企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

カテゴリ:企業法務 > 人事労務

 桜も盛りを過ぎた週末、恒例のネタ。 

 入社式と入社手続きを済ませたばかりの若者に、コンプライアンスだCSRだの説くことは難しいと思いながらも、講師を引き受けざるをえず、今年もやりましたよ新人研修。人事部門の気まぐれか3時間の枠をもらったものの自分自身が消化できたかどうか、研修が終わると軽く凹みます。

 座学の3時間、というのは聴くほうも辛いが喋るほうも辛い。
ということで、新入社員同士の交流も深めるという名目でグループディスカッションの時間を何回か設け休憩時間も挟み、講師と受講者の双方の負担を軽減しながらゆるゆると進めました。2週間強の座学やその後の工場実習などのスケジュールが控えています。研修のほぼトップバッターの役割は本格的な研修受講に当たっての地ならしだと勝手に位置づけました。(事務局からなんのオーダーもないのだもの)

 グループディスカッションのお題は「会社は誰のものだと思う?」「コンプライアンスという言葉にどういうイメージを持っているか」といったもの。戸惑いながらも、時にこちらがどういう答えを期待しているかを探りながらわちゃわちゃと意見を交わしているのを眺めていました。これが正解!という答えのない問いではありますが、入社2日目に皆で考えたことを何かの時にふと思い出してもらえればいいとおじさんは思っております。
 企業不祥事ネタが多い時期でしたので小咄には困らないのですが、メーカーですので品質偽装ネタには触れました。取引先に納入する製品について契約上の仕様を守れずデータを偽装した、しかし国の定めた基準は守っているというパターンを取り上げました。君ならその会社の製品を買うか、買わないかという問いかけまでとしましたが。
 あとは数年ぶりにバイトテロが発生したのでSNSとの付き合い方。

 こんなことを取り上げながら無事3時間を双方乗り切ったのでした。
最後に付け加えたのは、この後の研修カリキュラムの中にはすぐには何の役に立つかわからないものがあるかもしれないけれど、一つとして無駄なものはないということ。全部は「地続き」だと、最近読んだ警察ミステリー「新任巡査」にあった台詞を拝借して締めたのでした。

 それにしても、新入社員と親子ほど年齢の離れた講師ではもうきついなというのが正直なところ。こういう点でも後継者の育成を痛感した次第。

 ではでは。





 

 あけきりました。松もとれてしまいました。ようやく初エントリーです。
 
   BLJ拾い読み、です。
 もはや伝統となった「法務のためのブックガイド2019」を話題にするには旬が過ぎているということで特集記事とは別に勘所を押さえてくる実務解説から。今回は「企業として押さえておくべき障害者雇用」。

 業容拡大、人員増強と採用を進めていくと後で焦る雇用義務制度。法定雇用率についての中央省庁のやらかしは民間企業としては怒り呆れの連続でしたが、「率」を物差しにすれば分母分子を弄る者が出てくるというわかりやすい事案でした。

 それはともかく。
 雇用側がかなり志を高く持たないと、ハンディキャップのある人を雇用し続けるのは難しいと思うのです。近視眼的に法定雇用率をクリアするためだけに採用し、あてがいぶちのような仕事しか割り振らないというような実態ではいずれ労働者側から就職先として選ばれなくなるかもしれません。ハンディキャップの子を持つ家族の気持ちを考えれば、ちゃんと仕事を続けられてスキルも身につき給料をもらえて納税して年金も収めて、ということが実現できない企業に就職させるわけにはいきませんからね。

 本稿でもあるように肝は採用後の「合理的配慮の提供」をどこまで実施できるかという点にあると思います。
某職場で現場担当者の配慮不足、コミュニケーション不足と推測されることから赤チン災害を発生させたことがあり、企業としての至らなさを思い知らされました。とはいえ、例えば物理的な配慮とひとことでいっても、製造現場では限度があるのも事実。また業務の種類、業務量の調整についても病気や障害について知識や理解が乏しい職場管理者に丸投げするわけにはいきません。労務担当者と専門機関、職場管理者と本人(ケースによっては家族も)と協議を重ねて職場を作り上げていくプロセスは欠かせないでしょう。簡単なことではありません。だからこそ企業に本腰で取り組む意志が必要で、そうでないと「率」を弄るような事態を招くのです。とはいえ業績がおぼつかない状況の企業では人的にも金銭的にも手が回らないという実情もあり…かなしいかな。

