企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

企業法務


拾い読み ビジネス法務2018年9月号

 これまでの常識が通用しない夏ですね、としかいいようがない毎日。

 拾い読み、ビジ法です。
 特集1は「新規ビジネスを成功に導く法的リスク突破力」
 「ブレーキを踏む奴ら」とだけ思われないように企業法務担当者はどう生きて行けばよいのかということでしょうか。新規事業の芽がなかなか育たなくなったところにいると逆に眩しい話題なのですが。

 自社がどのような市場でどのポジションで生きているか、そして経営状況によっても「新規ビジネス」への取り組みレベルは異なると思います。ヒト・モノ・カネに余裕があり多少のリスクを負担できる企業とそうでない企業とでは、スピードだけでなく「リスク評価」の品質も当然違いますし、社歴の長い企業と新興企業とでも当然違います。今リスクを取らなくてもよい企業とリスクを取っていかないといけない企業との違いもあります。
法務担当者というのは所属する企業によって求められるものが左右されますよね。

 長年「規制市場」にいると、厳しい業法は守らなければならない反面、それさえ守っていれば安泰というところもあるので、そうそうまっさらな新規ビジネスというものが生まれにくいところがあります。
「新規事業」といってもよくよくみれば「新たな規制の枠内」でビジネスを行う内容にすぎないケースがあります。もっともそれでも投資が必要ということもあり決して楽チンということではありませんが、まあ、法務の出番はあまりありません。ただ恐ろしいのは、自社に諸々の事情で余裕がなく新たな規制への対応に出遅れることですね。こういうケースが現場で埋もれていないか、ジャブを打つのが法務の仕事になることもあるかもしれません。法的リスクの突破、とは違いますけれどもね。
 これには事業に関わる法省令や制度、ガイドラインの制改廃には目を配っておかないとなりませんが、そうすることで法務担当者も事業に理解がある、理解しようとしているという姿勢が事業部門に伝わり、本当の「新規事業」のときに法務をハブにして、という事態は減ってくるかもしれません。「新規ビジネスの相談は必ず法務を通してくださいね」という社内フローを作ることは必要ですが、ちゃんとそれが運用されるには、法務からの日々のアプローチも大事ということ。自分は営業部門にいたせいもあり「顔を出さない奴に注文なんか出さないよ」というのが身に沁みているのですが、本当これはありますよ。
 あとは日々精進の部分なのですが、法務が鬱陶しがられる「説明が長い」「結局何なんだ、GOなのかNO GOなのかわからん」というところをなくしていくことですね。A4ペラ1枚、長くても10分までの間で一通りのことは説明できるようにしておくことでしょうか。「うわー、走り出しちゃっている」という案件ではなかなか聴く耳を持ってもらえないものです。「10分以内で済みますから」と切り出せるようにしておきたいですね。(そのあと向こうの都合で時間が延長される分にはOKなのですから)


 というようなことをメルカリのインハウスの記事を読みながら(自分のことは棚にあげて)思ったのでした。




 

君がここにいてほしい

 ヒプノシスによるジャケットデザインを想起しながら。

 某TL上でアンケートやらツイートがやりとりされたのを見て考えたことを。

 自分は未経験から社内人事異動で企業法務(とその他諸々)の職についています。いうまでもなく弁護士資格はありませんしロー卒でもありません。(そもそも法科大学院制度がなかったからね)
もし自部門に経験者やロー卒の方が異動なり中途採用で入ってくることは大歓迎であります。有資格者にいたっては三顧の礼でお迎えしますよ。基本的には。
しかしそうは甘くないのが現実で、募集をかけても応募者がこない!ということもあります。
当面未経験者を育成するしかなくなります。
 ここで困るのが、自身も未経験法務担当でしたが異動に際しての動機付けも一切なく、異動後に企業法務なるものを教わったこともないことです。退職間際の前任者から教わったのは袋とじだけといってもよいくらいでしたからね。(それも知っていたけれど顔を立てて「へえ、なるほど」と頷いていたのですが)こんな自分が未経験者を迎え入れざるをえないとき、どんな人物だったら未経験者でも受け入れるかわりと本気で考えてみました。(法務への異動を受け入れてくれることが前提ですけれどね)

