2019年10月13日 17:49

悪意はふつうに隣にある

 今年の初夏のことになるが昔見知った名前と顔を報道で見た。若い頃見知っていた顔だったが「ついにこの日が来たのか」という何ともいえない気分になった。というのもその人物の逮捕報道だったからである。

 その人物は発注側のキーマン(発注権限者)であった。駆け出しの営業担当者の頃だから、工事現場の元請との折衝は自分が担当し、キーマンへの対応は上司が引き受けていた。当時は30代後半だったか、まだ役付でもないのに相当額の発注権限を握っていて巨大企業は違うのだなと思っていたのだが、裏も癖もある人物で、上司も商社(というかブローカー的存在)を介して対応していた。上司は「お前は関わらなくてもいい」といい、商社の人間も「とかくカネがかかる」と苦笑するような、そんな人物である。仄聞すると社内でとかく噂が浮いては沈むといったことの繰り返しだったようだが、それでも組織から放逐されない何かを身に纏っていたのだろう。
 あれから30年ほどの年月が流れ当時の記憶も薄れかけていたところの報道であった。

 癖のある(かなり抽象的な表現だが)人物というのはどの企業にもいる。もともとそういう類の人間なのか「発注権限」のある業務に長く従事しているうちにそうなるのかはわからないが受注者側をうまくコントロールすることに長けているという点は共通している。そんな人物に仕事ください、何でもいうことは呑みます、手伝います、でもたまには儲けさせてくださいという欲顔丸出しの人間が近づけばいいように利用されるのは明らかである。

 内部統制、コンプライアンスが叫ばれ続けていてもなお企業不祥事が後をたたないのはなぜか。前述のような事案がぼちぼちと発生するのはなぜか。

 最近思うのは業務システム(ITということだけではない)を構築するメンバーや総務・法務などコンプラ系部門の人間が購買や販売といった仕事のうちにある危なかしさを感じる機会が限られているのではないかということ。以前社内不祥事の調査を行った際に、自社の業務システムの諸々が「皆が真面目にルールを守ること」を前提にしていたがゆえに、初めからそれを悪用しようとする人間に対しては脆弱ということがあった。業務システムを考える担当者たちは基本的に真面目で実直なタイプが多いと思うが、自分たちの基準でものを考えるだけでは不十分だろう。幅なのか深みといえばよいのか、優等生的ではない要素を交えて構築していくことが脇のしまった内部統制・コンプラになっていくのではないだろうか。(すごい抽象的で我ながら情けなくなる)



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