企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

会社法まわり


完全子会社のコーポレートガバナンス ビジネス法務2018年8月号

 えーと、拾い読みです。
 旧エントリの中でいまでもぼちぼちとアクセスのあるのが「子会社こそ理解が必要 コーポレートガバナンス・コード」「これからの完全子会社の取締役会」ですが 、今回もその流れかな。

 ビジネス法務2018年8月号。メイン特集は「これからのガバナンス改革」ですが、今回触れるのは特別企画「非上場企業 コーポレートガバナンスの勘所」。学習院法学部の小塚教授とTMIの淵邊弁護士、藤井弁護士の2本の寄稿。どちらもCGC=上場企業のもの、と片付けず非上場企業(ファミリー企業やベンチャー企業)にもCGCの要素を導入してみればという提言。ファミリー企業といえど事業承継のタイミングで外部資本を受け容れる可能性はあるだろうし、ベンチャー企業であればIPOや大手企業による買収の可能性があるので、将来に渡ってCGCと無関係のままというのはたしかに考えにくいですね。
 で、今回のエントリ。完全子会社についてですが、上場企業の完全子会社のガバナンスについて論じられることはまずありません。上場企業である親会社のガバナンスに含まれてしまうからなのですが、そんなに簡単なものなのかというのが、ガバナンスされる完全子会社の「中の人」としての感想。
 上場企業の完全子会社といっても経緯は様々。まず大きく分けると事業部門の分社などでぶら下げた直系子会社と買収子会社。買収子会社といっても、元々は独立していた事業会社(それこそファミリー企業やベンチャー)と別の企業の子会社だった企業などに分けることができるでしょう。いうまでもなく会社の体制やら経営者の感覚から全然違いますよね。

 買収子会社に対して親会社が「これからは我々のガバナンスに従ってください。我々は上場企業です、皆さんは上場企業の子会社なんです、わかりますね!」とコーポレートガバナンスと書かれた錦の御旗をふったところで、子会社の受け取り方は当然一様ではないでしょう。特にCGC導入前の大企業子会社の場合、社長や経営陣といえども株主や金融機関の視点など考えていませんからね。
ただ子会社となった経緯や子会社の元々の文化風土のようなものをまったく考慮に入れないまま、「ガバナンス」を押し付けていくのはかえって子会社発のリスク可能性を増大させてしまうのでは?と思いますね。M&A時代の上場企業の子会社管理部門の苦労は絶えないと思いますが(お前がいうなと蹴り飛ばされそうですが)「同化政策(語句が適切かはわかりませんが)」のありようについてもっと情報があってもよい気がします。
もちろん子会社(の経営陣)がCGCについて理解することも必要なのですがね。

 第2特集の「品質不正への実効的対応」についてはエントリーを改めて。



  

320 & 319

 決算月の関係で定時株主総会を終わらせました。といっても、一人株主・完全子会社であります。
 親会社の立場にとっては完全子会社の株主総会にいちいち全部関わっていられないし、完全子会社の立場からいえば日々ガラス張な環境に置かれているし、日程調整困難を理由に委任状を寄越されるだけ。ということで、会社法第320条と同第319条1項の出番となるわけです。お互い手間を省こうということで、心の底から便利でありがたい条項だと思っています。

 が、しかしなあという思いもどこかにあります。

 以前の企業グループに属していたときは完全子会社とはいえど委任状を総務か経理部門の若手社員に持たせて株主席に座らせ、ときの社長(議長)が事業報告書を読み上げ、決議事項の議案を読み上げ承認を前述の平社員に諮り、彼も「意義なし」という…定時株主総会を開催していました。茶番というなかれ、親会社から派遣された取締役(親会社の役付取締役)や監査役はちゃんと出席していましたから、相応の意義はあったと思います。事務方(つまり自分)も事業報告書の要約(読み上げ原稿)を作成するほか当日の段取りなど社長に説明していましたし、親会社からの派遣役員への挨拶などなど、まあそこそこの緊張感はあったわけです。「体裁だけ整えた儀式」といわれてしまえばそれまでですが。

 取締役会や株主総会の事務方を務めて10年余、取締役でもないのに「その場」にいる年数は取締役の誰よりも長くなってしまいました。現在のボードメンバーはかつての「儀式」としての株主総会ですら知りません。株主総会議長が事業報告を行うということも夢にも思っていないかもしれません。

 それでいいのかな?

 グループ会社の成り立ちや子会社・子会社取締役の位置付けにもよるのかもしれません。上場親会社の取締役になるにはいったん子会社社長なり取締役を経験してからというルールがある場合に、子会社の株主総会がいつも決議省略だったら株主総会の機会に株主に事業報告や将来計画を説明するということも、株主からきつい質問が飛ぶことも知らないままということになりはしないか。そんなことを思います。
 総会の事務方を務める総務や法務担当者も同様ですよね。実際、自分もコーポレートガバナンス・コード周りの諸々に対する感度は鈍りっぱなしです。

