企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

会社法まわり


会社のカタチ #legalAC

 このエントリーは法務系 Advent Calender 2018 参加エントリーです。みねメタルさんからのバトンです。みねメタルさん、転職されていたのですね。

 この12月21日で法務担当歴13年目に入りました。自分が法務に異動した年に生まれた子が中学生になると考えると、自分は同じ年数でどれだけの経験や価値を身につけたのだろうかと呻くよりありません。
 呻いていても仕方ないので、この12年間の「会社の機関設計」を軸に久々に会社法ネタをひねり出してみました。

その1

 さて自分の勤務先がどのような機関設計をたどってきたか、整理すると次のようになります。
  1. 非公開・大会社・監査役設置・会計監査人設置
  2. 公開・大会社・監査役会設置・会計監査人設置
  3. 非公開・大会社以外・監査役会設置・会計監査人設置
  4. 非公開・大会社以外・監査役設置
 ちなみに自分は転職はしていません。同一企業でそのときどきの事情に引きずられ機関設計変更を繰り返してきた結果です。
 1.は当時所属していた企業グループ時代。分社により完全子会社化。大会社として切り出したのはのちの売却の布石だったのかもしれません。
 2.で「公開会社」とあるのに「完全子会社?」と思われる方もいるかもしれませんので説明すると、一時期投資ファンド傘下となったスキーム(LBO)により金融機関に自社株式を担保として提供する際に「譲渡制限を外す」という条件だったため、公開会社となっただけです。株式が流通したわけではありません。設計上は公開会社だが実質は非公開会社と変わりないという、はたからみてわかりにくい機関設計でしたね。(田中旦「会社法」コラム1−3参照)3.は投資ファンド傘下で持株会社を設立した際の機関設計で、IPOを念頭においたもの。4.は再び上場企業子会社になり、もはや大会社にしておく必要性もないと資本金の額を変更したもの。
 どのケースにおいても一人株主が100%株式保有であり、投資ファンド傘下時期を除けば上場親会社の完全子会社、江頭会社法でいうところの「従属会社」です。
 従属企業は今やコーポレートガバナンスの名の下、上場親会社によっては実質「社内の一部門」として管理されるケースもあります。親子会社で人事・会計システムが統合は進んでいますが、今後のテック系の普及次第で法務業務等もシステムとして親会社に統合されれば、従属会社の法人としての「独立性」が保てるものなのか疑問です。

 ところで会社法は「中小規模」「株式譲渡制限付き」の企業を基本形として規定しています(江頭会社法)。従属会社は機関設計上では「会社法の基本形」に該当する企業が多いと思いますが、「従属会社」でそこそこ機関法務の仕事を通じて思うのは現行会社法上での「身の置き所のなさ」でしょうか。
 「中小企業あるある」と様々な頭痛ネタが取りざたされるとはいえ、とりあえず自力で資金調達をし長年地元で商売をしている会社と、事業の存続含め全てを「親会社に委ねている(それゆえ例えば資金調達など有利な条件を享受できる)」会社とでは同じ機関設計だとしても会社の有り様が当然大きく異なります。(同じ従属会社でも親会社が上場か非上場かという点でも同じことがいえます。)
 上場企業の「従属会社」の場合には定款自治による機関設計の自由云々ということは実際には考えにくいし、上場親会社の完全な管理下にあるわけですから機関設計の選択肢をはじめ、独立企業と区分を同じくするのは無理筋なのではないかと思うときがあります。子会社に法人格をもたせないという点では既に「社内カンパニー制」がありますが、上場親会社が社内カンパニー制をとらないにも関わらず、子会社の「法人格」「独立性」が実質ないに等しい場合に、「従属会社」を現行会社法の機関区分に当てはめてよいものなのか、ここ数年こんな疑問が脳裏に浮かんでは消えということを繰り返しています。

 
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完全子会社の取締役会  会議室の片隅から 

 使わない業務知識は忘れていくし、知らなくても済むことは知らぬままに…というのはまずい事態だと反省し久々のコーポレートネタを脳がつりそうになりながら。
 
 3年ほど前に非上場完全子会社こそコーポレートガバナンス・コードを知るべきと大口を叩いたものの現在地はどうかということで、「実践取締役会改革」(中央経済社)を読みながら考えたことを。 
 子会社の取締役会のあり方、は上場親会社の子会社管理方針によるところが大きいのはいうまでもないところです。上場企業の取締役会がコードに対応しつつあるのは法律系媒体で伝わってくるのですが、子会社の取締役会の運営についてはどうか、ほぼほぼ子会社人生なので気にはなるのですがなかなか外に伝わる話ではないようですね。

