企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

書籍など


法務マネージャーはつらくなる?

 ビジネス法務2018年11月号特集「世界で負けない!法務の国際水準を考える」と同じくBLJ11月号Topics「従来型法務マネージャーの危機」の2つの記事を読んでぼんやり考えたことを。

 前者はMETIの例の「国際的競争力強化に向けた日本企業の法務機能の(略)」報告書をお題に、報告書に関わった当事者も含む執筆者から成る特集記事で、法務部門の「あるべき姿」「ありたい姿」を揃えたもの。しかしそのような姿を明確にしていけば当然現実との「ギャップ」も明らかになります。自分は所属している組織と報告書の内容とがかけ離れているのであくまで「企業法務に関するいち意見」として読みました。これが法務担当者の「理想を追い求める」一面とすれば、後者は現実に法務部門の実務を預かるマネージャーの肉声。あるがままの姿だと思いました。
 
 従来型マネージャーの危機、というのは古くて新しい課題で法務マネージャーに限った話ではありません。自分が当時所属した企業グループで、「従来型マネジメントからの脱却」という名目でマネジメント研修カリキュラムの作成と講師に携わったのはもう15、6年も前のことになります。組織のフラット化、プロジェクトマネジメントの増加を背景に上意下達式のマネジメントからの脱却というのがテーマで、異なるバックグラウンド、キャリアを持つメンバーをいかにマネジメントして組織の成果を最大化するにはどうするかというような内容でした。
 今30代後半以降の法務マネージャーが置かれている状況を一般化するのは難しいと思いますが共通項となるのは人材マネジメントではないでしょうか。かつての「学部卒採用、長年鍛えて一人前の企業法務担当者に育て上げる」といったマネジメントで済んだのが、今後は有資格者または法科大学院出身者、(法)学部卒といった多様な人材それぞれに合わせたマネジメントが必要となるでしょう。30代半ばから40代前半までに法律専門業務の向上とは別の能力を身につけるというのは容易なことではないと思います。(「フルフラットな組織」でマネージャーという存在が固定されていなくても、事案ごとのリーダーかあるいは事務局、世話役という役割だとしても同様でしょう)
 前述の研修講師をしていたときに、部下・メンバーの育成について良し悪しはともかく熱を持っていたのは事業系、販売系のマネージャー(候補含む)で、管理部門や研究部門など専門職の方の熱の低さが気になりました。この雑文をお読みの法務マネージャー候補者の方はいかがでしょうか。

  部外者から法務に異動した身としては、最近の話題には色々思うことはあるのですが今日はとりあえずここまで。
 

 


 

経営幹部にも読ませよう 「中小企業買収の法務」

 資本や企業の形が数回変わったとはいえ、業歴そのものが半世紀を超えるとパートナーシップというにはオーバーだが共存共栄を図ってきた業務委託先企業の数もそれなりになります。そのなかにはパートナー関係を築く過程で持分法適用会社になった企業、全く資本関係を持たずにきた企業もあります。半世紀という時の流れとは酷なもので、着実に業容を拡大し、あろうことかこちらに対して株を手放せといってくるような会社がある一方、何とか息をしているだけでカネもヒト(後継者)も調達する力が残っていないという会社も現れてきます。

 投資、融資すべきか、それに伴い人(役員)も派遣するか?いや出せるのか?出していいよな?法務担当者君、なんか知恵出せ!
 
 こんな「さあ、どうしよう」という状況になったときの道標となるべく、年末法務カレンダー企画や阿佐ヶ谷LT企画でもおなじみの柴田堅太郎弁護士が「中小企業の買収法務」を出版されました。文字通り「道標」となる書籍だと思います。かつての買収対象会社の法務担当者がいうのだから間違いありません。

