2020年01月12日 23:36

現地現物主義の手引きに 「企業法務のための初動対応の実務」

 早々に、完成在庫品の引き取りだの貸与金型の確認、代理人との連絡といった業務に時間を割いた新年。今年もこんな調子でいろいろあるのか。というわけで昨年末に刊行された「企業法務のための初動対応の実務について」(日本能率協会マネジメントセンター刊)についてメモを残しておく。

 何事も現地現物確認だと営業担当者時代から教えられてきたものだが、法務担当者に「初動対応」が求められる場面というのは、規模の大小、重要性の高低はあれど「有事」のときで「現地現物確認」が緊急性を帯びる。しかし法務担当者といえどもすぐに何でも対応できるとは限らない。百戦錬磨の(であろう)上司が不在かもしれないし、当事者部門はパニック状態で喚いているだけかもしれない。そんなときにどうするか、何をすべきなのか。現地現物とはいうものの「現地にいるだけ」では、法務担当者の存在価値を疑われかねない。現地現物確認と簡単にいうが、それには相応の知識や経験が求められるのであって、この点は企業法務初心者の最初の壁かもしれない。

 本書は帯のコピーや冒頭の著者はしがきにあるように、まだ経験の浅い企業法務担当者や弁護士を対象としたもの。コンプライアンス、契約管理、債権管理、情報管理、労務管理、会社整理、M&Aの全10章。各章ごとに「相談事例」→「7つのポイント」→「留意点」という順で、「有事」に対する解説で構成されている。章立てからいえばもっとページ数が多くなってもおかしくないが、要点がコンパクトにまとまっているせいか、400ページ程度に納まっている。本書1冊で事案のすべてを解決できるわけではないが、「経験の浅い企業法務」担当者が有事の「第一報」を受け付けて「さあ、どうする」という場面の手引きとしては十分な内容ではないかと思う。コンプライアンスや情報管理、労務管理といった章については、中堅~ベテラン担当者も読んで自分の知識や「過去の経験に基づく対応」を見直してもよいかもしれない。

 有事対応のノウハウは場数を踏みながら積んでいく部分が大きいのはたしかだが、その「積み方」というものがある。その基礎なり下地をつくるには本書のような書籍を読み、有事対応のさまざまな段階で読み返していくことも大事ではないかと思う。

企業法務のための初動対応の実務
長瀨 佑志
日本能率協会マネジメントセンター
2019-12-20


 
 
 


 





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