企業法務

2020年07月25日 17:26

 本来の主旨・目的が抜きになったままの4連休。自分の場合は昨日の午前まで業務があったのでいつもの週より少し休みが長い程度に過ぎない。悪天候もあって心身を休めるための小休止といったところ。

 来月に中間管理職対象の研修講師の打診があり、法務コンプラの時間には半ばお約束的に「ハラスメント」がテーマにされていた。 毎度のことなので本当にこれが優先事項なのか首を傾げないわけではないのだが、中間管理職にとっては小さくない問題であることも事実なのでカリキュラムを考えてみる。
その整理のために、というかネタとして「ハラスメント防止の基本と実務」(石嵜信憲編著・中央経済社) を読んでいる。労務系の諸々については石嵜・山中総合法律事務所編著の書籍を参考にさせていただくことがあり、今回もその流れ、といえば流れ。

 今年施行のいわゆるパワハラ防止法まで含む各種ハラスメントに関する本質論とガイドライン案がコンパクトに纏められている。そして特筆すべきは同事務所によるハラスメント研修の内容が(すべてではないにしろ)掲載されている点だろう。正直なところをいえばこの点を理由に手にとったといってもよい。
しかし読み進めながら、ハラスメントについては中間管理職の研修ではなくまずもっと上位者向けの研修実施が先にあるべきと(当然だが)思った次第。

 ハラスメントはもう許されない時代、会社経営のリスクということは皆なんとなく理解している。が、ハラスメント問題の本質は何か?何も対策を講じない場合にどのような形で経営に影響を及ぼすのか、となると案外経営陣の間でも視点を合わせ切れていない可能性がある。本書はその視点合わせのための研修なり会議の題材に適した1冊であると思う。

 本書の第3章は労災認定基準からみた業務災害を取り上げており、この部分はきっちり経営陣に理解しておいてもらう必要があると思う。これまで自分が関わったハラスメント問題は上司部下の人間関係や、当事者のスキルの問題に収斂したケースがほとんどであったが、今後注意すべきはハラスメントが招く「業務災害」「労災認定」といった問題である。否応なく「経営責任」が問われる問題で、もはや現場の中間管理職の出来不出来では済まされるものではない。

 とはいえ、現場を預からせている中間管理職には業績向上だけでなく、職場環境づくりというものも仕事なのだよということを理解してもらわないとならない。
 ただ長い目で見れば働きやすい職場環境は業績というリターンがあるはずだが短期では非数値目標とされてしまうかもしれない。
 法務という職務上ハラスメントに絞ったカリキュラムを任されるのは仕方ないとして、マネジメント研修全体を考えると少しモヤモヤを感じなくはない。どうしたものか。





 
 



 

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2020年07月05日 18:20

 7月。今年も折り返し地点を過ぎた。依然として先の見通せない環境だが、それでも日々の仕事は回していかなければならない。

 階層別研修のうち(比較的)若手中間管理職対象のものを実施するということで、法務コンプラの時間を割当てられた。何を希望されているかといえと、ハラスメントと個人情報保護という雑駁なもの。時間が限られているので、中間管理職が踏みそうなリスクという点でハラスメントに絞ろうと考えてはいるもの、というのが今回のエントリ。

 いわゆるパワハラ防止法施行されたことの周知やパワハラの定義と通りいっぺんのことを説明するだけで済むのなら悩まないのだが、実際に「パワハラ」という名目で内部通報や相談を受け付けている側からいうとそう簡単ではない。ましてコロナ禍の対応でようやく在宅勤務の定着化に着手した状況である。「目の前で業務の状況を確認できない」ストレスを抱える中間管理職が今後増えていくだろう。
 メールやWeb会議で定期的に業務連絡を交わすにしても、①相対して話すのと同じレベルを保てるのか ②そもそも相対で話していても、うまくコミュニケーションを築けていない場合はどうなるのか、という懸念もある。気に入らない、ウマの合わない上司や同僚、部下メンバーと顔を合わせる機会が減るからトラブルも減るとは到底思えない。
 感情的な発言をなくし、「ちょっとこれもやっておいて」という曖昧な業務もなくし、理路整然とした「業務」の指示命令を出しその成果に対してフィードバックをしていれば、「業務上必要かつ相当な範囲」に収まる、と中間管理職に注意しておけばよいものだろうか。

