久々のエントリーとなってしまいました。

 ここ何年か新卒社員の研修の初日か二日目に「コンプライアンス研修」の時間枠が割り当てられるのですが、まだ企業勤めを始めてもいない子らに一体何を伝えれば良いのだろうかと考えあぐねるのですが。
ここで何回かネタにしてそれなりの反応があるのが「企業不祥事はどんな人が起こしているのか」というもの。不祥事はいけないこと、でも会社の中でそんなことをしでかすのはどんな人物かというと、当然ながら入社数日の若者には想像がつきにくいもの。「普通の人ですよ。不祥事を起こした人も皆さんと同じように学校を卒業して4月1日に入社してこうして新入社員研修を受けていたのですよ」というと「え?」という表情をします。すぐにはイメージできないのでしょうね。

 タイトルに惹かれて手に取った本書、「フリーランスの経理部長」が書いたものですので会計系の不正が主な内容です。
不正会計というと某電機メーカーの事例が取りざたされていますし、企業法務担当者の関心もついああいう大事件に向きがちかもしれません。独禁法、景表法や個人情報保護法などのリスク管理も本気で取り組まなければならないかもしれません。しかし、これらのリーガルリスクよりも日常的にさらされているリスクは、「普通の社員」が手を染めてしまう横領、着服、背任、そこまでいかなくても不正な会計処理だと思うのですよね。

 内容はというと軽い読み物風の文体ですが刺さるところにはグサグサ刺さります。目次を読んだだけでも心が痛みます。例えば、『「社員を信頼して」が間違いの始まり』『不正は必ず目上の人を見ながらやっている』『「嘘をつかない」のが当たり前だというほど騙されている』『ハラスメントをする上司は本業の実力がないから騙される』など、「ああ、あるある」などといっている場合ではないのですが、頷かざるをえません。本書は経理担当者や監査担当者を念頭に書かれたものですが、リスク管理を担当する法務担当者も読んで損はしないと思いますし、研修ネタにもできそうです。

ところで…
 法務担当者もある程度会計の知識という声がありますし、自社のビジネスをよく理解するということも口酸っぱく言われていると思います。では自社のビジネスを理解とはどういうことでしょうか。業界知識や自社の強み弱み、販売先、取引先に関する知識ということでしょうか。では、そのビジネスを支えている自社の営業担当者や購買担当者が毎日どのような業務についているか、どのような業務システムを利用しているか把握しているでしょうか。高度な業務システムが構築されている昨今、不正を働くには業務システムを熟知し業務フローのどこに隙が生じるかを知らないと難しいのです。したがって不真面目な社員には大それたことができず、真面目にシステムを習得した「普通の社員」ほど不正が働けてしまう面があるのです。法務担当者も自社の販売や購買の業務システムをある程度知っておくべきですね。