企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

リスク管理


その報告は誰のためになるのか  

 久々の出張は内部監査支援業務。内部監査業務のグループはあるにはあるのですが、何せ管理部門の人員に限りがありますので、監査業務には経理、法務など他の管理部門からも人員を派遣して回しています。といって法務も最小人数体制ですのでスケジュールが合わない時もあるのですが、可能な限り地方の営業所などには出向くようにしています。
 法務・コンプラ部門の担当範囲は(細かなことは言えませんが)、届出、登録、許認可など手続き、公印管理や労務管理が法令はじめ諸制度の通りなされているかという事務的なものから、職場環境諸々のヒアリング等、ときにはお悩み相談など生々しくなるものまで。最近は事務的な確認よりも職場環境のヒアリングに重心を置くようにしています。「こんな話で監査になるのですか」と逆に心配されることもあるのですがね。

 従業員ヒアリングでは経営者(または経営陣)の決定をはじめとする本社筋からの指示が現地の中間管理職を通じ担当者や事務補助員まで伝わっているかの確認。意外と(あっては困るのですが)どこかで「詰まっている」ことがあるので直近では労務管理に関する指示も増えているので、まずそれが伝わり理解されているか、実行されているか。
 一方で本社筋からの指示命令が常に正しく、現場にマッチするとは限りません。「ギャップ」が発生していないかという点。ギャップがある場合に正面切って本社に物申す気骨ある中間管理職ばかりではありません。 面従腹背は常にあるものとして、そのしわ寄せのようなものが担当者にいっていないか。世間話などもしながらポロリと本音をこぼすのを待つようなこともあります。「ギャップ」の存在の不知や放置は不正・不祥事の温床や前途ある若い社員の離職リスクに繋がることもありますので、掴めるものなら掴みたいというのがこちらの本音。
 自分は形式的な「減点主義」のような監査は嫌いで(おいおい)、現場がすぐに自力で是正できるものは是正してもらえばよいし、是正の隘路になるような事項があれば経営側の責任で取り除くだけの話だと考えているのですが、本当にポロリかつ辛辣な意見が出たときには、報告書にどのように表現すべきでしょうか。
 ストレートに監査報告書に書くのが筋論ではあります。一方、内部監査は経営者直轄の業務である場合に、辛辣な意見を含む報告を受け入れる経営者か否かということも大きな要因。経営者を「値踏み」するような状況に陥ったら、そのこと自体問題なのかもしれませんが(苦笑)

 しかし、監査の際に伝えたはずの意見が経営に反映されなければ、ヒアリングに応じた人間は「結局内部監査なんて形式的なものじゃないか」と次回の監査からは「面従腹背」に徹するかもしれません。

 誰のための内部監査か、そして監査員は何を背負っているのか。監査出張の帰路、堂々巡りになったのでありました。

サイレントチェンジ

 またも品質問題が発覚しましたね。日本の製造業が誇っていたはずの「品質」とは砂上の楼閣のようなものだったのでしょうか。製造業に勤務している身としてはいいようのない気持ちになります。
 
 サイレントチェンジ。製造事業者(輸入事業者含む)にとってはそれほど新しいネタでもないと思うのですが、事業者団体の分科会でNITEの講演会の情報が共有されたのと昨今の品質問題を考えると、最悪の「サイレントチェンジ✖️品質管理低下」という最悪のケースが生じかねない(すでに生じているかもしれない)と思ったのでメモしておきます。

