企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

企業法務


無形資産の毀損か枯渇か

 10月18日付日経朝刊に「ESG投資」(環境・社会・統治といった見えない価値への評価)が取り上げられていました。それで、管理会計の世界で取り上げられている「インタンジブルズ」を思い出しました。着目している点は似ていると思った次第。(走り読みの記憶ですのであくまで印象です)

 直近で報道を賑わしている自動車メーカー、鉄鋼メーカーの件ですが、報道先行でまだその行為の全貌がはっきりしていません。品質管理制度そのものがそれに携わる従業員の資質(人的資本というのでしょうか、インタンジブルズでは企業が支配できないものとしています)に依存していたことが今回の事案の原因の一つであるならば、日本の製造業に共通の「資産」として内外の評価を得ていたものを自ら毀損させてきたということになるのでしょうか。あるいはそこにベテラン社員の引退や新人の採用難で人員確保や確保後の訓練も不十分といった事情が絡むとするなら、資産の「枯渇」というところでしょうか。ただし鉄鋼メーカーの方は数十年も前から本来の意味とは異なる「トクサイ」を続けてきたとの報道ですのでそれが本当に事実であれば、そもそも「資産」がなかったということなのかもしれません。

 もともと書こうとしていたエントリを変更、メモとして。


 

されどNDA Business Law Journal 2017年11月号

 えー、月が変わってしまいました。今年も今月を入れて3ヶ月ですね。

 BLJ11月号。
  • 特集「秘密保持契約の最適化」から。
 まず、総勢9名ものクロストークを編集しきった編集部に頭が下がります。リアルに意見を交わす座談会とは異なるので、山場を作っていくのはさぞご苦労されたのではないかと思います。はい。

 ピラッと1枚、「ちょっと見ておいてください」と営業や事業部門から依頼されることが多いNDA。
曰く「これを交わさないと始められないので。」
 いやいや、もう何かを目的にしてNDAを交わそうという協議した時点で始まっているんじゃないの?というような話を何回したことか。現場の勘違い、NDA締結が契約交渉の第1段階だと思っていることです。これが共同開発の検討のようなケースでもたまにあるようなないような。
 相手方のフォーマットで時々見かけるのが「秘密情報の例外」と「秘密保持義務の例外」の勘違い。
あとは、共同開発検討を目的とするNDAでほぼ設けられている「成果の帰属」条項。まだそんな段階ではないだろうと、検討が終了して次の段階「共同開発契約書」を締結する場合に定義しましょうとやんわり押し返すこともあります。
 またどうも相手方の社内事情もあってかNDAや販売基本契約などを一気に締結しようとけしかけられた時に、NDAに対するコメント応酬が噛み合わないので「スタート地点がなんか違うのではないか」と事業部門にコメントを戻し、後先は逆ですがそもそものLOI締結まで押し戻したこともあります。

 NDA レビューをきっかけとしてひとつのビジネス全体を見渡すケースもたまにはあります。何が目的なのか、自社側の開示情報量が多いのか少ないのか、いつまでに目的の検討を終えるのか、検討が無事済んだら次はどうなるのか。別に新人でなくとも、新しい取引の契約はちょっと面白みを感じるものです。その端緒がNDAのレビューとしたら、やはり「されどNDA」なのですよね。

  • 実務講座「建設業法遵守のポイント 人の配置に関する規制を中心に」
 組織再編の際に苦闘苦悶するのがこのポイント。
 吸収合併の場合、被合併会社の建設業許可は存続会社に引き継がれないので、存続会社が保有している許可が被合併会社のそれより少ない場合、あたふたとすることになります。ま、理不尽な逆さ合併を目論まれた時の歯止めにはなりましたが。
 注意すべきは人事異動ですね。営業所に専任技術者が不在!というみっともない事態にならないよう、人事部門は特に注意を促しておく必要がありますね。

  • 連載「法務部門における品質確保・向上の方法論」
 今回が2回目ですが、コメントはもう少し回が進んでからかな。










 

補足 BLJ2017年10月号 

 例によって間隔が空きました。じわじわと遠距離通勤の疲れがボディブローのように。

 BLJ10月号のメイン特集は「誹謗中傷・炎上への対応実務」でした。勤務先が所属する親会社グループも誹謗中傷・炎上にはかなり神経質になっているので、子会社含めてリスク管理体制を敷くようになりました。
 何をやろうとしまいと悪意のある誹謗中傷はあるものだしネット上にばら撒かれるのも防ぎきれない、ならばいかに短時間で収束させるかというところに注力するというもの一つの考え方。

 外部からの攻撃に対しては一枚岩になれるけれども、身内によるものはなかなか、というのが実感。
 経営不振を理由に投資ファンドに売却された当時は、自社のスレッドが立ち盛んに書き込みがされていました。誰が書き込んでいるのやら、まことしやかにいろいろな情報やら上層部批判を気取った雑文まで。書き込みに対してこちらに「なんとかならないのか」と怒鳴り込んでくる幹部社員もいましたが、「便所の落書き」ぐらいの余地は残して置いた方が良いとか、同業者のスレッドもよく立っていた時期でしたので、「それらを読んであなたは全部事実だと思うか?」と過剰反応することは悪意ある者の思う壺だとよく切り返したものです。すごい嫌な顔をされましたが。
 リスク管理の面から書き込みの全てが虚言ではない、500のうち1は事実も混ざっているだろうと参考情報の一つにしています。イニシャルトークならばともかく当て字とはいえ従業員が特定できるような書き込みが飛び交うようになれば職場で何かが起きているわけですからね。

