2017年10月29日 17:34

法務担当者は渉外担当者に転身できるか 2

 えー、不定期・連載エントリーです。
 自分のキャリア整理のような面があり若い法務担当者の参考になるのかわかりません。

 20年ほど前、まだ自分が営業担当者の頃ですが、一時期プロジェクト的に「官需市場」を担当したことがあります。といっても大掛かりなものでなく当時の部門長の判断で立ち上げたもので、補助金行政によって潤う市場を取り込もうにしても、関連法や制度をしっかり理解している、理解しようとする人間がいないことには話にならないということで、官需営業の表とそうでない部分に通じているベテランと、若手の中では官需営業の「いろは」の「い」から「ろ」ぐらいの理解はあるだろうということで自分とが組まされました。この仕事は営業ではなくて経営や事業企画部門の仕事じゃないのかと思ったのですが、「情報とりも営業の仕事だ」のなんのとそんな理由。ともあれ営業として受注高ノルマを抱えつつ、霞ヶ関や県庁界隈をうろうろする日々を過ごしたのでした。

 役所を回るといっても、何の実績もない企業の担当者が「こんち、これまた」で役所の担当官と話ができるわけはありません。ベテランが築いてきた「伝手」を頼るにしても予備知識なしでは、さすがに舐められる。何から始めるか。公共事業として金が動く以上「予算」の理解からだろうと、そこから始めたのでした。
 こんな作業でした。
  1. 霞が関の官庁の資料館や図書館を回る。
  2. 予算案や関連する書類を探して閲覧する。
  3. コピー可能な資料はコピーする。
  4. 販売されている資料は購入する。
  5. 資料を読み込んで、訪問する部署や確認事項を整理する。
  6. 所管や関連部署を訪ねて面談する。
 単年度の予算資料を読んでもわからないものです。何に基づいて予算付けがされているのか、予算資料だけでなく、基本計画やマスタープラン、議会資料といった文献を遡って読んでいるうちに、次第に資料で使われている語句(いわゆる役所言葉も含む)、「官」なりの思惑とそのための理屈が分かってきます。3年分くらい予算資料を読むとある事業について、線が繋がるという感じでしょうか。
(もっとも、これは20年前の話です。上記の1から4は、デスクに座ったまま官庁・自治体のホームページを一巡するだけで大体のものは得られるでしょう。まったく便利な時代になったものです。)

 役所を回るといっても、すべてアポイントを取ってからというものばかりではありませんし、時間をもらったといっても1時間ももらえるわけではありません。短い時間でどれだけのことを聞けるか、あるいは本当に聞きたいことを1つに絞るというのも重要で、その点はベテランの上司に教え込まれました。
「いいか、決め台詞は『教えてください』。民間企業の人間から教えてくださいといわれて断わる役所の人間はいないぞ。」 本当かいなと思いながら時間を作ってはぐるぐると役所を回っていたのでした。

 本来の営業の仕事かどうかは別にして数多の文献を読み込み分析、要約し、次の行動を何パターンか考える、という経験が多少なりとも現在の企業法務の仕事に役立っているかもしれません。「官」の思惑や理屈を読む、という癖がついたのもプラスかなとも思っています。
 
 では、そんな過去の営業経験といくばくかの法務経験をもって、官庁相手の渉外業務につけるかというとどうか。もちろん、それで十分だという方がいても異論はありませんが、もっていたほうが良い経験として業界団体の活動があります。
 上記の官需営業経験を通じて得たものはありますが、結局は自分の営業数字のためだけのものです。自分が渉外という仕事を目の当たりにしたのは、販売から事業企画部門に異動してからのことですが、それについてはまた不定期に。

 参考にならないかなあ、やっぱり。
   


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