企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

民法改正


債権譲渡と取引の未来

 と、大層なタイトルを付けたみたもののただのメモです。

 LBOスキームで親会社から投資ファンドに売却された際に3回ほど金融機関とブリッジローン契約を締結したのですが、初回の契約時に借入額の規模から集合動産、集合債権にまで担保設定されました。当時は「背負わされた借金のカタ」という感覚でいたのですが、裏を返せば将来売掛債権で融資を得る経験していたということになります。

 自分のいる業界の取引形態の主流は数次にわたる流通を介して最終の需要家に商品を引き渡すというものです。これは古くからの商習慣によるところが大きいのですが、もうほとんど本来の意義を失いつつあり、末端の流通業者や需要家の「与信」を目的として流通を介在させるというのが実態。建設という大きな金額が動く市場でありながら、需要家である建設業者の資力や資金調達力に難があることがほとんどだからです。
 業界に詳しい弁護士との民法改正をめぐる雑談で、「債権譲渡」による資金調達が行われるようになったら、というような話が上がりました。あくまで電子契約の普及が進めば、という前提ですが、昔ほどではないにしろ「書面主義」という建設工事約款の条項が空しくなるような実態が残る業界、「紙」の文書を飛び越え一気に「電子」になるかという疑問がないわけではありません。しかし、「カネ」が絡めばひょっとしたらという気もします。(そうなるならお守りのようになっている基本契約書の「債権譲渡」に関する条文もどうするかということですよね。)

 流通段階の末端の企業や需要家が資金調達力を身につけた場合に、現在のような「数次にわたる流通」がその形態を保っていくことができるのでしょうか。民法改正とは別に流通事業者には会計基準「新収益認識」の問題もあります。

 ものの本に「実務への影響は軽微」とあったからといって、そうはいかないのが企業法務。今後バラバラやって来るであろう取引基本契約書更新交渉には出張る必要がありそうです。
 

埋め草 法改正の研修はタイトルに尽きる

 面倒なので西暦に統一せよ!という一方で、「平成最後の夏」と和暦で盛り立てられた夏が過ぎ、はや9月。
 民法改正、とカテゴリー分けするのも気が引ける内容ですがメモがわりに。

 過日、事業者団体の分科会のメンバー数人と団体の顧問弁護士と面談する機会がありました。
発端は近日開催される事業者団体の会合(主に加盟企業の代表者が出席)のプログラムに顧問弁護士による講演があり、今回は気合たっぷりに「民法改正」について語ると宣言があったことから。

 民法改正への取り組み、ほとんどの企業が法務部門が中心になって取り組んでいる最中で、現場レベルでまだ作業中であったり、経営トップまで取り組みが共有されていたりと、まだばらつきがある時期であること。また当該事業者団体は完成品メーカーと中小含むサプライヤーから成る団体なので、顧問弁護士が提案してきた「条項」に的をを絞った内容では共通のテーマにはなりにくい、というようなことを説明して、講演内容の方向性について1時間半ほどの擦り合わせを行なった次第。
 プロからの提案に対してダメ出しというようなところから始まったので、当初は顧問弁護士も面食らった感じでしたが、業界の上流から下流まで、全ての段階の事業者、事業者団体に関わっている方なのでやはり持ちネタは豊富でした。ざっくり最近の法改正トレンドから民法改正の趣旨、改正法の業務への活用手段例といった構成で話してもらうことに落ち着きました。(具体的な内容はここではご容赦)

 合間に挟まる雑談の中で、業界紙に執筆した原稿記事のタイトル次第でアクセス数と評価が激変するよといった話が出ました。「民法改正に伴うなんちゃら」「民法改正でこう変わるなんちゃら」では、ビクとも動かなかったのが、「現場担当者の嘆き」をタイトルにした途端に記事へのアクセスや問い合わせが激増したとのこと。これ、法務担当者としてメモさせていただきました。つい「法改正がなんちゃらに対する影響」とか「法改正ここが注意」と研修や勉強会のタイトルにつけてしまいがちですが、日々条文やガイドラインに触れている法務担当者ならともかく、他部門の担当者に対する勉強会ではストレートに「あんたの仕事にこんなに影響するよ」とひと目でわかるようなタイトルをつけたほうがいいですね。自分のこととして捉えて参加するのとそうでないのとでは、研修や勉強会の効果が違いますからね。それにはまあ他部門担当者の「嘆き」や「呟き」を日々拾っておく必要はありますけれどね。

 あとは、紙の契約書と判子、印紙の不要論につながるネタとして「債権譲渡」があったのですが、これはもう少し自分の理解度を上げてから取り上げます。

 
 

民法改正 いよいよ各論(業務)へ

 連休、いい天気でスタートですね。
 今日のような日になぜPCに向かっているかといえば、連休でもなんでもない、いつもと変わらぬ週末だからです。年間休日数って大事ですよね。

 久々の民法改正ネタですが役立つ情報を発信できるわけでもないので、まあ備忘録というかメモというか。

 近々事業団体の消費者関連の分科会で短時間ながら民法改正について説明する場を設けられました。「いいすよ」と返答はしたもののどうしたものかと。企業ごとに民法改正対応を進めているのでは?という時期でしょうから間の抜けた話もできません。

 製造事業者と消費者との接点で考えると、まず「定形約款」を取り上げないわけにはいかないかと諸々の書籍等を読み直しています。 
 団体の加盟企業はBtoBtoC事業の形がほとんど。現状、売買や請負で直接消費者と契約関係を結ぶことはありません。数次の流通か請負を経て製品が引き渡されたのちのアフターサービスやクレームの段階になったときに消費者と相対することになります。そこでまず焦点になるのが「保証書」。製品に同梱している「お買い求めの日からn年以内はなんとか」「以下の場合は保証範囲外とさせていただきます」などと細かな文字で書かれているあれです。
 保証書の体裁、内容が「定形約款」に該当するかどうか。ちょっと消費者目線で考えてみようかと。