 サイレントチェンジとはその名のとおり「発注側が知らない間に受注側によって納入品の仕様を変更を実施する」という行為です。サプライチェーンのどこかでサイレントチェンジが行われれば、すべての取引先に影響、最終製品の品質に影響し重大製品事故が発生するようなことがあれば最終製品の製造事業者(輸入事業者含む、以下同じ)の経営を直撃します。(具体事案についてはNITEのサイトを参照いただければ)しかし、海外まで調達網が拡がった現在では最終製品の製造事業者がサプライチェーンの全てを管理するのは困難、というのが残念ながら実態でしょう。
 NITEの講演では契約法との関係でサイレントチェンジを行ったサプライヤーに対して過失責任を問えるかどうかは「納入仕様」が契約書に規定され、仕様書等の合綴など視覚化されているかが肝要と指摘してました。加えて製造物責任法との関係について指摘されています。サプライヤーに契約違反があった場合にもかかわらず、世の中に最終製品を出してしまえば製造事業者は、受け入れ側の品質管理の点から「製造上の欠陥」が問われる。世に出された最終製品が結果として契約書の規定が曖昧で契約違反と問えない場合では、「不適合品でも使用できてしまう仕様が問題」として「設計上の欠陥」が問われる。サプライヤーに対して契約違反を問えても問えなくても、製品事故が発生した場合には最終製品の製造事業者は厳しい状況に置かれることになります。

 サイレントチェンジをいかに防ぐか。
 発注者側の法務担当者は契約書に水も漏らさぬ条項を設けることに躍起になるでしょう。しかし契約を守る意思のない者に対してはこれだけでは効き目はありません。契約書上の検収要件を厳しくしていても、実際の検収体制が不十分では意味がありません。受け入れ検査の厳格化でサプライヤーを牽制することが肝となるのはいうまでもありませんね。それとやはりサプライヤーと良好な関係を築くこと。違反する側にもそれなりの理由がある、自社が無理難題を吹っかけていないか、優越的地位の濫用や下請法に抵触するようなことを行っていないかといった点です。

 しかし昨今の「品質管理」問題を思うと、サイレントチェンジを見逃す可能性を否定できません。
 自社の品質基準を公的基準より高いところに設定するのはよいのですが、その基準を満たさなくても公的基準を満たしていれば問題ないというすり替えのような理屈を立てるケースがあるのですが(というと社内でも険悪な状況を招きますがね)、自社の品質基準を満たさなかった原因が「サイレントチェンジ」にあるとしたら。その可能性は考えたのか。公的基準を満たした時点で思考停止していないか。
 法務担当者(特に製造業の)が製造や品質管理の分野にももう少し踏み込んでいかないと、自社を重大リスクから守れない時代になっているように思います。   続きを読む

牙城  ビジネス法務2018年8月号(2)

 エントリを書こうとしたところで、某自動車メーカーの不正行為の報道。終わりが見えませんね。

 ビジ法2108年8月号の特集2「品質不正への実効的対応」。ほぼ弁護士による記事で、対談でプラントメーカーの法務担当者が登場していますが、このような特集で企業法務担当者が登場するのは難しいですよね。

 製造業の法務担当者といっても、工場の中の設計、購買、経理、製造、品質保証に精通できるわけではなく、一時製品事業部に所属して工場部門と顔を付き合わす機会も多かったのですが、未だに工場の本当の内部に踏み込むのは難しいと思っています。特に歴史が長い伝統的な製造業の場合、色々と組織改正などがあったとしても、工場は工場長を頂点としたピラミッド型の組織であることは変わらず工場とその周辺の地域を含めて一個の社会をつくっています。外部からのなんらかの干渉がある場合に一丸となってその社会を守る、という傾向があります。(特に農村部にある工場)だから組織ぐるみの不正隠蔽があっても何の不思議もないと思っています。

 いくつかの品質不正事件で共通しているのは、「社内基準は満たしていなかったが国の基準は上回っているので品質に問題はない」という弁明。国の基準というものは最大公約数です。大企業から中小企業まで守らなければならないもの。大企業(トップグループに属している企業)は、自ら上乗せ基準を設け技術力を誇る、、、誇ったはずだと思うのですがいつの間か言い訳材料に使っています。このような「すり替え」のような理屈をこねるもの決して珍しくはありません。ただ悪気はないのです。工場の中の理屈が世間でも通用すると呑気に信じているだけ、という例にはけっこう触れています(品質不正ではありませんが)

