企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

民法改正


民法改正 いよいよ各論(業務)へ

 連休、いい天気でスタートですね。
 今日のような日になぜPCに向かっているかといえば、連休でもなんでもない、いつもと変わらぬ週末だからです。年間休日数って大事ですよね。

 久々の民法改正ネタですが役立つ情報を発信できるわけでもないので、まあ備忘録というかメモというか。

 近々事業団体の消費者関連の分科会で短時間ながら民法改正について説明する場を設けられました。「いいすよ」と返答はしたもののどうしたものかと。企業ごとに民法改正対応を進めているのでは?という時期でしょうから間の抜けた話もできません。

 製造事業者と消費者との接点で考えると、まず「定形約款」を取り上げないわけにはいかないかと諸々の書籍等を読み直しています。 
 団体の加盟企業はBtoBtoC事業の形がほとんど。現状、売買や請負で直接消費者と契約関係を結ぶことはありません。数次の流通か請負を経て製品が引き渡されたのちのアフターサービスやクレームの段階になったときに消費者と相対することになります。そこでまず焦点になるのが「保証書」。製品に同梱している「お買い求めの日からn年以内はなんとか」「以下の場合は保証範囲外とさせていただきます」などと細かな文字で書かれているあれです。
 保証書の体裁、内容が「定形約款」に該当するかどうか。ちょっと消費者目線で考えてみようかと。

 次は長年慣れ親しんだ「瑕疵」から「契約内容不適合」の問題。
クレームの多い業界なのですが、「契約の内容」を問われることになるとそもそも誰と誰の間の契約内容で争うことになるのか。「数次にわたる流通・請負」を介しての取引が当然の業界。「契約内容」をどの段階の関係者でも当事者として把握しているかというと口ごもらざるを得ないのが現実。しかし、ひとたびクレームともなれば、ほぼ製造事業者(の顧客相談窓口部門)にしわ寄せがきます。しわ寄せされる部門から「契約の内容」を問うてみるというのもありか、と。前述の「保証書」の内容も含めてのことになるかもしれませんが。

 ああ、それにしても天気が良い。皆さま、よい休日を。



事業者・消費者・人

 諸々あって今月初のエントリー。

 タグを民法改正とするか、消費者関連とするか迷います。

 「法学教室6月号」特集「債権法改正後の消費者契約法」を読んでの雑感。
 そもそも企業法務部員対象の書籍ではないのですが、法学徒に対して学者がどのように論じているか関心があったもので手に取りました。
 
 ジュリストでもおなじみ河上教授が約款規定について今回の改正では消費者保護としては不十分と論じているのと、鹿野教授(慶応)が「勧誘」について先のクロレラ広告最高裁の判決を持って明文で改正する必要性が薄れたとサクッと書かれていたのがまず目にとまりました。

 もっとも印象に残った野沢教授(立教)の論文について。
 消費者保護に総がかりになる本特集のなかで、いったん改正民法をグローバル・スタンダードを意識した「契約責任法」として落ち着かせ、そして法における「人」の想定が消費者よりも事業者に近いとして、ゆえに消費者の保護のさらなる充実が必要というものでした。(いいのかな、これで。乱暴かな)
 こうしている間にも、次々に新しい商売(まともなものから詐欺まで)が生まれる時代、基本法に消費者保護を取り込むというよりは消費者契約法のほうで手当てするほうが現実的だとは思います。
 しかしどうしてもしっくりこないのは消費者保護サイドのいう「消費者」。法が保護すべき「愚か」で「弱い」消費者ですが、ほんとうにいつまでもそのような「人」でよいのかという点。ときとして、消費者が「愚か」で「弱い」ままであることを盾にしているような印象を受けることがあります。そんなことはない、消費者教育を推進しているといわれるかもしれませんが、残念ながらまだその姿かたちがよくみえない、というのが日々クレームの相談や事業者団体業務にかかわっている自分の実感。
 法でいうところの事業者・消費者・人と実社会でのそれとの乖離もあるような気がします。

 自分も己の業務を離れれば、愚かで弱い消費者ではありますけれどね。

 
 

 

民法改正で変わる?トラブル対応

 ひっさびさの民法改正ネタです。

 長年親しんではいないものの慣れていた「瑕疵」という文言が姿を消すということについて。
業務上頻繁に触れてでもいない限り読み方ひとつとっても一般の人には読めない、慣れないものかもしれませんが、「契約の内容に適合しないもの」にしたらどうなるのかという?

 いつまで居られるかわかりませんが、自分が棲んでいる業界向けの書籍が中央経済社から出版されて居ました。「民法改正で変わる住宅トラブルへの対応 契約書と保証書」。(一財)住宅保証支援機構内の民法改正と住宅問題研究会による編集です。で、読後感など。
 
 発注者・買主にとっても請負者・売主にとってもひとたび住宅・建築物のトラブルが発生しようものなら、決着がつくまでの時間と労力は馬鹿になりません。トラブルを避けたいという点では両者一致しているはずなのですが、これが起こるのですよね。しかしこれまで設計や施工、建材・設備の「瑕疵」を争う訴訟では事業者に有利というほどではありませんが不利とも限らないということから、建築紛争は徐々に瑕疵を争うよりも「説明義務違反」に軸足を移している…と紛争に詳しい弁護士が分析していました。今般「瑕疵」から「契約内容不適合」と置き換わると、そもそも「契約内容」を明確にしておく必要があり、前述のように事業者の「説明義務」の重みが増すと思います。しかしなあという思いがまずあります。自分は過去に公共建築工事の現場の仕事に関わったことが何回かあります。公共工事の契約に関する手続きが「契約内容」の見本だと思っているのですが、あれを民間の地元工務店が同じことをするのは難しいと思うのですよね。またそれができたとしても今度は初めて家を建てる、購入する一般の方が理解できるか、査定できるのかというとそれもまた難しいだろうと思うのです。「契約責任」というのは一方当事者だけが負うものではないとは思いますけれど。

