人事労務

2022年04月30日 23:34

 うっかり4月が終わってしまう前に、1本だけエントリーを上げるようにしよう。
定期的エントリーといえるかどうかはともかく、数年続いている新入社員研修エントリー。

 今年は実に3年ぶりのリアル集合研修(2週間)であった。過去2年のオンライン中心の研修を続けてきたが、ある種の限度もあったのだろう、感染リスクには十分に配慮するとして人事部門が最終的にリアル研修に持ち込んだようだ。
 諸事情あって、入社3日目、研修2日目にコンプライアンス研修(2時間)が組まれた。もっとも研修期間の可能な限りアタマのほうに、というのはこちらの希望でもある。ここ数年はわざわざこちらが念を押さなくても、研修2日目に組まれるようになった。

 コンプライアンス、といっても学校ではほとんど習う機会ないらしいので、(ちなみに今年は法学部卒もいたのだが講義でコンプライアンスにきちんと触れる機会はなかったという)企業法務界隈でのコンプラネタで講義を構成しても聴く側の新入社員にとっては退屈な2時間になるだけである。

実際にうまくいっているかはなんともいえないのだが、毎回こんなことをしている。
  • テキストやノートの特に導入部は何回も考え直す。これは受講者のため、というだけでなく自分の講義のリズム作りの意味合いもある。
  • 受講者のプロフィールを確認しておく。講義中に話題をふれそうな人の当てを作っておく。
  • 研修内容の8割は翌日は忘れられてしまうものとして、2時間の講義中の本当の山場は2つぐらいにしておく。
  • 無理に若者ネタには手を出さない。
  • あまり昔の話もしない、しても引っ張らない。リーマンショックですら新入社員が小学生の頃!のことなのである
  • 何よりタイムキープ。だから、前日/当日はぶつぶつとロープレをする。
  • 講義中は受講者のうなづき具合を確認する。
  • ときに指名して質問を投げる。こちらの意図した答えでなくてもOK、回答してくれたことに礼をいう。
  • 山場にきたら声の大きさやテンポを変える。(ロープレで確認する)
こんなところか。

講義の締めは毎回このセリフ。
「コンプライアンスの第一歩は会社のルールや業務の基本を身につけること、社内外のいろいろな人とその仕事を知ることから。だから、このあと2週間弱の研修カリキュラムはなれないことが多いかもしれないが、真剣に取り組んでください」
これをいうためにコンプライアンス研修は研修期間のアタマのほうにおいてもらっている。

自分の講義の評価は、研修日報である。
読みながら反省もするし、少しでもこちらの意図が届いているようなコメントをみてほっとしたりしている。

今年の反省は、終盤で息が上がったこと。
マスクをしての講義だったこともあるが、やはり2時間ライブで講義をするのが久々だったからか、忍び寄る老いか(苦笑)

研修運営についてはまた別の場、機会で。


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2020年04月19日 13:05

 持久戦と呼ぶのが相応しいのかわからないが、音をあげたら負けということはたしかだ。

 入社式を急遽取りやめ、さらには近場の事業所での出勤もさせず自宅待機という異例の状況に置かれている今年の新入社員。バブル崩壊期、リーマンショック後に採用を絞るということはあったかもしれないが自宅待機という事態にまではならなかった。勤務先でいえば自分よりひとまわり以上の世代にオイルショックの煽りで5月入社となったケースがあるが、おそらくそれ以来のこと。人事総務に限らず皆初めての経験である。
 自宅待機といえども遊ばせているわけにもいかない(そもそも遊びに出られる状況でもないが)ので、IT後進企業の勤務先にしてはいち早く話題のZoomを利用しての在宅新人研修に切り替えた。同サービスについてはセキュリティーについて取り沙汰されているのは承知しているが、日々のアップデートを怠らないようにして利用しやすさを優先した形である。
 で、やってみましたよ、Zoomによるコンプライアンス研修。 
いつもと勝手が違うので戸惑い、そして機能を使いこなせなかったかも、というのがひとつの反省。急遽決まったことなので対応しきれなかったこともあるが、リアル・対面で実施する研修とコンテンツが同じでは長時間の研修は乗り切れないということを痛感した次第である。
 それでも多少コール&レスポンスをやってみた。「コンプライアンスに対するイメージ」「コンプライアンスってどういうこと」という問いに対して、複数名から「自社が社会的責任を果たすために取り組んでいることをアピールしていくこと」という回答があった。これは8年ぐらい研修をしていて初めてのパターンだったので少し驚いたのだが、CSRだ、コンプラだといわれ始めて20年以上経てば状況も変わるということか。
もちろん、回答を引用して「あなたたちの行動もアピールのひとつになるのですよ」と返したけれども。(講師は臨機応変のフィードバックが肝)