 次は長年慣れ親しんだ「瑕疵」から「契約内容不適合」の問題。
クレームの多い業界なのですが、「契約の内容」を問われることになるとそもそも誰と誰の間の契約内容で争うことになるのか。「数次にわたる流通・請負」を介しての取引が当然の業界。「契約内容」をどの段階の関係者でも当事者として把握しているかというと口ごもらざるを得ないのが現実。しかし、ひとたびクレームともなれば、ほぼ製造事業者(の顧客相談窓口部門)にしわ寄せがきます。しわ寄せされる部門から「契約の内容」を問うてみるというのもありか、と。前述の「保証書」の内容も含めてのことになるかもしれませんが。

 ああ、それにしても天気が良い。皆さま、よい休日を。



事業者・消費者・人

 諸々あって今月初のエントリー。

 タグを民法改正とするか、消費者関連とするか迷います。

 「法学教室6月号」特集「債権法改正後の消費者契約法」を読んでの雑感。
 そもそも企業法務部員対象の書籍ではないのですが、法学徒に対して学者がどのように論じているか関心があったもので手に取りました。
 
 ジュリストでもおなじみ河上教授が約款規定について今回の改正では消費者保護としては不十分と論じているのと、鹿野教授(慶応)が「勧誘」について先のクロレラ広告最高裁の判決を持って明文で改正する必要性が薄れたとサクッと書かれていたのがまず目にとまりました。

 もっとも印象に残った野沢教授(立教)の論文について。
 消費者保護に総がかりになる本特集のなかで、いったん改正民法をグローバル・スタンダードを意識した「契約責任法」として落ち着かせ、そして法における「人」の想定が消費者よりも事業者に近いとして、ゆえに消費者の保護のさらなる充実が必要というものでした。(いいのかな、これで。乱暴かな)
 こうしている間にも、次々に新しい商売(まともなものから詐欺まで)が生まれる時代、基本法に消費者保護を取り込むというよりは消費者契約法のほうで手当てするほうが現実的だとは思います。
 しかしどうしてもしっくりこないのは消費者保護サイドのいう「消費者」。法が保護すべき「愚か」で「弱い」消費者ですが、ほんとうにいつまでもそのような「人」でよいのかという点。ときとして、消費者が「愚か」で「弱い」ままであることを盾にしているような印象を受けることがあります。そんなことはない、消費者教育を推進しているといわれるかもしれませんが、残念ながらまだその姿かたちがよくみえない、というのが日々クレームの相談や事業者団体業務にかかわっている自分の実感。
 法でいうところの事業者・消費者・人と実社会でのそれとの乖離もあるような気がします。

 自分も己の業務を離れれば、愚かで弱い消費者ではありますけれどね。

 
 

 

民法改正で変わる?トラブル対応

 ひっさびさの民法改正ネタです。

 長年親しんではいないものの慣れていた「瑕疵」という文言が姿を消すということについて。
業務上頻繁に触れてでもいない限り読み方ひとつとっても一般の人には読めない、慣れないものかもしれませんが、「契約の内容に適合しないもの」にしたらどうなるのかという?

 いつまで居られるかわかりませんが、自分が棲んでいる業界向けの書籍が中央経済社から出版されて居ました。「民法改正で変わる住宅トラブルへの対応 契約書と保証書」。(一財)住宅保証支援機構内の民法改正と住宅問題研究会による編集です。で、読後感など。
 
 発注者・買主にとっても請負者・売主にとってもひとたび住宅・建築物のトラブルが発生しようものなら、決着がつくまでの時間と労力は馬鹿になりません。トラブルを避けたいという点では両者一致しているはずなのですが、これが起こるのですよね。しかしこれまで設計や施工、建材・設備の「瑕疵」を争う訴訟では事業者に有利というほどではありませんが不利とも限らないということから、建築紛争は徐々に瑕疵を争うよりも「説明義務違反」に軸足を移している…と紛争に詳しい弁護士が分析していました。今般「瑕疵」から「契約内容不適合」と置き換わると、そもそも「契約内容」を明確にしておく必要があり、前述のように事業者の「説明義務」の重みが増すと思います。しかしなあという思いがまずあります。自分は過去に公共建築工事の現場の仕事に関わったことが何回かあります。公共工事の契約に関する手続きが「契約内容」の見本だと思っているのですが、あれを民間の地元工務店が同じことをするのは難しいと思うのですよね。またそれができたとしても今度は初めて家を建てる、購入する一般の方が理解できるか、査定できるのかというとそれもまた難しいだろうと思うのです。「契約責任」というのは一方当事者だけが負うものではないとは思いますけれど。

 それはともかく本書は日々住宅瑕疵担保責任保険・保証に関する業務を行なっている機関によるものだけあってツボを押さえているとは思います。想定読者層は「今後住宅を取得される方をはじめ関係者の方々」と序文にありますが、どうでしょう。普通の方が常に民法改正と建築業のことを考えているわけではありませんので、自分のように「関係者」が手に取るケースが多いと思います。そうであっても十分役割は果たすと思います。(例によって逆引きの意味で)
 普通の方に手にとっていただくにはちょっとハードルが高い内容だと思いますし、タイトルと装丁も固いですね。普通の書店の「住宅・マイホーム」の棚に並ぶようでないと。



 

 

 
 


 
 
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