企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

会社法まわり


読んでみる「金融から学ぶ会社法入門」

 企業に勤め、法務担当者として完璧に内容を抑えているかというと心もとない「会社法」。
 上場・非上場、独立・子会社、大会社・大会社以外、成熟・新興など所属する組織の姿によって法務担当者が触れる「会社法」の範囲もだいぶ違ってきます。
 新興企業であれば成長過程ならではの増資や吸収合併、ストックオプションなどの導入。上場を視野に入れれば機関の変更や資本政策、成熟期を迎えれば事業譲渡やグループ会社の売却などなど。同じ企業に所属していたとしても、法務担当者は突然前任者とまったく違う舞台に立たされる可能性があります。
 資本を触ったり組織再編やそれに伴う金融機関との事務手続きといった業務は会社法の範囲のみで片付くことはなく、会計・税務など周辺の法規・制度についての理解(完璧でなくとも財務部門とフェーズ合わせができるレベル)も必要ですし、最後に登記が絡むことがほとんどですから商業登記や不動産登記についても(司法書士に委任するにしても)一定の知識も必要。上場を視野に入れれば当然金商法。
ともかく色々な目に遭った身としては、金融関連と会社法を同時に学べたらよかったなというのが実感ですね。今ある知識も学ぶというよりは怪我の功名のようなものなので。

 大垣尚司教授の『金融』シリーズの最新刊「金融から学ぶ会社法入門」。
 著者による巻頭の「はじめに」では対象は会社法を学ぶ法学部生や法科大学院生を対象とありますが、新刊の帯には「金融パーソン・金融ローヤーのための会社法教科書」とあります。どういうことなのでしょうか。
 それはともかく、本書の構成は条文順では起業から上場、事業承継などまでと事業(事業者)のライフサイクルに沿ってストーリー仕立ての設問と関連判例、それに加えて数式や図表(決算や資金調達、資本に関する事項は図表があった方が理解しやすいですからね)を挿入したものになっています。
 会社法そのものは「金融から学ぶ民事法」がダットサン民法を参考書にしたのと同様に江頭・神田両巨頭の会社法を参考書にしなさいという割り切りです。
 本書1冊で会社法がわかった!ということに当然なるわけがないのですが、著者の思いとは別に、色々な実務に触れはじめた若手企業法務部員が読むとストンと腹落ちするような気がします。




 

これからの完全子会社の取締役会 Business Law Journal 2017年6月号(2)

 承前。ゆっくり読みました、BLJ。

 再び特集記事「取締役会運営 これからのスタンダード」

 被ガバナンス側から書いてみます。
 グループガバナンス、子会社の経営状況の監督モニタリングというと、子会社取締役会に取締役、監査役を派遣し、彼・彼女らが取締役会その他重要な会議に出席して云々というのが一つの手段ではあります。しかし決裁基準をグループ会社共通のものとし、設備投資、借入、不良債権処理など金額の規模によって親会社の管掌取締役の決裁、親会社関係部門の稟議、そして親会社取締役会の承認を要する、というような手段もあります。こちらの方が実効的かもしれません。
 この場合、たとえ取締役会で決議したとしても親会社の取締役会で否決される可能性があります。そうならないように、ほぼすべての案件で事前に管掌取締役の内諾を取り付けるなり稟議を回しておくということになります。子会社取締役会は親会社の承認を得た案件を「形式上」承認可決する手続きのみ、ということになりますね。決議機関としての存在感は非常に薄く軽くなるわけです。事務局の業務はまず決議事項として付議された議案が、親会社の決裁を得ているかどうかの確認を行うことになります。「初耳だぞ、そんな話は!」と怒られるのも事務局の仕事になってしまいます。
 決議事項が形式的なものになら、取締役会は業務執行状況の報告や「経営に関する意見交換」のための機関の位置付けになるのでしょうか。
 「子会社は一事業部門」というような位置付けの場合には親会社側役員から子会社社長や常勤取締役に対して指示命令が下される場となります。それも監督のうちといえばそうなのかもしれませんが、例えば親会社からの指示命令が子会社の利益を損なう可能性が高い場合に一体誰が待ったをかけるのでしょうか。事務局はその場では庭石のように黙っているしかありません。
 子会社が業績不振に陥っている場合に報告や意見交換の際に非常勤取締役から損失見込の回答を求める発言や減損の可能性に触れるような発言があったとします。このような発言を議事録に残すか残さないか議事録作成者の判断に委ねてよいのかという問題。議事録は決定事項のみ記載し他は非常勤役員の発言のうち内容があったもののみ記録、というのが現実的な対応とは思いますが?
 このように考えてみると子会社の取締役会議事録は薄っぺらいものになり、少なくとも取締役会議事録からはグループガバナンスが有効なのか読み取れないということになりませんかね。どうなのでしょう?




