企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

企業法務


補足 BLJ2017年10月号 

 例によって間隔が空きました。じわじわと遠距離通勤の疲れがボディブローのように。

 BLJ10月号のメイン特集は「誹謗中傷・炎上への対応実務」でした。勤務先が所属する親会社グループも誹謗中傷・炎上にはかなり神経質になっているので、子会社含めてリスク管理体制を敷くようになりました。
 何をやろうとしまいと悪意のある誹謗中傷はあるものだしネット上にばら撒かれるのも防ぎきれない、ならばいかに短時間で収束させるかというところに注力するというもの一つの考え方。

 外部からの攻撃に対しては一枚岩になれるけれども、身内によるものはなかなか、というのが実感。
 経営不振を理由に投資ファンドに売却された当時は、自社のスレッドが立ち盛んに書き込みがされていました。誰が書き込んでいるのやら、まことしやかにいろいろな情報やら上層部批判を気取った雑文まで。書き込みに対してこちらに「なんとかならないのか」と怒鳴り込んでくる幹部社員もいましたが、「便所の落書き」ぐらいの余地は残して置いた方が良いとか、同業者のスレッドもよく立っていた時期でしたので、「それらを読んであなたは全部事実だと思うか?」と過剰反応することは悪意ある者の思う壺だとよく切り返したものです。すごい嫌な顔をされましたが。
 リスク管理の面から書き込みの全てが虚言ではない、500のうち1は事実も混ざっているだろうと参考情報の一つにしています。イニシャルトークならばともかく当て字とはいえ従業員が特定できるような書き込みが飛び交うようになれば職場で何かが起きているわけですからね。

 そんなわけでBLJ特集記事では「削除請求を受ける側の視点」は参考になりました。
削除請求ということでは「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル」を参考にするケースがたまにあるのですが、削除請求件数はちょっとやそっとではないでしょうから、請求受付側にすんなり削除と判断してもらうようにするにはというのは興味のあるポイントでした。

 それにしても誹謗中傷・炎上の根本原因を取り除かない限り同じことの繰り返しです。削除できれば良い、記者会見をして謝罪すればよいというものではないので、法務やリスク管理担当者の仕事には区切りがなかなかつきませんなあ。





自主検査の限界 Business Law Journal 2017年10月号

 BLJの拾い読みです。

 新連載の「法務部門における品質確保・向上の方法論」
 ビジ法の特集が生産性向上としつつも品質向上に寄っていましたが、こちらは連載で「品質確保・向上」に取り組むようです。

 少人数の法務(最小人数も含む)の泣き所は、業務の属人性です。何をいってもどうにもなりません。
自分の力量・品質がすなわち勤務先の法務の実力値。親会社の法務部門や顧問弁護士への相談、あるいはチェックを受けるにしても、です。法務出身、少しは法務を管掌した役員でもいれば多少は違うかもしれませんがそうでない限り、自分の業務の「品質」は自主検査に委ねられているということになります。
2、3人しかいない法務は相互チェックできると思いますが、自主検査に近くなってしまうのではないでしょうか。
 
 法務に限らず、少人数の部門の問題は「誰かが抜ける」という事態。すぐに補充できなければ、業務量が落ちるか残る人間の負荷が増す。補充できたとしても従前と同じ業務量が捌けるかとまず量の問題の解決が優先され、品質が確保できるかというのはそのあとになりがちです。
 
 自分の(とりあえずの)残り時間がサラサラと減りつつある今、量と質の話は切実で、それこそリーガルテックにかける期待もあります。今回の連載がどのように展開するのか、とりあえず様子見。

 あとの記事についてはおいおいアップします。






 

 

法務担当者は渉外担当者に転身できるか

 前回エントリ以降、法務業務の効率化についてあれこれ思いを巡らせたのですが、効率化が目的ではないのはいうまでもありませんよね。

 いわゆる「作業」と分類される業務から解放されるとして何をするか、最近「渉外」とか「ロビー」という言葉を法務界隈でも目にするようになったので、ではその点について自分の経験・体験を合わせて書いてみようかと。

 これまでのエントリでも触れていますが、勤務先メンバーのひとりとして事業者団体(工業会というものですが)の活動に参画しています。事業部門に在籍していた頃からの縁というか、法務に異動した当時工業会の再編があり、その業務に関わっていたまま何となく居残っているというか、「続けて出席するよね」という事務局の言葉に甘えているというか。統計業務はさすがに支障があるので法務や広報も関わりが深いということで消費者関連の分科会に籍を置いています。なんだかんだで前身の工業会から通算するともう15年くらい関わっていることになります。
 で、思うことは「渉外」や「ロビー」とわざわざ声高にいわなくても、例えば事業者団体活動に参画しすることで渉外業務に関わるということ。
 製造事業者団体には「技術」や「規格・基準」といった分科会があり、加盟メーカーの技術担当者が出席していますが、所管の要求・要請について社内をまとめさらに団体内で意見を述べ、ときに所管の担当官や関係団体を交えた協議にも参加しています。彼らの勤務先所属が設計部だとしても渉外業務を果たしているのですよ。