 現在の勤務先でいうと前半の「事業承継M&A」が関わりがありそうなのですが、以前持分法適用外会社の株主総会議案をみて立ちくらみがしたことを思い出したくらい「中小企業あるある」事例が載っています。
 オーナー系というか伝統的な中小企業は本当に呆れるぐらい税理士のいうことが全てで、弁護士どころか司法書士ともあまり付き合いがない会社が多く、あったとしても税理士を介してのもの。その税理士がちゃんと導いてくれていればよいのですがそうでないこともあります。不完全な状態が累々と重なった末に「事業承継先を探す羽目に」というのはそんなに珍しい話ではないと思います。(詳しくは書けないのですが実感としてあります)

 冒頭書きましたように事業環境の変化から外出ししていた子会社や、持分法適用、業務委託先、フランチャイズ化していた中小企業等を買収、買収までいかなくても出資して傘下に収めるといったことを検討する機会があるかもしれません。法務担当者は当然ですが、プレゼンだけなら格好いい経営企画部門にも、中小企業買収の実態を理解してもらうためにも読ませたい1冊です。

 ベンチャー投資なぞ夢のまた夢なので前半に絞ったエントリーとしました。悪しからず。


和解への道のり ビジネス法務2018年10月号から

 ビジ法走り読み、です。
 事案が落着すると、すったもんだしている最中にこそ読みたかった特集記事がアップされるジンクス。読みながら、ああそうだったなと。

 ということで特集記事「和解の流儀」。
 実はそれほど訴訟を経験しているわけではありません。業界の商習慣といいましょうか、数次にわたる流通取引構造が理由なのでしょうか。トラブルが生じるのは主に3次、4次の販売先との間で、直接の契約関係にあるわけではありませんし、1次・2次側の流通にとっては我々も3次以降の流通も相応の規模の取引先になりますので、「当事者同士で痛み分け」に誘導する傾向はあるかもしれません。
 
 頑なに「安易な妥協はするな、裁判で白黒つけろ」という経営陣が「和解」の際の障壁になることもありますよね。たとえ裁判官からの和解提案であっても、それだけで経営陣が理解してくれるとは限りません。法務担当者自身が頭を悩ませ決裁文書を書くことになります。期日報告の抜粋だけでは説得力がいまひとつなので、和解>訴訟を継続することによるデメリット、判決によるデメリットというような「和解がモアベター」ということをA4サイズ1枚でどう説明するか。「和解」に向けた社内プロセスという点も「法務あるある」なような気がします。訴訟自体の流れ、代理人意見、裁判官の心象、時間・金銭的負担増、判決文が残ることのレピュテーションリスクなどなど。
 法務担当者は社内外の全方位交渉能力が必要になりますよね。

 本文記事では「会社が和解を利用する際の留意点」(髙橋利昌弁護士)、「労働紛争における和解選択・交渉の着眼点」(佐々木亮弁護士・横山直樹弁護士の対談)が個人的にツボでした。








 


 
 

拾い読み ビジネス法務2018年9月号

 これまでの常識が通用しない夏ですね、としかいいようがない毎日。

 拾い読み、ビジ法です。
 特集1は「新規ビジネスを成功に導く法的リスク突破力」
 「ブレーキを踏む奴ら」とだけ思われないように企業法務担当者はどう生きて行けばよいのかということでしょうか。新規事業の芽がなかなか育たなくなったところにいると逆に眩しい話題なのですが。

 自社がどのような市場でどのポジションで生きているか、そして経営状況によっても「新規ビジネス」への取り組みレベルは異なると思います。ヒト・モノ・カネに余裕があり多少のリスクを負担できる企業とそうでない企業とでは、スピードだけでなく「リスク評価」の品質も当然違いますし、社歴の長い企業と新興企業とでも当然違います。今リスクを取らなくてもよい企業とリスクを取っていかないといけない企業との違いもあります。
法務担当者というのは所属する企業によって求められるものが左右されますよね。