 「業務上必要かつ相当な範囲」とはどのようなものか。
「働く人のための感情資本論」(山田陽子 青土社)の第5章「パワーハラスメントの社会学」ではパワハラが「業務」(一見、被害者に利益が生じるようにみえる仕組み)の名のもとに正当化される可能性が挙げられている。考え抜かれたはずの企業の業務ルールや制度も出先の職場での使い勝手によってはその目的から外れていくことがある。職場やその管理職の問題ではなくルールや制度の設計(本社部門)の問題、ということにもなるかもしれないが、では出先の管理職に責任はないということにもできないだろう

 そして「感情の管理」
 自身の感情をうまくコントロールができないが故に、ハラスメントの加害者側に自らを立たせてしまう事例もいくつか目にしている。個人の感情に法務やコンプラ、内部監査の担当者が無造作に踏み込むことはすべきではないと思う。目を赤くした当事者の「じゃあ、どうすればいいのですか」という問いに適当に答えることはできない。
 全く感情を排した指示命令や指導、そして相談報告というものが果たして「部下・メンバー」の人材育成につながるのか、中間管理職にとってもその先があるのか。

 時代が変わりつつあるなか、階層別研修での法務コンプラ研修もその姿を変えざるを得ないということを噛みしめている。

 

 

 

 
 


 

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2020年06月07日 17:33

 「契約書のチェックをお願いします」
 業種業態を問わず企業法務担当者の「契約書精査」の仕事が始まる。
 TwitterのTLで定期的に繰り返される「営業担当者が(事業担当者)が契約書を読まない」論だが、「契約書」を読まなかった、かつての営業担当者としては「すみませんな」としかいいようがない。
確かに「契約書の内容をまったく気にしない現場」は問題ではあるが、読まないとされている「契約書」の性格、内容によっては一概に現場担当者を責めることはできないと思っている。「読まない」とはいっても瑕疵担保条項(契約不適合条項)や保証条項、支払条項などにそこそこ目を通している様子が確認できれば、なるべく文句をいわないようにしている(あくまで自分の努力レベルだが)。
 契約書は法務が審査する、というのが定着しているが、「契約書以外の書類」は法務に回ってこないということもありえる。相手側から契約書以外に渡された書類があるなら一通り全部寄越してもらうことにしている。

 本当に細かく審査すべきは、基本契約書の条項に優先すると規定された場合の「個別契約」の内容と考えるが、毎日現場と取引先との間で飛び交う「注文書」や「発注書」やその後ろにそっと付いている「約款」や「発注仕様書」を逐一法務がチェックできるだろうか。
 法務担当者が「発注仕様書」や「製作図」といった本来の「契約の内容」を精査し、現場担当者に適切な指摘を返せるかといえばかなりの困難を伴う。たとえば、自分が所属する業界の官需系の請負契約では標準仕様書や特記仕様書、設計図、各部詳細など契約書の他に様々な書類、図面が「契約書類」となるが、それぞれの書類の「優先順位」を法務担当者が知らなければ「契約書審査」が成り立たない。
「契約書をちゃんと読んだか(契約内容をよく確認したか)?」は法務側にも向けられる言葉でもある。

 現場の担当者が契約書を読まないのは「読む動機づけ」が足らない可能性もある。
契約書をよく読むと「こういうことがわかるのか」「こういうことが避けられるのか」といったことを、まずは法務の側から示す工夫も必要。気の利いた現場担当者であれば、次回からちゃんと読み込んだうえでチェックを依頼してくる。
 手間はかかるが少数法務体制の場合、こうして現場に分身を増やしていくことも欠かせないのである。

 



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2020年05月28日 07:00

 
 結局在宅勤務を1日も経験しないまま解除された首都圏の緊急事態宣言。
人気のない早朝の電車での通勤には奇妙な心地良さがあったのだが、通勤客も戻りつつあるのでそれも終わり。だが手探りで「日常」を取り戻そうとしている印象である。 

 各業種、業界団体による「新型コロナ感染対策ガイドライン」が出揃った。
役目上、自社が所属する業種、関連する業種のガイドラインを一通りチェックする。予想はしていたが概ね横並びであるし、緊急事態宣言前後から取り組んでいた対策の継続を「念押し」する印象である。
感染状況が終息したわけではないし、予防ワクチンも開発途中、治療薬も確たるものはないのだから、今年1月以前の「社会のカタチ」に戻すことはできない。
もう身の回りにウイルスがあることを当然のこととして、感染しない、感染しても拡大させないようにするよりないのである。
 