 ただ中高年の上の方の年齢に差し掛かると自分が病気や怪我でハンディキャップを負う可能性はありますし、それでもなんらかの形で仕事を続けなければならない状況に置かれるということは十分あります。そう考えると、ハンディキャップ雇用というのは他人事ではないのですよね。

 前述の赤チン災害発生の際に、環境安全担当者とハンディキャップの社員が働きやすい現場は当然健常者にも働きやすいはずと話したのですが、まだまだ何かと課題が多いというのが正直なところ。
 本来の意味のバリアフリーやユニバーサルデザインの思想を企業経営に、といったら大雑把ですが。

 それでは、また。





 
 

 夏季休業に入っている方がほとんどだと思います。休業期間の取らせ方、期間の長短って業界・業種・各企業の考え方が割とでるところですよね。「えっ、それしか休めないの?」と人使いが荒いと知られる同業者にも引かれたアカウントがこちらです。

 BLJ2018年9月号の特集「2018年通常国会改正法の影響度」。
 著作権法、不競法、消費者契約法などよくよく押さえておかなければならないのですが、勤務先の状況からみて急がなければならないのは労基法・労衛法の改正。
 衣食住に関わる業務は、顧客・ユーザーが「休日・休業」の時が掻き入れどき、交渉事のチャンスという点となります。衣食など店舗販売系の事業であればともかく、「住」の事業は顧客・取引先の事情に左右されることも多く、仮に自社が「シフト勤務制」をひいていても取引の下流がしわ寄せを吸収する構造ではなかなかままならないということもあります。
 とはいえ改正法の中身は業界固有の事情を言い訳にできるものではありません。労務問題はことが起きたときに業績に与えるインパクトやレピュテーションリスクが小さくありませんので、今回の改正には経営側は本気で取り組む必要があるでしょうね。
 人事労務が主体の取組になるでしょうけれども、法務がこの問題にどこまでどのように関わるかということになりますが「法令遵守」を唱えているだけでは意味がないのはいうまでもありませんよね。
 もはや当然のようになっていて経営陣含めて誰も気にしていない、そして本人たちも(これだけかかっているという)声をあげようのない業務コストがあるとします。リスクの塊ですよね。そういうところに光を当てていくことができればと思うのですが。


 
  

 ヒプノシスによるジャケットデザインを想起しながら。

 某TL上でアンケートやらツイートがやりとりされたのを見て考えたことを。

 自分は未経験から社内人事異動で企業法務(とその他諸々)の職についています。いうまでもなく弁護士資格はありませんしロー卒でもありません。(そもそも法科大学院制度がなかったからね)
自部門に経験者やロー卒の方が異動なり中途採用で入ってくることは大歓迎であります。有資格者にいたっては三顧の礼でお迎えしますよ。基本的には。
しかしそうは甘くないのが現実で、募集をかけても応募者がこない!ということもあります。
当面未経験者を育成するしかなくなります。
 ここで困るのが、自身も未経験法務担当でしたが異動に際しての動機付けも一切なく、異動後に企業法務なるものを教わったこともないことです。退職間際の前任者から教わったのは袋とじだけといってもよいくらいでしたからね。(それも知っていたけれど顔を立てて「へえ、なるほど」と頷いていたのですが)こんな自分が未経験者を迎え入れざるをえないとき、どんな人物だったら未経験者でも受け入れるかわりと本気で考えてみました。(法務への異動を受け入れてくれることが前提ですけれどね)

