今回は「法務系Advent Calendar 2015」参加エントリーです。
 とはいえ、変わったことはしません(できません)

 幾度となく触れていますが、自分のサラリーマン生活のスタートは営業担当者です。
入社してから30代半ばまで、主にゼネコンの建設工事現場を廻っていました。
打設したばかりの湿ったコンクリートの匂い、建機の運転音、配筋工事始め様々な工事作業による金属音やら何やら、指示命令とも怒号ともつかない声が交錯する現場に打ち合わせで出入りしていました。
カタログ品をただ納入する仕事ではなく、現場ごとのカスタムオーダーメイドの製品を工事込みで納品する仕事でしたから、仕様決めから納品工事、建物の竣工までどんなに短くても半年、原設計段階から関わる場合だと2年近くその建設現場に関わることもありました。
 
 例の傾いた事件についてまだとやかくいえる段階ではありませんが、ただかつて建設現場に業務で出入りし、そして今自社の従業員や協力業者が建設現場で仕事をしている企業の法務周辺業務を担当している身からいうと他人事では済まない事件ということで。

 建設現場のあの「仮囲い」の中は、ある一つの「社会」のようなものと思っています。その社会の構成員は元請と元請を上流とする請負契約関係を結んだ専門工事の下請負業者です。短期間でその現場の仕事を終えていく会社・業者もあれば、着工から工事完成までずっと現場代理人や作業担当者が現場に常駐している会社・業者もいます。いずれの会社・業者の社員にしても日々の業務管理(というか仕事の評価)を所属会社の上位者が行っているわけではありません。仕事の指示は元請から現場代理人になされます。

 建設現場というのは、ナマモノです。どんなに綿密な設計図があろうと、厳格な元請の指示があろうとその通りに施工ができないケースが発生します。誤りのある設計図、仕様違いの支給材、適切でない元請の指示、そんなケースを当然想定し、建設団体がモデルとして市販している工事請負契約約款には、下請業者からの異議や変更の申し立てや下請業者の免責をうたった条項が設けられています。約款の条項を持ち出すこともなくちゃんと協議できる(日毎、週次、月次の定例会議はありますからね)とは思いますが。
しかし時に、例えばある工事の工程延長を必要とする、費用が発生するとなるとそう簡単な話ではありません。これに法令違反、基準違反が絡むとどうなるか。

 いろいろと察しがつきますよね。

「いやそんなことでは責任を果たしたことにはならない」「内部通報制度でなんとか」といわれる向きもあろうかと思います。しかし「仮囲い」の中の「社会」で生きている下請企業のいち社員にできることには限界があるでしょう。
 無論その社員が所属会社の管理部門や経営者にことの次第を報告し、所属会社が「そんな現場の仕事は断ってしまえ。話は会社がつける」というのであれば別ですが、そこまで会社・経営者が踏み切ることができるでしょうか。一時的かもしれませんがその元請との関係で村八分になっても良いと腹を括れるでしょうか。

 ずらずらを書いてきましたが、傾き事件については、建設業界がどうのこうというよりも自社の事業所以外の自社の目が届きにくい職場で働く従業員に不正を働かせない、不正に巻きまれないようにするにはどうすればいいのか、ということの方が重要だろうと思った次第。
 
 頭痛いです。