になりません。法曹資格のない中年世代が企業法務で生き残るとするなら、自社ビジネスはもちろん業界情報の裏表に通じるとか社内外に相応の人脈を築いておくのが不可欠かもしれませんね。

 異動を何回か繰り返しましたが、どうやって異なる組織や業務、人を覚えてきたかというと一旦雑事些事を引き受けることでした。異動直後にいきなりメインの業務を任されることはありませんし、任される場合は他に人員がいないということですので。雑事些事も積み重ねればその組織や業務のあり様も、業務に携わる人間関係(他の関連部署も含む)がわかります。情報が集まります。顔も売れます。これは法務業務にも当然いえることで、経営に近いところで仕事をするならなおさらです。事務局業務や議事録係はかって出るべきだと思います。(前にも書いたかな)

 あまり後進の見本になりそうなことをしないまま新時代を迎えてしまったことを悔やみつつ、今回はこんなところで。

   

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