 品質不正につ法務担当者が関わるのは、いまのところ残念なことに判明・発覚してからの事後処理というのが現実だと思います。その点で本誌の「データ偽装発覚直後の対応」「データ偽装問題の事後処理」の2記事が実務上参考になると思います。特に後者は自分のいる業界の事例ですがいいところを突いていると思いました。(実際はもっと込み入ることはありますが)

 では予防は?というと一筋縄ではいかないというのが実感。守りを固めた城攻めと同じですね。

 

災害のとき、法務は (2年ぶり)

 2年近く前に同タイトルのエントリを書きましたが、地震が続発していることと先週勤務先でちょっとした案件があったので、改めて。

 大阪北部の地震について関東地方で報道で取り上げれる回数は減っていますが、被災された個人や事業者にとっては現在進行形の出来事。お見舞い申し上げます。

 第一報が通勤の最中でしたが、8時20分過ぎにオフィスに着いた時点で関西地区の従業員の安否がほぼ確認できていました。 何を置いてもこれが最優先。次にサプライチェーンの問題。販売先や取引先の状況確認ですが、今回の地震はサプライヤーが拠点をおく地域であったので生産活動への影響の有無の確認。これについても半日程度で概況を把握、経営幹部や株主(親会社)への速報も支障なく行えたと思います。瞬時の対応については直近10年間の災害対応経験が活かされていたとも思ったのですが、自社への影響があまりないため比較的落ち着いていられたのだと思います。まあ不幸中の幸いというところ。

 法務部門の仕事の「カテゴリ」について意見や主張が活発となっていますが、平時の業務と非常時のそれとは明らかに違います。法務担当者が災害時対応業務でその能力と手腕を発揮するのはどういう場面でそしてどんな役割なのか。そんなことはBCPやリスク管理規則に定めているよ、というのであればけっこうですが、では今回の大阪北部地震ではちゃんとそれに基づいた役割を果たせたのか。(出張らなくて済んだことも含めて)
 これはこれで検証しておかないとダメですよね。 

 みなさん、どうでした?  

談合コンプライアンスの行方

 「談合コンプライアンス」は先月号のビジネス法務の第2特集記事。今頃取り上げるのもなんだという気がしないでもないですが、会務に携わっている事業者団体が「競争法コンプライアンス」なる宣言を定めたことや大手ゼネコンが改正独占禁止法遵守プログラムを公表したこともあるので書き留めておこうと思った次第。

 談合というと建設業界隈の問題というイメージを抱いている人もいるかと思いますが、必ずしもそうとはいえません。土木工事に関わる材料メーカーの談合も何年かおきに報道されますし、フィルム、ラップなどの樹脂製品でもカルテル行為を摘発されたことがあります。それでもなお談合行為がなくならないのはなぜでしょう。

 件のビジ法の記事「なぜ談合はなくならないのか」(TMI:樋口陽介弁護士)概ね書かれていることはわかるのですが、自分の経験から引っかかったのが企業内部要因として上命下服を挙げていたところ。
談合に関わっているベテラン担当者が「業界のしきたり」をよく知らない上司を取り込んでいく、というパターンもあったような。公共事業は人の繋がりがものをいう部分があるので、公共事業一筋のような担当者がいます。受注案件があらかじめ計算できる「公共事業」は上司にとっても心強いし、担当者もそれを承知しているので(以下省略)
 独占禁止法といえば、ということで池田毅弁護士が「事例でみる正当な営業活動とカルテルのボーダーライン」はさすが痛いところというか痒いところに手が届いているという感想です。
 大手ゼネコンの独禁法遵守プログラムや宣言が何となく「べからず論」のほうに偏り(偏らざるをえないというのはわかりますが)、もし他社も追随するようなことになると自分などの古い人間は「海の家事件」のあとのCSR・コンプラブームを思い出します。
 「べからず」では結果として談合がなくなっていません。
 どうしたものですかね。 


  
プロフィール

msut

QRコード
QRコード
アクセスカウンター

    • ライブドアブログ