 法務担当者が渉外担当者となっていきなり事業者団体に参加するには相応の準備がいるでしょう。当然のことながら自社だけでなく業界事情(裏も表も)に通じなければなりませんし、製造業であればそこそこ規格や技術、製造のことも理解しておかなければなりません。社外の人間とのコミュニケーション能力も問われます。
 しかし法律に強い、訴訟やクレームなどの交渉経験が豊富といったプロフィールは、「一目を置かれる」という可能性もあります。外部団体活動で大事なのはきちんと会務を果たすのが前提ではありますが、「存在感」を放つということです。(ひいてはそれが自社の利益にもいつか繋がる…かな)社外団体活動には各社とも押しの強い人間が出張ってくることが多いですからね。もし本当に渉外という仕事で生きていくなら、業界内で「無視できない存在」というか「ちょっと声をかけてみるか」という立場を築けると違ってくると思います。
 
 それにはどうすればということですが、自分の経験だけでいうと、情報を発信する、苦難を共にする、やっぱり運、かなと思っているのですが、このエントリーは不定期かつ短い連載にしますね。

 

迷路   拾い読み ビジネス法務2017年10月号

 亡父の三回忌を終えてホッと一息の休日。 

 ビジ法10月号。特集「法務部の生産性向上」
 @kataxさんが速攻辛口のエントリーを上げていました。期待の裏返しなのでしょうけれど、自分は予告をみたときから「迷路に突入するのではないか」という予感を抱いていました。

 業務の生産性向上と効率化は経営状況の良し悪しにかかわらず、また部門にかかわらず常に経営陣から指示が出されるものです。目標・結果を数値に表しやすい販売部門や生産部門といった直接部門と比べ、法務部門を含む間接部門は自身でも納得のいく方策を出しにくいものです。販売管理費の抑制の視点から効率化という名の人員抑制・削減の対象にされやすい面があります。
 何としても法務部門の生産性向上をアピールしなければ、という気持ちは燻りますが、間接部門が単独目指す生産性とは何なのか、企業法務の世界で定義なり軸が定まっていないのではないでしょうか。フレーズ先行の結果が@kataxさんが指摘するように「業務品質向上」記事の集まりになってしまったのではないでしょうか。奇しくも「業務品質向上」についてはBLJで連載が始まりました。

 所属団体の名を出して生々しい話というのは限界があるとは承知してはいますが、生産性ということでインプットとアウトプットの関係から例えば
  • インハウス増員したらこうなった
  • クラウドサービスを利用したらこうなった
  • 顧問先法律事務所を変更したら
というような話がきけたらよかったのに、と思わざるを得ません。

 また、同じ間接部門では財務経理部門はいち早く市販の会計ソフトや大掛かりな連結会計のシステム導入をしている企業が多いので、システム投資の結果人件費は減ったのか、業務効率は上がったのかなど話をきいてもよかったのではないかと思うのです。(中央経済社ですし。でも編集部またぎは難しいのかな)

 最小人数であるがゆえに生産性向上も品質確保も効率化のいずれも手詰まり感があるので、本当にヒントが欲しかったのですよ。自身の身の振り方も含めてね。
 



 
 

 

読んでみる「金融から学ぶ会社法入門」

 企業に勤め、法務担当者として完璧に内容を抑えているかというと心もとない「会社法」。
 上場・非上場、独立・子会社、大会社・大会社以外、成熟・新興など所属する組織の姿によって法務担当者が触れる「会社法」の範囲もだいぶ違ってきます。
 新興企業であれば成長過程ならではの増資や吸収合併、ストックオプションなどの導入。上場を視野に入れれば機関の変更や資本政策、成熟期を迎えれば事業譲渡やグループ会社の売却などなど。同じ企業に所属していたとしても、法務担当者は突然前任者とまったく違う舞台に立たされる可能性があります。
 資本を触ったり組織再編やそれに伴う金融機関との事務手続きといった業務は会社法の範囲のみで片付くことはなく、会計・税務など周辺の法規・制度についての理解(完璧でなくとも財務部門とフェーズ合わせができるレベル)も必要ですし、最後に登記が絡むことがほとんどですから商業登記や不動産登記についても(司法書士に委任するにしても)一定の知識も必要。上場を視野に入れれば当然金商法。
ともかく色々な目に遭った身としては、金融関連と会社法を同時に学べたらよかったなというのが実感ですね。今ある知識も学ぶというよりは怪我の功名のようなものなので。

 大垣尚司教授の『金融』シリーズの最新刊「金融から学ぶ会社法入門」。
 著者による巻頭の「はじめに」では対象は会社法を学ぶ法学部生や法科大学院生を対象とありますが、新刊の帯には「金融パーソン・金融ローヤーのための会社法教科書」とあります。どういうことなのでしょうか。
 それはともかく、本書の構成は条文順では起業から上場、事業承継などまでと事業(事業者)のライフサイクルに沿ってストーリー仕立ての設問と関連判例、それに加えて数式や図表(決算や資金調達、資本に関する事項は図表があった方が理解しやすいですからね)を挿入したものになっています。
 会社法そのものは「金融から学ぶ民事法」がダットサン民法を参考書にしたのと同様に江頭・神田両巨頭の会社法を参考書にしなさいという割り切りです。
 本書1冊で会社法がわかった!ということに当然なるわけがないのですが、著者の思いとは別に、色々な実務に触れはじめた若手企業法務部員が読むとストンと腹落ちするような気がします。




 
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