 親会社から「コード対応だから!」というような指示命令は流石にないでしょうけれども、子会社管理規則の改正、親会社主催の子会社会議の内容の見直し、リスク情報の即時共有化の試みの導入、子会社の取締役会に付議する報告事項が指定されるなどここ2年ほどの間に細かくランニングチェンジが繰り返さされていないでしょうか。子会社の経営情報を確実に吸い上げる仕組みを張り巡らせる一方で子会社の取締役会に付議、審議される事項は親会社・子会社それぞれの決裁手続きを満たすための場になっていないでしょうか。親会社の取締役会を活性化させる(時間をかける)ということはどこかでそのための時間を絞り出さなければなりません。それなりの数の子会社を抱え、それぞれに取締役を派遣している親会社からすると子会社の取締役会をいかに「効率的にこなすか」なんてことになっていないでしょうか。

 完全子会社といえども一つの独立企業。時間をかけて審議すべき事項はあるはずなのですが、短い時間の中で決裁を得るための場での「承認を得やすい書類作り」になってしまうことがあります。「承認をえた」書きぶりが伝承され、年数をへるうちに薄っぺらに…などということを避ける為に事務局は一応書類には目を通すのですが(以下自粛

 10年以上、取締役会事務局として会議室の片隅に陣取っているのですが、今後完全子会社の取締役会や取締役などの会社機関はどうなっていくのでしょうか、なかなか表立って語られない分野ではありますが企業グループの数だけパターンがあるのではないでしょうか。
 



 
 


 
 

完全子会社のコーポレートガバナンス ビジネス法務2018年8月号

 えーと、拾い読みです。
 旧エントリの中でいまでもぼちぼちとアクセスのあるのが「子会社こそ理解が必要 コーポレートガバナンス・コード」「これからの完全子会社の取締役会」ですが 、今回もその流れかな。

 ビジネス法務2018年8月号。メイン特集は「これからのガバナンス改革」ですが、今回触れるのは特別企画「非上場企業 コーポレートガバナンスの勘所」。学習院法学部の小塚教授とTMIの淵邊弁護士、藤井弁護士の2本の寄稿。どちらもCGC=上場企業のもの、と片付けず非上場企業(ファミリー企業やベンチャー企業)にもCGCの要素を導入してみればという提言。ファミリー企業といえど事業承継のタイミングで外部資本を受け容れる可能性はあるだろうし、ベンチャー企業であればIPOや大手企業による買収の可能性があるので、将来に渡ってCGCと無関係のままというのはたしかに考えにくいですね。
 で、今回のエントリ。完全子会社についてですが、上場企業の完全子会社のガバナンスについて論じられることはまずありません。上場企業である親会社のガバナンスに含まれてしまうからなのですが、そんなに簡単なものなのかというのが、ガバナンスされる完全子会社の「中の人」としての感想。
 上場企業の完全子会社といっても経緯は様々。まず大きく分けると事業部門の分社などでぶら下げた直系子会社と買収子会社。買収子会社といっても、元々は独立していた事業会社(それこそファミリー企業やベンチャー)と別の企業の子会社だった企業などに分けることができるでしょう。いうまでもなく会社の体制やら経営者の感覚から全然違いますよね。

 買収子会社に対して親会社が「これからは我々のガバナンスに従ってください。我々は上場企業です、皆さんは上場企業の子会社なんです、わかりますね!」とコーポレートガバナンスと書かれた錦の御旗をふったところで、子会社の受け取り方は当然一様ではないでしょう。特にCGC導入前の大企業子会社の場合、社長や経営陣といえども株主や金融機関の視点など考えていませんからね。
子会社となった経緯や子会社の元々の文化風土のようなものをまったく考慮に入れないまま、「ガバナンス」を押し付けていくのはかえって子会社発のリスク可能性を増大させてしまうのでは?と思いますね。M&A時代の上場企業の子会社管理部門の苦労は絶えないと思いますが(お前がいうなと蹴り飛ばされそうですが)「同化政策(語句が適切かはわかりませんが)」のありようについてもっと情報があってもよい気がします。
もちろん子会社(の経営陣)がCGCについて理解することも必要なのですがね。

 第2特集の「品質不正への実効的対応」についてはエントリーを改めて。



  

