書籍など

2020年02月07日 00:35

 受注ノルマを持っていた営業担当者時代、課題とは、目標(あるべき姿、ありたい姿)と現状とのギャップだというように教わってきた。半期あるいは年間のノルマと手持ちの見込み案件の数字は常に乖離があり、それを埋めるために、半年、1年かけて何をしなければならないか。そのためのスキルは身につけているのか、よく上司に詰められたものだ。

 BLJ春先の恒例の企画「法務の重要課題」。数々の企業法務部門の管理職のコメントが集まっているので参考にしている。

 課題と一口にいっても、所属する企業の事業計画達成のために法務部門の責任においてクリアすべき課題と、法務部門(または法務部門管理職なり担当者)自体が抱える課題とがある。ビジネス環境が激変しやすい昨今、法務責任者の力量が問われるケースが増えることだろう。
 冒頭のかつて自分が受けた指導のように課題=目標とのギャップとすると、最小人数法務体制で注意しなければならないのは主観だけでなく周囲からきちんと評価を得たうえで現状認識できているかというところだろう。他の部門に企業法務に通じている人間がいればともかく、そうでなければ自己満足か自己否定の塊のような現場認識に陥るおそれがある。当然、課題解消のための打ち手もあやまることに繋がりかねない。気をつけよう。
 
 「保険」や「リコール」、「法務ドック」と気になる記事はあるのだが、次のエントリに回す。(体力の限界)

  

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2020年01月18日 17:45

 今回も購入書籍についてのエントリー。

 島田事務所の弁護士が手がけた「メーカー取引の法律実務Q&A」(商事法務刊)。結論からいうと帯にあるように「メーカー法務あるある」の集積、そして虎の巻ともいえる。
 数年前、島田事務所の講演&懇親会にクライアントでもないのに出席させていただいたときに、会場を埋めるクライアント企業の錚々たる顔ぶれに臆して早々に退散した。思えばあのクラスのメーカーとのさまざまな事案がこの書籍の各項の基となっているだろうから、「あるある」になって当然とは思うがそれにしてもよくぞ発刊していただいたと思う。契約(書)にかかわる書籍はあまたあるが、全方位向けの内容では食い足りないし、知財、独禁法、下請法に特化した書籍もあるが、実務では使い勝手がいまひとつ。毎日の業務で営業や購買や工場、サービスといった各部門から遠慮も配慮もなく投げられてくる問い合わせを捌くための参考書はないかと思っているメーカー法務担当者もいるのではないか。そんなときに本書籍である。

 構成は全7章、Q&Aの総数は169である。目次を確認して自分の業務に関連する箇所に付箋をはっていこうとしたが、自社で手掛けていない海外事業の章以外はほぼ付箋をはることになりそうなので、感嘆した。と、同時にメーカー法務の困り事、悩み事は同じなのだなと妙に安心したりもした。
 
 自分としての本書のポイントは「第3章 契約履行後の段階」のQ&Aの数(最多の55項目)と内容の充実ぶりである。例をあげれば「法的責任がない場合に営業的対応として無償対応を行うことの可否」「保証期間後経過後に安全上の問題が発覚した場合の対応」「標準耐用年数と保証期間の関係」「エンドユーザー対応を先行させた場合の対応費用の負担の要否」など、「ああ今週もこんなメールが来た!」というメーカー法務ならではの事案がこれでもかと続く。特にメーカーの新人法務担当者にとって心強い存在になるだろう。尻に火がついてあわてた各部門の担当者からの問い合わせに取り急ぎコメントを返すことで信頼を得るにはもってこいである。(少々あざといか、でも会社の中とはこんなもの)

 現行の内容でも十分なのだが、この章があれば完璧・無敵と思ったのは「災害発生時の対応」だろうか。自社が被災したとき、調達先が被災したときなど契約書の「不可抗力免責」条項が適用される場面ではあるが、それでも対処に右往左往することがあるときである。災害の多い日本では天災地変の場合の免責のハードルが高くなると指摘する弁護士もいるので、本書だったらどのようなanswerが掲載されるのか興味がわく。
 
