企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

取引


あなたとの契約はいつまで?あなたは有効だと思っているけど♪ Business Law Journal 2018年12月号

 もう月刊誌の世界では、12月号ですか。
 既に評価されている方も見受けられるBLJ2018年12月号の特集「実務視点で考える適切な契約期間の定め方」、例によって走り読みのメモ。

 何らかの事由で契約解除を検討せざるを得ない状況が生じたときに真っ先に確認する項目の一つが契約期間に関する条項。継続的取引基本契約書、LOI、NDA、共同研究開発契約書などなど様々な契約書がありますが、だいたいどの契約書の「契約期間」の条項は終わりの方に設けられていますよね。わりとしっかりと契約書を読み込み検討してくる事業部門の担当者でも、ここまで確認したら大丈夫と思うのか終わりの方にある契約期間についての確認が甘くなっていることがあります。1年間で十分なのか、2年間にした方がいいのでは?自動更新条項は不要、そもそもいきなり継続的な契約にしていいの?といったようなことを担当者に確認します。(さすがにすべての契約書審査で行うわけではありませんが)
以前、某企業とLOI に基づきNDAを締結している際に、「うっかりしていたけど契約期間切れてる!」という事態が起こったことがありその反省もあってのことですが。

 先日、経理の債権回収部門との立ち話で、契約書雛形を使う場合でも取引内容や相手方によって契約期間条項を使い分けるかといった意見も出たので、個人的には「契約期間」については地味にツボなポイントでした。

 本誌の各記事でも触れられていますが、事業環境の変化がめまぐるしい昨今、特に先行き不透明感の漂う業界で仕事をしていると契約期間満了を待たずに終了、解除せざるを得ない状況は常に想定しておかなければなりません。特に「継続的契約終了の制限の法理」は契約当事者部門にもよくよく理解してもらおうと強く思いますね。何事も終わらせることの方が手間がかかりますが、案外簡単に考えている人もいますからね。
 具体的な契約解除に関する実務については、ビジネス法務12月号から連載が始まった「契約解除の実務ポイント」に繋がっていくのでしょうか。絶妙な微妙なリレー特集記事ですね。

 ではでは(いつもながら)簡単ですが。


  

されどNDA ふたたび

 普段片田舎にいるもので、NDAバトルとか最近の企業法務の動きに全然ついていけてません。
 ますます備忘録というかボヤキ帳のようになっていますなあ。

 NDAについては以前も書いたのですが、件のイベントの様子をハッシュタグなどで追いながら思うことを。
 ペラっと「これ問題ないと思うんでハンコください。」と渡されるNDAドラフト。よほどのことがない限り、ガツガツと加筆修正を入れることは確かにありません。スピード感をもってビジネスを推し進めなければならない業界・企業の法務担当者と成熟産業の中位あたりで浮き沈みしている自分とでは抱えている課題が当然違います。手間がかからない、重要性も低いが、急かされる頻度(緊急性とはいわない)と物量を考えれば「雛形」で済ませたいという気持ちもわからなくはありません。

「問題ないすよね?」
「確かに条文は問題ないよ。でもさ、相手とこのNDAを交わそうと決めたときのメモとか議事録を作ってお互い交わしてあるの?」
「え、作ってないと思うす。ないとまずいすかね。」

 NDAフォーマットを統一できたとしても、その一歩手前の「一緒にビジネスできるか、検討してみない?」は、当事者がこれからやろうとしている「ビジネス」の数だけあります。NDAに費やす時間を減らす一方で「これからやろうぜ」の段階に法務担当者が関わる時間が増えないとね、と思います。それにはどうすればいいのか、というのは法務担当者各自が一生懸命考えるしかないですよね。
こちらにはフォーマットはないんだよね。