 個人的には、新人については集合研修の期間があるのが望ましいと思っている。終身雇用制度が終焉を迎えつつある時代に「同期入社」がどれほどの意味を持ち続けるかはわからない。Web研修の利便性、経済性を知ってしまうと以降の研修も一気にこれに雪崩る可能性は高い。しかしリアルでの経験共有の機会がないままでよいか。配属され散り散りになってもメールやチャットで繋がるには、新人研修という「猶予期間」に顔をあわせグループでブレストやら課題取り組みした時間が必要だと思うのだ。
(むしろ多忙を理由に何も勉強しなくなる、研修を欠席しはじめる中堅層以上の研修にWeb研修はうってつけのツールだと思う)

 とはいえ、今回の研修のまとめは新人がどうこうというよりも、新しいツールでの法務研修を考えるというテーマを与えられた2時間であった。
 



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2019年04月06日 18:12

 桜も盛りを過ぎた週末、恒例のネタ。 

 入社式と入社手続きを済ませたばかりの若者に、コンプライアンスだCSRだの説くことは難しいと思いながらも、講師を引き受けざるをえず、今年もやりましたよ新人研修。人事部門の気まぐれか3時間の枠をもらったものの自分自身が消化できたかどうか、研修が終わると軽く凹みます。

 座学の3時間、というのは聴くほうも辛いが喋るほうも辛い。
ということで、新入社員同士の交流も深めるという名目でグループディスカッションの時間を何回か設け休憩時間も挟み、講師と受講者の双方の負担を軽減しながらゆるゆると進めました。2週間強の座学やその後の工場実習などのスケジュールが控えています。研修のほぼトップバッターの役割は本格的な研修受講に当たっての地ならしだと勝手に位置づけました。(事務局からなんのオーダーもないのだもの)

 グループディスカッションのお題は「会社は誰のものだと思う?」「コンプライアンスという言葉にどういうイメージを持っているか」といったもの。戸惑いながらも、時にこちらがどういう答えを期待しているかを探りながらわちゃわちゃと意見を交わしているのを眺めていました。これが正解!という答えのない問いではありますが、入社2日目に皆で考えたことを何かの時にふと思い出してもらえればいいとおじさんは思っております。
 企業不祥事ネタが多い時期でしたので小咄には困らないのですが、メーカーですので品質偽装ネタには触れました。取引先に納入する製品について契約上の仕様を守れずデータを偽装した、しかし国の定めた基準は守っているというパターンを取り上げました。君ならその会社の製品を買うか、買わないかという問いかけまでとしましたが。
 あとは数年ぶりにバイトテロが発生したのでSNSとの付き合い方。

 こんなことを取り上げながら無事3時間を双方乗り切ったのでした。
最後に付け加えたのは、この後の研修カリキュラムの中にはすぐには何の役に立つかわからないものがあるかもしれないけれど、一つとして無駄なものはないということ。全部は「地続き」だと、最近読んだ警察ミステリー「新任巡査」にあった台詞を拝借して締めたのでした。

 それにしても、新入社員と親子ほど年齢の離れた講師ではもうきついなというのが正直なところ。こういう点でも後継者の育成を痛感した次第。

 ではでは。





 

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2019年01月09日 23:57

 あけきりました。松もとれてしまいました。ようやく初エントリーです。
 
   BLJ拾い読み、です。
 もはや伝統となった「法務のためのブックガイド2019」を話題にするには旬が過ぎているということで特集記事とは別に勘所を押さえてくる実務解説から。今回は「企業として押さえておくべき障害者雇用」。