 ともあれ、メーカー勤務の若手法務担当者はとにかくデスクに置くべき1冊であるし、メーカー法務部門長が購入経費を認めてもよいと思う。(大きなお世話だが)

 ちなみに自分は自費購入であった。まあ、しょうがないね。


メーカー取引の法律実務Q&A


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2020年01月12日 23:36

 早々に、完成在庫品の引き取りだの貸与金型の確認、代理人との連絡といった業務に時間を割いた新年。今年もこんな調子でいろいろあるのか。というわけで昨年末に刊行された「企業法務のための初動対応の実務について」(日本能率協会マネジメントセンター刊)についてメモを残しておく。

 何事も現地現物確認だと営業担当者時代から教えられてきたものだが、法務担当者に「初動対応」が求められる場面というのは、規模の大小、重要性の高低はあれど「有事」のときで「現地現物確認」が緊急性を帯びる。しかし法務担当者といえどもすぐに何でも対応できるとは限らない。百戦錬磨の(であろう)上司が不在かもしれないし、当事者部門はパニック状態で喚いているだけかもしれない。そんなときにどうするか、何をすべきなのか。現地現物とはいうものの「現地にいるだけ」では、法務担当者の存在価値を疑われかねない。現地現物確認と簡単にいうが、それには相応の知識や経験が求められるのであって、この点は企業法務初心者の最初の壁かもしれない。

 本書は帯のコピーや冒頭の著者はしがきにあるように、まだ経験の浅い企業法務担当者や弁護士を対象としたもの。コンプライアンス、契約管理、債権管理、情報管理、労務管理、会社整理、M&Aの全10章。各章ごとに「相談事例」→「7つのポイント」→「留意点」という順で、「有事」に対する解説で構成されている。章立てからいえばもっとページ数が多くなってもおかしくないが、要点がコンパクトにまとまっているせいか、400ページ程度に納まっている。本書1冊で事案のすべてを解決できるわけではないが、「経験の浅い企業法務」担当者が有事の「第一報」を受け付けて「さあ、どうする」という場面の手引きとしては十分な内容ではないかと思う。コンプライアンスや情報管理、労務管理といった章については、中堅~ベテラン担当者も読んで自分の知識や「過去の経験に基づく対応」を見直してもよいかもしれない。

 有事対応のノウハウは場数を踏みながら積んでいく部分が大きいのはたしかだが、その「積み方」というものがある。その基礎なり下地をつくるには本書のような書籍を読み、有事対応のさまざまな段階で読み返していくことも大事ではないかと思う。

企業法務のための初動対応の実務
長瀨 佑志
日本能率協会マネジメントセンター
2019-12-20


 
 
 


 





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2019年09月30日 08:00

 珍しく実務と関連の深い書籍の話題を。

 「住宅会社のための建築工事請負約款モデル条項の解説」(匠総合法律事務所編著 日本加除出版)
 建築・住宅業界から一定の評価を得、また影響力もあると思う法律事務所による民法改正に伴う「建築工事請負契約約款」に関する書籍。過日東京木場の木材会館で開催された本著の出版記念セミナーは満席状態だった。
 下請・納品業者の立場でこの手の書籍を購入したりセミナーに参加する理由はいうまでもなく取引の相手方が今後置かれる環境と、下請に対して講じてくるであろう「措置」を測るためである。元請である住宅会社との契約は元請が用意する契約書式を丸呑みせざるを得ない、下請の工事や納品にかかる「瑕疵」が原因のトラブルが生じた場合には元請が発注者との間の契約条項を横滑りさせてくる、元請との間に数段階の流通業者を介した取引であろうとトラブル発生の際に流通業者が「契約当事者」の役割を果たさない等、業界特有の諸々は21世紀になろうが元号が変わろうと依然横たわっている。元請(住宅会社)と関わりの深い法律事務所はどのような「モデル条項」を提案しているのか。

