企業法務マン迷走記2

 大船ならぬ「酔っぱらった船」に乗ったかのような企業法務担当者の日常

民法改正


民法改正対応、まとめの時期 Business Law Journal 2019年5月号

 デリバリーのよい地域では6月号が届けられる日に、ようやく5月号を取り上げる体たらく。この1ヶ月間の環境変化を理由にするのも情けない。と、いうわけでメモ程度。

 特集は「民法(債権法)改正を踏まえた契約ひな形の見直し」。時期としては改正法対応の総まとめ、なのでしょうね(汗)
 これまでもいくつかの取引先から基本契約書の改訂の話は舞い込みましたが「法改正対応」と明言されたものではないようで。もっとも、先方も法務部門は「法改正対応」と明言していたかもしれませんが、先方の法務担当者→購買責任者→購買担当者→自社営業担当者と伝言ゲームが繰り返されるうちに「落ちた」可能性も考えられなくはありませんが。
 今のところ数少ないひな形ドラフト例でいうと本特集の「売買取引基本契約」(MHM青山大樹弁護士、岡成明希子弁護士)の記事の「契約不適合責任」にある「瑕疵」→「契約不適合」の文言修正あたりでとどまっており、大きく変えているものはないという印象。今後変更契約を交わすことはあるかもしませんが。
 ただ現場部門によく詰めを頼むのは、基本契約にある「詳細は個別契約に定める」「詳細は別途取り交わす仕様書による」という文言を安易に扱うなという点。それらを含めての「契約内容適合」でもあるので基本契約締結だけ急いで詳細は後回しでズルズルとなることもあるので。

 今後債権管理部門との間で詰めようと話しているのは、連帯保証条項。売掛契約における連帯保証人はほとんど経営者の人的保証なのですが、稀に子息や他の親族の名が入っている契約書があるため。法対応という点では、連帯保証条項を残すにしても実務では2ヶ月分の取引額でもよいから保証金差入にしてもらった方がよいのかも、といった話。
 
「利用規約・保証書」(NOT 松尾博憲弁護士)の記事について、前半の利用規約に関しては現在利用規約を使っての取引がないのですが、後半の「保証書」の部分はメーカーですので再確認したいところ。業界団体の顧問弁護士が早い時期から保証書を「定型約款にしよう」との意見を寄越していたのですが、本稿でも「保証書は定型約款に該当する」との見解が示されています。
 最近では家電メーカーはじめ取扱説明書や保証内容を予め自社Webサイトに掲載していますが、保証書を定型約款(保証約款)とすれば、保証内容の変更もWeb上での通知で理屈上は可能にはなりますね。
とはいえ紙ベースのものを一切なくすことは難しいでしょうし、建材設備の世界では元請業者や流通業者が保証特約を上乗せするケースがすでにありますので、さらなる検討が必要かなと思います。

 と思ったままをメモしましたが、実務担当者によるクロストークの内容も重量感がありますね。

 月遅れのエントリーなのでもはやここまで。

債権譲渡と取引の未来

 と、大層なタイトルを付けたみたもののただのメモです。

 LBOスキームで親会社から投資ファンドに売却された際に3回ほど金融機関とブリッジローン契約を締結したのですが、初回の契約時に借入額の規模から集合動産、集合債権にまで担保設定されました。当時は「背負わされた借金のカタ」という感覚でいたのですが、裏を返せば将来売掛債権で融資を得る経験していたということになります。