  1. 新しい物事への関心、好奇心の強さ
  2. 複眼視点を持てるか
  3. 期限管理にクセがついているか
  4. 失敗体験(個人の、というより関わった事業の失敗)
簡単にまとめられるものではありませんが、どうしても外せないのはこの4つでしょうか。
 1.はこれまでと違う仕事につくのだからこれがないと話になりません。アップデートのスピードが速まっている感のある企業法務界隈。好奇心がないことには始まらないでしょう。
 また事業部門や販売部門から新しい取引の相談を持ちかけられたときに、なんの興味も持たず聴かされた話だけで済ますようなことでは困ります。物事への関心が低いことはデメリットやリスクの見逃しにも繋がりますしね。
 2.は複数の立場の目線で考えるようにしてね、ということです。販売の仕事を除けば、特に内勤業務の場合、案外自分(自部門)の都合の押し付け合いというところがあります。ひとつの取引をまとめるには相手方は当然ですが社内の関係者の視点も取り込んでいく必要があります。(事業部や営業担当者は往々にして前のめりですからね)すぐにはできなくても、別の視点で考えてみようという姿勢をもっていてほしい...のです。
 3.は当然といえば当然なのですが。期限から逆算して仕事をする習慣がついていない人も実際いるのですが、そこから教えるのは正直しんどい、という気持ちからです。
 4.はなんといえばよいか。成功体験も大事ですが企業法務の仕事の性質上「失敗」に関わることもあります。成功したことしかない人間はそれに耐えられるだろうかというのがひとつ。失敗・撤退を知る人間はそのプロセスを(体験として)知っています。2.の複眼視点ではありませんが、リスクの目を摘むことができるかもしれません。もし撤退戦を強いられる事業部門があればその部門の人間に寄り添うことができるかもしれない、そういう思いから。

 うーむ、難しいですね。ないものねだりはしたくないのですが。お前はどうだったのかといわれると困るのですがね。
 

語って語り捨て、聞いて聞き捨て 

 わざわざいうまでもない灼熱の日々。
 難しいことを考えるのも億劫ですわ。というわけで今回は埋め草エントリ。

 宮部みゆき、といえば本格ミステリーからSF、ファンタジー、時代物と手がける作品の幅の広さでは当代一の作家の一人だと思います。それぞれにシリーズ、連作ものがいくつかあるのですが、今回は時代物の「三島屋変調百物語」 について。全国紙で連載されたこともあるので読まれた方もいるかと思います。
 自分の迂闊な言動が許嫁と幼馴染の死を招いてしまったことで悔い心を閉ざしたヒロイン「おちか」が、預けられた江戸の商家三島屋で様々な語り手による「怪談」の聞き手をつとめることで閉ざした心を開いていくというシリーズ。第1巻の「あやかし」から最新巻の「あやかし草紙」まで物語の中で経過した時間は3年ほどですが、発刊ペースでは10年かかっています。「怪談」の数は26話。まだまだ百物語までは遠い道のりと思っていたところ「あやかし草紙」で「シリーズ第1期」完結という予想外の展開となりました。伏線は第4巻所収のエピソードに張られていたのですが回収はもう少し先だろうと思っていたのでやや驚きでありました。
 宮部みゆきの作品の共通項は人の情念というものを丁寧に描くという点と「事件」を通じての主人公の成長という点だと思っているのですが、この「三島屋」シリーズにもそれがよく表れていると思います。
 語って語り捨て、聞いて聞き捨てとは、主人公が語り手の話を聴く際のルール。だからこそ語り手は胸の内に閉じ込めていた話を吐き出していきます。つかえた思いを吐き出した後の語り手の姿は様々ですが思い残すことはないと命を絶つ、あるいは命が尽きるというエピソードもあります。この辺りが宮部流の「甘くない」ところ。語り手の死という事実をも主人公に引き受けさせ成長させていく、というところでしょうか。

 担当業務のなかに相対して相手の胸の内を吐き出させなければならないというものがありますが、業務である以上語り捨て聞き捨てというわけにはいきません。このような業務を重ねていくと自分のなかに澱のように溜まっていくものがあります。語って語り捨て、聞いて聞き捨ての場が欲しくなる時期が自分にも来るのでしょうかね。
 




牙城  ビジネス法務2018年8月号(2)

 エントリを書こうとしたところで、某自動車メーカーの不正行為の報道。終わりが見えませんね。

 ビジ法2108年8月号の特集2「品質不正への実効的対応」。ほぼ弁護士による記事で、対談でプラントメーカーの法務担当者が登場していますが、このような特集で企業法務担当者が登場するのは難しいですよね。