  1. 新しい物事への関心、好奇心の強さ
  2. 複眼視点を持てるか
  3. 期限管理にクセがついているか
  4. 失敗体験(個人の、というより関わった事業の失敗)
簡単にまとめられるものではありませんが、どうしても外せないのはこの4つでしょうか。
 1.はこれまでと違う仕事につくのだからこれがないと話になりません。アップデートのスピードが速まっている感のある企業法務界隈。好奇心がないことには始まらないでしょう。
 また事業部門や販売部門から新しい取引の相談を持ちかけられたときに、なんの興味も持たず聴かされた話だけで済ますようなことでは困ります。物事への関心が低いことはデメリットやリスクの見逃しにも繋がりますしね。
 2.は複数の立場の目線で考えるようにしてね、ということです。販売の仕事を除けば、特に内勤業務の場合、案外自分(自部門)の都合の押し付け合いというところがあります。ひとつの取引をまとめるには相手方は当然ですが社内の関係者の視点も取り込んでいく必要があります。(事業部や営業担当者は往々にして前のめりですからね)すぐにはできなくても、別の視点で考えてみようという姿勢をもっていてほしい...のです。
 3.は当然といえば当然なのですが。期限から逆算して仕事をする習慣がついていない人も実際いるのですが、そこから教えるのは正直しんどい、という気持ちからです。
 4.はなんといえばよいか。成功体験も大事ですが企業法務の仕事の性質上「失敗」に関わることもあります。成功したことしかない人間はそれに耐えられるだろうかというのがひとつ。失敗・撤退を知る人間はそのプロセスを(体験として)知っています。2.の複眼視点ではありませんが、リスクの目を摘むことができるかもしれません。もし撤退戦を強いられる事業部門があればその部門の人間に寄り添うことができるかもしれない、そういう思いから。

 うーむ、難しいですね。ないものねだりはしたくないのですが。お前はどうだったのかといわれると困るのですがね。
 

 諸々インプットが滞っています。あくまで自分が取り込みたいと思う情報が、という意味ですが。
これまで多少の領空侵犯にとどまっていた労務領域がのっぴきならなくなってきたというのが理由。

 「働き方改革」の旗が振られていますが、労務管理については労働当局の考える方向性と自社の労務管理の考え方の「ズレ」を把握しないことには話が進まないという感触。

 社員の年齢構成が逆ピラミッドになっている組織では、働かせる方も働く方も(不平不満が自分でも気づかず澱のようになっているとしても)自分が入社した20年、30年以上前の感覚のままなのかもしれません。始業の30分前にデスクに着く、設備稼働の15分前にラジオ体操をして10分前に製造ライン前で朝礼をして、残業代は勉強代と相殺等など、課長代理になったら非月俸。たとえばこんな具合。自分たちも理不尽と思っていたはずなのに下の世代には同じことを強いる。下の世代が入ってこないことが常態化した組織ではずっとそのまま。そして、ある日労務リスクが発生するわけです。入退室時間、労働時間の管理範囲、管理者・管理監督者の定義を詰められます。
「え?昔からこうしてきたのに」と呆然…なんてことになってからでは遅いということで。

 労働訴訟となれば取締役の会社法上の忠実義務、善管注意義務違反が問われますから、法務担当も労務管理は「人事労務の領域」と知らぬ顔はできません。また裁判の勝敗にかかわらずレピュテーションリスクにも向き合うことになります。訴訟提起されたこと自体が問題視されますからね。
 ということで、ここ1ヶ月ほどは分厚い2冊の本のページを繰っている時間を増やさざるを得なくなりました。これも大事なインプットではありますがね。

 中段の話に戻りますが、自分は30年以上前のマネジメントを味わっているのですが、下の世代に自分たちと同じ経験を強いるという感覚は理解できないんですよね。同世代にわりといるのでわけがわからない。しなくて済む経験はしないほうが良いわけで、逆に下の世代が10年、20年前と同じ経験を繰り返している(繰り返させている)としたら、その企業(経営者や管理監督者)や業界はなんの進歩もしていないと猛省すべきだと思いますね。
 といってしまう手前、労務からは逃げられないと腹を括るしかないか。




   

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