先日建設紛争に関する諸々の顧問法律事務所からセミナーの案内が届きました。日程はなんとかできるかと思いますが空席があるか。
 セミナーの題目の一つは建設業契約の電子化。紙と署名と判子の3点セットの建設業界も電子化よる契約業務の省力化は避けて通れない問題になってきたのでしょう。同法律事務所のクライアントには大手中小の建設・住宅事業者、建材流通事業者、建材メーカー 等、裾野の広い建設業界の上流から下流までいます。代表弁護士は基本的には「契約電子化」「三文判で済む申請書類は電子化を進めるべき」といった旗を振っているので、今回のセミナーを契機にひょっとしたらぞろりと山が動くかもしれない? 
 しかし現時点での電子契約、電子サインの話はあくまで発注者(事業主・個人)と請負者(建設・住宅事業者)との間のものにとどまる話が主流で、請負者と数次の段階を経由する下請負事業者との間の契約については触れられていません。

 また同時期に、社内の建設現場担当から元請がカレンダーアプリで現場工程の管理を行うため、アプリを会社貸与のスマホやタブレットに元請指定のアプリをダウンロードしてよいかといった問い合わせが数件寄せられました。建設現場の特にビルやマンションの工程管理は多数の職種が出入りすることもさることながら、天候や突発的に起こる諸々で工程変更することも珍しくないため、元請の工程管理責任者の工程調整業務はなまじのプロジェクトマネージャーの比較になりません。カレンダーアプリの導入は必然でしょう。しかし下手をすると元請の数だけアプリをダウンロードすることになりますし、またセキュリティのしっかりとしているアプリと残念なものとがあります。顧客の要請と親会社を含むグループ会社の情報セキュリティ方針の板挟み、という状況も生じかねません。

 電子化の目的は業務の省力化です。しかし取引の安全は担保しなければなりません。アナログであれデジタルであれ、抜け道を見つける人間は必ずいます。「紙・署名・判子」時代とはまた別の運用の厳格さが要求されるものと思います。しかし厳格さのみでは新しい仕組みは広がらないでしょう。裾野が広い建設業界、業界構造の上の方の事業者だけが「電子化」を推し進めても意味がないのです。当面ある程度の「ゆるさ」も許容し「電子化」のハードルを下げることも必要ではないかと思います。

厳格と寛容のバランスは業務システム共通の話ですけれどもね。