320 & 319

 決算月の関係で定時株主総会を終わらせました。といっても、一人株主・完全子会社であります。
 親会社の立場にとっては完全子会社の株主総会にいちいち全部関わっていられないし、完全子会社の立場からいえば日々ガラス張な環境に置かれているし、日程調整困難を理由に委任状を寄越されるだけ。ということで、会社法第320条と同第319条1項の出番となるわけです。お互い手間を省こうということで、心の底から便利でありがたい条項だと思っています。

 が、しかしなあという思いもどこかにあります。

 以前の企業グループに属していたときは完全子会社とはいえど委任状を総務か経理部門の若手社員に持たせて株主席に座らせ、ときの社長(議長)が事業報告書を読み上げ、決議事項の議案を読み上げ承認を前述の平社員に諮り、彼も「意義なし」という…定時株主総会を開催していました。茶番というなかれ、親会社から派遣された取締役(親会社の役付取締役)や監査役はちゃんと出席していましたから、相応の意義はあったと思います。事務方(つまり自分)も事業報告書の要約(読み上げ原稿)を作成するほか当日の段取りなど社長に説明していましたし、親会社からの派遣役員への挨拶などなど、まあそこそこの緊張感はあったわけです。「体裁だけ整えた儀式」といわれてしまえばそれまでですが。

 取締役会や株主総会の事務方を務めて10年余、取締役でもないのに「その場」にいる年数は取締役の誰よりも長くなってしまいました。現在のボードメンバーはかつての「儀式」としての株主総会ですら知りません。株主総会議長が事業報告を行うということも夢にも思っていないかもしれません。

 それでいいのかな?

 グループ会社の成り立ちや子会社・子会社取締役の位置付けにもよるのかもしれません。上場親会社の取締役になるにはいったん子会社社長なり取締役を経験してからというルールがある場合に、子会社の株主総会がいつも決議省略だったら株主総会の機会に株主に事業報告や将来計画を説明するということも、株主からきつい質問が飛ぶことも知らないままということになりはしないか。そんなことを思います。
 総会の事務方を務める総務や法務担当者も同様ですよね。実際、自分もコーポレートガバナンス・コード周りの諸々に対する感度は鈍りっぱなしです。

 使われない能力は廃れていく一方だし使わない(あるいは必要とされない)能力は身につかない。

 総会が終わったというのに、少し苦い気持ちを抱いています。
 


読んでみる「金融から学ぶ会社法入門」

 企業に勤め、法務担当者として完璧に内容を抑えているかというと心もとない「会社法」。
 上場・非上場、独立・子会社、大会社・大会社以外、成熟・新興など所属する組織の姿によって法務担当者が触れる「会社法」の範囲もだいぶ違ってきます。
 新興企業であれば成長過程ならではの増資や吸収合併、ストックオプションなどの導入。上場を視野に入れれば機関の変更や資本政策、成熟期を迎えれば事業譲渡やグループ会社の売却などなど。同じ企業に所属していたとしても、法務担当者は突然前任者とまったく違う舞台に立たされる可能性があります。
 資本を触ったり組織再編やそれに伴う金融機関との事務手続きといった業務は会社法の範囲のみで片付くことはなく、会計・税務など周辺の法規・制度についての理解(完璧でなくとも財務部門とフェーズ合わせができるレベル)も必要ですし、最後に登記が絡むことがほとんどですから商業登記や不動産登記についても(司法書士に委任するにしても)一定の知識も必要。上場を視野に入れれば当然金商法。
ともかく色々な目に遭った身としては、金融関連と会社法を同時に学べたらよかったなというのが実感ですね。今ある知識も学ぶというよりは怪我の功名のようなものなので。

 大垣尚司教授の『金融』シリーズの最新刊「金融から学ぶ会社法入門」。
 著者による巻頭の「はじめに」では対象は会社法を学ぶ法学部生や法科大学院生を対象とありますが、新刊の帯には「金融パーソン・金融ローヤーのための会社法教科書」とあります。どういうことなのでしょうか。
 それはともかく、本書の構成は条文順ではなく起業から上場、事業承継などまでと事業(事業者)のライフサイクルに沿ってストーリー仕立ての設問と関連判例、それに加えて数式や図表(決算や資金調達、資本に関する事項は図表があった方が理解しやすいですからね)を挿入したものになっています。
 会社法そのものは「金融から学ぶ民事法」がダットサン民法を参考書にしたのと同様に江頭・神田両巨頭の会社法を参考書にしなさいという割り切りです。
 本書1冊で会社法がわかった!ということに当然なるわけがないのですが、著者の思いとは別に、色々な実務に触れはじめた若手企業法務部員が読むとストンと腹落ちするような気がします。




 
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