 それはともかく本書は日々住宅瑕疵担保責任保険・保証に関する業務を行なっている機関によるものだけあってツボを押さえているとは思います。想定読者層は「今後住宅を取得される方をはじめ関係者の方々」と序文にありますが、どうでしょう。普通の方が常に民法改正と建築業のことを考えているわけではありませんので、自分のように「関係者」が手に取るケースが多いと思います。そうであっても十分役割は果たすと思います。(例によって逆引きの意味で)
 普通の方に手にとっていただくにはちょっとハードルが高い内容だと思いますし、タイトルと装丁も固いですね。普通の書店の「住宅・マイホーム」の棚に並ぶようでないと。



 

 

 
 


 
 

イエのカタチ

 秋の初めに父が亡くなり、相続他諸々で入り用なので父祖のルーツの地である関東地方のとある町役場から改正原戸籍謄本を取り寄せました。謄本をみて初めて知る家族の事実というものがやはりありました。で、イエというものについて。

 「家族・家庭・家門」としてのイエ。
「婚姻」は前者の家族家庭の始まりであるわけですが、今年は夫婦同姓云々だけでなく夫婦同性婚も話題になっていましたね。自分は家族の始まりの形が多様化してきたというよりは、明治期に定めた家族法が押さえ込んできたことが、やはり押さえきれなくなったというように思っているのですが違うのかな。
 家族の始まりの形の多様性を認めるならば、終わりの形の多様性も求められるはず。遺族年金や相続にかかわる制度、戸籍制度も現行のままでは不利益を被る人もでてくるわけで。先日の判決は一つの判断にしか過ぎず、仮に夫婦別姓婚が認められたとしても、超えなくてはならないハードルはあるでしょう。葬儀や相続など夫婦や家族の終わり方から始まりの形を考えることも必要ではないかと思うのですよ。

 「家族の容れ物」としてのイエ。住まい、住居のこと。そして「資産」としてのイエ。
夫婦や家族のあり方が変われば、その容れ物である住まいのあり方も変わるし、資産としてのあり方もどうなるか ということ。
 00年代初めに上野千鶴子が発表した建築家の隈研吾や山本理顕らとの対談集「家族を容れるハコ、家族を超えるハコ」。今読むと当時「そうかなあ」と首をひねっていたことでも特別とんがったことでもなかったと思えます。(全てではありませんが)
 しかし対談集から20年も経たないうちに悲劇的な方向に進んでいるハコもあります。「ニュータウンは黄昏て」に登場した団地とそこに住む家族がそうでしょうし、最近問題になった違法介護ハウスはもっとも悲惨な事例かもしれません。

 婚姻も高齢者介護も相続もイエのカタチの話として切り離せるものではない、例の合憲判決を巡っての話にはあまり乗れなかったので、ちょっとぶつくさ備忘録代わりに。


 

契約の内容って何だろう?(3) 販促物について

 連休の方もお仕事の方も夏休み中の方も、お暑うございます。

 過日、業界団体の分科会の席上で、あるメーカー担当者が「瑕疵が契約内容不適合になると、我々はどこまでやらなきゃならないのだろうね」と半ばぼやき気味でつぶやき、その場にいた者全員で「うーむ」と唸ってしまったのでした。

 建材・設備機器の取引形態は、納品・据付の段階ではB to B、引渡後の問い合わせ、修理・サービス対応は最終需要家が個人の場合はB to Cというパターンです。やや面倒なのがB to Bであっても流通が数次の段階を踏む取引が多いというところでしょうか。これは昔からの取引慣行や需要家の与信問題というところによるものです。(改正民法の個人根保証と関わりが深くなるかもしれません)

 数次にわたる流通段階を当然のものとして、我々は製品の販促に関してはカタログをはじめ様々な販促ツールを準備します。ときに最終需要家向けのプレゼンテーションシートまで作成することもあります。
しかし、それらの内容が果たしてきちんと最終需要家まで伝わっているのか正直いくばくかの不安を感じることがあります。

 改正民法施行後は、製品購入契約の内容とは「カタログほか販促物、プレゼンテーション、取扱説明書、施工説明書等」で説明を受けたものであるということが十分考えられるわけで。

 カタログほか販促物の内容については、すでに過剰・不当表現を規制するものとして景表法、誤使用防止のための警告表示を求める「製造物責任法」があるわけですが、改正民法により「契約内容」たり得る役割も負うことになるのでしょうかね。製品の態様、性能、品質は当然として、保証や免責事項といった従来なら購入したのちに読むことになる取扱説明書や保証書の内容をも契約締結前に説明する必要があるのではないか、これが冒頭のつぶやきであり声にならない唸り声の中身であります。

 前々回のエントリでとりあげたAmazonでのソニー不動産のリフォーム工事販売のサイトを確認してみると、免責事項や追加費用発生の可能性の注意書はあります。商材の説明は十分なものとは思えず、商材に関してはメーカーサイトを確認してくださいということなのかもしれませんが、そうなるとメーカー側のサイトも単なる製品PRではなく「契約の内容」となることを意識したサイトにする必要に迫られるのかもしれません。

 いやはや気の重いことであります。 
プロフィール

msut

QRコード
QRコード
アクセスカウンター

    • ライブドアブログ