 ガイドラインに厳しい拘束力はない。しかし、年明けからの半年弱、サプライチェーンの断絶、従業員の感染による事業所の操業停止、営業活動の制限など企業の対応は苦しい選択を迫られるものばかりであったはず。得意先も調達先も似たような状況だったので「不可抗力免責」を主張して交渉という場面にはでくわしてはいない(あくまで自分の業務では、だが)
 しかしガイドラインが揃ったからには、いずれ到来するとされている第2波、第3波が来たときに、今回と同じような「調達トラブル」「従業員の感染」などのリスク発生に関して「不可抗力免責」を主張しようとしても受け容れられるかといえばかなりの確率で難しくなると思う。

 ガイドラインにまとめられている項目は、この半年弱の間走りながら企業が取り組んできたことが大半である。「もう普通にやっていますよ」という企業も多いかもしれない。
ただ普通のことを普通にやり続けることの難しさは法務やコンプラ関係の業務に携わっている人はわかると思うが、解禁で取り組みの「中弛み」が生じやすい今、ガイドラインの存在とその意味合いを社内に周知していかなければならないだろう。



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2020年05月16日 17:29

 緊急事態宣言解除前だが徐々に人の動きが戻ってきた。

 後進を育てる観点から会社法務A2Z5月号の特集記事「今こそ確認しておきたい『法務の基本スキル』」に目を通した。自分は法務異動時にまともな研修教育を受けていない。何が基本で応用なのか皆目見当もつかないうちに炎上事案が続き、その勢いを借りて生きてきたようなもの、無手勝流もいいところである。こんな法務担当者が代々続くようではいけないと強く思っているのだが、現実はそうはいかない。あと何人か法務担当者の代替わりがないと難しいかもしれない。

 多くの企業が在宅勤務体制を敷いたこの春に法務に配属・異動された方は、日々どのように企業法務の仕事を体得しているのだろうか。記事を読みながらまずそのことを思った。特集記事で取り上げられている内容は自分のような者は異論を挟みようがない「基本のかたち」である。法務担当者自らがこれらを毎日コツコツと実務を通じて繰り返し身につけていくことが大前提である。そのうえで上司・先輩部員の指導が上積みされてやがて担当者として独り立ちしていくのだろうが、春先からの環境下で上司・先輩部員から指導を受ける機会が得られているか、そして上司・先輩部員は適切な指導を行えているのだろうか。

 今回のコロナ禍到来前から在宅勤務体制やそれを支える仕組みやツールを整えていた企業は別として、3月末からの今月までの短期間では「収益部門の業務」優先で突貫で整えるまでで精一杯という企業もあったと思う。それはやむをえないだろう。しかし今の「非日常」を「日常」に置き換えていくなら、後回しにしてきた業務もそれに置き換えていかなかればならないだろう。そのなかで日々の後進育成という職務をまた後回しにしてはならないだろう。
 現在管理職から経営陣の立場にある40代や50代の人間は新人時代は先輩社員や上司にくっついて仕事を覚えてきた人間が多いだろう。ときに鬱陶しいと感じながら先輩社員の武勇伝なり失敗談を聞かされ、あるいは自分がミスをしたときの詫びの入れ方、取り返し方を自分の代わりに頭を下げる上司の背中を見ながら学んだというパターンだ。これらの良し悪しは当然あるが、上司・部下、先輩・後輩が常にそばにいるから可能だったということだ。しかしその前提がなくなったら?

「在宅勤務が当然の職場」に応じた後進育成のためのスキル(といってよいのか?)が管理職や後進育成担当者に自然に身に付くわけではない。それは企業法務部門においても例外ではないだろう。この時期法務系の雑誌は担当者向けの「自己研鑽系」記事が掲載されることはあるが、法務部門管理職に向けた記事は少ない気がする。(知らないだけかもしれない。)
 職場(職務)環境がガラリと変わる今、必要なのは後進育成スキルアップ(チェンジ)ではないか。

 と、本誌記事とはあまり関係ないエントリーになってしまった。








 

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