何か違和感を抱くのは間違いなのだろうか

 ふた昔前の話になるが、記憶に残るエピソードとして。
 
 「見積の件で来てくれないか。営業ではなく本社部門の人間と話がしたい。」とある地場ゼネコンの部長から電話。当時某自治体の公営住宅向け設備建材の窓口を担当していたのですが、自治体の所管部門にでも連絡先を聞き出したのだと思います。
当時勤務先はその自治体の公営住宅向け設備では一定のシェアを維持していました。公営住宅団地の入札の度に引き合い見積依頼があったので、今回もそんなことだろうと出向いたのでした。
 開口一番、「A団地について、おたくが見積を提出した元請を全部教えてくれ。」
「は?」どう考えても「調整のため」の質問です。
「おたくもこの業界のことは承知しているだろう。」まあ承知はしていますが、昔と違ってそういった行為からは手を引かせてもらっていますよ、と返したのですが、先方は「そういう話とは少し違う。」と返してくる。では、どういうことでしょうか。

 入札制度が指名競争から一般入札に変わったことは仕方がない。問題は公共工事のイロハもわからないまま業者が参入してくることだ。標準仕様書や標準図、特記仕様書の意味を知らない業者が多い。何を優先事項として単価算出しなければならないか理解していない。厳しい中間検査や竣工検査の実態も理解できないまま、民間工事と同じ感覚で見積を出してしまうのだ。見積落としがあるから当然応札価格は下がる。請けてトラブルのはその業者の勝手だが、その下がった価格は役所の契約課に残る。
「俺はそういう事態を避けたいのだ。わかるだろう。」

 それはわかる。公共工事なのにろくに仕様書や図面も確認せずに見積もる代理店はあった。見積漏らしがありました、と泣き言を繰り返したところで「しょうがないね、次から気をつけてね」などとそっと発注額を上乗せしてくれる発注者はいません。

 が、しかし。

 先方の要求には応じませんでした。記憶はここまで。この地場ゼネコンがA団地を落札したのか、自社の設備が採用されたのかも一切記憶がありません。

 リニア談合の報道を眺めていたらふと記憶が蘇ったのでした。ついに逮捕者が出ましたが、どうにも違和感が付きまとう事件です。違和感を感じるのは法務担当者としてあれなのかもしれませんが。


重なる?契約書レビュー ビジネス法務2018年3月号

 過日、地方営業支社の経理担当者から問い合わせがあり。
 ここ何ヶ月かある販売先の売掛金回収に違算が生じている、どうも自社の売上計上日と販売先の買掛計上日とズレがあるようなのだけどもどうしようというような内容。単なる月ズレなのか、販売先の検収買掛の基準に変更があったのか確認してみてねというような会話を交わしたのだけども、あれ待てよ、そんなチャラっとした話で済まないよな、なんか大きな話があったよな?というところで、タイミングよくビジ法2018年3月号特集2の「新・収益認識基準 契約法務の対応」。そうだよ、IFRS。そして「収益認識に関する会計基準(案)」。



 本記事構成は
  1. 早わかり解説「収益認識に関する会計基準」とは
  2. 法務部が主導すべき新基準の契約への適用手順 (以上、片山法律会計事務所 片山智裕氏)
  3. 売買契約書見直しのポイント (弁護士法人L&A  横張清威氏)
  4. 請負・業務委託契約書見直しのポイント (AM&T 中村慎二氏)
の4稿、いずれも弁護士+公認会計士両方の資格を有する方の手によるものです。

 1.の冒頭で今回の新しい収益認識基準が注目される理由として
契約に基づく収益認識の原則を採用したことにあり、会計基準の体系の中核に契約という法律概念が導入されたことは画期的、業際的である。
とサクッと解説されております。
 税務・会計領域と法務領域の接近についていまさら当方がいうまでもありませんが、今回は会計サイドからの「契約書の内容」に対するアプローチということでよいのでしょうかね。これまで取引契約締結の際の経理サイドのチェックというのは、与信と支払・回収条件の確認に重きが置かれていた部分がありますが(あくまで勤務先では、ですが)、本基準の適用に当たって、法務と財務経理と二人三脚で取り組まなければならないということですね。
 留意しなければならないのは「新・収益認識基準」の適用時期。
 上場・非上場を問わず、遅くも2021年4月から始まる事業年度から本基準を適用とありますが、2018年4月から任意で早期適用できるとあります。自社の会計基準の変更を3年後に行うとしたとしても、販売先や取引先が早期適用する場合には、もっと早い時期に「契約書見直しの要請」をされるかもしれません。民法改正対応と会計基準対応と契約書レビューを同時並行で進めるということになりますね。(けっこうきついなあ)