 自分のいる業界の取引形態の主流は数次にわたる流通を介して最終の需要家に商品を引き渡すというものです。これは古くからの商習慣によるところが大きいのですが、もうほとんど本来の意義を失いつつあり、末端の流通業者や需要家の「与信」を目的として流通を介在させるというのが実態。建設という大きな金額が動く市場でありながら、需要家である建設業者の資力や資金調達力に難があることがほとんどだからです。
 業界に詳しい弁護士との民法改正をめぐる雑談で、「債権譲渡」による資金調達が行われるようになったら、というような話が上がりました。あくまで電子契約の普及が進めば、という前提ですが、昔ほどではないにしろ「書面主義」という建設工事約款の条項が空しくなるような実態が残る業界、「紙」の文書を飛び越え一気に「電子」になるかという疑問がないわけではありません。しかし、「カネ」が絡めばひょっとしたらという気もします。(そうなるならお守りのようになっている基本契約書の「債権譲渡」に関する条文もどうするかということですよね。)

 流通段階の末端の企業や需要家が資金調達力を身につけた場合に、現在のような「数次にわたる流通」がその形態を保っていくことができるのでしょうか。民法改正とは別に流通事業者には会計基準「新収益認識」の問題もあります。

 ものの本に「実務への影響は軽微」とあったからといって、そうはいかないのが企業法務。今後バラバラやって来るであろう取引基本契約書更新交渉には出張る必要がありそうです。
 

埋め草 法改正の研修はタイトルに尽きる

 面倒なので西暦に統一せよ!という一方で、「平成最後の夏」と和暦で盛り立てられた夏が過ぎ、はや9月。
 民法改正、とカテゴリー分けするのも気が引ける内容ですがメモがわりに。

 過日、事業者団体の分科会のメンバー数人と団体の顧問弁護士と面談する機会がありました。
発端は近日開催される事業者団体の会合(主に加盟企業の代表者が出席)のプログラムに顧問弁護士による講演があり、今回は気合たっぷりに「民法改正」について語ると宣言があったことから。

 民法改正への取り組み、ほとんどの企業が法務部門が中心になって取り組んでいる最中で、現場レベルでまだ作業中であったり、経営トップまで取り組みが共有されていたりと、まだばらつきがある時期であること。また当該事業者団体は完成品メーカーと中小含むサプライヤーから成る団体なので、顧問弁護士が提案してきた「条項」に的を絞った内容では共通のテーマにはなりにくい、というようなことを説明して、講演内容の方向性について1時間半ほどの擦り合わせを行なった次第。
 プロからの提案に対してダメ出しというようなところから始まったので、当初は顧問弁護士も面食らった感じでしたが、業界の上流から下流まで、全ての段階の事業者、事業者団体に関わっている方なのでやはり持ちネタは豊富でした。ざっくり最近の法改正トレンドから民法改正の趣旨、改正法の業務への活用手段例といった構成で話してもらうことに落ち着きました。(具体的な内容はここではご容赦)

 合間に挟まる雑談の中で、業界紙に執筆した原稿記事のタイトル次第でアクセス数と評価が激変するよといった話が出ました。「民法改正に伴うなんちゃら」「民法改正でこう変わるなんちゃら」では、ビクとも動かなかったのが、「現場担当者の嘆き」をタイトルにした途端に記事へのアクセスや問い合わせが激増したとのこと。これ、法務担当者としてメモさせていただきました。つい「法改正がなんちゃらに対する影響」とか「法改正ここが注意」と研修や勉強会のタイトルにつけてしまいがちですが、日々条文やガイドラインに触れている法務担当者ならともかく、他部門の担当者に対する勉強会ではストレートに「あんたの仕事にこんなに影響するよ」とひと目でわかるようなタイトルをつけたほうがいいですね。自分のこととして捉えて参加するのとそうでないのとでは、研修や勉強会の効果が違いますからね。それにはまあ他部門担当者の「嘆き」や「呟き」を日々拾っておく必要はありますけれどね。

 あとは、紙の契約書と判子、印紙の不要論につながるネタとして「債権譲渡」があったのですが、これはもう少し自分の理解度を上げてから取り上げます。

 
 

民法改正 いよいよ各論(業務)へ

 連休、いい天気でスタートですね。
 今日のような日になぜPCに向かっているかといえば、連休でもなんでもない、いつもと変わらぬ週末だからです。年間休日数って大事ですよね。