 長年「規制市場」にいると、厳しい業法は守らなければならない反面、それさえ守っていれば安泰というところもあるので、そうそうまっさらな新規ビジネスというものが生まれにくいところがあります。
「新規事業」といってもよくよくみれば「新たな規制の枠内」でビジネスを行う内容にすぎないケースがあります。もっともそれでも投資が必要ということもあり決して楽チンということではありませんが、まあ、法務の出番はあまりありません。ただ恐ろしいのは、自社に諸々の事情で余裕がなく新たな規制への対応に出遅れることですね。こういうケースが現場で埋もれていないか、ジャブを打つのが法務の仕事になることもあるかもしれません。法的リスクの突破、とは違いますけれどもね。
 これには事業に関わる法省令や制度、ガイドラインの制改廃には目を配っておかないとなりませんが、そうすることで法務担当者も事業に理解がある、理解しようとしているという姿勢が事業部門に伝わり、本当の「新規事業」のときに法務をハブにして、という事態は減ってくるかもしれません。「新規ビジネスの相談は必ず法務を通してくださいね」という社内フローを作ることは必要ですが、ちゃんとそれが運用されるには、法務からの日々のアプローチも大事ということ。自分は営業部門にいたせいもあり「顔を出さない奴に注文なんか出さないよ」というのが身に沁みているのですが、本当これはありますよ。
 あとは日々精進の部分なのですが、法務が鬱陶しがられる「説明が長い」「結局何なんだ、GOなのかNO GOなのかわからん」というところをなくしていくことですね。A4ペラ1枚、長くても10分までの間で一通りのことは説明できるようにしておくことでしょうか。「うわー、走り出しちゃっている」という案件ではなかなか聴く耳を持ってもらえないものです。「10分以内で済みますから」と切り出せるようにしておきたいですね。(そのあと向こうの都合で時間が延長される分にはOKなのですから)


 というようなことをメルカリのインハウスの記事を読みながら(自分のことは棚にあげて)思ったのでした。




 

語って語り捨て、聞いて聞き捨て 

 わざわざいうまでもない灼熱の日々。
 難しいことを考えるのも億劫ですわ。というわけで今回は埋め草エントリ。

 宮部みゆき、といえば本格ミステリーからSF、ファンタジー、時代物と手がける作品の幅の広さでは当代一の作家の一人だと思います。それぞれにシリーズ、連作ものがいくつかあるのですが、今回は時代物の「三島屋変調百物語」 について。全国紙で連載されたこともあるので読まれた方もいるかと思います。
 自分の迂闊な言動が許嫁と幼馴染の死を招いてしまったことで悔い心を閉ざしたヒロイン「おちか」が、預けられた江戸の商家三島屋で様々な語り手による「怪談」の聞き手をつとめることで閉ざした心を開いていくというシリーズ。第1巻の「あやかし」から最新巻の「あやかし草紙」まで物語の中で経過した時間は3年ほどですが、発刊ペースでは10年かかっています。「怪談」の数は26話。まだまだ百物語までは遠い道のりと思っていたところ「あやかし草紙」で「シリーズ第1期」完結という予想外の展開となりました。伏線は第4巻所収のエピソードに張られていたのですが回収はもう少し先だろうと思っていたのでやや驚きでありました。
 宮部みゆきの作品の共通項は人の情念というものを丁寧に描くという点と「事件」を通じての主人公の成長という点だと思っているのですが、この「三島屋」シリーズにもそれがよく表れていると思います。
 語って語り捨て、聞いて聞き捨てとは、主人公が語り手の話を聴く際のルール。だからこそ語り手は胸の内に閉じ込めていた話を吐き出していきます。つかえた思いを吐き出した後の語り手の姿は様々ですが思い残すことはないと命を絶つ、あるいは命が尽きるというエピソードもあります。この辺りが宮部流の「甘くない」ところ。語り手の死という事実をも主人公に引き受けさせ成長させていく、というところでしょうか。

 担当業務のなかに相対して相手の胸の内を吐き出させなければならないというものがありますが、業務である以上語り捨て聞き捨てというわけにはいきません。このような業務を重ねていくと自分のなかに澱のように溜まっていくものがあります。語って語り捨て、聞いて聞き捨ての場が欲しくなる時期が自分にも来るのでしょうかね。
 




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