 3、4の記事はどうしても駆け足にならざるを得ないのは理解できるのですが、ちょっと各論に過ぎるかなという感想。欲をいえば、売買や請負を問わず企業取引は商社・代理店や中間取引業者を介した契約の比率が高いので、この場合の適用手順の手ほどきがあればよかったと思います。が、いずれにしろ会計系の専門書籍はちゃんと読まなければなりませんね。




 



 

認証取消 #legalAC

 @miraisaaanの宇奈月温泉レポートから引き継ぎます。湯上りに都市では見かけない飲料メーカーのサイダー風の炭酸水を飲みながら書くような感じで。

 今年は、製造業の品質偽装に関するニュースが続きました。開示情報を追っかけ読んでいますが、原因究明・再発防止などの特別委員会報告はそれはそれで進めていただくとして、品質偽装した製品を買わされた方の重要関心事は「損害賠償請求ができるか、できるとしたらどの範囲までか」。再発防止に取り組んでもらうのは当然、お詫びもわかる、でも実際に発生した損害はどうしてくれる、話はそこからだというところではないでしょうか。

 日用品製造事業者A社は、製造販売する製品Mのために原材料メーカーB社が製造する原材料Cを加工業者Dが加工した部材を購入している。X月5日、B社は第三者認証機関の臨時認証継続審査で原材料Cの検査方法に問題があるとの指摘を受けた。B社は認証機関が何らかの措置をとると予想し、X月20日取引先に対してCに関して当該認証表示を行うことを自粛するとの通知をFAXで行なった。X月30日、認証機関はB社に対してCについて認証を取消する旨公表した。
Cは、B社が加盟する事業者団体Eが制定する「自主品質表示制度」の対象製品であり、Eは第三者機関の認証を条件にB社のCに自主品質表示マークを表示することを認めていた。Y月2日、EはCを本自主品B社のX月20日付の取引先に対するFAXの内容から同日時点でCが第三者機関の認証を受けた製品ではないとみなし、CをX月20日に遡って自主品質表示制度の対象外とすることを公表した。
 A社の製品Mは納入先が遵守すべき関連法令によりEの自主品質表示制度対象の部材を使用しなければならないものであった。
急ぎ調査したところ、B社がX月21日以降生産したCをD業者が加工した部材を使用して生産しX月30日までに出荷納品したMが200台、未使用の部材在庫100台分。そしてY月3日以降Y月中に出荷納品しなければならない受注残が400台分あることがわかった。
 ちょっと長くなりましたが、A社の立場だったらどうする?
 B社のCの認証取消によって
 ⑴損害は発生しているのか
 ⑵損害が発生しているとして損害賠償請求できる範囲はどこまでか
 ⑶損害賠償請求の相手方は?

 間髪入れず取り組まなけばならないのは納品済みの製品M200台の対応です。通常なら返品、代品の納入ですが、A社はB社のCを使用した部材で生産した製品しかないため代品の納入ができません。キャンセル、製品引き取りとなります。売上利益は戻さなければなりませんし、さらに引き取りコストが発生します。
 未使用の在庫部材も使用できません。引き取ってきた製品と共に処分するよりありません。ここで処分コストが発生します。
 Mの受注残400台についても、Cに変わる原材料を加工した部材が調達できるまでは生産できません。これも大半を注文キャンセルとするより策がありません。見込んでいた売上も利益も失います。
 A社の損害はこれだけでしょうか。


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