2020年06月07日 17:33

契約書を読まない、のは誰か

 「契約書のチェックをお願いします」
 業種業態を問わず企業法務担当者の「契約書精査」の仕事が始まる。
 TwitterのTLで定期的に繰り返される「営業担当者が(事業担当者)が契約書を読まない」論だが、「契約書」を読まなかった、かつての営業担当者としては「すみませんな」としかいいようがない。
確かに「契約書の内容をまったく気にしない現場」は問題ではあるが、読まないとされている「契約書」の性格、内容によっては一概に現場担当者を責めることはできないと思っている。「読まない」とはいっても瑕疵担保条項(契約不適合条項)や保証条項、支払条項などにそこそこ目を通している様子が確認できれば、なるべく文句をいわないようにしている(あくまで自分の努力レベルだが)。
 契約書は法務が審査する、というのが定着しているが、「契約書以外の書類」は法務に回ってこないということもありえる。相手側から契約書以外に渡された書類があるなら一通り全部寄越してもらうことにしている。

 本当に細かく審査すべきは、基本契約書の条項に優先すると規定された場合の「個別契約」の内容と考えるが、毎日現場と取引先との間で飛び交う「注文書」や「発注書」やその後ろにそっと付いている「約款」や「発注仕様書」を逐一法務がチェックできるだろうか。
 法務担当者が「発注仕様書」や「製作図」といった本来の「契約の内容」を精査し、現場担当者に適切な指摘を返せるかといえばかなりの困難を伴う。たとえば、自分が所属する業界の官需系の請負契約では標準仕様書や特記仕様書、設計図、各部詳細など契約書の他に様々な書類、図面が「契約書類」となるが、それぞれの書類の「優先順位」を法務担当者が知らなければ「契約書審査」が成り立たない。
「契約書をちゃんと読んだか(契約内容をよく確認したか)?」は法務側にも向けられる言葉でもある。

 現場の担当者が契約書を読まないのは「読む動機づけ」が足らない可能性もある。
契約書をよく読むと「こういうことがわかるのか」「こういうことが避けられるのか」といったことを、まずは法務の側から示す工夫も必要。気の利いた現場担当者であれば、次回からちゃんと読み込んだうえでチェックを依頼してくる。
 手間はかかるが少数法務体制の場合、こうして現場に分身を増やしていくことも欠かせないのである。

 



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