 そんなわけでBLJ特集記事では「削除請求を受ける側の視点」は参考になりました。
削除請求ということでは「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル」を参考にするケースがたまにあるのですが、削除請求件数はちょっとやそっとではないでしょうから、請求受付側にすんなり削除と判断してもらうようにするにはというのは興味のあるポイントでした。

 それにしても誹謗中傷・炎上の根本原因を取り除かない限り同じことの繰り返しです。削除できれば良い、記者会見をして謝罪すればよいというものではないので、法務やリスク管理担当者の仕事には区切りがなかなかつきませんなあ。





自主検査の限界 Business Law Journal 2017年10月号

 BLJの拾い読みです。

 新連載の「法務部門における品質確保・向上の方法論」
 ビジ法の特集が生産性向上としつつも品質向上に寄っていましたが、こちらは連載で「品質確保・向上」に取り組むようです。

 少人数の法務(最小人数も含む)の泣き所は、業務の属人性です。何をいってもどうにもなりません。
自分の力量・品質がすなわち勤務先の法務の実力値。親会社の法務部門や顧問弁護士への相談、あるいはチェックを受けるにしても、です。法務出身、少しは法務を管掌した役員でもいれば多少は違うかもしれませんがそうでない限り、自分の業務の「品質」は自主検査に委ねられているということになります。
2、3人しかいない法務は相互チェックできると思いますが、自主検査に近くなってしまうのではないでしょうか。
 
 法務に限らず、少人数の部門の問題は「誰かが抜ける」という事態。すぐに補充できなければ、業務量が落ちるか残る人間の負荷が増す。補充できたとしても従前と同じ業務量が捌けるかとまず量の問題の解決が優先され、品質が確保できるかというのはそのあとになりがちです。
 
 自分の(とりあえずの)残り時間がサラサラと減りつつある今、量と質の話は切実で、それこそリーガルテックにかける期待もあります。今回の連載がどのように展開するのか、とりあえず様子見。

 あとの記事についてはおいおいアップします。






 

 

法務担当者は渉外担当者に転身できるか

 前回エントリ以降、法務業務の効率化についてあれこれ思いを巡らせたのですが、効率化が目的ではないのはいうまでもありませんよね。

 いわゆる「作業」と分類される業務から解放されるとして何をするか、最近「渉外」とか「ロビー」という言葉を法務界隈でも目にするようになったので、ではその点について自分の経験・体験を合わせて書いてみようかと。

 これまでのエントリでも触れていますが、勤務先メンバーのひとりとして事業者団体(工業会というものですが)の活動に参画しています。事業部門に在籍していた頃からの縁というか、法務に異動した当時工業会の再編があり、その業務に関わっていたまま何となく居残っているというか、「続けて出席するよね」という事務局の言葉に甘えているというか。統計業務はさすがに支障があるので法務や広報も関わりが深いということで消費者関連の分科会に籍を置いています。なんだかんだで前身の工業会から通算するともう15年くらい関わっていることになります。
 で、思うことは「渉外」や「ロビー」とわざわざ声高にいわなくても、例えば事業者団体活動に参画しすることで渉外業務に関わるということ。
 製造事業者団体には「技術」や「規格・基準」といった分科会があり、加盟メーカーの技術担当者が出席していますが、所管の要求・要請について社内をまとめさらに団体内で意見を述べ、ときに所管の担当官や関係団体を交えた協議にも参加しています。彼らの勤務先所属が設計部だとしても渉外業務を果たしているのですよ。

 法務担当者が渉外担当者となっていきなり事業者団体に参加するには相応の準備がいるでしょう。当然のことながら自社だけでなく業界事情(裏も表も)に通じなければなりませんし、製造業であればそこそこ規格や技術、製造のことも理解しておかなければなりません。社外の人間とのコミュニケーション能力も問われます。
 しかし法律に強い、訴訟やクレームなどの交渉経験が豊富といったプロフィールは、「一目を置かれる」という可能性もあります。外部団体活動で大事なのはきちんと会務を果たすのが前提ではありますが、「存在感」を放つということです。(ひいてはそれが自社の利益にもいつか繋がる…かな)社外団体活動には各社とも押しの強い人間が出張ってくることが多いですからね。もし本当に渉外という仕事で生きていくなら、業界内で「無視できない存在」というか「ちょっと声をかけてみるか」という立場を築けると違ってくると思います。
 
 それにはどうすればということですが、自分の経験だけでいうと、情報を発信する、苦難を共にする、やっぱり運、かなと思っているのですが、このエントリーは不定期かつ短い連載にしますね。

 

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