 製造業の法務担当者といっても、工場の中の設計、購買、経理、製造、品質保証に精通できるわけではなく、一時製品事業部に所属して工場部門と顔を付き合わす機会も多かったのですが、未だに工場の本当の内部に踏み込むのは難しいと思っています。特に歴史が長い伝統的な製造業の場合、色々と組織改正などがあったとしても、工場は工場長を頂点としたピラミッド型の組織であることは変わらず工場とその周辺の地域を含めて一個の社会をつくっています。外部からのなんらかの干渉がある場合に一丸となってその社会を守る、という傾向があります。(特に農村部にある工場)だから組織ぐるみの不正隠蔽があっても何の不思議もないと思っています。

 いくつかの品質不正事件で共通しているのは、「社内基準は満たしていなかったが国の基準は上回っているので品質に問題はない」という弁明。国の基準というものは最大公約数です。大企業から中小企業まで守らなければならないもの。大企業(トップグループに属している企業)は、自ら上乗せ基準を設け技術力を誇る、、、誇ったはずだと思うのですがいつの間か言い訳材料に使っています。このような「すり替え」のような理屈をこねるもの決して珍しくはありません。ただ悪気はないのです。工場の中の理屈が世間でも通用すると呑気に信じているだけ、という例にはけっこう触れています(品質不正ではありませんが)

 品質不正につ法務担当者が関わるのは、いまのところ残念なことに判明・発覚してからの事後処理というのが現実だと思います。その点で本誌の「データ偽装発覚直後の対応」「データ偽装問題の事後処理」の2記事が実務上参考になると思います。特に後者は自分のいる業界の事例ですがいいところを突いていると思いました。(実際はもっと込み入ることはありますが)

 では予防は?というと一筋縄ではいかないというのが実感。守りを固めた城攻めと同じですね。

 

完全子会社のコーポレートガバナンス ビジネス法務2018年8月号

 えーと、拾い読みです。
 旧エントリの中でいまでもぼちぼちとアクセスのあるのが「子会社こそ理解が必要 コーポレートガバナンス・コード」「これからの完全子会社の取締役会」ですが 、今回もその流れかな。

 ビジネス法務2018年8月号。メイン特集は「これからのガバナンス改革」ですが、今回触れるのは特別企画「非上場企業 コーポレートガバナンスの勘所」。学習院法学部の小塚教授とTMIの淵邊弁護士、藤井弁護士の2本の寄稿。どちらもCGC=上場企業のもの、と片付けず非上場企業(ファミリー企業やベンチャー企業)にもCGCの要素を導入してみればという提言。ファミリー企業といえど事業承継のタイミングで外部資本を受け容れる可能性はあるだろうし、ベンチャー企業であればIPOや大手企業による買収の可能性があるので、将来に渡ってCGCと無関係のままというのはたしかに考えにくいですね。
 で、今回のエントリ。完全子会社についてですが、上場企業の完全子会社のガバナンスについて論じられることはまずありません。上場企業である親会社のガバナンスに含まれてしまうからなのですが、そんなに簡単なものなのかというのが、ガバナンスされる完全子会社の「中の人」としての感想。
 上場企業の完全子会社といっても経緯は様々。まず大きく分けると事業部門の分社などでぶら下げた直系子会社と買収子会社。買収子会社といっても、元々は独立していた事業会社(それこそファミリー企業やベンチャー)と別の企業の子会社だった企業などに分けることができるでしょう。いうまでもなく会社の体制やら経営者の感覚から全然違いますよね。

 買収子会社に対して親会社が「これからは我々のガバナンスに従ってください。我々は上場企業です、皆さんは上場企業の子会社なんです、わかりますね!」とコーポレートガバナンスと書かれた錦の御旗をふったところで、子会社の受け取り方は当然一様ではないでしょう。特にCGC導入前の大企業子会社の場合、社長や経営陣といえども株主や金融機関の視点など考えていませんからね。
子会社となった経緯や子会社の元々の文化風土のようなものをまったく考慮に入れないまま、「ガバナンス」を押し付けていくのはかえって子会社発のリスク可能性を増大させてしまうのでは?と思いますね。M&A時代の上場企業の子会社管理部門の苦労は絶えないと思いますが(お前がいうなと蹴り飛ばされそうですが)「同化政策(語句が適切かはわかりませんが)」のありようについてもっと情報があってもよい気がします。
もちろん子会社(の経営陣)がCGCについて理解することも必要なのですがね。

 第2特集の「品質不正への実効的対応」についてはエントリーを改めて。



  
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