拾い読み中 Business Law Journal 2017年6月号(1)

 内容がヘビー充実しているので、ぼつぼつと読んでいる今回のBLJ。 

 定時株主総会を目前にしたこの時期だからなのでしょうか特集「取締役会運営これからのスタンダード」。 
 先日、親会社の法務室長のデスクに赴いたところ、「コーポレートガバナンス・コードの実践」が置いてあったので、また何か下りてくるのかなと思いました。最近諸々子会社管理(把握か)の手続きが繰り出されているのですが、親会社法務担当者にコードとの関連を聞いてみると「うーん」と唸っていました。

 ガバナンスを受ける側にいると完全子会社は独立した企業であり続けられるのかという問いに当たります。勤務先の実例をここで披露するわけにはいきませんが「ここまでやるのか?」あるいは「こうまでしないと管理できないのか?」という要求(命令か)を受けます。親会社が選び決定した管理手法であれば従うほかないのですが、子会社の業態と必ずしもマッチするとは限りません。一方子会社各社の事情に合わせたガバナンスというのも非効率であることも理解できるので、しんどい気持ちになりますね。一番しんどい思いをしているのは子会社社長とは思いますが。

 もうすこし読み進めたところでエントリーを整理します。(すみません)


旧商法 古くて新しい課題

 まだ在庫があったのを見つけた「企業会計8月号」。
特集は「蘇る旧商法 会社法世代のためのコーポレートガバナンスの歴史」。

 年齢的には間違いなく旧商法世代に属するのですが、法務に異動したのが2006年12月なので「会社法世代」だよねとひとりごち。法律系雑誌とはまた違う視点があるだろうと思い読みました。会社の中でも、法務と財務の視点は違うことが多々あります。
 
 いろいろと企業再編の憂き目(?)に遭ってきました。
 初夏に本店移転をした(!)ので、取得した閉鎖事項履歴登記と中村直人弁護士の「委員会設置会社制度の発足」の中の〔図表〕平成の商法・関連法改正(本誌P51掲載)を眺めると、法改正を機会にいろいろやられたのだなと思うことしきり。勤務先が分社されたのは平成12年会社分割制度導入の翌年春でしたし、株式譲渡のスキムの中で、自己株取得という方法を取らさせたのも平成15年132号があったからだろうし(株価維持とは目的は違いましたが)。委員会設置会社であった時期もあるのですが、現在の姿を見ると結局何だったのだろうかと思います。

 それはともかく、企業統治と取締役の責任・監督というのは古くて新しい難問であることがわかりますね。会社法では「機関」とされる取締役ですが、機械ではなく生身の人間ですし、経営はその生身の人間がやることですからね。
 最近の法改正やGCなど上場企業の役員が負うものと、非上場、子会社の役員が負うものとの差が大きく、取締役の責任、監査役の責任とひとくくりにはできなくなったと思います。
 とかく「リスク」の温床とされる子会社ですが、子会社の役員については直近の議論から置き去りにされているような気がします。このあたりは親会社のガバナンスの中で詰められていくのでしょうかね。

 今日はこんなところで。



 

子会社はつらいよ 下から目線で何ちゃら 16

 えー、不定期エントリーです。

 子会社に対してどうガバナンスを効かせるかについて、または効かされるかについて気の向くまま。
 切り出した子会社と買収した子会社とでは当然異なりますけれどもね。 

1.取締役や監査役を派遣する
 これは考えるまでもありませんね。一人遣わすのか複数なのか、はたまた子会社取締役会の過半数か、親会社の思想が現れるところでもあると思います。ただ、大企業ともなると子会社の数も多く、その全部に常勤役員を派遣するほどの人材がいるとは限りません。非常勤役員とせざるをえず、月に1、2回の取締役会、経営会議等に出席できれば良いほうかと。いや、そうでない企業もあるかとは思いますが、ガバナンスという点では…どうなのでしょうね。監査役補助使用人の設置も云々されることもあるのですが、どのくらいの企業が補助使用人を置いているのでしょうか?あまり話題にならないのですが普通に置かれているものでしょうか。

2.ラインの責任者を送り込む(出向など)
 現場の責任者(事業部長や財務部長など)を送り込む、というのも考えられますね。非常勤役員よりもガバナンスが効くかもしれません。ただこの場合は人選が鍵でしょうね。親会社にエース級・準エース級を送り込む覚悟があるかということ。親会社で冷や飯を食っている人物ではガバナンスとは逆方向に向いてしまうことも考えられます。

3.物理的に一体化する
 手っ取り早くとにかく目の届くところに子会社の本店機能を置く、はやい話が親会社の本店に子会社を移転させてしまう。ある意味では理に叶っている気もします。電話やメール、TV会議などの手段があるとはいえ、子会社社長や役員をその場に呼びつけて直接指示命令、報告させるのに勝るものはありません。原始的とは思いますが。
 本店移転登記や許認可変更届などの手続き(と費用負担)、従業員の転勤、転居はたまた去就、取引先の離反など諸々課題はありますが、そんなものは織り込んでしまえばそれだけの話。
 もっとも同じ場所にいるようになれば、子会社の特に間接部門など親会社のその部門とがらがらぽんする可能性もあります。そういう狙いがあってもおかしくはありません。

 なぜこんなことを書いたかといえば買収されて4年、いろいろ思うことが増えたということで。本当に楽ではありませんねえ。



 
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