 業容拡大、人員増強と採用を進めていくと後で焦る雇用義務制度。法定雇用率についての中央省庁のやらかしは民間企業としては怒り呆れの連続でしたが、「率」を物差しにすれば分母分子を弄る者が出てくるというわかりやすい事案でした。

 それはともかく。
 雇用側がかなり志を高く持たないと、ハンディキャップのある人を雇用し続けるのは難しいと思うのです。近視眼的に法定雇用率をクリアするためだけに採用し、あてがいぶちのような仕事しか割り振らないというような実態ではいずれ労働者側から就職先として選ばれなくなるかもしれません。ハンディキャップの子を持つ家族の気持ちを考えれば、ちゃんと仕事を続けられてスキルも身につき給料をもらえて納税して年金も収めて、ということが実現できない企業に就職させるわけにはいきませんからね。

 本稿でもあるように肝は採用後の「合理的配慮の提供」をどこまで実施できるかという点にあると思います。
某職場で現場担当者の配慮不足、コミュニケーション不足と推測されることから赤チン災害を発生させたことがあり、企業としての至らなさを思い知らされました。とはいえ、例えば物理的な配慮とひとことでいっても、製造現場では限度があるのも事実。また業務の種類、業務量の調整についても病気や障害について知識や理解が乏しい職場管理者に丸投げするわけにはいきません。労務担当者と専門機関、職場管理者と本人(ケースによっては家族も)と協議を重ねて職場を作り上げていくプロセスは欠かせないでしょう。簡単なことではありません。だからこそ企業に本腰で取り組む意志が必要で、そうでないと「率」を弄るような事態を招くのです。とはいえ業績がおぼつかない状況の企業では人的にも金銭的にも手が回らないという実情もあり…かなしいかな。

 ただ中高年の上の方の年齢に差し掛かると自分が病気や怪我でハンディキャップを負う可能性はありますし、それでもなんらかの形で仕事を続けなければならない状況に置かれるということは十分あります。そう考えると、ハンディキャップ雇用というのは他人事ではないのですよね。

 前述の赤チン災害発生の際に、環境安全担当者とハンディキャップの社員が働きやすい現場は当然健常者にも働きやすいはずと話したのですが、まだまだ何かと課題が多いというのが正直なところ。
 本来の意味のバリアフリーやユニバーサルデザインの思想を企業経営に、といったら大雑把ですが。

 それでは、また。





 
 

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2018年08月12日 15:52

 夏季休業に入っている方がほとんどだと思います。休業期間の取らせ方、期間の長短って業界・業種・各企業の考え方が割とでるところですよね。「えっ、それしか休めないの?」と人使いが荒いと知られる同業者にも引かれたアカウントがこちらです。

 BLJ2018年9月号の特集「2018年通常国会改正法の影響度」。
 著作権法、不競法、消費者契約法などよくよく押さえておかなければならないのですが、勤務先の状況からみて急がなければならないのは労基法・労衛法の改正。
 衣食住に関わる業務は、顧客・ユーザーが「休日・休業」の時が掻き入れどき、交渉事のチャンスという点となります。衣食など店舗販売系の事業であればともかく、「住」の事業は顧客・取引先の事情に左右されることも多く、仮に自社が「シフト勤務制」をひいていても取引の下流がしわ寄せを吸収する構造ではなかなかままならないということもあります。
 とはいえ改正法の中身は業界固有の事情を言い訳にできるものではありません。労務問題はことが起きたときに業績に与えるインパクトやレピュテーションリスクが小さくありませんので、今回の改正には経営側は本気で取り組む必要があるでしょうね。
 人事労務が主体の取組になるでしょうけれども、法務がこの問題にどこまでどのように関わるかということになりますが「法令遵守」を唱えているだけでは意味がないのはいうまでもありませんよね。
 もはや当然のようになっていて経営陣含めて誰も気にしていない、そして本人たちも(これだけかかっているという)声をあげようのない業務コストがあるとします。リスクの塊ですよね。そういうところに光を当てていくことができればと思うのですが。


 
  

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