 使われない能力は廃れていく一方だし使わない(あるいは必要とされない)能力は身につかない。

 総会が終わったというのに、少し苦い気持ちを抱いています。
 


読んでみる「金融から学ぶ会社法入門」

 企業に勤め、法務担当者として完璧に内容を抑えているかというと心もとない「会社法」。
 上場・非上場、独立・子会社、大会社・大会社以外、成熟・新興など所属する組織の姿によって法務担当者が触れる「会社法」の範囲もだいぶ違ってきます。
 新興企業であれば成長過程ならではの増資や吸収合併、ストックオプションなどの導入。上場を視野に入れれば機関の変更や資本政策、成熟期を迎えれば事業譲渡やグループ会社の売却などなど。同じ企業に所属していたとしても、法務担当者は突然前任者とまったく違う舞台に立たされる可能性があります。
 資本を触ったり組織再編やそれに伴う金融機関との事務手続きといった業務は会社法の範囲のみで片付くことはなく、会計・税務など周辺の法規・制度についての理解(完璧でなくとも財務部門とフェーズ合わせができるレベル)も必要ですし、最後に登記が絡むことがほとんどですから商業登記や不動産登記についても(司法書士に委任するにしても)一定の知識も必要。上場を視野に入れれば当然金商法。
ともかく色々な目に遭った身としては、金融関連と会社法を同時に学べたらよかったなというのが実感ですね。今ある知識も学ぶというよりは怪我の功名のようなものなので。

 大垣尚司教授の『金融』シリーズの最新刊「金融から学ぶ会社法入門」。
 著者による巻頭の「はじめに」では対象は会社法を学ぶ法学部生や法科大学院生を対象とありますが、新刊の帯には「金融パーソン・金融ローヤーのための会社法教科書」とあります。どういうことなのでしょうか。
 それはともかく、本書の構成は条文順では起業から上場、事業承継などまでと事業(事業者)のライフサイクルに沿ってストーリー仕立ての設問と関連判例、それに加えて数式や図表(決算や資金調達、資本に関する事項は図表があった方が理解しやすいですからね)を挿入したものになっています。
 会社法そのものは「金融から学ぶ民事法」がダットサン民法を参考書にしたのと同様に江頭・神田両巨頭の会社法を参考書にしなさいという割り切りです。
 本書1冊で会社法がわかった!ということに当然なるわけがないのですが、著者の思いとは別に、色々な実務に触れはじめた若手企業法務部員が読むとストンと腹落ちするような気がします。




 

これからの完全子会社の取締役会 Business Law Journal 2017年6月号(2)

 承前。ゆっくり読みました、BLJ。

 再び特集記事「取締役会運営 これからのスタンダード」

 被ガバナンス側から書いてみます。
 グループガバナンス、子会社の経営状況の監督モニタリングというと、子会社取締役会に取締役、監査役を派遣し、彼・彼女らが取締役会その他重要な会議に出席して云々というのが一つの手段ではあります。しかし決裁基準をグループ会社共通のものとし、設備投資、借入、不良債権処理など金額の規模によって親会社の管掌取締役の決裁、親会社関係部門の稟議、そして親会社取締役会の承認を要する、というような手段もあります。こちらの方が実効的かもしれません。
 この場合、たとえ取締役会で決議したとしても親会社の取締役会で否決される可能性があります。そうならないように、ほぼすべての案件で事前に管掌取締役の内諾を取り付けるなり稟議を回しておくということになります。子会社取締役会は親会社の承認を得た案件を「形式上」承認可決する手続きのみ、ということになりますね。決議機関としての存在感は非常に薄く軽くなるわけです。事務局の業務はまず決議事項として付議された議案が、親会社の決裁を得ているかどうかの確認を行うことになります。「初耳だぞ、そんな話は!」と怒られるのも事務局の仕事になってしまいます。
 決議事項が形式的なものなら、取締役会は業務執行状況の報告や「経営に関する意見交換」のための機関の位置付けになるのでしょうか。
 「子会社は一事業部門」というような位置付けの場合には親会社側役員から子会社社長や常勤取締役に対して指示命令が下される場となります。それも監督のうちといえばそうなのかもしれませんが、例えば親会社からの指示命令が子会社の利益を損なう可能性が高い場合に一体誰が待ったをかけるのでしょうか。事務局はその場では庭石のように黙っているしかありません。
 子会社が業績不振に陥っている場合において報告や意見交換の際に非常勤取締役から損失見込の回答を求める発言や減損の可能性に触れるような発言があったとします。このような発言を議事録に残すか残さないか議事録作成者の判断に委ねてよいのかという問題。議事録は決定事項のみ記載し他は非常勤役員の発言のうち内容があったもののみ記録、というのが現実的な対応とは思いますが?
 このように考えてみると子会社の取締役会議事録は薄っぺらいものになり、少なくとも取締役会議事録からはグループガバナンスが有効なのか読み取れないということになりませんかね。どうなのでしょう?




拾い読み中 Business Law Journal 2017年6月号(1)

 内容がヘビー充実しているので、ぼつぼつと読んでいる今回のBLJ。 

 定時株主総会を目前にしたこの時期だからなのでしょうか特集「取締役会運営これからのスタンダード」。 
 先日、親会社の法務室長のデスクに赴いたところ、「コーポレートガバナンス・コードの実践」が置いてあったので、また何か下りてくるのかなと思いました。最近諸々子会社管理(把握か)の手続きが繰り出されているのですが、親会社法務担当者にコードとの関連を聞いてみると「うーん」と唸っていました。

 ガバナンスを受ける側にいると完全子会社は独立した企業であり続けられるのかという問いに当たります。勤務先の実例をここで披露するわけにはいきませんが「ここまでやるのか?」あるいは「こうまでしないと管理できないのか?」という要求(命令か)を受けます。親会社が選び決定した管理手法であれば従うほかないのですが、子会社の業態と必ずしもマッチするとは限りません。一方子会社各社の事情に合わせたガバナンスというのも非効率であることも理解できるので、しんどい気持ちになりますね。一番しんどい思いをしているのは子会社社長とは思いますが。

 もうすこし読み進めたところでエントリーを整理します。(すみません)


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