 下請業者の目でチェックしたのは、まず次の2点。
  1. 「瑕疵」から「契約内容不適合」
  2. 「保証期間の定め」
 前者はいうまでもないだろうと思われそうだが、建築工事においては契約内容とは契約書だけではなく、仕様書、特記仕様書や設計図面、施工図、施工詳細図、定例会議議事録などの全てが契約内容になる。また建材、設備機器に関してはカタログやサンプル確認、ショールーム等での仕様決定の場面も「契約内容」としてエビデンスを確実に交わして残すことが後々のトラブル回避につながるだろう。
 後者は、現状では「根拠があるようなないような保証期間」について、消費者契約法第10条とからめての解説。契約約款の保証期間の規定については、品確法の対象範囲以外は1年ないし2年、故意過失がある場合に5年なり10年という期間の規定が多いが、これが最近適格消費者団体の「狙い目」になっているとの警告。ひとたび訴訟提起されれば期日の内容が団体のウェブサイトにアップされることから、住宅会社はレピュテーション悪化を回避するため早々に約款改定で手を打つという状況にあるらしい。改正民法で短期時効がなくなるので保証期間の定めは要注意だろう。製品保証書における保証期間を1年ないし2年としている建材や設備機器メーカーも同様である。設計耐用基準など理論付をしっかりと準備する必要があるだろう。

 さすが建築紛争の実態を踏まえていると納得した条項は
  1. 発注者の協力義務
  2. 発注者のメンテナンス不全
 前者は発注者が仕様を期限まで決めないことで工事遅延が多々生じる実態を踏まえてのこと。後者は、保証書や取扱説明書などで発注者に求められる適切なメンテナンスを怠ったことが原因で「契約不適合」状態が生じた場合は、発注者に修補や損害賠償請求権は認められないというもの。実際、何の手入れもせずにクレームだけは起こすという居住者が多いのであらかじめクギをさす条項。

 本書籍で提案された「モデル条項」が実際に使われるかわかるのはもう少し先のことになるが、前述したように建築・住宅会社だけでなく下請関連事業者も入手・熟読しておくべき1冊と思う。



 
  

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2019年07月27日 18:11

 台風が来るといわれていたけれども、はやくも熱帯低気圧になったとか。晴れた途端に近所の雑木林ではアブラゼミとミンミンゼミが焦ったように鳴いています。

 走り読み、BLJ9月号。何か書き留めておかないと関連書籍や資料を読むことが後回しになってしまいそうで、この時期恒例の特集記事「2019年通常国会改正法の影響度」から自分の業務に関連深いところから。
 「意匠法改正」は建築物の外観および内装が保護対象なった点。ようやくなったかという感がありますね。他所がやってうまくいったこと、ウケたことを自社にすぐ取り入れるのも商売のなんちゃら、というようなことが多かれ少なかれあると思いますが、真似されるほうにとってはたまったものではありませんよね。
 商業施設のデザインについては「プロダクトデザイン保護法」(冨宅恵著 日本加除出版 2015年)第4章「空間デザイン」で取り上げられていましたが「意匠法による空間デザインの保護には限界があるというほかない」とされていました。
 今回の改正で店舗の空間・内装デザインについて「企業ブランド」としてコストをかけても法で十分に保護されないという状況から転換していくでしょう。詳細は審査基準の内容が定まってからになりますが一斉に意匠登録する事業者がでてくるような気がしますし、「デザイン」後発企業にとっては権利侵害回避にコストをかけざるを得なくなります。後ろ向きな事案にコストをかけるよりは「デザイン」にはじめからちゃんと投資しようということを促すことになるのでしょうか。

 「人事の目リスク管理の目」
 今回は「労働組合」。
 企業再編や過去の経緯を引きずり労働組合については懸案事項があるものの立場上表立ってどうこうできないので個人的には好記事でした。事情についてはここでは書けないけれども、働き方をはじめ企業と従業員との関係がひと昔前とは大きく変わっていくなか労働組合の役割も変わっていくと思います。労務部門にも読ませたい記事ですね。

 労働法のパワハラ防止対策法制化についてはビジネス法務で特集記事を組んでいるので、そちらと合わせてエントリーを書こうかと思います。

 ではでは。





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