 久々の民法改正ネタですが役立つ情報を発信できるわけでもないので、まあ備忘録というかメモというか。

 近々事業団体の消費者関連の分科会で短時間ながら民法改正について説明する場を設けられました。「いいすよ」と返答はしたもののどうしたものかと。企業ごとに民法改正対応を進めているのでは?という時期でしょうから間の抜けた話もできません。

 製造事業者と消費者との接点で考えると、まず「定形約款」を取り上げないわけにはいかないかと諸々の書籍等を読み直しています。 
 団体の加盟企業はBtoBtoC事業の形がほとんど。現状、売買や請負で直接消費者と契約関係を結ぶことはありません。数次の流通か請負を経て製品が引き渡されたのちのアフターサービスやクレームの段階になったときに消費者と相対することになります。そこでまず焦点になるのが「保証書」。製品に同梱している「お買い求めの日からn年以内はなんとか」「以下の場合は保証範囲外とさせていただきます」などと細かな文字で書かれているあれです。
 保証書の体裁、内容が「定形約款」に該当するかどうか。ちょっと消費者目線で考えてみようかと。

 次は長年慣れ親しんだ「瑕疵」から「契約内容不適合」の問題。
クレームの多い業界なのですが、「契約の内容」を問われることになるとそもそも誰と誰の間の契約内容で争うことになるのか。「数次にわたる流通・請負」を介しての取引が当然の業界。「契約内容」をどの段階の関係者でも当事者として把握しているかというと口ごもらざるを得ないのが現実。しかし、ひとたびクレームともなれば、ほぼ製造事業者(の顧客相談窓口部門)にしわ寄せがきます。しわ寄せされる部門から「契約の内容」を問うてみるというのもありか、と。前述の「保証書」の内容も含めてのことになるかもしれませんが。

 ああ、それにしても天気が良い。皆さま、よい休日を。



事業者・消費者・人

 諸々あって今月初のエントリー。

 タグを民法改正とするか、消費者関連とするか迷います。

 「法学教室6月号」特集「債権法改正後の消費者契約法」を読んでの雑感。
 そもそも企業法務部員対象の書籍ではないのですが、法学徒に対して学者がどのように論じているか関心があったもので手に取りました。
 
 ジュリストでもおなじみ河上教授が約款規定について今回の改正では消費者保護としては不十分と論じているのと、鹿野教授(慶応)が「勧誘」について先のクロレラ広告最高裁の判決を持って明文で改正する必要性が薄れたとサクッと書かれていたのがまず目にとまりました。

 もっとも印象に残った野沢教授(立教)の論文について。
 消費者保護に総がかりになる本特集のなかで、いったん改正民法をグローバル・スタンダードを意識した「契約責任法」として落ち着かせ、そして法における「人」の想定が消費者よりも事業者に近いとして、ゆえに消費者の保護のさらなる充実が必要というものでした。(いいのかな、これで。乱暴かな)
 こうしている間にも、次々に新しい商売(まともなものから詐欺まで)が生まれる時代、基本法に消費者保護を取り込むというよりは消費者契約法のほうで手当てするほうが現実的だとは思います。
 しかしどうしてもしっくりこないのは消費者保護サイドのいう「消費者」。法が保護すべき「愚か」で「弱い」消費者ですが、ほんとうにいつまでもそのような「人」でよいのかという点。ときとして、消費者が「愚か」で「弱い」ままであることを盾にしているような印象を受けることがあります。そんなことはない、消費者教育を推進しているといわれるかもしれませんが、残念ながらまだその姿かたちがよくみえない、というのが日々クレームの相談や事業者団体業務にかかわっている自分の実感。
 法でいうところの事業者・消費者・人と実社会でのそれとの乖離もあるような気がします。

 自分も己の業務を離れれば、愚かで弱い消費者ではありますけれどね。

 
 

 

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